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外壁のひび割れの補修——埋める前に見るのは「幅」と「本数」と「壁の作り」

外壁にひびを見つけて調べ始めると、出てくるのは「放置すると危険」「早めの補修を」という言葉ばかりです。でも、モルタル外壁の業界団体が公開している資料には、まったく違う書き方がされています——「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しません」。さらに、同じ幅のひびでも、壁の作りによって判断が変わるとも書かれています。このページでは、その公式の原文をもとに、埋めるべきひびとそうでないひびの分かれ目、「パテで埋める」で調べている方への答え、放置したときに実際に起きること、そして費用がどこに乗るのかを整理します。

このページの内容全15項目

外壁に出ている症状 23種の分かれ目——見えているものから引きます

ひび割れ以外の症状もいっしょに出ている方、あるいは別の症状を調べに来て、このページに着いた方へ。当サイトが扱っている外壁の症状は23種類あります。下の表は、壁に見えているものからページを引くためのものです。症状の名前が分からなくてかまいません。左の列で、いちばん近いものを探してください。

壁に見えているもの読むページ
線のようなひびが入っている このページ(幅0.1ミリ・0.3ミリの分かれ目)/家の土台に入っているなら家の基礎のひび割れ/板と板のあいだのゴムが切れているならコーキングがひび割れた
壁が膨らんで割れ、中から鉄の棒が見える 外壁の爆裂——ひびではなく、中の鉄筋が錆びて壁を内側から押し割っています
触ると手に白い粉がつく チョーキングと、ひび割れ
緑や黒の汚れが広がっている 外壁のコケ・カビ——落ちますが、環境は変わりません
塗膜がめくれている・浮いている 外壁塗装が剥がれた/塗ったばかりで小さな穴が出ているならピンホール・気泡
板が波打っている・表面がポロポロ欠ける 反っているならサイディングの反り/欠ける・弾け飛ぶなら外壁の凍害。どちらも塗装では直りません
室内に水が入る・天井や壁に染みが出る 場所が分からないなら雨漏りの原因はどこ?/ベランダ・サッシ・窓枠・天窓・太陽光から/借りている家なら賃貸で雨漏りしたら
壁に穴をあけたい・あいた穴をふさぎたい 外壁の穴あけ・穴埋め——表面より、奥の防水紙で決まります
フンが落ちている・夜に音がする 外壁のコウモリ対策——塞いではいけない時期と隙間があります
壁ではなく、家の立地や過去の出来事が気になる 海沿いなら塩害/古い家なら外壁のアスベスト/雹が降ったあと/浸水した家の消毒と臭い
そもそも塗るかどうかを迷っている 外壁塗装は意味ない?しないとどうなる?

頼む先で仕分けたい方は、このページの後半にあるその症状は、塗り替えで直りますかをご覧ください。同じ23種類を「塗装店に頼めるもの/別の工事が要るもの」で並べ直しています。

