外壁塗装の塗料の種類——「ラジカル」はグレードではありません
見積書に「ラジカル制御形」と書いてあった。あるいは業者に勧められた。先に結論を書きます。ラジカルは樹脂の名前ではなく、劣化を抑える「機能」の名前です。だから、よく見る「アクリル→ウレタン→シリコン→ラジカル→フッ素→無機」という階段は、1か所だけ種類の違うものが混ざっています。メーカーの公式分類で確認しました。
このページの内容
- 見積書で確認すべきは、たった3つ
- ラジカルとは何か——樹脂ではなく機能です
- それでも「シリコンとフッ素の中間」で合っています
- 「何年もつ」——カタログの年数は、試験室で出した数字です
- 2液型の硬化剤——ここが本当の分かれ目
- 無機塗料をすすめられたら
- 結局、どう選べばいいのか
見積書で確認すべきは、たった3つ
塗料の知識をひととおり覚える必要はありません。見積書のこの3点が書かれているかどうかで、その業者の姿勢はかなり分かります。
メーカー名と製品名が書いてあるか
「シリコン塗装一式」ではなく、「日本ペイント パーフェクトトップ」のように製品名まで書かれているか。製品名さえ分かれば、メーカーの公式サイトでご自身で仕様を確認できます。ここを濁す見積書は、あとから安い塗料に替えられても気づけません。
1液か、2液か
製品名の頭にたいてい書いてあります(「1液水性〜」「2液〜」)。この違いが施工品質に直結します。理由は後半の硬化剤の項で説明します。
塗り回数(下塗り・中塗り・上塗り)
下塗りが項目として立っているか。「3回塗り」と書いてあっても、下塗りを含めて3回なのか、上塗りだけで3回なのかは別です。聞けば答えてくれます。
この3つが揃っていれば、あとは比べるだけです。逆に揃っていない見積書は、金額の高い安い以前に比較の土俵に乗りません。
ラジカルとは何か——樹脂ではなく機能です
まず「ラジカル」そのものの説明から。塗料には白い顔料として酸化チタンが使われています。ここに紫外線が当たると、樹脂を壊す働きをする物質が発生します。これがラジカルです。
樹脂が壊れると、抱えられていた顔料が粉になって表面に出てきます。これがチョーキング(白い粉)です。症状の見方はチョーキングのページで詳しく書いています。
そこでラジカルが出にくい酸化チタンを使い、出てしまったものを抑える成分を加える——この設計が「ラジカル制御」です。つまり劣化の原因のひとつを潰しにいく技術であって、樹脂の種類の話ではありません。
メーカーの公式分類を見ると、はっきりします
エスケー化研は、該当製品を「ラジカル制御型シリコン樹脂塗料」と分類しています。ラジカルという独立したグレードではなく、シリコン樹脂塗料の一種という位置づけです。
さらにスズカファインの「ビーズコートF」は、公式の製品説明で「ラジカル制御された超高耐候性ふっ素樹脂」と書かれています。フッ素にもラジカル制御はあります。
つまりラジカル制御は、シリコンにもフッ素にも乗せられる技術です。「シリコンの上、フッ素の下」という固定席があるわけではありません。
グレードの列と、ラジカル制御の関係
それでも「シリコンとフッ素の中間」で合っています
ここまで読んで「じゃあ業者の説明は間違いなのか」と思われたかもしれません。実務の感覚としては、合っています。
理由は単純で、いま市場に多く出回っているラジカル制御品は、シリコンをベースにしたものが中心だからです。その結果として、価格はフッ素より抑えめ、耐候性はふつうのシリコンより上、という帯に落ち着いて流通しています。塗装店が「シリコンとフッ素の中間」と説明するのは、この実勢を指しています。
ですから覚えておくべきはこの2つです。
- 選ぶときの感覚:シリコンとフッ素の間の選択肢として考えて構いません
- 正体:ラジカルという樹脂があるわけではないので、「ラジカルです」だけでは何を塗るのか決まりません。ベースの樹脂と製品名まで聞いてください
