モルタル外壁の塗装——継ぎ目のない一枚壁だから、塗膜が防水のほぼすべてです

モルタルの外壁は、板を張って作る壁ではありません。下地の上に材料を塗り重ねて、職人が面として仕上げた壁です。だから継ぎ目がない。サイディングのように目地のシーリングが切れる心配がない代わりに、雨を止める役目のほとんどを表面の塗膜が背負っています。この記事では、ひび割れとの付き合い方、弾性塗料の話、リシンやスタッコといった仕上げの種類まで、モルタルの壁に特有のところだけを扱います。

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モルタルとサイディングは、壁の成り立ちが違います

外壁の話は塗料の種類から始まりがちですが、モルタルの家では、その前に壁の成り立ちを押さえたほうが早く進みます。モルタルはセメントと砂を練った材料を下地の上に塗り、面としてつくる壁です。板を並べていないので、壁はひとつづきにつながっています。いっぽうサイディングは工場で作った板を張った壁で、板と板のあいだには継ぎ目ができ、そこはゴム状のシーリングで埋めてあります。この違いが、そのまま「雨をどこで止めているか」の違いになります。

同じ「外壁」でも、水を止めている場所が違います

サイディングとモルタルの成り立ちの違い サイディングは板を並べた壁で、板と板のあいだの目地にシーリングが入っている。水の入り口は塗膜と目地の両方にある。モルタルは継ぎ目のない一枚の壁で、目地がないかわりに、雨を止めているのはほぼ表面の塗膜だけになる。 サイディング(板を並べた壁) 板と板のあいだに継ぎ目がある モルタル(継ぎ目のない一枚壁) 壁の面がひとつづきになっている 目地(シーリング) 目地(シーリング) 塗 膜 継ぎ目なし 水の入り口は、塗膜と目地の両方 目地が切れれば、塗膜が無事でも入ります 雨を止めているのは、ほぼ塗膜 切れる目地はない。かわりに逃げ場もない
左は「入り口が二か所ある壁」、右は「入り口は一か所だが、そこがすべての壁」。どちらが優れているという図ではありません。手当てすべき場所が違う、という図です。

サイディングの壁では、板の面が無事でも、目地が切れていればそこから水が入ります。モルタルの壁には、その目地がありません。ここだけを見れば、モルタルのほうが心配ごとの少ない壁です。

ただし裏返しがあります。目地がないぶん、防水を塗膜がほぼ一手に担っているということです。モルタルそのものは水を吸う材料で、素のままでは雨をはじきません。表面の塗膜が痩せてくれば、壁が水を吸う状態にじわじわ近づいていきます。

ですから、モルタルの家の塗り替えは化粧直しではありません。いま雨を止めている層を、作り直す工事です。「塗ってもどうせ見た目だけでしょう」と考えている方には、この外壁ではとくに事情が違うとお伝えしておきます。塗らないまま進めるとどこから話が変わるのかは外壁塗装は意味ない?しないとどうなる?にまとめています。

うちの壁がどちらか分からないとき

少し離れて壁全体を眺めてください。規則正しい継ぎ目の線が縦や横に走っていればサイディング面がひとつづきで、砂粒やコテのパターンが途切れずに続いていればモルタルです。まぎらわしいのはサッシのまわり——ここのシーリングはどちらの壁にもあるので、窓ぎわだけを見て「うちも目地がある」と判断しないでください。分からなければ、現地調査に来た会社に聞けば即答してもらえます。板張りだった場合はサイディング外壁の塗装へどうぞ。

ひび割れは、モルタルという素材の性質です

モルタルの家で、いちばん多く検索されているのがひび割れです。先に性質のほうを書きます。

一枚の壁には、動きを逃がす場所がありません。サイディングの壁は、板と板のあいだのシーリングがわずかな動きを吸収してくれます。モルタルの壁にはその継ぎ目がないので、乾くときの縮み、気温の上下、建物のわずかな動き——それらを壁の面そのものが受けることになります。髪の毛のような細いひび(ヘアークラック)が出てくるのは、施工が下手だったからとは限りません。この素材の性質から来ているものです。

ですから、細いひびを見つけた日に慌てる必要はありません。ひび割れは、恐怖の対象ではなく観察の対象だと考えてください。見るのは太さより、変化と場所です。同じところを同じ角度で撮っておけば、伸びたのか、増えたのかが分かります。