ヘアークラック(0.3ミリ程度まで)は、埋めなくていい場合があります

モルタル外壁の業界団体(日本住宅モルタル外壁協議会)は、ひび割れへの対応をこう説明しています。

今回あらたに確認した出典(2026年9月10日)=国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4章 外壁改修工事——4.1.4 改修工法の種類(ひび割れ部改修工法=樹脂注入工法/Uカットシール材充填工法/シール工法、種類は特記による)、4.2.2「ひび割れ部から漏水している場合又は錆汁がでている場合は、改修方法について事前に監督職員と協議する」、4.2.4 材料(樹脂注入工法のエポキシ樹脂はJIS A 6024に基づく注入エポキシ樹脂、Uカットシール材充填工法のシーリング材は特記がなければ1成分形又は2成分形ポリウレタン系、シール工法のパテ状エポキシ樹脂はJIS A 6024)、4.2.5「特記がなければ自動式低圧エポキシ樹脂注入工法」および注入状況の確認「特記がなければコアの抜き取りとし、長さ500mごと及びその端数につき1個のコアを採取する。コアの形状は、径50mm、深さ70mmとする」、4.2.6「ひび割れ部に沿って、電動カッター等を用いて幅10mm程度、深さ10〜15mm程度にU字型の溝を設ける」、4.2.7「プライマーを塗布した後、シール材をパテへら等で幅10mm、厚さ2mm程度に塗布し、その表面を平滑に仕上げる」、4.1.3「気温が5℃以下の場合は、施工を行わない」「施工中に、降雨及び降雪にさらされないようにする」、4.2.6・4.2.7「プライマーの塗布及び充填時に被着体が、5℃以下又は50℃以上になるおそれのある場合は、作業を中止する」、ならびに3.2.6 既存下地の処理「ひび割れ幅が2mm以上の場合は、Uカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填する」の各記載。同仕様書は官庁施設等の改修工事に用いる標準的な仕様で、民間の戸建て工事にそのまま適用されるものではありません。

公式の原文

「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しませんが、気になるようであれば、同一の仕上げ材料で目立たなくするとよいでしょう」

「幅0.1ミリを超えるひび割れは、ひび割れの発生状況および外壁構造によって対応が異なります」

読むべきところが2つあります。ひとつは、細いひびには「処置を要しません」と明記されていること。もうひとつは、そこから先が「発生状況および外壁構造によって」変わると書かれていることです。幅だけで一律に決まるとは、公式は言っていません。

ちなみに、髪の毛のような細いひびを指す言葉として使われる「ヘアクラック」(「ヘアークラック」とも書きます)は、同じ資料で「0.3ミリ程度までの細いひび割れ」と説明されています。まずは、自分が見ているひびがどのくらいの太さなのかを確かめるところからです。

太さの測り方——定規では測れません

0.1ミリと0.3ミリを目で見分けるのは、慣れていないと難しいものです。ひび割れの幅を測る専用のスケール(クラックスケール)が、ホームセンターやインターネットで安価に手に入ります。壁に当てて、どの線と同じ太さかを読むだけです。買わない場合でも、ひびの横に定規かコインを置いて、同じ角度から写真を撮っておいてください。あとで比べるときに、大きさの基準が写っているかどうかで情報の価値が変わります。

同じ幅でも判断が変わる——壁の作りで違う

ここが、このページでいちばんお伝えしたいところです。同じ協議会の資料には、壁の作りごとに違う目安が書かれています。

壁の作り公式に書かれている目安
単層下地通気構法
(壁の裏に空気の通り道がある作り)
「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」
下地直張り構法
(下地に直接モルタルを塗った作り)
「幅0.2ミリを超えるひび割れは、発生部位や仕上げに適した方法で塞ぐことをお勧めします」

0.25ミリのひびがあったとして、片方の作りなら様子見でよく、もう片方なら塞ぐことを勧められる。——これが公式の書き方です。インターネットで見かける「0.3ミリ以上は危険」という一律の線引きが、なぜ実際の判断と噛み合わないのか。理由はここにあります。

さらに公式は、通気構法の側についても「単独ひび割れで」「長さが短ければ」と条件を付けています。同じ幅でも、あちこちに出ているものや、長く伸びているものは別扱いということです。

「うちはどっちの作りですか」が分からないとき

おそらく、ほとんどの方が分かりません。壁の表面を見ても判別はつかないからです。分からないまま幅だけで判断しない——これがいちばん大事なところです。調べる手は3つあります。

①建てた会社に聞く(新築時の仕様書に書かれています)/②点検に来てもらったときに聞く(壁を見る会社なら答えられます)/③複数の会社に見てもらい、説明が一致するか確かめる。壁の作りに触れずに「危ないから早く直しましょう」とだけ言う相手は、壁を見ていない可能性があります。早めに直すこと自体が悪いという意味ではありません。理由を壁に即して説明できるかどうかを見てください、ということです。

