水性塗料と油性塗料の違い——外壁塗装で変わるのは「もち」ではなく「塗れる場所」です

「水性と油性、どっちが長持ちしますか」。塗り替えを調べていると、必ず一度はぶつかる質問です。ところが検索すると答えが割れている——油性のほうが強い、いや今は水性でも変わらない。しかも多くの記事は、ホームセンターで買うペンキの話と、家一軒を職人が塗る話が混ざったまま書かれています。このページは戸建ての外壁の塗り替えだけに絞ります。先に結論だけ言うと、いまのカタログでは、水性か油性かで「もち」は決まりません。決めているのは樹脂のグレードのほうです。水性と油性で本当に変わるのは、どんな下地に塗れるか臭い。だからこれは、施主が二択で選ぶ話ではなく、家の状態で決まる話です。

このページの内容

結論——「油性のほうが長持ち」は、いまのカタログとは合いません

先に答えを置きます。塗料メーカーの製品ページを開くと、同じ会社の・同じシリコン樹脂のグレードで、水性の製品と溶剤の製品が両方並んで売られています。そして、そこに書かれている期待耐用年数はどちらも同じ年数でした(後半で実際の製品を並べます)。

「油性のほうが強い」という言い方は、昔は正しかった説明です。ただ、その時代の水性塗料と、いまの水性塗料は別物になっています。メーカーの主力そのものが水性側に移っていて、そのことはカタログを数えれば誰でも確認できます

ではどこで差がつくのかというと、樹脂のグレード(ウレタン・シリコン・ラジカル・ふっ素・無機)のほうです。ここは水性・油性の区分とは別の軸で、こちらのほうが年数への影響がはるかに大きい。「水性のシリコン」と「油性のウレタン」なら、もちが長いのはふつう前者です。

このページで、いちばん持ち帰っていただきたい一行

水性か油性かは、注文する側が決める項目ではありません。いまの壁に何が塗られているか、金属部まで同じ材料で回すか、住まいの事情はどうか——それを見てから決まります。だから、この記事を読み終えたあとに使っていただきたい一言は「水性でお願いします」ではなく、「うちの壁に、なぜこれを選んだんですか」のほうです。

現場で使う言葉は、水性・弱溶剤・強溶剤の3つです

ここが、検索して出てくる記事といちばんズレるところです。世間では「水性か、油性か」の二択で語られますが、メーカーの製品分類はふつう三つに分かれています。

戸建ての塗り替えで実際に出てくるのは、左の二つです

水性・弱溶剤形・溶剤形(強溶剤)の違い 塗料は薄めるものによって三つに分かれる。水性は水で薄め、臭いは弱いが無臭ではない。弱溶剤形は塗料用シンナーで薄め、臭いはあるが強溶剤より少なく、旧塗膜の種類を選ばない。溶剤形(強溶剤)は強いシンナーで薄め、臭いが強く、戸建ての外壁の塗り替えで使われることは多くない。 水性塗料 弱溶剤形塗料 溶剤形(強溶剤) 薄めるもの 薄めるもの 塗料用シンナー 薄めるもの 強いシンナー 臭い 弱い。ただし無臭ではない 臭い する。強溶剤よりは少ない 臭い 強い 得意なところ 住宅の外壁。製品数も いちばん多い 得意なところ 前の塗膜を選ばない。 金属部にも回せる 主な出番 工場・鉄骨など。戸建て の外壁では多くない 世間で「油性」と呼ばれているのは、真ん中と右をまとめた言い方です ホームセンターの油性ペンキの臭いの印象が、そのまま真ん中にも貼られています
「油性=あのツンとくる臭い」というイメージは、右の強溶剤のものです。住宅の塗り替えで出てくる油性は、たいてい真ん中の弱溶剤で、臭いの強さは同じではありません。

この三分類は、業界の隠語ではありません。メーカーの製品ページに「水性塗料」「弱溶剤形塗料」「溶剤形塗料」と表示されている、そのままの区分です。見積書に書かれた製品名で検索すれば、施主でも同じ画面を見られます。

メーカーの製品一覧を、実際に数えてみました

「いまは水性が主流です」という説明は、あちこちで書かれています。ただ、その根拠が示されていることはあまりありません。そこで、公開されている製品一覧をそのまま数えました。

エスケー化研の「外装用上塗材(機能性塗料)」の一覧に並ぶ65件(2026年8月20日確認)の内訳は、次のとおりでした。

区分件数備考
水性塗料36件シリコン・ふっ素・無機まで、高耐候をうたう製品もこちらに並んでいます
弱溶剤形塗料19件「クリーンマイルド」など、名前にマイルドが付く系統が中心
溶剤形塗料(強溶剤)7件いちばん少数派です
添加剤3件着色剤・つや消し剤。塗料そのものではありません

