ユメロックとハイパーユメロックの違い——見積書で見た人のための整理
見積書や業者の提案に「ユメロック」と書いてあって、調べに来た方が多いはずです。作っているのはロックペイントという1952年設立の塗料メーカーで、ユメロックはその外壁用の主力ファミリー。ただし検索するとユメロック・ハイパーユメロック・1液ユメロックDX・ユメロックルーフと似た名前が並び、どれの話か分からなくなります。このページでは、同じ公式資料(設計価格表とカタログ)だけで条件を揃えて、違いと選び方を整理します。「2液なのに1液より安い」という、この塗料でいちばん誤解しやすい点から解きます。
このページの内容
- ユメロックとは——まず家族構成から
- 公式の設計価格で並べる——条件が揃った唯一の比較
- 「2液なのに1液より安い」の種明かし
- ハイパーユメロックの正体——HALSによるラジカル制御
- 硬化剤という工程——2液を選ぶなら知っておくこと
- 耐用年数は何年?——ロックペイントは「年数」を書きません
- 評判を調べるときの注意
- 見積書での確認ポイント
- よくある質問
ユメロックとは——まず家族構成から
ロックペイントの公式サイトで確認できる「ユメロック」ファミリーは、主に次の顔ぶれです。正式な分類名(樹脂の名前)も併記します——長いですが、あとで効いてきます。
| 製品名 | 液型 | 公式の分類 | ざっくり言うと |
|---|---|---|---|
| ユメロック | 2液 | 弱溶剤2液型NADシリコンウレタン樹脂塗料 | ファミリーの基本形。シリコンとウレタンのあいのこ樹脂 |
| ハイパーユメロック | 2液 | 弱溶剤2液型低汚染リアルハイブリッドシリコン樹脂塗料 | 上位版。ラジカル制御と低汚染が入る |
| 1液ユメロックDX | 1液 | 弱溶剤1液架橋型低汚染リアルハイブリッドシリコン樹脂塗料 | ハイパーと同じ世代の樹脂を、硬化剤なしの1液にしたもの |
| ユメロックルーフ/ハイパーユメロックルーフ | 1液/2液 | 屋根用 | スレートなど屋根専用の別ライン。外壁用と混ぜて比較しない |
共通するのは「弱溶剤」であること。水で薄める水性ではなく、塗料用シンナーで薄めるタイプです(強い溶剤よりにおいが穏やかな中間の系統。詳しくは水性と油性の違いのページへ)。弱溶剤は鉄部や旧塗膜への密着に強みがあるとされる系統で、外壁と付帯部をまとめて塗る現場で好まれてきた型です。
公式の設計価格で並べる——条件が揃った唯一の比較
ロックペイントは、建築用塗料の設計価格表を1本のPDFで公開しています。同じ資料の同じ条件で並んでいる数字なので、製品どうしの比較としてはこれがいちばん公平です。上塗り塗料シリーズ(外壁・弱溶剤系)から抜くと:
| 製品 | 設計価格(㎡当り・税抜) | 位置づけ |
|---|---|---|
| ダイナロックⅢ(ウレタン) | 2,000円 | ひとつ下のウレタン級 |
| ユメロック | 2,350円 | 2液・シリコンウレタン |
| 1液ユメロックDX | 2,450円 | 1液・新世代樹脂 |
| ハイパーユメロック | 2,750円 | 2液・新世代樹脂+ラジカル制御 |
| サンフロンUV(フッ素) | 3,600円 | ひとつ上のフッ素級 |
この数字を見積書と比べないでください。公式の注記にあるとおり、この設計価格は「同一淡彩色300㎡以上を基準とする材工共の価格」で、「足場代、下地調整代、養生代、諸経費(現場管理費、法定福利費)などは含まれておりません」(税抜)。戸建て1棟は300㎡よりはるかに小さく、含まれていない費用が実際の見積もりには全部乗ります。実際の見積もりは、この単価よりかなり高くなると考えてください。この表の使いみちは金額の答え合わせではなく、製品どうしの序列と価格差を見ることです。
もうひとつ、注記には「設計価格は、白及び淡彩色または常備色で算出しており、濃彩色や特殊色では割高となる場合があります」ともあります。色で塗料の値段が変わる——外壁の色選びのページで書いてきたことが、ここでもメーカーの原文で確認できます(色のページ)。
「2液なのに1液より安い」の種明かし
表をよく見ると、変なことが起きています。2液のユメロック(2,350円)より、1液のユメロックDX(2,450円)のほうが高いのです。「2液のほうが本格的で高級」というイメージで見ると逆に見えます。
種明かしは、正式な分類名にあります。ユメロックは「NADシリコンウレタン樹脂」、1液ユメロックDXは「低汚染リアルハイブリッドシリコン樹脂」——樹脂の世代が違うのです。DXはハイパーユメロックと同じ新しい世代の樹脂を1液にした製品で、カタログにはラジカル制御技術と低汚染技術(親水性の塗膜で汚れを雨に流す)が明記されています。つまりこの3つの関係は、
- 液型(1液か2液か)は、施工の方式の違い現場で硬化剤を混ぜるかどうか。グレードの上下ではありません。