なお「幅0.3ミリ以上は構造クラック」という説明が公的な基準のように語られることがありますが、木造住宅の壁について国が定めているのは幅ではありません。その原文の確認はチョーキングとひび割れのページで行っています。

ひび割れの原因——協議会は5つ挙げています

「なぜうちの壁にひびが入ったのか」——さきほどの日本住宅モルタル外壁協議会の資料に、原因が5つ列挙されています。そのまま並べます。

原因公式に書かれている内容
①モルタルの乾燥収縮「モルタルが乾燥硬化する際の収縮により、微細なひび割れを生じることがあります」(塗装を施さない左官仕上げや、外壁工事の途中)
②施工に起因するもの建物完成直後のひびは「モルタルの乾燥が不十分のまま塗装を行っていたり、工事養生中に日射や季節風等で急激な乾燥を生じていたり、ラスの留め付けが不充分だったり」
③塗膜の経年劣化「経年劣化により塗膜の分子間結合が切れて、ひび割れを生じることがあります」
④揺れ・振動「地震や強風による建物の大きな揺れや、大型車両の頻繁な往来など繰り返しの振動により」
⑤動く場所に、動かない材料を塗った「窓まわりシーリング材の上など、伸縮を担う箇所に伸縮しない仕上げ材を施すと、動きに追随できないため」

②だけが「施工に起因する」と明記されています。——建物が完成した直後に出たひびは、工事のやり方に理由があるかもしれないということです。新築で気になっている方は、この一文を持って施工会社に相談してください。

逆に①③④は、まっとうに建てて、まっとうに時間が経てば起きることです。ひびが出た=手抜きされた、とは限りません。

本数と広がり方も、公式が見どころに挙げています

「細いひび割れであっても複数本が集中的に生じていたり、同一面に多数生じていたりする場合は、下地および構造体になんらかの故障が生じている可能性もありますので、業者や工事店にお願いして点検することをお勧めします」(同協議会)

幅ではなく「本数」の話です。——細くても、1か所に何本も集まっている、あるいは同じ面にたくさん出ている。この状態は、幅を測る前に見てもらう理由になります。

地震のあとのひび割れについて

同じ資料に、こう書かれています。「大地震によって生じるひび割れは、揺れによる破壊エネルギーを吸収した痕跡であり、倒壊を免れたならば、モルタル外壁が耐震効果を発揮した可能性は高いといえます」——そして「大地震でひび割れた箇所は、構造体の損傷箇所と一致することが多く、重点点検箇所の目安にするとよいでしょう」。

ひびが出た場所を覚えておいてください。そこは、壁の中で力がかかった場所です。

「パテで埋める」で調べている方へ

ひび割れの調べ物でいちばん多く打ち込まれている質問が「外壁のひび割れをパテで補修できますか」です。ここには2段階の答えがあります。

  • ①そもそも埋めなくていいひびがある公式が「特段の処置を要しません」と書いている細さなら、材料の話に進む前に、その判断で足ります。
  • ②埋める場合、公式が挙げているのはパテではない協議会の資料に出てくるのは「同一の仕上げ材料」「補修用セメント材や充填材」という言葉です。パテという材料名は出てきません。

なお、ひびではなく「穴」を埋めたい場合は、判断の軸が変わります。ひびは幅と深さで見ますが、穴は壁を貫通しているかどうかで扱いが分かれ、貫通しているものは表面をふさぐと逆効果になることがあります。ビス跡やエアコンの配管穴の話は外壁の穴あけ・穴埋めのページにまとめました。

パテと呼ばれる材料は、本来は面を平らにならすための下地材で、室内の壁や下地調整に使われるものが中心です。なお現場では、細いひび割れにシーリング材(コーキング材)をすり込んで処理することもあります——外壁で使うのは、雨と紫外線と壁の動きに耐えることを前提にした材料だ、というのがここでの要点です。求められる性質が、室内用とはそもそも違います。「埋まったかどうか」ではなく「そのあと何年もつか」で選ばれる材料だと考えてください。