もう一社。日本ペイントの「パーフェクトシリーズ」も、外壁用の上塗りに水性の製品と弱溶剤の製品を並べて置いています。名前の付け方に規則があって、頭に「ファイン」が付くほうが弱溶剤タイプ。メーカー自身が、弱溶剤版の紹介文に「材質を選ばずオールマイティに使える」と書いています。

ここから読み取れることは、二つです。ひとつは、高耐候をうたう主力製品が水性側にも普通に並んでいること。「水性は安物」という前提は、いまのカタログとは合いません。もうひとつは、弱溶剤が残っている理由が「もち」ではなく別のところにあるということ——メーカーが挙げている売りは、耐久年数ではなく下地を選ばないことのほうでした。

この数字は、ご自身で確かめられます

数え方は単純で、メーカーの製品一覧ページを開き、各製品に付いている「水性塗料/弱溶剤形塗料/溶剤形塗料」の表示を数えただけです。ラインナップは更新されるので、数字は確認した日のものとしてお読みください。出典のページは記事末尾の参考にした情報にリンクを置いています。

同じシリコンで、水性版と弱溶剤版を並べてみる

いちばん分かりやすいのは、同じメーカーの同じグレードで並べることです。エスケー化研の製品ページに公開されている内容から、二つを抜き出します。

水性セラミシリコンクリーンマイルドシリコン
区分水性・一液弱溶剤形・二液
期待耐用年数(メーカー公表)12〜15年12〜15年
薄めるもの清水(水)塗料用シンナーA
塗れる下地コンクリート、モルタル、ALCパネル、スレート板、各種サイディング、活きている旧塗膜など左に加えて鉄部・亜鉛メッキ鋼・アルミニウム・ステンレスなどの金属
メーカーが挙げる売り水性なので溶剤中毒や火災の心配がない弱溶剤なので旧塗膜の種類を問わず密着性が高い

期待耐用年数の欄が、両方とも同じ数字です。この二つを比べるかぎり、水性にしたから短くなるという関係はありません。

いっぽうで、下地の欄ははっきり違います。弱溶剤のほうには金属が入っている。ここが、いまも弱溶剤が選ばれる現実的な理由です。たとえば——前回何が塗られているのか分からない壁外壁と金属部を同じ材料で回したい現場。こういうときに、下地を選ばない側が選ばれます。

数字の読み方について、ひとつだけ

期待耐用年数はメーカーが「次の塗り替え時期の目安」として示している値で、地域・立地・方角で変わるとメーカー自身が注記しています。試験室の条件と、あなたの家の南面は同じではありません。カタログの年数をどう読むかは塗料の種類のページに詳しく書いています。また、ここに挙げたのは1社の2製品の例です。製品ごとに数値は違いますし、他社では別の並びになります。

臭いの話——水性は「無臭」ではありません

実務者に取材して、いちばん「そこは正直に書いてほしい」と言われたのがここでした。

水性塗料にも臭いはあります。シンナーとは種類の違う独特の匂いで、これが苦手だという人はいます(この記事のもとになった取材に応じた実務者本人が、その匂いは苦手だと言っています)。つまり「水性なら臭わない」ではなく、「溶剤よりはマシ」が正確な言い方です。

ですから、営業の説明が「水性なので臭いはまったくしません」で止まっていたら、そこは一段割り引いて聞いてください。逆に「水性でも多少は匂います。ただ弱溶剤よりは軽いです」と言う会社のほうが、現場を知っています。

臭いのピークは、中塗り・上塗りとその乾燥のあいだの数日です。洗濯物や窓をいつ閉めることになるのかを含め、工事中の暮らしは工程と工期のページにまとめてあります。

臭いに事情がある方は、契約前に言ってください

在宅で仕事をしている、赤ちゃんやペットがいる、体質的に匂いがつらい——それは塗料を決める前に伝えていい条件です。工事が始まってからでは、選べるものが限られます。そして念のため書いておくと、水性を選ぶことは妥協ではありません。前の章のとおり、水性側にも高耐候の主力製品が並んでいます。

鉄部や付帯部は、油性じゃないとダメ?

「外壁は水性でいいけれど、鉄の部分は油性じゃないと」。よく言われる説明で、方向としては外れていません。ただ、必ずそうだ、とまでは言えなくなっています。

同じメーカーの鉄部用のラインナップを見ると、さび止めのなかに水性の製品が並んでいます(一液タイプの水性さび止めが複数あります)。いっぽうで、鉄部用の上塗りには弱溶剤の二液型が多く残っています。つまり「鉄部=必ず油性」でもないし、「外壁と同じ材料でひとまとめ」でもない、というのが実際のところです。