- 価格と性能を分けているのは樹脂の世代シリコンウレタン(ユメロック)か、低汚染リアルハイブリッドシリコン(DX・ハイパー)か。
- だから並びは ユメロック → DX → ハイパー になるハイパーは新世代樹脂+2液で最上位、という整理です。
「シリコンなのかウレタンなのか」と混乱していた方へ——ユメロックの樹脂は公式名のとおりシリコンとウレタンのハイブリッドで、業界の慣習ではシリコングレード帯として扱われることが多い製品です。グレードという物差しそのものの話は塗料の種類のページにまとめています。
ハイパーユメロックの正体——HALSによるラジカル制御
設計価格表の備考欄に、ハイパーユメロックだけ短い注記が付いています——「HALSによるラジカル制御」。これが㎡400円差(2,350円→2,750円)の中身です。
ラジカルとは、塗膜の中の酸化チタン(白い顔料)に紫外線が当たって発生する劣化因子のこと。カタログの説明では、特殊コーティングした酸化チタン顔料とラジカル吸着安定剤(HALS)の組み合わせでこれを無効化し、耐候性を高めています。……この説明、聞き覚えがないでしょうか。日本ペイントのパーフェクトシリーズ、エスケー化研のプレミアムシリコンと、いま各社の主力が採用しているのと同じ潮流の技術です(パーフェクトトップのページ/プレミアムシリコンのページ)。
つまりハイパーユメロックは「ロックペイント版のラジカル制御シリコン」と位置づけると、他社製品と比べやすくなります。加えて低汚染(親水性で雨が汚れを流す)と耐酸性雨が公式の特長です。
「リアルハイブリッド」って何?
分類名にある「リアルハイブリッドシリコン樹脂」は、ロックペイントが自社の樹脂に付けている名前です。カタログの説明では「独自のリアルハイブリッド樹脂の特性を活かして、三次元に架橋した網目状構造のアクリルシリコン樹脂塗膜を形成します」——つまり実体はアクリルシリコン系の樹脂で、「リアルハイブリッド」はそのブランド名と理解すれば足ります。ラジカル制御(HALS)はこの樹脂の上に乗っている技術なので、「リアルなの?ラジカルなの?」と迷う必要はありません——樹脂がリアルハイブリッド(アクリルシリコン系)、劣化対策がラジカル制御、という二段構えです。
硬化剤という工程——2液を選ぶなら知っておくこと
2液型とは、主剤と硬化剤を現場で計って混ぜ、化学反応で固める塗料です。ユメロックの公式仕様書には配合比まで書いてあります——重量で主剤9:硬化剤1。混ぜたぶんは使い切りで、時間が経つと固まって使えなくなります。
ここで、1液ユメロックDXのカタログにある一文を紹介します。
「硬化剤を配合せず、作業ミスと廃棄のムダを無くします」(1液ユメロックDX カタログ)
メーカー自身が、2液の弱点をはっきり書いています。硬化剤の計量・混合は、品質が職人の手元に懸かる工程だということです。実際、塗装の実務者が施工不良の典型として挙げる失敗に「硬化剤の入れ忘れ・比率ミス」があります。混ぜ忘れた塗料は、塗った直後は見分けがつかず、いつまでも固まらない・すぐ剥がれるという形で後から現れます。
誤解しないでください——これは「2液はやめておけ」という話ではありません。2液は反応硬化ならではの塗膜性能が魅力で、だからハイパーユメロックは2液です。言いたいのは、2液を選ぶことはきちんと計って混ぜる管理ごと選ぶことだ、という一点です。工程写真を残してもらう約束(工程のページで書いた手)は、こういうところで効きます。
耐用年数は何年?——ロックペイントは「年数」を書きません
検索需要がいちばん集まる質問ですが、正直に書きます。ロックペイントの公式資料に「期待耐用年数◯〜◯年」という記載は見当たりません。代わりに書いてあるのは試験の数字です——1液ユメロックDXのカタログでは「促進耐候性(キセノンランプ法)2,500時間で光沢保持率80%以上と建築用耐候性上塗り塗料1級相当」。汎用ウレタンや汎用アクリルとの比較グラフも載っています。
メーカーの数字の出し方は、実は三者三様です。
- エスケー化研=期待耐用年数を年数で明記する(プレミアムシリコン14〜16年など。詳しくはこちら)
- 日本ペイント=年数を書かず、JIS耐候形1種「相当」(社内試験)で示す
- ロックペイント=年数を書かず、試験名と数値(キセノン2,500時間・1級相当)で示す
- 水谷ペイント=年数を書かず、実地の暴露試験(西表島)で示す(ナノコンポジットW)
年数を書けば「もたなかった」と言われるリスクを負い、書かなければ比較されにくい。どちらが誠実かは一概に言えませんが、試験条件つきの数字は、根拠が確かめられるぶん信用できます。当サイトも、根拠のない年数をここで足すことはしません。実際の持ちは立地(日当たり・雨がかり)と下地・施工で大きく変わります。
評判を調べるときの注意