自分で埋める前に、写真を撮ってください

理由は「素人がやると失敗するから」ではありません。埋めてしまうと、そのひびがどこまで届いているのかを業者が読めなくなるからです。開いたままのほうが情報が残ります。自分で買った材料でふさいだ跡は、塗り替えのときに取り除く工程が増えることもあります。触りたくなったら、先に一枚撮っておいてください——モルタル外壁のページでも同じことをお伝えしています。

自分で補修するなら——公式が書いている作業の条件

「外壁のひび割れ補修 自分で」は、この話題でいちばん多く調べられている言葉のひとつです。市販の補修材、コーキング材、補修スプレー、補修テープ——ホームセンターにも通販にも並んでいます。やる前に、公式が書いている条件を2つだけ知っておいてください。

  • 濡れているときにやらない——協議会は「降雨後など内部が湿潤状態の時に塞ぐ作業は避けたく」と書いています。壁の中に水が残ったまま表面をふさぐと、水の出口を消すことになります
  • 乾いているかは、ラップで分かります——公式に書かれている確かめ方です。「ひび割れ部分をラップ等で覆い、日射が当たるなど外壁が温まったときにラップに水蒸気が付くようであれば、残留水分があると判断して作業を延期する」。台所のラップと養生テープでできます

この2つは、市販の補修材の説明書には書いていないことが多いところです。——「よく乾かしてから」とは書いてあっても、乾いているかどうかの確かめ方までは載っていません。

そして、材料そのものより先に決まることがあります。——幅0.1mm以下なら処置は要りませんし、壁の作りによって0.2mmか0.3mmかが変わります。上の「本数」に当てはまるなら、埋める話ではなく見てもらう話です。

放置すると、実際に何が起きるのか

ここは正確に書きます。同じ協議会の資料には、放置についてこう書かれています。

公式の原文

「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」

「ひび割れた周辺に浮きや変色が見られる場合には、剥落リスクも懸念されるので注意が必要です」

※ラス=モルタルを塗るために下地に張られている金網のことです。

「つながる場合もあります」——公式の言い方はここまでです。ひびがあれば必ず雨漏りする、とは書かれていません。一方で、細いから絶対に大丈夫とも書かれていません。公式が挙げている条件を、そのまま受け取るのが正確です。

そして、この文のなかでいちばん実用的なのは後半です。「浮き」と「変色」が出ているかどうか——これは幅を測らなくても、素人の目で確認できます。

  • 浮きひびの周りの壁が、面から少し持ち上がっているように見える。手で軽く触れて、周囲と違う感触がある。
  • 変色ひびに沿って黒ずんでいる、または雨のあとにその筋だけ乾きが遅い。水が通った跡である可能性があります。

この2つが出ているなら、幅がいくつであっても見てもらう理由になります。逆に、細い単独のひびで、周りに浮きも変色もない——それが公式の言う「大きな問題に至ることは考え難い」側の状態です。

業者はどう直すのか——3段階

協議会の資料は、補修の考え方を程度に応じて3段階で説明しています。要約すると次のとおりです。

程度公式に書かれている対応
軽微洗浄し、下処理をして仕上げ材を施す
軽度割れている部分に補修用セメント材や充填材を注入し、塗装などの仕上げ材を施す
中度以上発生要因を考察し、状況次第では部分的に剥がし取り、修復工事を行う

注目してほしいのは、中度以上の行に「発生要因を考察し」と書かれていることです。大きなひびは、埋めれば終わりではない——なぜそこに力がかかったのかを考えるところから、と公式が言っています。

だから見積書を見るときは、「ひび割れ補修 一式」で終わっているか、どのひびをどう処理するのかまで書かれているかを見てください。工事のあいだ壁は足場で隠れます。何をしたかは、書いてあることでしか確認できません。

