ジョリパットの塗り替え——「普通の塗料で」を選ぶと、次の一手が減ります

ジョリパットは塗料ではなく、塗り壁材です。塗り替えのときにいちばん取り返しがつかないのは、色でも金額でもなくどの材料で塗るか。メーカーであるアイカ工業の改修用トップコート「ジョリパットフレッシュ JQ-800」には、施工できない下地としてシリコン系塗膜・フッ素系塗膜が明記されています。いま一般的な外壁塗料で塗ると、次の塗り替えのときに、風合いを戻す材料が使えなくなるということです。この順番を、知らないまま迎えないでください。

このページの内容

ジョリパットは「塗料」ではなく塗り壁材です

ジョリパットはアイカ工業の塗り壁材で、公式サイトによれば1975年の発売から約50年使われてきた製品です。コテやローラー、吹付けで模様(パターン)をつけながら仕上げるもので、平らに塗る一般的な外壁塗料とは、そもそも作り方が違います。

だから塗り替えのときに起きる問題も、サイディングやモルタルの塗り替えとは別物になります。守りたいのは塗膜ではなく、その凹凸と質感だからです。逆に言えば、質感にこだわりがないなら、話はぐっと簡単になります。どちらの立場を取るかを先に決めると、業者との話が噛み合いやすくなります。

なお、ジョリパットの下地はモルタルであることが多く、ひび割れの考え方はモルタル外壁のページと共通です。

いちばん大事な一行——シリコンやフッ素で塗ると、次が減る

アイカ工業が出している改修用トップコート「ジョリパットフレッシュ JQ-800」は、公式サイトに「ジョリパットの風合いを残したまま色替えできます」と書かれた材料です。塗り替えても砂壁調の質感が残る、いわば本命の選択肢になります。

その同じページに、こう書かれています。

メーカーが公開している「施工できない下地」

シリコン系塗膜・フッ素系塗膜・単層弾性塗膜・タイル・しっくい・土壁・塗装サイディング・鉄(アイカ工業「ジョリパットフレッシュ JQ-800」概要・特長より)

ちなみに施工できる下地は、ジョリパット・ジョリパットアルファ・ジョリパットネオ・ジョリコート・アクリル系塗膜・ポリエステル系塗膜・アクリルリシン・弾性リシン・シリカリシンなど。

いま戸建ての外壁塗装でよく使われるのはシリコン系とフッ素系です。つまり——今回ふつうの外壁塗料で塗り替えると、次の塗り替えのときに、風合いを戻すこの材料が選べなくなる。壁の側は変わっていないのに、選択肢だけが減ります。

これは「普通の塗料で塗ってはいけない」という話ではありません。片道の判断だと知ったうえで選ぶか、知らずに選ぶかの違いです。塗り替えは十数年に一度しかありません。次の一回まで含めて決めてください。

塗り替えの道は3つ。メーカーが用意しています

アイカ工業は改修の工法を「プレミアムリフレッシュシステム」として3タイプに整理して公開しています。業者から出てくる提案は、たいていこのどれかに当てはまります。

TYPE 1:風合いを残すTYPE 2:テクスチャーを生かすTYPE 3:質感を変える
公式の説明旧塗膜のジョリパットの風合いを生かしたトップコート。砂壁状でマットな質感を再現できる改修工法旧塗膜のテクスチャーを生かした改修工法。用途に合わせた様々なトップコートテクスチャーが変更でき、様々なジョリパットシリーズから選べるこだわりの改修工法
代表的な材料ジョリパットフレッシュ JQ-800/フレッシュクール JQ-810(遮熱)/フレッシュ∞ JQ-820(高耐候)水系アクリルウレタン樹脂 JC-650/水系アクリルシリコーン樹脂 JC-850・860・870ジョリパットアルファ JP-100/ジョリパット∞ JQ-500/ジョリパットネオ JQ-650・JQ-700
向く人今の見た目が気に入っていて、色だけ変えたい・きれいに戻したい質感は残したいが、機能や価格で材料を選びたい模様そのものを変えたい/傷みが進んで表面を作り直す必要がある

