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外壁のひび割れ——埋める前に見るのは「幅」と「壁の作り」

外壁にひびを見つけて調べ始めると、出てくるのは「放置すると危険」「早めの補修を」という言葉ばかりです。でも、モルタル外壁の業界団体が公開している資料には、まったく違う書き方がされています——「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しません」。さらに、同じ幅のひびでも、壁の作りによって判断が変わるとも書かれています。このページでは、その公式の原文をもとに、埋めるべきひびとそうでないひびの分かれ目、「パテで埋める」で調べている方への答え、放置したときに実際に起きること、そして費用がどこに乗るのかを整理します。

このページの内容

そのひび、埋めなくていい場合があります

モルタル外壁の業界団体(日本住宅モルタル外壁協議会)は、ひび割れへの対応をこう説明しています。

公式の原文

「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しませんが、気になるようであれば、同一の仕上げ材料で目立たなくするとよいでしょう」

「幅0.1ミリを超えるひび割れは、ひび割れの発生状況および外壁構造によって対応が異なります」

読むべきところが2つあります。ひとつは、細いひびには「処置を要しません」と明記されていること。もうひとつは、そこから先が「発生状況および外壁構造によって」変わると書かれていることです。幅だけで一律に決まるとは、公式は言っていません。

ちなみに、髪の毛のような細いひびを指す言葉として使われる「ヘアクラック」は、同じ資料で「0.3ミリ程度までの細いひび割れ」と説明されています。まずは、自分が見ているひびがどのくらいの太さなのかを確かめるところからです。

太さの測り方——定規では測れません

0.1ミリと0.3ミリを目で見分けるのは、慣れていないと難しいものです。ひび割れの幅を測る専用のスケール(クラックスケール)が、ホームセンターやインターネットで安価に手に入ります。壁に当てて、どの線と同じ太さかを読むだけです。買わない場合でも、ひびの横に定規かコインを置いて、同じ角度から写真を撮っておいてください。あとで比べるときに、大きさの基準が写っているかどうかで情報の価値が変わります。

同じ幅でも判断が変わる——壁の作りで違う

ここが、このページでいちばんお伝えしたいところです。同じ協議会の資料には、壁の作りごとに違う目安が書かれています。

壁の作り公式に書かれている目安
単層下地通気構法
(壁の裏に空気の通り道がある作り)
「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」
下地直張り構法
(下地に直接モルタルを塗った作り)
「幅0.2ミリを超えるひび割れは、発生部位や仕上げに適した方法で塞ぐことをお勧めします」

0.25ミリのひびがあったとして、片方の作りなら様子見でよく、もう片方なら塞ぐことを勧められる。——これが公式の書き方です。インターネットで見かける「0.3ミリ以上は危険」という一律の線引きが、なぜ実際の判断と噛み合わないのか。理由はここにあります。

さらに公式は、通気構法の側についても「単独ひび割れで」「長さが短ければ」と条件を付けています。同じ幅でも、あちこちに出ているものや、長く伸びているものは別扱いということです。

「うちはどっちの作りですか」が分からないとき

おそらく、ほとんどの方が分かりません。壁の表面を見ても判別はつかないからです。分からないまま幅だけで判断しない——これがいちばん大事なところです。調べる手は3つあります。

①建てた会社に聞く(新築時の仕様書に書かれています)/②点検に来てもらったときに聞く(壁を見る会社なら答えられます)/③複数の会社に見てもらい、説明が一致するか確かめる壁の作りに触れずに「危ないから早く直しましょう」とだけ言う相手は、壁を見ていない可能性があります。早めに直すこと自体が悪いという意味ではありません。理由を壁に即して説明できるかどうかを見てください、ということです。

なお「幅0.3ミリ以上は構造クラック」という説明が公的な基準のように語られることがありますが、木造住宅の壁について国が定めているのは幅ではありません。その原文の確認はチョーキングとひび割れのページで行っています。

「パテで埋める」で調べている方へ

ひび割れの調べ物でいちばん多く打ち込まれている質問が「外壁のひび割れをパテで補修できますか」です。ここには2段階の答えがあります。

  • ①そもそも埋めなくていいひびがある公式が「特段の処置を要しません」と書いている細さなら、材料の話に進む前に、その判断で足ります。
  • ②埋める場合、公式が挙げているのはパテではない協議会の資料に出てくるのは「同一の仕上げ材料」「補修用セメント材や充填材」という言葉です。パテという材料名は出てきません

