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外壁の爆裂は、なぜ起きるのか——中の鉄筋が錆びて、内側から壁を押し割っています

壁の一部が欠けて、中から茶色い棒のようなものが見えている。あるいは、ひび割れから錆色の汁が垂れている。これが爆裂と呼ばれる状態です。外から何かがぶつかったのではなく、壊れているのは内側から——コンクリートの中の鉄筋が錆びて膨らみ、まわりのコンクリートを押し割っています。だから表面をきれいに埋めても、原因はそのまま残ります。この記事では、なぜ起きるのか、どう直すのが正しいのかを、国が発注する工事の仕様書と公開資料の原文から確かめます。

このページの内容

先に答え——これは「塗り替えのついでに直る」症状ではありません

結論から書きます。

  • 爆裂は、塗装では直りません。欠けた厚みを塗料で埋めることはできないからです。順番は補修が先、塗装が後です
  • ただし「塗装は無意味」でもありません。爆裂が起きる前なら、表面を保護することは対策として挙げられています(後述します)
  • いちばん危ないのは、錆をそのまま埋める補修です。見た目は一日できれいになりますが、原因は蓋の下に残ります

読んでいるあなたの家の壁がどの段階なのかは、この記事では分かりません。分かるのは、業者が何をどの順番でやると言っているかを、あなたが判定できるようになることです。そこを目的に書きます。

何が起きているのか——錆びた鉄筋は、膨らみます

鉄筋コンクリートの鉄筋は、なぜふつう錆びないのか。答えはコンクリートが強いアルカリ性だからです。

舞鶴工業高等専門学校が公開している資料「コンクリート中性化入門」は、この仕組みをこう説明しています。強いアルカリ性の環境にあるコンクリートの中では、鉄筋の表面に不動態被膜というごく薄い酸化被膜ができていて、これが錆の発生を防いでいる——と。

つまり鉄筋は、鉄そのものが錆びにくいのではなく、コンクリートに守られているだけです。そしてこの守りが失われると、次の順番で進みます。

  • コンクリートのアルカリ性が失われ、その範囲が鉄筋の深さまで届く
  • 鉄筋の不動態被膜が壊れる
  • 鉄筋が錆びはじめる。同じ資料は、これによって鉄筋の断面積が小さくなることと、錆によって膨張圧が発生することの2つを挙げています
  • 膨張圧によって、ひび割れと表面の剥離が起きる
  • できたひび割れから水と空気がさらに入り、鉄筋の腐食を助長する

ここが大事なところです。爆裂は、原因と結果が輪になっています。錆が壁を割り、割れた口から入った水が、さらに錆を進める。だから放っておくと止まらず、しかも進む速さは途中から上がります

「爆裂」という激しい言葉から、何かが破裂したような瞬間の出来事を想像しがちですが、実際には何年もかけて、じわじわと内側から押されてきた結果です。表に見えたときには、すでに終盤に入っています。

なお、鉄筋を包んでいる厚さのことをかぶり厚さといい、建築基準法施行令の第79条で最低値が決められています。壁なら2センチ、柱やはりなら3センチ。たったそれだけの余白で鉄筋は守られています。この条文と、部位ごとの数値は打ちっぱなしコンクリートの塗装のページに表でまとめました。

引き金は4つ——中性化・塩害・かぶり不足・ひび割れ

守りが失われるきっかけは、ひとつではありません。よく挙がるのは次の4つです。

引き金何が起きているか起きやすい家
中性化大気中の二酸化炭素によって、強いアルカリ性だったコンクリートが中性に近づく。鉄筋を守っている環境そのものが、外側から失われていく築年数が経った家全般。日当たり・雨がかりで進み方が変わる
塩害塩分が入ると、アルカリ性が保たれていても鉄筋が錆びはじめる。施行令79条が挙げる腐食要因にも「塩」が入っている海に近い家。凍結防止剤をまく地域の道路際
かぶり不足そもそも鉄筋を包む厚みが足りない。守るための余白が最初から薄いので、中性化が届くまでの時間が短い施工の精度に左右される。外からは分からない
ひび割れからの水ひび割れが先にでき、そこから水と空気が直接鉄筋まで届く。中性化を待たずに錆がはじまるひび割れを長く放置した家。ひび割れのページ

