外壁塗装の臭い——「水性なら大丈夫」とは限りません。そのうえで、やめないでください

工事が近づくと、多くの方が最後まで気にするのが臭いです。検索すると「水性塗料なら臭いはほとんどありません」という説明が並びます。ただ、このページは先に正直なほうを書きます——水性を選んでも、臭いが残ることはあります。実務者からも「結構かかる」と聞いていますし、メーカー自身が「低臭」を特長として掲げた製品を出していることが、その裏返しの証拠でもあります。そのうえで、このページのもうひとつの結論はこれです。臭いを理由に、塗装そのものをやめないでください。

このページの内容

実務者の話——「水性だったと思うけど、かなり残った」

このサイトの取材に応じている実務者に、臭いのことを聞きました。返ってきたのは、自分の実家を塗り替えたときの話です。

そのまま書きます

水性だったと思うけど、かなり匂いが残った」——そして、臭いは「結構かかる」。すぐに消えるものではない、という言い方でした。

使われた塗料の種類を確かめたうえでの話ではないので、断定はできません。ただ少なくとも、「水性を選んだから何も感じなかった」という経験ではなかった、ということです。

この話を裏づける事実が、メーカー側にもあります。日本ペイントには、製品の特長として「低臭:特殊エマルションの採用により、塗装中の臭気が少なく、塗装後も嫌な臭いが残りません」とうたった塗料があります。

この一文の意味を、逆から読んでみてください。わざわざ「低臭」を売りにした製品があるということは、そうでない製品には臭気があるということです。そして「塗装後も」と書かれているのは、塗装後にも臭いが残る場合があるからです。メーカーは正確に書いています。「水性だから臭わない」と言い切っているのは、たいてい塗料を作っていない側です。

水性と油性で臭いがどう違うのか、現場で使われる「弱溶剤」という区分の話は水性塗料と油性塗料の違いにまとめました。結論だけ言えば「水性のほうが軽い。ただし無臭ではない」です。

取材のなかで、いちばん率直だった言葉も書いておきます。「塗ってるんだから、臭いのは当たり前。板金屋の塗装ブースに入って"臭いです"と言っているのと同じ」

身も蓋もない言い方ですが、工事の性質としてはそのとおりです。臭いをゼロにする方法はありません。塗料を塗って乾かす作業をしている以上、そこは動かせない。できるのは「いつ強くなるかを知って、その日の過ごし方を変えること」だけです。このページの残りは、そのための話です。

いつからいつまで臭うのか

臭いが強くなるのは、塗料を塗っている日と、その塗料が乾いていくあいだです。工事全体で言えば、下塗り・中塗り・上塗りが続く後半にあたります。工程のどこで何が起きるかは工程と工期のページに日ごとの流れを書きました。

「何日で消えますか」という質問には、このサイトでは日数を書きません。塗料の種類、気温、風向き、家の建ち方、部屋の換気の仕方——変わる条件が多すぎて、根拠のある数字にならないからです。「塗り終わったその日にゼロになる」ものではない、とだけ言っておきます。実務者の言葉を借りれば「結構かかる」。

気になるなら、記録を取ってください

いつ、どの部屋で、どのくらい感じたか。メモでも構いません。体調に不安が出た場合、その記録がそのまま相談の材料になります。工事側に伝えるときも、「臭いがひどい」より「昨日から北側の寝室でずっと感じます」のほうが、対応が具体的になります。

「体に悪いものが出ているのでは」——ホルムアルデヒドの話

臭いが続くと、健康への影響が気になってきます。とくに名前が挙がりやすいのがホルムアルデヒドです。ここは事実を確認しておきます。

まず、いまの外壁用塗料は対策された製品が一般的です。メーカーの製品ページを開くと、仕様欄に「ホルムアルデヒド放散等級 F☆☆☆☆」と書かれています(水性・弱溶剤どちらの製品でも見られます)。

このF☆☆☆☆という等級について、国土交通省は建築基準法のシックハウス対策の説明のなかで、「F☆☆☆☆等級のものは"規制対象外建築材料"であり、居室の内装の仕上げや天井裏等に、本規制を受けることなく用いることができる」としています。いちばん制限のない等級だということです。