パテと呼ばれる材料は、本来は面を平らにならすための下地材で、室内の壁や下地調整に使われるものが中心です。なお現場では、細いひび割れにシーリング材(コーキング材)をすり込んで処理することもあります——外壁で使うのは、雨と紫外線と壁の動きに耐えることを前提にした材料だ、というのがここでの要点です。求められる性質が、室内用とはそもそも違います。「埋まったかどうか」ではなく「そのあと何年もつか」で選ばれる材料だと考えてください。

自分で埋める前に、写真を撮ってください

理由は「素人がやると失敗するから」ではありません。埋めてしまうと、そのひびがどこまで届いているのかを業者が読めなくなるからです。開いたままのほうが情報が残ります。自分で買った材料でふさいだ跡は、塗り替えのときに取り除く工程が増えることもあります。触りたくなったら、先に一枚撮っておいてください——モルタル外壁のページでも同じことをお伝えしています。

放置すると、実際に何が起きるのか

ここは正確に書きます。同じ協議会の資料には、放置についてこう書かれています。

公式の原文

「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」

「ひび割れた周辺に浮きや変色が見られる場合には、剥落リスクも懸念されるので注意が必要です」

※ラス=モルタルを塗るために下地に張られている金網のことです。

「つながる場合もあります」——公式の言い方はここまでです。ひびがあれば必ず雨漏りする、とは書かれていません。一方で、細いから絶対に大丈夫とも書かれていません。公式が挙げている条件を、そのまま受け取るのが正確です。

そして、この文のなかでいちばん実用的なのは後半です。「浮き」と「変色」が出ているかどうか——これは幅を測らなくても、素人の目で確認できます。

  • 浮きひびの周りの壁が、面から少し持ち上がっているように見える。手で軽く触れて、周囲と違う感触がある。
  • 変色ひびに沿って黒ずんでいる、または雨のあとにその筋だけ乾きが遅い。水が通った跡である可能性があります。

この2つが出ているなら、幅がいくつであっても見てもらう理由になります。逆に、細い単独のひびで、周りに浮きも変色もない——それが公式の言う「大きな問題に至ることは考え難い」側の状態です。

業者はどう直すのか——3段階

協議会の資料は、補修の考え方を程度に応じて3段階で説明しています。要約すると次のとおりです。

程度公式に書かれている対応
軽微洗浄し、下処理をして仕上げ材を施す
軽度割れている部分に補修用セメント材や充填材を注入し、塗装などの仕上げ材を施す
中度以上発生要因を考察し、状況次第では部分的に剥がし取り、修復工事を行う

注目してほしいのは、中度以上の行に「発生要因を考察し」と書かれていることです。大きなひびは、埋めれば終わりではない——なぜそこに力がかかったのかを考えるところから、と公式が言っています。

だから見積書を見るときは、「ひび割れ補修 一式」で終わっているか、どのひびをどう処理するのかまで書かれているかを見てください。工事のあいだ壁は足場で隠れます。何をしたかは、書いてあることでしか確認できません。

費用は「塗料の単価の外側」にあります

ひび割れ補修の費用を調べても、金額がサイトごとにばらばらなのには理由があります。補修の費用は、塗料の平米単価には入っていないからです。

これはメーカー自身が明記しています。塗料の設計価格には「300平方メートル以上を基準とする材工共の価格であり、下地調整費は含んでおりません」という注記が付いていることがあり(弾性セラミシリコンのページで確認しています)、ひび割れの補修は、この「下地調整」の側にあります

つまり、金額はひびの本数・長さ・どの程度の処理をするかで積み上がるもので、壁の面積に比例しません。「うちのひびを、どの方法で、何か所やるといくらか」——そこまで書かれていない見積書では、比べようがないということです。見積書の各行の読み方は見積書の内訳のページにまとめました。

保証や火災保険の対象になるか

ひび割れについて多い質問が、この2つです。どちらも答えは「原因による」ですが、見るところが違います。

塗装の保証で直してもらえるか

保証書に書かれている対象を見てください。業者の自社保証は、対象を塗膜そのものの不具合(剥がれ・膨れなど)に絞っていることが多く、下地の動きによって出たひび割れは対象外としている例が少なくありません。「何年」ではなく「何が対象か」で読む——詳しくは保証は対象外?のページにまとめています。

火災保険で直せるか

分かれ目は、そのひびが災害でできたのかどうかです。飛来物がぶつかったなど、外から力が加わってできた損傷なら対象になりえます。一方、年数をかけて出てきたひび割れは、経年劣化として対象外になります。保険会社も「建物の経年劣化による破損とみなされれば保険金は下りません」と説明しています。判断の全体像は火災保険は使える?のページで扱いました。

よくある質問

外壁のひび割れをパテで補修できますか?