このうち中性化について、先ほどの資料は対策も挙げています。かぶりを大きくすること水セメント比を下げること——この2つは新築のときにしか選べません。そして3つめが、水分の供給を遮断することで、その手段として表面保護(塗装など)・欠損部の補修が挙げられています。

つまり塗装は、中性化に対する手当てとして公開資料に位置づけられているということです。ただしそれはまだ鉄筋が錆びていない壁の話で、すでに爆裂している壁を塗って止まるという意味ではありません。塗装が効くのは、間に合っているうちだけ——この線引きが、この記事でいちばん伝えたいところです。

※この資料はコンクリート橋など土木の構造物を主な例として説明しています。中性化という現象そのものは同じですが、戸建て住宅の壁に橋と同じ管理や試験がそのまま求められる、という意味ではありません。

見ただけでは原因を決められない、と資料は書いています

ここは、業者選びに直結する話です。同じ資料には、実際の損傷事例を示したうえで、はっきりこう書かれています——「ひび割れ、表面剥離の損傷を見ただけでは、原因が中性化によるものかは判断できない」。だから中性化試験によって判断する、と。

試験には2つの方法が紹介されています。

方法やること開ける穴の大きさ
コア法コンクリートから円柱状のコアを抜き取り、割ってフェノールフタレイン液を吹きかける。色が変わらないところが中性化している直径75〜100ミリ程度
ドリル法壁に直角を保って電動ドリルで穴を開け、削孔粉を試験紙に集める。試験紙が赤紫色に変わったら止めて、そこまでの深さを測る直径10ミリ程度

資料は、ドリル法のほうが構造物への影響が少なく、部位ごと・面ごとの局所的な測定ができると説明しています。

では、戸建ての外壁塗装でここまでやるのか。ふつうはやりません。正直に書きます。試験には費用がかかりますし、住宅の塗り替えの見積もりに中性化試験が入っていることは、まずありません。

ただ、それを知ったうえで聞いてほしいことがあります。現地を見た業者が「原因は中性化です」と断定してきたら、それは目視の推測だということです。推測が悪いのではありません。実務としては、目視と打診で判断するのが普通です。問題は、推測を断定として話す人と、「開けてみないと分からない部分があります」と言える人のあいだに、あとで差が出ることです。

後者の答え方をする会社は、追加費用が出る可能性を先に言ってくれる会社でもあります。同じ壁を何社かに見てもらうと、この差はすぐ分かります——同じ場所を見て、言うことが揃うのか、割れるのか。割れたときこそ、理由を聞く場面です。

どんな壁で起きるか——鉄が入っている壁だけです

爆裂は、どんな外壁でも起きるわけではありません。中に鉄が入っている壁で起きます。

壁の種類爆裂は起きるか補足
鉄筋コンクリート(打ちっぱなしを含む)起きるいちばん典型的な場所。打ちっぱなしのページ
モルタル外壁起きることがある下地にラス網という金網が入っているため、そこが錆びると同じことが起きる。モルタル外壁のページ
コンクリートブロック塀起きる中に鉄筋が入っている。しかも塀は天端・地面・裏側と水の入り口が壁より多い。ブロック塀の塗装のページ
基礎(立ち上がり)起きる地面に接していて水分を受け続ける部位。基礎の塗装のページ
ベランダの手すり壁、庇、外階段起きやすい上から水がのる部分。笠木の隙間から入った水が中にたまる
窯業系サイディング基本的に起きない板の中に鉄筋は入っていない。割れる場合は別の原因(後述)
金属サイディング、ガルバリウム起きない錆びることはあるが、押し割られる構造ではない

とくに見落とされやすいのが、ベランダの手すり壁の上端庇の先端です。どちらも水平に近い面を持っていて、水が抜けずに残ります。足場を組んだときに一緒に見てもらう価値がある場所なので、覚えておいてください。