この「どう書いてあるか」は、会社によってはっきり差が出ます。同じ壁を見て「一式」で済ませる会社と、幅と本数と処理方法まで書く会社がある。何社かに同じひびを見てもらうと、その差がそのまま見積書に出ます——比べているのは金額ではなく、見ている細かさです。

工法には名前があります——国の改修仕様書が定めている3つ

前の章の「3段階」は考え方の話でした。実際の工事には名前がついています。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版は、外壁のひび割れ部改修工法を3つに分けて定めています。

工法何をするか(仕様書の原文から)使う材料
シール工法「プライマーを塗布した後、シール材をパテへら等で幅10mm、厚さ2mm程度に塗布し、その表面を平滑に仕上げる」=表面をふさぐパテ状エポキシ樹脂(JIS A 6024)
Uカットシール材充填工法「ひび割れ部に沿って、電動カッター等を用いて幅10mm程度、深さ10〜15mm程度にU字型の溝を設ける」→プライマー→充填=削ってから埋めるポリウレタン系シーリング材(特記がなければ1成分形又は2成分形)/可とう性エポキシ樹脂
樹脂注入工法特記がなければ自動式低圧エポキシ樹脂注入工法。注入口の位置をスケールで測ってマーキングし、注入機で樹脂を送り込む=すき間の中へ入れる注入エポキシ樹脂(JIS A 6024)

出典=国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4章 外壁改修工事 4.1.4・4.2.5〜4.2.7。同仕様書は官庁施設等の改修工事に用いる標準的な仕様で、民間の戸建てにそのまま適用されるものではありません。

この3つは、「表面をふさぐ」「削ってから埋める」「中へ入れる」という順で手間が増えます。見積書に「ひび割れ補修 一式」としか書かれていないとき、この3つのどれをするのかは決まっていないということです。

そして、切り替えの線が数字で書かれています。同じ仕様書は下地処理の項で、「ひび割れ幅が2mm以上の場合は、Uカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填する」と繰り返し定めています(同じ一文が4か所に出てきます)。2mmを超えたら、表面をふさぐだけでは済まない——これが国の決め方です。

ここで注意していただきたいのは、前半で扱った0.2mm・0.3mmとは別の話だということです。

  • 0.2mm・0.3mm=「そもそも補修が要るのか、放置していいのか」の線。壁の作りで変わります。
  • 2mm=「補修すると決めたあと、削って埋めるほうに切り替える」線。

つまり、0.3mmと2mmのあいだにあるひびは「補修はするが、削るところまではしない」帯になります。自分のひびがどの帯にいるかで、見積書に出てくる工法が変わります。

水が出ている・錆色の汁が出ているひびは、別扱いです

同じ仕様書に、短いのに重い一文があります。ひび割れ部改修の共通事項です。

「ひび割れ部から漏水している場合又は錆汁がでている場合は、改修方法について事前に監督職員と協議する」(4.2.2)

標準の3工法で処理してよい、とは書かれていません。——工事に入る前に、別途相談する対象になっています。理由は想像がつきます。水が出ているなら壁の中まで通じているということですし、錆汁が出ているなら中の鉄筋が錆びているということです。表面を埋めても、その原因は残ります(外壁の爆裂のページ/雨漏りの原因のページ)。

戸建てに置き換えると、こうなります。ひびから水がしみ出している、ひびの周りが茶色く汚れている——このときは「ひび割れ補修」の見積もりをもらう前に、原因を見てもらう段階です。「埋めておきますね」で終わらせる会社があったら、その一言を思い出してください。

もうひとつ、工事ができない条件も書かれています。

  • 「気温が5℃以下の場合は、施工を行わない」(4.1.3)——採暖等の措置を講じる場合を除きます。
  • 「プライマーの塗布及び充填時に被着体が、5℃以下又は50℃以上になるおそれのある場合は、作業を中止する」(4.2.6・4.2.7)——暑すぎてもだめです。夏の直射日光が当たる壁面は50℃を超えます。
  • 「施工中に、降雨及び降雪にさらされないようにする」(4.1.3)