「幅0.3mm以上は構造クラック」は、木造住宅の壁の基準ではありません

業者ブログを読んでいると出てくる説明ですが、国の技術的基準でひび割れのが定められているのは、鉄筋コンクリート造の壁と、基礎です。木造住宅の壁について国が見ているのは幅ではなく、そのひび割れがどこまで届いているか——仕上げの表面で止まっているのか、下地や構造材まで達しているのか——のほうです。実務の目安として業者が幅を使うこと自体は間違いではありませんが、危険度の公的な基準として語られていたら、そこは分けて聞いてください。根拠にした告示の名前と、レベルの分かれ方はチョーキングとひび割れのページで原文の確認まで含めて書いています。

弾性塗料——選ぶのは施主ではありません

モルタルで調べていると、かなりの確率で出てくるのが弾性塗料です。ひび割れに追従する——伸びて、ひびをまたいだままでいられる——ことをうたった塗料や工法があるのは事実です。呼び分けもあって、弾力のある層をつくったうえに仕上げを塗る複層の考え方と、仕上げ材そのものに弾力を持たせる単層の考え方があります。

そのうえで、この記事はどちらが優れているかを書きません。いまの仕上げが何か、ひびがどう出ているか、下地がどうなっているかで向き不向きが変わりますし、そもそも弾性が要らない壁もあるからです。

もうひとつ、知っておくと役に立つ事実があります。弾性塗料は、使う場所を誤ると塗膜が膨れる原因になります。代表的なのが窯業系サイディングのように熱がこもりやすい外壁で、夏の高温で柔らかい塗膜の内側に水蒸気がたまり、風船のように膨れることがあるとされ、一般に避けられています。つまり弾性は「良い塗料」なのではなく、合う下地に使ったときにだけ良い塗料です。モルタルは弾性が使われる代表的な下地ですが、それでも壁の状態次第——ここでも結局、下地を見て選んでいるかに戻ります。

大事なのは、これは施主が指定する話ではないということです。調べ込んで「弾性でお願いします」と伝えても、それは壁を見ていない指定にしかなりません。施主の仕事は指定ではなく、選んだ理由を聞くことのほうです。

聞き方は、これだけで足ります

「うちの壁に、なぜこの工法を選んだんですか」。壁を見て決めた会社なら、ひびの出方や下地の状態を挙げて答えます。逆に「こちらのほうがいいので」で止まってしまう説明なら、もう一歩踏み込んで聞いてください。ぬりごろが業者選びで一貫してお伝えしているのは、「なぜここに、これを塗るのか」を自分の言葉で説明できるかどうかという一点です。

仕上げの種類は「見た目」と「塗り替えやすさ」の話

モルタルの壁は、表面の仕上げ方でずいぶん見た目が変わります。名前を知らなくても困りはしませんが、知っていると業者との会話が早くなります。現地調査で「これはリシンですね」と言われたときに、話が止まりません。

呼び名見た目塗り替えのときに効いてくること
リシン細かい砂粒をまいたようなザラザラ。ツヤの少ない質感です表面が細かく波打っているぶん、平らな壁より塗料を使います。凹みに汚れが留まりやすい面も
スタッコ厚みのある大きめの凹凸。重厚な見え方になりますさらに塗料を食います。凹の奥まで塗料が行き渡るかは、職人の手間のかけ方次第です
吹き付けタイル(玉吹き)玉状の模様が並ぶ仕上げ。ツヤのある仕上がりも多く見られます模様の上から塗るので、模様そのものは残ります。ツヤは色と一緒に決める話になります
ジョリパットなどの意匠仕上げコテ跡やパターンで表情をつけた壁塗り直せます。ただし同じ表情に戻るとは限らないので、仕上がりのイメージを先にすり合わせます

右の列に共通しているのは、凹凸が深いほど塗料を食うという素直な理屈です。同じ広さの壁でも、平らな壁とスタッコの壁とでは、要る塗料の量が違います。だから見積もりの数量がご近所と違っていても、それだけでおかしいとは言えません。逆にいえば、仕上げの種類を見ずに広さだけで出してきた見積もりは、あとから話が変わりやすいということでもあります。

そして、この項目でいちばんお伝えしたいのは最後の行です。ジョリパットのような意匠仕上げの壁も、あきらめなくて構いません。こうした壁への塗り替えに対応するとした塗料は、メーカーから出ています。「特殊な壁だから塗れないと言われた」という話を見かけますが、それは塗れない壁だからではなく、扱った経験のある会社かどうかの問題であることが少なくありません。色やツヤの選び方は色選びのページにまとめています。