下塗りはどのタイプでもセーフシーラー JS-800 が基本で、下地に微細なクラックがある場合は微弾性フィラーのセーフフィラー JM-600 を使うとされています。TYPE 3では下地調整にカチオンフィラー JM-550 が入ります。見積書に「シーラー」しか書かれていないのに壁にひびがある場合は、この選択について聞いてみてください

アイカ以外にも、受け皿はあります

ここは、塗装会社のサイトではあまり並べて書かれない部分です。ジョリパットの塗り替えに使える材料は、アイカ工業のものだけではありません。

日本ペイントは公式のよくある質問で「ジョリパットのような塗り壁仕上げの塗り替えにおすすめの塗料はありますか?」という問いに対し、「砂壁状や土壁状の高意匠塗材の意匠性をそのままに仕上げられるインディフレッシュセラ」と回答しています。エスケー化研には石材調の「サンドフレッシュSi」があります。

製品メーカー仕上がり塗り方メーカー公表の価格
ジョリパットフレッシュ JQ-800アイカ工業砂壁調の風合いを維持する改修用トップコートカラー数127色
インディフレッシュセラ日本ペイント高意匠塗材の質感を損なわないつや消し仕上げはけ・ウールローラー(吹付けは不適)淡彩〜濃彩色材工3,520円/㎡(3工程・下塗りが水性カチオンシーラーの場合)
サンドフレッシュSiエスケー化研石材調(天然石・セラミック着色骨材)/艶消しローラー標準色21色改装仕様6,620円/㎡(下塗材SKカラーサーフ)

表の「—」は、メーカーが公式サイトで公表していない項目です(推測で埋めていません)。そして、この平米単価をそのまま自分の家に当てはめないでください。いずれも原則300㎡以上を基準とした材工共の設計価格——つまり、まとまった面積を塗る前提の数字です(サンドフレッシュSiは下地調整費を含みません)。戸建て1棟の外壁は、ふつうこの基準に届きません。面積が小さいほど、段取りや運搬にかかる手間が少ない面積で割られるので、同じ材料でも実際の平米単価は上がる方向に振れます。塗料を扱ってきた実務者も「それなりの規模で塗ったときの単価だから、戸建てならもう少し高くなるのでは」と言います。ここでの使い道は「材料によって単価の水準が違う」という事実を知ることだけで、この数字を物差しに見積もりの高い・安いを判定するものではありません。総額の考え方は見積もりの内訳のページ、概算の帯は費用シミュレーターで見てください。

注意したいのは、サンドフレッシュSiは石材調だということです。砂壁調のジョリパットとは仕上がりの表情が変わります。悪いという意味ではなく、上の表でいえばTYPE 3寄りの選択——質感を変える提案だと理解して見てください。「ジョリパットの塗り替えです」という言葉の下に、風合いを残す提案と変える提案が同居しています。

「塗り替えたら安っぽくなった」の正体

ジョリパットの塗り替えで後悔として語られるのは、たいてい次の2つです。

  • つやが出てしまった塗り壁の質感は、光を吸うマットな表面とセットで成立しています。つやのある塗料で塗ると、同じ模様でも別の壁に見えます。だから塗り壁向けの改修材は、揃ってつや消しです(インディフレッシュセラは公式スペックの「つや」欄がつや消し、サンドフレッシュSiは艶消し)。つやの選び方のページもあわせてどうぞ。
  • 凹凸が塗料で埋まった模様の谷に塗料が溜まれば、当然、模様は浅くなります。これは腕の問題だけではなく材料の粘りと塗る回数の問題でもあります。日本ペイントのカタログは、既存の模様ごとに使用量の目安を分けていて、フラット・ラフで0.30〜0.40kg/㎡、砂壁風・ウェーブでは0.40〜0.50kg/㎡とされています。凹凸が深い壁ほど塗料を食う——これは金額にも仕上がりにも効いてきます。

塗料の販売や調色に携わった実務者に聞くと、「普通の塗料で塗ったら最悪。ダサい仕上がりになる」という言い方をします。実際にその失敗例を見たわけではない、とも言っていました。ただ、メーカー各社が塗り壁専用の改修材をわざわざ用意していること自体が、一般の外壁塗料では同じ表情にならないことの答えになっています。