同じ「ラジカル制御形」でも、シリコンベースなのかフッ素ベースなのかで価格も耐候性も変わります。見積書に製品名を書いてもらう理由が、ここにもあります。
「何年もつ」——カタログの年数は、試験室で出した数字です
塗料選びでいちばん知りたいのは、結局これだと思います。そしてメーカーのカタログには、実際に年数が書かれています。ただし、その数字がどうやって作られたのかを知っておく価値があります。
カタログに載っているのは「期待耐用年数」と呼ばれる値です。たとえばエスケー化研の「エスケープレミアムシリコン」は14〜16年と明記されています。ただし、同じページにこう添えられています。
メーカー自身が「参考値」と書いています
エスケー化研の但し書きは、こうです。「期待耐用年数は、次の塗り替え時期の目安です。地域、立地条件、方角等により異なりますので、参考値としてお考えください。」
この年数の土台になっているのが促進耐候性試験です。屋外で15年待つわけにはいかないので、試験室でキセノンランプの光を当て続けて劣化を早め、その結果から屋外の年数に換算しています。JIS A6909という規格で、耐候形1種・2種・3種という等級に分かれます。
つまり実際の家で15年もった実績ではなく、試験室のデータから導いた理論値です。メーカーが「参考値」と書いているのは、そういう意味です。
もうひとつ知っておくとよいのは、年数の出し方はメーカーによって方針が違うことです。
| メーカー | カタログでの示し方 |
|---|---|
| エスケー化研 | 期待耐用年数を年数で明記(例:エスケープレミアムシリコン 14〜16年)。JIS A6909 耐候形1種を取得 |
| 日本ペイント | 期待耐用年数の年数は記載していません。パーフェクトトップSiの製品ページも「JIS A6909 …… 耐候形1種 相当」という等級の表示にとどまります |
同じ「耐候形1種」でも、片方は年数で語り、片方は等級で語る。だから「シリコンは10年、フッ素は15年」といった一律の表は、メーカーをまたいだ瞬間に根拠が揃わなくなります。
当サイトの相場・費用ガイドにもグレード別のおおまかな年数を載せていますが、「カタログ上の期待耐用年数」と明示しているのはこのためです。あくまで幅のある目安として見てください。最終的に効くのは、実際に使う製品のカタログ値です。製品名さえ分かれば、メーカーのサイトでご自身で確認できます。見積書に製品名を書いてもらうのは、ここでも効いてきます。
そのうえで実用的な話をすると、グレードを1段上げたときにカタログ上で延びる年数より、施工がきちんとしているかどうかのほうが、結果への影響は大きいと考えてください。その理由が次の項目です。
2液型の硬化剤——ここが本当の分かれ目
塗料には1液型と2液型があります。違いは単純で、2液型は現場で「主剤」と「硬化剤」を混ぜてから塗るという点です。フッ素などグレードが上がるほど、2液型が増えます。
そして、この混ぜる工程が曲者です。
硬化剤を計らずに入れる。あるいは、入れ忘れる
塗料の販売・調色に携わってきた実務者から聞いた話です。硬化剤を入れ忘れたまま塗ってしまった塗装会社が、実際にあります。
怖いのは、それでも塗膜はいちおう乾いて、固まって見えることです。見た目はふつうに塗り上がります。ただし塗料が本来もっている性能は出ません。高いグレードを選んだ意味が、この一点で消えます。
そして施主が完成後に見分けることは、まずできません。数年経って「思ったより早く傷んだ」と気づく形になります。
2液型で、どこに失敗が起きるか
ここから、施主にできる対策が2つ出てきます。
- 聞く「これは1液ですか、2液ですか」2液なら「混ぜる比率は決まっているんですよね」と一言添えるだけで、意識している施主だと伝わります。まともな業者ほど、この質問を嫌がりません
- 残す「工程の写真を撮って、あとで見せてもらえますか」塗り上がりからは判断できないぶん、過程の記録が効きます。ふだんから施工の様子をSNSに載せている業者なら、もともと撮っているので頼みやすいはずです