塗装の工程条件と同じ考え方です(塗装の時期のページ)。ひび割れ補修は「ついでにやっておく作業」ではなく、条件のある工事だと分かります。

なお公共工事では、樹脂を本当に注入できたかを確認する仕組みまであります——「特記がなければコアの抜き取りとし、長さ500mごと及びその端数につき1個のコアを採取する。コアの形状は、径50mm、深さ70mmとする」。戸建てでここまでは行いませんが、「注入した」は本来、確認が要る作業だという感覚は持っておいてよいと思います。

その症状は、塗り替えで直りますか——外壁の症状を4つに仕分けます

ひび割れを調べに来た方の多くは、その家にほかの症状も出ています。そしてここが分かれ目なのですが、外壁の症状は「塗り替えで直るもの」と「塗り替えでは止まらないもの」に分かれます。仕分けを先にしないと、塗装店に見積もりを頼むこと自体が空振りになります。

当サイトで扱っている外壁の症状は23種類あります。まず4つに仕分けてください。

仕分け頼む先あてはまる症状
①塗り替えが答えになる塗装店の見積もりでよいチョーキング(粉)、コケ・カビ、細いひび割れ
②塗る前に、別の工事で止める塗装だけの見積もりでは足りない雨漏り、反り、凍害、爆裂、基礎のひび、目地の切れ
③前回の塗装の不具合まず「いつ・誰が塗ったか」剥がれ、ピンホール
④症状ではなく、家の条件や出来事塗る前の前提として読む塩害、アスベスト、雹、浸水、コウモリ、穴あけ

このページで扱っているひび割れは、幅と本数しだいで①にも②にもなります。ヘアークラック(0.3ミリ程度まで)なら①、水や錆色の汁が出ているひびなら②です。同じ「ひび」でも、頼む先が変わります。

①塗り替えが答えになる症状

症状このサイトの結論
チョーキング(粉が出る)粉が出たら、まず何をするか。塗り替えの時期を判断するサインとして使えます
コケ・カビ・緑の汚れ落ちます。ただし環境は変わらないので、落として終わりにはなりません
細いひび割れこのページ。0.3ミリ程度までは埋めなくていい場合があります

②塗る前に、別の工事で止める症状

ここがいちばん取り違えの多いところです。3枚は、ページの題の時点で「塗装では直りません」と書いています(サイディングの反り、凍害、雨漏り)。塗って隠しても、原因は壁の中で進みます。

雨漏りは、入り口ごとに5枚あります

「雨漏り」で1枚を探しに来る方が多いのですが、直し方は水の入り口で変わるので、当サイトは入り口ごとに分けています。心当たりのある場所から読んでください。

賃貸にお住まいで雨漏りしている場合は、直し方より先に確かめることがあります(賃貸で雨漏りしたら)。

症状塗装では止まらない理由
サイディングの反り板そのものが変形しています。反る向きで原因が違います
凍害(とうがい)壁が含んだ水が凍って壊れています。まず「うちは寒冷地域か」から
爆裂中の鉄筋が錆びて、内側から壁を押し割っています
基礎のひび割れ外壁とは別の基準で見ます。幅と深さ、新築10年の保証まで
目地のコーキングの切れ雨を止めている線が切れています。塗るのではなく打ち替えの工事です

③前回の塗装の不具合——直す前に「いつ・誰が塗ったか」

剥がれとピンホールは、症状そのものより先に確かめることがあるという点で、ほかと性質が違います。前の工事の保証が生きているなら、直す順番が変わるからです。

④症状ではなく、家の条件や出来事

壁に何かが出ているわけではないけれど、塗る前に知っておくと判断が変わるものです。

読むものいつ効くか
塩害対策の外壁塗装海沿いの家。塗料を探す前に見る場所があります
外壁のアスベスト見た目では分かりません。国のデータベースで疑う根拠までは自分で作れます
雹が降ったあと屋根に登らずにできる確認と、次の雨までにやること
浸水した家の消毒と臭い浸水のあと。逆性石けんの薄め方と順番
コウモリ対策フンで気づいたとき。塞いではいけない隙間があります
外壁の穴あけ・穴埋めエアコンや手すりを付けるとき。表面より奥の防水紙で決まります
外壁塗装は意味ない?しないとどうなる?そもそも塗るかどうかを迷っているとき