色は自由に決まるとは限りません

ここは製品によって扱いが分かれます。「何色でも作れる」と思って色を決めないほうがいい、というのが結論です。

  • 骨材で色を出すタイプ=用意された色から選ぶサンドフレッシュSiは天然石やセラミックの着色骨材で色をつくるため、公式の色は標準色21色です。石の色が仕上がりの色になるので、自由な配合にはなりません。
  • 顔料で色を出すタイプ=調色できるインディフレッシュセラのカタログには、注意事項として「調色には必ず当社専用の原色をお使いください」と書かれています。つまり調色を前提にした材料です。ただし同じカタログには冴えたイエロー・グリーン系は共色を下塗りしてから塗る(隠ぺいしにくい)、濃彩色や冴えた原色は塗膜を強く擦ると色落ちすることがあるという注意も並びます。
  • ジョリパットフレッシュは127色アイカ工業の公式サイトはJQ-800のカラー数を127色としています。色見本帳から選ぶ形が基本です。

濃い色・鮮やかな色が高くなったり、扱いに注意が要ったりするのは塗り壁に限りません。色の決め方そのものは色のページにまとめています。色は現物の見本で決めてください。画面の色は当てになりませんし、塗り壁は凹凸の影が入るぶん、平らな色見本より濃く見えます。

下地が弱っているとき、現場は何をするか

長く経った塗り壁は、表面が粉っぽくなったり、水を吸い込みやすくなっていたりします。この状態のまま上塗りをしても、塗料が下地に吸われて仕上がりが揃いません。

塗料の販売に携わっていた実務者は、「下地が良くなければ、水性シーラーで吸い込みを止めてから塗る」という提案をしていたと言います。これはメーカーの指示とも一致します。日本ペイントのカタログにはこう書かれています。

塗り替え時のシーラーについて(日本ペイント インディフレッシュセラ カタログ)

「塗り替え時のシーラーは、ウルトラシーラーⅢまたは水性カチオンシーラーをご使用ください。溶剤系シーラーのご使用は、旧塗膜の種類によっては溶剤膨れを発生させることがあります」

あわせて、風化面・吸込みの著しい下地では浸透性シーラーを使い、使用量は濡れ感が出るまでを目安とし、吸い込む箇所は増し塗りするとも書かれています。

「水性を使う」には理由があるということです。強い溶剤は古い塗膜を溶かして膨れを起こすことがある。水性・油性の違いは水性と油性のページにまとめました。

そしてもうひとつ。日本ペイントのカタログは「既存塗膜のはく離個所は、既存塗膜の塗装仕様でパターン合わせを行ってください」としています。剥がれた部分は、埋めるのではなく模様を合わせて直す——ここを省くと、あとから見て一目で分かる補修跡になります。ひび割れの見方はチョーキングとひび割れのページを参考にしてください。

見積書の、どこを見るか

ここまでの話は、全部見積書1枚で確認できます。見るのは金額ではなく商品名と品番です。

  • 材料上塗りに使う材料の商品名と品番を書いてもらえますか?JQ-800、JP-100、インディフレッシュセラ、サンドフレッシュSi——名前が入っていれば、風合いを残す提案か変える提案かが自分で確かめられます。「塗り壁用塗料 一式」だけでは判断できません
  • 方向この提案だと、今の質感は残りますか、変わりますかTYPE 1・2・3のどれなのかを、言葉で確認する質問です。石材調の材料なら表情は変わります。それが悪いのではなく、変わると知って選ぶことが大事です
  • 下地下塗りは何を使いますか。ひび割れがある面はどう扱いますかシーラーか、微弾性フィラーか。メーカーは微細なクラックがある場合にフィラーを指定しています。壁の状態と下塗りの選択が噛み合っているかを見ます
  • 見本塗り板(見本板)で仕上がりを見せてもらえますか?塗り壁の質感は言葉では伝わりません。色も、凹凸の影が入ると平らな見本と違って見えます。アイカ工業は塗板サンプルの請求窓口を公開しています