そしてここでも、選ぶのは施主ではありません。さびの出かた、下地の金属の種類、前に何が塗られているか——見なければ決まらないからです。施主の側で見ておくと役に立つのは、材料そのものより「付帯部の行が見積書にあるか」のほうです。雨樋・破風・軒天・水切り・雨戸といった部分は、安い見積もりでいちばん省かれやすい場所です。その理由と確認のしかたは軒天・破風・雨戸の塗装に書いています。

見積書のどこを見れば、水性か油性か分かるか

ここは、施主が自分で確かめられます。手順は二つだけです。

①見積書に製品名が書かれているかを見る。「シリコン塗料 一式」ではなく、メーカー名と製品名が書かれていること。②その製品名で検索し、メーカーの製品ページを開く。ページの頭に「水性塗料」「弱溶剤形塗料」「溶剤形塗料」の表示があります。ついでに、期待耐用年数と塗れる下地も同じページに載っています。

名前から当たりをつけることもできます。頭に「水性」と付いていればそのまま水性。「マイルド」「ファイン」が付く系統は弱溶剤であることが多い。ただしこれは手がかりであって、最後は製品ページで確認してください。

  • 製品名外壁の上塗りは、どのメーカーの何という製品ですか?ここが「シリコン一式」で止まる見積もりは、そもそも他社と比べられません。製品名が出れば、水性か弱溶剤かも、グレードも、施主が自分で確認できます
  • 選んだ理由うちの壁に、なぜこの製品を選んだんですか?壁を見て決めた会社なら、前の塗膜の状態や金属部の有無を挙げて答えます。「こちらのほうが良いので」で止まる説明なら、もう一歩聞いてください
  • 付帯部雨樋や破風には、何を塗りますか。外壁と同じ製品ですか?部位によって材料が変わるのは普通のことです。答えられるかどうかが見どころで、施主が製品を指定する必要はありません

複数社に出してもらうときは、製品名まで書いてもらった見積書どうしを並べると比較が一気に楽になります。条件をそろえて比べる手順は業者選びガイドにまとめました。

施主が言っていいこと、言わなくていいこと

調べ込んだ方ほど「水性でお願いします」と言いたくなります。ただ、それは壁を見ていない指定になってしまいます。線引きは、こう考えてください。

言っていいこと(生活の事情)言わなくていいこと(材料の指定)
臭いを抑えたい。在宅で仕事をしている/赤ちゃん・ペットがいる「水性でお願いします」「油性のほうが長持ちすると聞いたので油性で」
何年くらいもたせたいか(次の塗り替えまでの考え方)グレードの名指し(シリコンで、ふっ素で、と決め打ちすること)
予算の上限と、どこにお金をかけたいか希釈率や工程の指示

左は、業者の側からは知りようのない情報です。伝えるほど提案が合ってきます。右は、壁を見た人が決めたほうがうまくいくところ。調べた知識は、指定に使うより質問に使うほうが効きます——具体的な聞き方は業者選びガイドにまとめました。

よくある質問

油性で塗ってある壁に、水性を塗れますか?

「前が油性だから、次も油性」と決まっているわけではありません。旧塗膜との相性は、上塗りだけでなく下塗り(シーラー・プライマー)で調整するものだからです。ただし、前に何が塗られているか分からない壁では、下地を選ばない弱溶剤が選ばれやすい——これが前半で書いた話です。判断は現地を見た業者の領分で、施主が心配して指定する必要はありません。

水性塗料と油性塗料を、混ぜて使えますか?

混ぜません。薄めるものも製品ごとに指定されていて(水性なら水、弱溶剤なら指定の塗料用シンナー)、その指定どおりに薄めることが施工品質そのものです。ついでに言えば、二液型の塗料は現場で主剤と硬化剤を混ぜて使います。この配合が施工の良し悪しに直結する話は塗料の種類のページで扱っています。

ホームセンターで売っている油性ペンキと同じものですか?

別物と考えてください。家庭用の油性は強い溶剤で薄めるものが多く、あの臭いの記憶が「油性=きつい」という印象をつくっています。住宅の塗り替えで使われる油性は、たいてい弱溶剤のほうです。DIYで自分で塗る場合の選び方はこのサイトの守備範囲外なので、家庭用塗料メーカーの案内をご覧ください。

水性のほうが安く済みますか?

材料の単価には差がありますが、見積もりの総額に効いてくるのは、そこではありません。金額を大きく動かすのは、足場・下地処理・付帯部をどこまでやるか、そして樹脂のグレードです。塗料代の差額を気にするより、見積もりの内訳のどこにお金が乗っているかを見たほうが、確実に効きます。

結局、うちはどっちで塗られるんでしょうか?

戸建ての外壁の塗り替えでは、水性か弱溶剤のどちらかになるのが一般的です。どちらになるかは、前の塗膜・下地・金属部の有無・住まいの事情で決まります。見積書に製品名が書いてあれば、その場で確認できます。書かれていなければ、それ自体が最初の質問になります。

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参考にした情報

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