なお、代表的なラジカル制御形塗料には「1液水性」タイプの製品があります(製品名の頭に「1液水性ラジカル制御形」と書かれています)。混ぜる工程がないぶん現場の負担が軽く、施工のばらつきが出にくい——これも、ラジカルが現場で好まれている理由のひとつです。
手抜きがなぜ起きるのかという構造については、トラブルとクーリングオフのページに書いています。根っこは、たいてい安すぎる金額と詰めすぎた工期です。
無機塗料をすすめられたら
いま最上位として案内されることが多いのが無機塗料です。無機成分を組み合わせることで、紫外線で劣化する有機物の割合を減らす、という考え方の塗料です。
デメリットとして語られることが多いのは、次の点です。
| 言われていること | 確認のしかた |
|---|---|
| 価格が高い | これは事実です。同じ面積でシリコンやラジカルの見積もりも並べて出してもらい、差額を見てから決めてください。差額に納得できるかどうかの問題です |
| 塗膜が硬く、ひび割れに追従しにくいと言われる | 製品によって性質が違うため、ここは製品名を聞いて、メーカーの仕様を確認するのが確実です。「無機だから一律にこう」とは言い切れません |
| 施工できる店が限られる | 扱い慣れているかを聞いてください。施工実績を写真で見せてもらうのがいちばん早いです |
無機塗料は製品ごとの差が大きく、当サイトでは一律の評価を書きません。すすめられた場合は、製品名を控えてメーカーの公開資料をご確認ください。
結局、どう選べばいいのか
ここまでを踏まえると、優先順位はこうなります。
まず、施工がまともか
洗浄・乾燥・下地処理・混ぜ方。ここが崩れると、どんな塗料を選んでも性能は出ません。塗料選びより先です。
次に、あと何年住むか
高いグレードは、長く住む家ほど得になります。逆に10年以内に建て替えや売却の予定があるなら、上位グレードの差額は回収できません。
最後に、塗料のグレード
そのうえでシリコン・ラジカル・フッ素・無機を比べます。同じ面積で2〜3種類の見積もりを出してもらえば、差額は一目で分かります。
ちなみに色によっても塗料の値段は変わります。濃い色ほど顔料の分だけ高くなり、グレードの差額に匹敵することもあります。詳しくは外壁塗装の色のページをご覧ください。
あわせて読みたい
チョーキングと、ひび割れ
ラジカル制御が抑えようとしている、あの白い粉の話
外壁塗装の色
色見本の見方と、色によって値段が変わる理由
トラブルとクーリングオフ
手抜きが起きる構造と、防ぎ方
遮熱塗料・断熱塗料
機能性塗料の効果と、結局いちばん効くのは何か
参考にした情報
- エスケー化研株式会社の公開製品情報(「ラジカル制御型シリコン樹脂塗料」の分類表記)
- スズカファイン株式会社 ビーズコートF 製品ページ(「ラジカル制御された超高耐候性ふっ素樹脂」「水性1液反応硬化形ふっ素樹脂系」の表記)
- エスケー化研株式会社 エスケープレミアムシリコン 製品ページ(期待耐用年数「14〜16年」および「次の塗り替え時期の目安です。地域、立地条件、方角等により異なりますので、参考値としてお考えください。」の表記/JIS A6909 耐候形1種)
- 日本ペイント株式会社 パーフェクトシリーズ/パーフェクトトップSi 公式製品ページ(「ラジカル制御形」「水性系」「1液」「JIS A6909 …… 耐候形1種 相当」の表記/期待耐用年数の年数表記は確認できず)
- JIS A6909 建築用仕上塗材(促進耐候性試験および耐候形1種・2種・3種の等級区分)
- 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材
製品の仕様・分類はメーカーおよび製品ごとに異なります。実際に使用する塗料の性能・仕様は、製品名を確認のうえメーカーの公開資料および施工業者にご確認ください。最終確認日:2026年8月17日。