もうひとつ。「ジョリパットは特殊だから塗れない」と言われたときは、その会社が扱ったことがないだけかもしれません。メーカー3社が改修用の材料を公表している以上、塗れない壁ではありません。断られたら、別の会社にも聞いてください。

よくある質問

うちの壁がジョリパットかどうか分かりません

新築時の図面や仕様書に「ジョリパット」「JP-100」などの記載があれば確実です。書類が見つからない場合は、現地を見た業者に判断してもらうのが確実です。似た表情の塗り壁材は各社から出ていますが、大事なのは商品名の特定そのものより、今の塗膜がどの系統で、上に何が塗れるかです。そこは現物を見ないと分かりません。

高圧洗浄をかけても大丈夫ですか?

洗浄は塗り替えの標準工程です。ただし塗り壁は凹凸があり、傷んだ表面では洗浄で骨材や表層が落ちることもあります。だからこそ、洗浄後の状態を見てから下塗りを決めるのが順番です。家庭用の高圧洗浄機で自分で洗うのは、高圧洗浄のページに書いたとおりおすすめしません。

自分で塗ることはできますか?

材料は流通していますが、塗り壁の塗り替えはDIYの中でも難度が高い部類です。模様に合わせて量を変えながら塗る必要があり、塗りすぎれば模様が埋まり、足りなければムラになります。加えて外壁は高さの問題があります。DIYの線引きはDIYのページにまとめました。

何年ごとに塗り替えるものですか?

年数だけで決められる答えはありません。ただし目安として、エスケー化研はサンドフレッシュSiの期待耐用年数を10〜12年とし、これを「次の塗り替え時期の目安」と説明しています(地域・立地・方角で異なる参考値、との断り付きです)。塗り壁は汚れやコケの出方に日当たりと雨がかりが強く出るため、同じ築年数でも状態が揃いません。時期の考え方は塗り替え時期のページ、コケ・カビの見方はコケ・カビのページにまとめています。

ひび割れがあります。塗り替えられますか?

髪の毛ほどの細いひび(ヘアクラック)であれば、微弾性の下塗り材で対応する方法がメーカーから示されています。アイカ工業はセーフフィラー JM-600、日本ペイントのインディフレッシュセラは塗膜自体が微弾性で「下地のヘヤクラックに追従する」と説明しています。幅の広いひびや、動いているひびは別の判断になります。ひびの見方はチョーキングとひび割れのページへ。

最終確認日:2026年8月22日。製品の仕様・価格・適用下地はメーカーの最新情報をご確認ください。実際の判断は、現地調査にもとづいて行ってください。

あわせて読みたい

モルタル外壁の塗装

ジョリパットの下地になっていることが多い外壁の話

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色の決め方

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つやの選び方

塗り壁がつや消しで仕上がる理由

水性と油性

塗り替えのシーラーに水性が指定される話

見積もりの内訳

材料の単価と総額を、どう切り分けて読むか

参考にした情報

  • アイカ工業「ジョリパットフレッシュ JQ-800 概要・特長」(施工できる下地/施工できない下地、カラー数、質感維持の記載)
  • アイカ工業「プレミアムリフレッシュシステム」(改修TYPE 1〜3の推奨仕上塗材・シーラー・下地調整材)
  • アイカ工業「塗り壁材・外壁材/ジョリパット」(1975年発売・約50年の実績、製品ラインナップ)
  • 日本ペイント よくあるご質問「ジョリパットのような塗り壁仕上げの塗り替えにおすすめの塗料はありますか?」
  • 日本ペイント「インディフレッシュセラ」製品情報およびカタログ(つや消し・施工方法・微弾性・材工価格、注意事項の調色・シーラー・使用量・パターン合わせの各項)
  • エスケー化研「サンドフレッシュSi」製品情報(一般名称・設計価格・標準色21色・艶消し・期待耐用年数)
  • 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材(塗り替えの提案で使っていた材料、下地が悪い場合の水性シーラーによる吸い込み止め、一般塗料で塗った場合の仕上がりについての見解)