「ハイパーユメロック 評判」で検索したくなる気持ちは分かります。ただ、出てくるページの大半はこの塗料を扱う塗装会社のブログです。扱っている塗料を悪く書く理由はないので、評判記事は基本的に好意的に寄ります。悪評が見つからないことは、品質の証明にはなりません。
それでも材料としての素性は、ここまで見てきたとおり公式資料でかなり確かめられます——樹脂の世代、ラジカル制御、試験数値、価格の序列。塗料の評判より結果を左右するのは、下塗りの選定と施工の質です。カタログの適応下塗り表は素材別(窯業系サイディング・鉄部・ガルバリウム鋼板・木部)に下塗りを指定しており、ここを外すと上塗りが何であれ剥がれます。「うちの外壁だと下塗りは何を使いますか」——評判を検索するより、この質問のほうが業者の力量を見分けられます。
ひとつだけ、現場側でよく聞かれる評判——「色が出る」
塗料を扱う実務者の間で、ロックペイントについて昔からよく言われる評判があります。発色がいい、他社で出しにくい色も出せることが多い——同じ評判は関西ペイントにも付いていて、この2社に共通するのは自動車用塗料を長く手がけていることです(ロックペイントの事業内容は会社概要で確認できます)。車の塗色は建物よりはるかに鮮やかで種類が多く、その調色の土台が建築用にも効いている、というのが現場側の見立てです。
これはメーカーが公表している性能値ではないので、参考程度に受け取ってください。ただ、濃い色や鮮やかな色の外壁を考えている方には、業者に「この色、きれいに出ますか」と聞く入り口になります。前述のとおり濃彩色・特殊色は割高になる場合があるという注記ともセットで(色のページ)。
見積書での確認ポイント
- どのユメロックかを製品名で確かめる「ユメロック」とだけ書かれていたら、無印か、ハイパーか、1液DXかを聞いてください。ここまで見たとおり樹脂の世代が違う別製品で、価格差の説明もそこに紐づくはずです。屋根の行に書いてあるなら「ルーフ」の側です。
- 塗回数と下塗りの行を見る公式の標準仕様はどの素材でも下塗り1回+上塗り2回の3工程です。下塗りの製品名(シーラー・フィラー・サビ止め)が素材に合わせて書かれているかを確認してください。
- 色の希望は見積もり前に伝える濃彩色・特殊色は割高になる場合があるとメーカーが明記しています。濃い色にしたいなら、金額が出る前に伝えるのが筋のいい順番です。
- 金額はこのページの設計価格と比べない見積書の妥当性は単価の照合ではなく、内訳の読み方と相見積もりで確かめてください。
よくある質問
ユメロックはシリコン塗料ですか?
公式の分類は「NADシリコンウレタン樹脂塗料」——シリコンとウレタンのハイブリッドです。業界ではシリコン系のグレード帯として扱われることが多いものの、純粋な「シリコン樹脂塗料」と呼ぶより、公式名のまま理解しておくほうが正確です。ハイパーユメロックと1液DXは「リアルハイブリッドシリコン樹脂」で、こちらは新世代のシリコン系です。
ユメロックルーフとは何ですか?
屋根専用の別ラインです(1液ユメロックルーフ/2液のハイパーユメロックルーフ)。適用素材は住宅用化粧スレートやセメント瓦などの屋根材で、外壁用とは製品も価格も別。見積書では外壁の行と屋根の行で製品名が分かれているはずです。屋根塗装そのものの判断は屋根塗装のページへ。
つや消しにできますか?
できます。設計価格表の光沢欄は「つや有り〜つや消し」まで並んでいます。ただしメーカー注記に、つや調整品で仕上げる場合は1回目の上塗りをつや有りで塗る指定や、つや消しでは色によって底つやが残る場合があるとの記載があります。つや選びの考え方は艶のページにまとめました。
ホームセンターやネットで買ってDIYできますか?
通販で流通はしていますが、おすすめしません。弱溶剤型はシンナー希釈・換気・火気の管理が必要で、2液型はさらに硬化剤の計量が加わります。何より外壁の高所作業自体がDIYで守るべき線を超えます。
ロックペイントってどんな会社ですか?聞いたことがないのですが
1952年(昭和27年)設立の塗料メーカーで、事業内容は塗料および接着剤の製造販売。建築用のほか車両用・工業用も手がけています。テレビCMを打つタイプの会社ではないので施主の知名度は高くありませんが、業界向けには設計価格表・カタログ・SDS(安全データシート)を公開している、資料の揃ったメーカーです。「聞いたことがない=怪しい」ではなく、このページで見たように公式資料で素性を確かめられるかで判断してください。
最終確認日:2026年8月22日。出典:ロックペイント「建築用塗料 設計価格表」(2026年4月現在・税抜・同一淡彩色300㎡以上基準の材工共価格・足場代等含まず)、同社公式サイト製品情報、「1液ユメロックDX」カタログ、ユメロック塗装仕様書、会社概要ページ。設計価格は改定される場合があります。実際の見積もりは規模・下地・色により、掲載の設計価格より高くなると考えてください。
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