つまり、こう考えられます

「臭う=ホルムアルデヒドが出ている」とは限りません。塗料には溶剤や樹脂に由来する匂いがあり、それは等級とは別の話だからです。とはいえ気になるなら、確かめる方法があります——使う塗料の製品名を聞いて、メーカーのページで放散等級の表示を見る。それだけです。なお、シックハウス対策の規制が直接かかるのは居室の内装に使う建材で、外壁の塗料はその範囲とは異なりますが、メーカー側が等級を表示しているので施主でも確認できます。

そのうえで繰り返します。体調に不安がある場合の判断は、医師に相談してください。ここで書けるのは、確認の手順までです。

部屋に入ってくる臭いへの対処

外を塗っているのに、なぜ室内が臭うのか。家は、思っているより外とつながっているからです。順に見ていきます。

入り口起きていることできること
窓・サッシ塗る面の窓は養生(ビニールで覆う)されるので、そもそも開けられない日がありますどの面をいつ塗るかを工程表で確認し、反対側の窓を開ける日を作る
換気扇・レンジフード室内の空気を外に出す=そのぶん外から空気が入ってきます。臭いを引き込むことがあります塗っている面の近くに給気口がある場合は、使うタイミングをずらす
24時間換気常時運転が前提の設備です(厚生労働省の資料でも、常時の計画機械換気は24時間の連続運転が確保できるものと定義されています)自己判断で止めないでください。気になる場合は、工事側と相談して扱いを決める
エアコン配管まわりや室外機の扱いは工事の内容によって変わります使えない日があるかを着工前に聞いておく(夏冬は特に)

そして、いちばん確実な対処は身も蓋もない話です。臭いの強い日は、家にいない。日中だけ外出する、実家に行く、短期で宿を取る——工程表さえもらっていれば、その日は事前に分かります。工事中の暮らし全般は工事中の暮らしのページにまとめています。

それでも、臭いを理由にやめないでください

ここが、このページでいちばん伝えたいところです。

臭いがつらいと、「じゃあ塗装はやめておこうか」という考えが出てきます。気持ちは分かります。ただ、それは家にとって高くつく判断になりかねません

外壁の塗膜は、見た目のためだけにあるのではありません。雨から家を守っている層です。とくにモルタルのように継ぎ目のない壁では、防水のほとんどを塗膜が背負っています。その層が痩せたまま年数が経つと、壁が水を吸う状態に近づき、やがて塗装では戻らない段階——下地の補修、あるいは張り替え——に移っていきます。そうなれば、費用は塗装の比ではありません。

実務者の言い方

臭いを理由に塗るのをやめるのは、家の資産価値を潰してしまう可能性があるからおすすめしない」。数日から数週間の不快と、数年後に増える工事費を天秤にかける話だ、ということです。

ただし念のため書き添えます。体調に影響が出ている場合は別です。我慢を推奨する話ではありません。ただ、その場合に取るべき道も「工事をやめる」ではありません。臭いの強い期間だけ、別の場所で過ごす——実家、親族の家、短期の宿。実務者に聞いても、答えは同じでした。「体調に出ているなら、しばらく別のところに住むしかない」。工事は数日から数週間で終わりますが、塗らなかった壁はそのあとずっと残ります。

あわせて、工事の条件そのものを変えることもできます——次の章がそれにあたります。

塗らないまま進めるとどこから話が変わるのかは、外壁塗装は意味ない?しないとどうなる?で金額の面から書いています。

契約前に伝えれば、選べることがあります

臭いに事情がある——在宅で仕事をしている、小さな子どもがいる、体質的につらい。それは、塗料を決める前に伝えていい条件です。伝えれば、選べるものがあります。

  • 材料臭いを抑えたいので、水性で検討できますか性能を諦めて水性にする、という関係ではありません。高耐候をうたう主力製品は水性側にも並んでいます(水性と油性の違い
  • 工程塗る面の順番を、こちらの都合に合わせられますか寝室側を先に済ませる、在宅の日を避ける——工程は相談できる余地があります
  • 日程臭いがいちばん強いのは何日目ですか工程表があれば分かります。その日を空けておくだけで、体感はかなり変わります