「爆裂」は、国の仕様書に一度も出てこない言葉です

ここで、言葉の話をします。業者によって説明が違って聞こえる理由が、ここにあります。

国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版——国が発注する改修工事の基準になる文書です。この中に、「爆裂」という言葉は一度も出てきません。ついでに書くと、「中性化」という言葉も、この改修仕様書には出てきません。

ではどう呼んでいるか。欠損部です。仕様書の第4章「外壁改修工事」は、適用範囲をこう定めています——打放し仕上げ外壁、モルタル塗り仕上げ外壁、タイル張り仕上げ外壁及び塗り仕上げ外壁のひび割れ部、欠損部及び浮き部の補修並びに仕上げの改修を行う工事に適用する。

つまり外壁の傷みは、公式には3つに分類されているということです。

仕様書の呼び方現場や広告でよく使われる言い方状態
ひび割れ部クラック、ヘアークラック割れているが、欠けてはいない
欠損部爆裂、欠け、剥落コンクリートやモルタルが失われている
浮き部浮き、はらみまだ付いているが、下地から離れている

これが分かると、実務で2つ得をします。

  • 見積書に「欠損部補修」と書いてあったら、爆裂の補修のことです。言葉が違うだけで、別の工事ではありません
  • 「爆裂」は正式な用語ではないので、業者ごとに指す範囲が違います。ある人は鉄筋が見えた状態だけを指し、ある人は欠けている状態すべてを指します。だから「爆裂ですね」と言われたら、どの状態を指しているのかを聞き返す価値があります——鉄筋は見えていますか、と

正しい直し方は、仕様書に書いてあります

ここがこの記事の核心です。鉄筋が見えている欠損部をどう直すかは、先ほどの仕様書に手順として書かれています。原文を引きます(4.2.3 欠損部改修共通事項)。

  • 「欠損部周辺のぜい弱部分は、ハンマー等で軽い打撃を与えて除去し、欠損部の状況を目視によって確認する」
  • 「コンクリート躯体欠損部分は、ワイヤーブラシ等でケレンし、汚れ、ほこり、油等の除去・清掃を行う」
  • そして鉄筋が出ている場合——「部分的に露出している鉄筋、アンカー金物等がある場合は、監督職員と協議し、鉄筋等の健全部が露出するまでコンクリートをはつり、ワイヤーブラシ等でケレンを行い錆を除去し、鉄筋コンクリート用防錆剤等を塗り付け、防錆処理を行う」
  • 「損傷が著しい部分の下地処理、補強等は、監督職員と協議する」

読みにくい文ですが、言っていることは単純です。

工程やること省くとどうなるか
1. はつるもろくなった部分を叩いて落とす。鉄筋が出ているなら、錆びていない健全な部分が現れるところまでコンクリートを削る削り足りないと、錆びた鉄筋が蓋の下に残る
2. ケレンワイヤーブラシなどで鉄筋の錆を落とす錆の上に材料を載せることになり、密着しない
3. 防錆処理鉄筋コンクリート用防錆剤等を鉄筋に塗る錆が再びはじまる
4. 充填失われた厚みを材料で埋め、平らに仕上げる——

いちばん大事なのは1と3です。削るのは「見た目が悪いところまで」ではなく、錆が終わるところまで。そして鉄筋に直接、防錆の材料を塗る。ここを飛ばして表面だけ埋めた補修は、数年で同じ場所が戻ってきます。錆は水と空気があれば進むので、蓋をしても止まらないからです。

そしてこの工程は、手間がかかるほど正しいという珍しい性質を持っています。ふつう工事は早く安く終わるほうがありがたいのですが、爆裂補修に限っては、削る範囲が広がったという報告は、悪い知らせではありません。健全なところまで届いた、という話でもあるからです。

※これは国が発注する工事の仕様であって、戸建て住宅の工事に同じ管理や書類をそのまま求められるという話ではありません。公共工事には検査と報告の手間が最初から単価に乗っています。ここで読み取ってほしいのは、「錆を残したまま埋めない」という工程の順番です。この順番は、建物の大きさで変わるものではありません。