仕分けができたら、次は頼み方です。②に当たる症状があるなら、それを見積もりの前に伝えてください。「ひび割れも気になります」ではなく「この場所から水が出ています」と言えると、来る人が変わります。同じ壁を何社かに見てもらうと、②をどう扱うかで会社の差がいちばん出ます。

費用は「塗料の単価の外側」にあります

ひび割れ補修の費用を調べても、金額がサイトごとにばらばらなのには理由があります。補修の費用は、塗料の平米単価には入っていないからです。

これはメーカー自身が明記しています。塗料の設計価格には「300平方メートル以上を基準とする材工共の価格であり、下地調整費は含んでおりません」という注記が付いていることがあり(弾性セラミシリコンのページで確認しています)、ひび割れの補修は、この「下地調整」の側にあります。

つまり、金額はひびの本数・長さ・どの程度の処理をするかで積み上がるもので、壁の面積に比例しません。「うちのひびを、どの方法で、何か所やるといくらか」——そこまで書かれていない見積書では、比べようがないということです。見積書の各行の読み方は見積書の内訳のページにまとめました。

保証や火災保険の対象になるか

ひび割れについて多い質問が、この2つです。どちらも答えは「原因による」ですが、見るところが違います。

塗装の保証で直してもらえるか

保証書に書かれている対象を見てください。業者の自社保証は、対象を塗膜そのものの不具合(剥がれ・膨れなど)に絞っていることが多く、下地の動きによって出たひび割れは対象外としている例が少なくありません。「何年」ではなく「何が対象か」で読む——詳しくは保証は対象外?のページにまとめています。

火災保険で直せるか

分かれ目は、そのひびが災害でできたのかどうかです。飛来物がぶつかったなど、外から力が加わってできた損傷なら対象になりえます。一方、年数をかけて出てきたひび割れは、経年劣化として対象外になります。保険会社も「建物の経年劣化による破損とみなされれば保険金は下りません」と説明しています。判断の全体像は火災保険は使える?のページで扱いました。

そして、この判断は写真では決まりません。幅を測り、壁の作りを確かめ、周囲の状態と合わせて見る必要があります。何社かに現地を見てもらって、ひび割れの扱いが一致するかを確かめてください。全社が同じ工法を出してくるならその壁の答えは出ています。割れるなら、なぜそう見たのかを聞く——そのやり取り自体が、会社を選ぶ材料になります。

よくある質問

外壁のひび割れをパテで補修できますか?

まず、埋めなくていい細さかどうかが先です。業界団体の資料では、幅0.1ミリ以下は「特段の処置を要しません」とされています。埋める場合も、公式が挙げているのは同一の仕上げ材料、補修用セメント材、充填材で、パテという材料名は出てきません。外壁は雨と紫外線と壁の動きにさらされる場所なので、室内用の考え方とは別に見てください。

外壁のひび割れを放置するとどうなりますか?

公式の書き方は「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」です。必ずそうなるとは書かれていません。ただしひびの周りに浮きや変色が出ている場合は、剥落の心配にも触れられています。幅より先に、浮きと変色を見てください。

外壁のひび割れは何ミリから危険ですか?

壁の作りによって目安が違います。公式資料では、単層下地通気構法なら「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」、下地直張り構法なら「幅0.2ミリを超えるひび割れは塞ぐことをお勧めします」とされています。同じ幅でも結論が変わるので、幅だけを聞いても答えは出ません。

外壁のひび割れは築何年で起こりますか?