まず、埋めなくていい細さかどうかが先です。業界団体の資料では、幅0.1ミリ以下は「特段の処置を要しません」とされています。埋める場合も、公式が挙げているのは同一の仕上げ材料、補修用セメント材、充填材で、パテという材料名は出てきません。外壁は雨と紫外線と壁の動きにさらされる場所なので、室内用の考え方とは別に見てください。

外壁のひび割れを放置するとどうなりますか?

公式の書き方は「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」です。必ずそうなるとは書かれていません。ただしひびの周りに浮きや変色が出ている場合は、剥落の心配にも触れられています。幅より先に、浮きと変色を見てください。

外壁のひび割れは何ミリから危険ですか?

壁の作りによって目安が違います。公式資料では、単層下地通気構法なら「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」、下地直張り構法なら「幅0.2ミリを超えるひび割れは塞ぐことをお勧めします」とされています。同じ幅でも結論が変わるので、幅だけを聞いても答えは出ません。

外壁のひび割れは築何年で起こりますか?

年数では決まりません。モルタルは乾いて硬まるときに縮むため、その過程で細いひびが出ることがあります。新しい家に出ることも、古い家に出ないこともあります。年数ではなく、いま壁に出ている状態のほうが判断の材料になります。

外壁のひび割れの補修費用はいくらですか?

面積ではなく、ひびの本数と処理の方法で積み上がります。そして塗料の平米単価には含まれません(メーカーの設計価格にも「下地調整費は含んでおりません」と注記されています)。「どのひびを、どの方法で、何か所」まで書かれた見積書でなければ、金額を比べても意味がありません。

塗装したばかりなのにひび割れが出ました。施工不良ですか?

塗った時期と、ひびの出方で見ます。下地の動きによって出たひびは、塗装の不具合とは別の話として扱われることが多く、保証の対象外とされている例もあります。まずはいつ塗ったか、保証書に何が書いてあるかを確認してください(保証は対象外?)。塗膜そのものが剥がれている場合は外壁塗装が剥がれたのページが近い話です。

参考にした情報

  • 日本住宅モルタル外壁協議会「ひび割れ補修」(公式・「幅0.1ミリ以下のひび割れは、特段の処置を要しませんが、気になるようであれば、同一の仕上げ材料で目立たなくするとよいでしょう」/「幅0.1ミリを超えるひび割れは、ひび割れの発生状況および外壁構造によって対応が異なります」/単層下地通気構法は「幅0.3ミリ程度以下の単独ひび割れで長さが短ければ、放置しておいて大きな問題に至ることは考え難い」/下地直張り構法は「幅0.2ミリを超えるひび割れは、発生部位や仕上げに適した方法で塞ぐことをお勧めします」/「0.3ミリ程度までの細いひび割れは、髪の毛のように見えるため『ヘアクラック』とも呼ばれます」/「ひび割れから湿気や雨水が繰り返し浸入し、ラスの腐食や漏水につながる場合もあります」/「ひび割れた周辺に浮きや変色が見られる場合には、剥落リスクも懸念されるので注意が必要です」/補修は軽微・軽度・中度以上で対応が分かれ、中度以上は「発生要因を考察し、状況次第では部分的に剥がし取り、修復工事を行う」・2026年8月確認)
  • 塗料メーカーの設計価格に付く注記(下地調整費は含まれない旨)の出典は弾性セラミシリコンのページに記載
  • 木造住宅の壁の判定について国が定めている内容(幅ではなく、どこまで達しているか)の原文確認はチョーキングとひび割れのページに記載
  • 経年劣化による破損が火災保険の対象外である旨の保険会社の説明は火災保険は使える?のページの出典を参照

最終確認日:2026年8月23日。記載の内容は一般的な考え方です。ご自宅の外壁の仕上げの種類、壁の構法、ひび割れの状態、補修の要否は、建物を直接見た専門家にご確認ください。

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