錆汁が出ているひび割れは「その場で決めない」

もうひとつ、同じ仕様書に短い一文があります。ひび割れ部の改修について、こう書かれています。

「ひび割れ部から漏水している場合又は錆汁がでている場合は、改修方法について事前に監督職員と協議する」

ふつうのひび割れなら、工法は最初から決まっています(樹脂を注入する、Uカットして充填する、シールする、の3つ)。ところが漏水しているか、錆汁が出ている場合だけは、その場の判断で工法を決めずに協議しなさいと別扱いにしています。

これを住宅の言葉に置き換えると、こうなります。

  • 茶色い汁が垂れているひび割れは、ただのひび割れではない可能性がある——中で鉄が錆びているサインだからです
  • だから、そこを「ひび割れ補修一式」の中に混ぜて見積もられていたら、確認する価値があります。「この錆色は何ですか」と聞くだけで十分です

錆汁は、外から見て分かる数少ない手がかりです。壁に茶色い筋が垂れていたら、その真上に何があるかを見てください。手すり、庇、ベランダの立ち上がり、換気口の金物——出どころがあります。

使う材料と、工程に書かれている数字

埋める材料は、仕様書では2つ挙げられています。

材料仕様書の記載性格
エポキシ樹脂モルタルJIS A 6024(建築補修用及び建築補強用エポキシ樹脂)による樹脂系。強く、硬い
ポリマーセメントモルタル実績等の資料を提出することとされているセメント系。もとの壁に近い

そして施工の条件として、数字が3つ出てきます。これが見積書や工程表を読むときの物差しになります。

項目仕様書の数字意味
塗り厚(ポリマーセメントモルタル)1〜3層に分け、各層の塗り厚は7ミリ程度深い欠損を一度に埋めない。厚く盛ると、乾く過程で縮んで割れるため
養生(エポキシ樹脂モルタル)仕上げ後24時間以上埋めた翌日にすぐ塗装、という工程は無理がある
気温5度以下または50度以上になるおそれがある場合は作業を中止(覆いなどの措置を講ずる場合を除く)真冬の朝と、真夏の直射日光が当たる面は条件が悪い

「各層7ミリ程度」というのは、住宅の現場でも使える目安です。深く欠けている場所を、その日のうちに平らにして帰ったという工事があったら、何をどう埋めたのかを聞いてみる価値があります。材料によっては一度に厚く付けられるものもあるので、それ自体が手抜きだという意味ではありません。聞けば答えられるはずのこと、という位置づけで見てください。

塗装との順番も、この数字から分かります。補修は塗装の前工程で、しかも乾く時間が要ります。工期に余裕がない工事ほど、ここが削られやすい。洗浄から塗装までの乾燥と同じ構図です。

見積書で確認する4点

ここまでを、見積書の読み方に落とします。爆裂の補修が入っている見積書で見るのは、この4点です。

見るところ何が分かるか
①「欠損部補修」または「爆裂補修」の行があるかそもそも見積もりに入っているか。「下地補修一式」に丸め込まれていると、何をどこまでやるのかが分からない
② はつり・ケレン・防錆・充填が読み取れるか4行に分かれている必要はありません。「防錆」または「錆止め」の言葉があるかどうかが、いちばん確かめやすい一点です
③ 単位が「箇所」か「平米」か爆裂は面ではなく点で出ます。箇所単価なら、数が増えたときに金額がどう動くかを先に聞けます
④ 数量が「〇〇箇所(想定)」になっているかむしろこれは誠実な書き方です。削ってみないと本当の範囲は分からないからです。問題は、増えたときの単価が決まっているかどうか

そして、現地で聞く質問はひとつで足ります。

「今すぐ直さないといけない場所はありますか」

これだけです。「あと何年もちますか」は、誰に聞いても当たり障りのない答えしか返りません。今すぐかどうかを聞けば、その業者が何を重く見ているかが出ます。爆裂が本当に進んでいる家なら、まともな会社はここで手を挙げます。