年数では決まりません。モルタルは乾いて硬まるときに縮むため、その過程で細いひびが出ることがあります。新しい家に出ることも、古い家に出ないこともあります。年数ではなく、いま壁に出ている状態のほうが判断の材料になります。

外壁のひび割れの補修費用はいくらですか?

面積ではなく、ひびの本数と処理の方法で積み上がります。そして塗料の平米単価には含まれません(メーカーの設計価格にも「下地調整費は含んでおりません」と注記されています)。「どのひびを、どの方法で、何か所」まで書かれた見積書でなければ、金額を比べても意味がありません。

塗装したばかりなのにひび割れが出ました。施工不良ですか?

塗った時期と、ひびの出方で見ます。下地の動きによって出たひびは、塗装の不具合とは別の話として扱われることが多く、保証の対象外とされている例もあります。まずはいつ塗ったか、保証書に何が書いてあるかを確認してください(保証は対象外?)。塗膜そのものが剥がれている場合は外壁塗装が剥がれたのページが近い話です。

外壁のひび割れの補修方法にはどんな種類がありますか?

国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書は3つに分けています。シール工法=表面をふさぐ(シール材を幅10mm・厚さ2mm程度に塗布)、Uカットシール材充填工法=削ってから埋める(幅10mm程度・深さ10〜15mm程度のU字溝)、樹脂注入工法=すき間の中へ入れる(特記がなければ自動式低圧エポキシ樹脂注入工法)。見積書に「一式」とだけあるなら、このどれをするかは決まっていません(工法の章)。

ひび割れは何ミリからUカットになりますか?

公共建築改修工事標準仕様書は「ひび割れ幅が2mm以上の場合は、Uカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填する」と定めています(同じ一文が4か所)。前半の0.2mm・0.3mmは「そもそも補修が要るか」の線で、こちらとは別の話です。0.3mmと2mmのあいだは「補修はするが削らない」帯になります。

ひびから水がしみ出しています。埋めれば直りますか?

その状態は別扱いです。同仕様書は「ひび割れ部から漏水している場合又は錆汁がでている場合は、改修方法について事前に監督職員と協議する」と定めており、標準の3工法で処理してよいとは書かれていません。水が出ているなら壁の中まで通じている、錆汁なら中の鉄筋が錆びているということ。補修の見積もりをもらう前に、原因を見てもらう段階です(別扱いの章)。

参考にした情報

  • 日本住宅モルタル外壁協議会「ひび割れ補修」(公式・「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しませんが、気になるようであれば、同一の仕上げ材料で目立たなくするとよいでしょう」/「幅0.1ミリを超えるひび割れは、ひび割れの発生状況および外壁構造によって対応が異なります」/単層下地通気構法は「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」/下地直張り構法は「幅0.2ミリを超えるひび割れは、発生部位や仕上げに適した方法で塞ぐことをお勧めします」/「0.3ミリ程度までの細いひび割れは、髪の毛のように見えるため『ヘアクラック』とも呼ばれます」/「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」/「ひび割れた周辺に浮きや変色が見られる場合には、剥落リスクも懸念されるので注意が必要です」/補修は軽微・軽度・中度以上で対応が分かれ、中度以上は「発生要因を考察し、状況次第では部分的に剥がし取り、修復工事を行う」・2026年8月確認)
  • 塗料メーカーの設計価格に付く注記(下地調整費は含まれない旨)の出典は弾性セラミシリコンのページに記載
  • 木造住宅の壁の判定について国が定めている内容(幅ではなく、どこまで達しているか)の原文確認はチョーキングとひび割れのページに記載
  • 経年劣化による破損が火災保険の対象外である旨の保険会社の説明は火災保険は使える?のページの出典を参照

最終確認日:2026年8月23日。記載の内容は一般的な考え方です。ご自宅の外壁の仕上げの種類、壁の構法、ひび割れの状態、補修の要否は、建物を直接見た専門家にご確認ください。

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