見積もりで、金額より先に見る場所

モルタルの見積書で確かめておきたいところを、三つに絞ります。どれも、聞けば答えが返ってくる質問です。

  • ひび割れひび割れの処理は、どの行に入っていますか。どのひびを、どう処理しますか?壁の面を塗る行とは別に、下地を手当てする行があるはずです。「どこのひびの話か」まで答えられる会社は、壁をきちんと見ています
  • 下塗り下塗りは何を使いますか。製品名を教えてくださいモルタルは塗料を吸い込みますし、凹凸のある仕上げでは下塗りの選び方が仕上がりを左右します。施主が製品を指定する必要はありません。製品名がすぐ出てくるかどうかが見どころです
  • 乾燥洗ったあと、乾かす時間は取りますか。工程表のどこに入っていますか?モルタルは水を吸います。洗ったその翌日に塗り始める段取りになっていないかは、工程表を見れば施主でも分かります

粉と、汚れと、北面のコケ

モルタルの壁でも、触れば手に白い粉がつくことがあります。チョーキングです。壁の素材が違っても、いちばん外側にあるのは塗膜なので、塗膜が寿命に近づけば同じことが起きます。粉が出ていたときにどう動けばいいかはチョーキングのページにまとめてあります。

汚れのほうには、モルタルならではの事情があります。リシンやスタッコのように凹凸のある仕上げは、平らな壁にくらべて汚れが留まりやすい面があります。加えて、日の当たりにくい北面や樹木が近い壁は、緑がかった汚れの出やすい場所です。洗えば落ちる汚れなのか、塗膜そのものが弱っているのかは見分けが要るので、そこはコケ・カビ・藻のページで扱っています。

よくある質問

モルタルの上から、サイディングを張れますか?

いまの壁の上から新しい外壁材をかぶせる工事(カバー工法)という選択肢はあります。ただし順番として、いまの壁と下地が、その重さを受けられる状態かどうかが先に来ます。ひび割れの出かたや家の作りによって、できる場合とできない場合があるからです。塗装で済む段階なのか、別の工事を考える段階なのか——その分かれ目は外壁塗装は意味ない?しないとどうなる?で扱っています。

ひび割れを、自分でコーキングで埋めていいですか?

触る前に、写真を撮ってから相談してください。理由は「素人がやると失敗するから」ではありません。埋めてしまうと、業者が壁の状態を読めなくなることがあるからです。そのひびがどこまで届いているのかは、開いたままのほうが分かります。市販の材料でふさいだ場所は、塗り替えのときに取り除く手間が加わることもあります。手を出したくなったら、まず写真。それだけで、あとの選択肢が減らずに済みます。

築何年くらいで塗り替えですか?

モルタルの家でこの質問が多いのは、ひび割れが目に入るからだと思います。ただ、年数では決まりません。細いひびが早い時期から出ていても、塗膜が元気なら急ぐ話にはなりませんし、逆に新しい家でも剥がれや膨れが出ていれば扱いが変わります。判断の材料になるのは壁に出ている症状のほうで、急ぐ症状と急がない症状の分かれ目はチョーキングとひび割れのページに書いています。

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粉が出たとき、ひびが気になるとき。国の基準は原文まで確認しています

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塗装で済む段階か、別の工事の話に移るか。その分かれ目

コケ・カビ・藻

北面の緑がかった汚れ。洗って落ちるものと、落ちないもの

色選び

凹凸のある壁は、同じ色でも見え方が変わります

業者選びガイド

「なぜこれを塗るのか」を説明できる会社の見分け方

参考にした情報

  • 塗料メーカー各社が公開している下塗材・上塗材の適用下地および塗装工程に関する資料
  • 意匠仕上げの外壁への塗り替えに対応するとしてメーカーが公開している製品情報
  • 住宅紛争処理の参考となるべき技術的基準(平成12年建設省告示第1653号/最終改正 平成18年国土交通省告示第308号)——木造住宅の壁の判定の詳細はチョーキングとひび割れのページで扱っています
  • 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材

記載の内容は一般的な考え方です。ご自宅の外壁の仕上げの種類、ひび割れの状態、どの工法が向くかの判断は、建物を直接見た業者にご確認ください。最終確認日:2026年8月20日。