臭いは、始まってしまうと打てる手がかなり限られます。効くのは、契約の席で言う一言のほうです。ほかに決めておくべきことは契約前チェックのページに一覧があります。

近所の工事の臭いで困っているとき

自分の家ではなく、隣や向かいが工事中という場合。窓口になるのは施工会社のほうです。連絡先は現場の掲示や、工事前に配られた案内に載っています(手元にない場合は、現場の職人に責任者の連絡先を聞けば足ります)。

言い方は、苦情ではなく確認の形が通ります。「お世話になります。お隣の◯◯です。臭いが出る工程は、いつごろまで続きますか」。終わりが分かるだけで、外出や洗濯の予定を自分で組めます。角の立たない伝え方は工事中の暮らしのページにも書きました。

よくある質問

臭いは何日で消えますか?

日数はお答えできません。塗料の種類・気温・風向き・家の造りで変わるからです。根拠のない数字を書かないのがこのサイトの方針なので、ここは正直に「条件によります」と書きます。目安が知りたい場合は、使う製品名を業者に聞いて、メーカーの乾燥時間の記載を見るのが最も確かです。

洗濯物に臭いがつきますか?

外に干せば、その可能性はあります。そもそも養生や飛散の関係で、外に干せない日があります。いつからいつまで干せないのかは工程表で分かるので、着工前に確認して、部屋干しやコインランドリーの予定を組んでおくのが現実的です。

妊娠中です。赤ちゃんやペットがいます。大丈夫でしょうか?

ここで断定的なことは書きません。臭いや化学物質がどう影響するかは体質や状況によって違い、判断できるのは医師や獣医師だけだからです。工事を決める前に、かかりつけに相談してください。そのうえで、臭いの少ない材料を選ぶ、工程を調整する、その期間だけ滞在先を変える——選択肢はあります。

部屋の中が臭います。今すぐできることは?

塗っていない面の窓を開ける、空気の通り道を作る、臭いの強い時間帯だけ外出する。24時間換気は自己判断で止めない——止めるべきかどうかは工事側に相談してください。それでもつらい場合は、我慢せず現場の責任者に伝えてください。工程を組み替えられることがあります

賃貸に住んでいます。建物の工事で臭いがつらいのですが。

まず管理会社か大家さんに連絡してください。工事を発注しているのは建物の所有者側なので、入居者からの申し出はそこに集約されます。工程の説明を受けられれば、いつまで続くかが分かります。

逆に物件を持っている側の方は、入居者への告知の仕方や苦情の先回りをアパートの外壁塗装のページにまとめました。

あわせて読みたい

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差し入れ・お茶出し

工事が始まってからの気づかい。しなくて大丈夫です

参考にした情報

  • 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材(水性塗料でも臭いが残った実体験、臭いが続く期間の実感、塗装をやめることのリスク)
  • 日本ペイント株式会社 建築用塗料の製品情報——「低臭」を特長として掲げた製品の記載(塗装中の臭気および塗装後の臭いに関する表現)(2026年8月21日確認)
  • 厚生労働省 シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 資料——常時の計画機械換気は24時間の連続運転が確保できるものを指す旨の記載
  • 国土交通省「建築基準法に基づくシックハウス対策について」——規制を受ける化学物質(クロルピリホス・ホルムアルデヒド)、F☆☆☆☆等級は「規制対象外建築材料」であり居室の内装の仕上げ等に本規制を受けることなく用いることができる旨(2026年8月21日確認)
  • エスケー化研株式会社 製品情報——外装用上塗材の仕様欄における「ホルムアルデヒド放散等級 F☆☆☆☆」の表示

臭いの感じ方には個人差があります。体調に影響が出ている場合は、我慢せず医師にご相談ください。このページは一般的な考え方の整理であり、健康上の助言を行うものではありません。最終確認日:2026年8月21日。