見積書の読み方全般は見積もりの内訳のページに、下地補修が金額を動かす仕組みは20年放置した外壁のページにまとめています。

費用——金額を断定しない理由と、動く要素

先に断っておきます。このページでは、爆裂補修の金額を「1箇所いくら」と書きません。

理由は2つあります。ひとつは、公的な単価も、メーカーの公表価格も存在しないからです。塗料なら、メーカーが平米あたりの設計価格を公表しているので、根拠のある数字を出せます(塗料の平米単価にまとめています)。補修にはそれがありません。検索して出てくる金額は、工事会社が自社の実績から書いた数字で、根拠をたどれません。

もうひとつは、数量が最初は確定しないからです。上に書いたとおり、削ってみて健全な部分が出るまで範囲が分かりません。「1箇所いくら」の平均を書いても、あなたの家の請求額とは関係のない数字になります。

代わりに、何によって金額が動くかを書きます。ここを知っていれば、複数社の見積もりを比べる軸ができます。

動く要素なぜ動くか
箇所数点で出る症状なので、面積ではなく数で効いてくる
深さと、鉄筋まで届いているか鉄筋が出れば、ケレンと防錆の工程が加わる。埋める材料の量も増える
高さ(足場が要るか)2階の壁や庇なら足場が要ります。逆に言えば、外壁塗装で足場を組むときに一緒にやるのがいちばん安い
下地の種類コンクリートかモルタルかで工法が変わる。モルタルは塗替え工法という選択肢もある

3つめは、実務としてかなり大きい話です。爆裂の補修だけを単独で頼むと、その1箇所のために足場代がまるごとかかります。塗り替えの時期が近いなら、まとめたほうが総額は下がります。逆に、塗り替えまでまだ何年もあるのに危ない状態なら、そこは待つ場所ではありません。この判断こそ、1社の言い分で決めないでください。「今すぐ」と「塗装のときで大丈夫」で答えが割れたら、その理由を両方から聞く——相見積もりがいちばん働くのは、こういう場面です

放置すると、何が起きるか

脅かすつもりはないので、事実だけ並べます。

  • 剥がれ落ちます。すでに欠けているということは、まわりも縁が切れかけています。真下が通路・駐車場・お隣との境なら、これは美観の話ではありません
  • 鉄筋の断面積が小さくなります。先ほどの資料は、鉄筋は引張の力を受け持っているので、腐食が進んで断面積が小さくなると耐荷力の低下につながると書いています。壁一枚の見た目の問題では終わらない、ということです
  • 水の通り道になります。欠損部から入った水が室内側まで届けば、雨漏りの話になります。そうなると直す範囲が壁の外側だけで済まなくなります
  • 直す範囲が広がります。錆は横に進みます。今は10センチの欠けでも、来年は同じ手間では終わりません

一方で、あわてて即決する場面でもありません。その場で契約を迫る会社には、理由があります。落ちそうな部分があるなら、まずは真下を通らないようにして、複数社に見てもらう時間を確保してください。壁のサインの見分け方も参考になります。

自分で確認できること、してはいけないこと

まず、してはいけないことから。

  • 浮いている部分を叩いて落とさない。落ちてくる塊は思ったより重く、下に人や車がいれば危険です。「ぜい弱部分を打撃して除去する」のは、足場と養生をした職人の作業です
  • 高い場所ではしごを使わない。手すり壁や庇は、ちょうど見に行きたくなる高さにあります
  • 市販の補修材で埋めない。錆をそのままにして埋めると、そのあと業者が直すときにまず自分が埋めたものを取る作業からになります。DIYの線引きと同じ考え方です

次に、やっておくと役に立つこと

  • 写真を撮る。離れた場所から1枚(どこの壁か分かるように)、近づいて1枚。日付が残る形で
  • 茶色い筋の「出どころ」を目でたどる。筋の上端に何があるか——庇の先端、手すりの根元、金物。原因の場所は、たいてい筋の上にあります
  • 同じ場所を数か月後にもう一度撮る。変化しているかどうかは、記憶ではなく写真でしか比べられません
  • 家の中の同じ位置も見る。内側にシミや壁紙の浮きがあれば、水がすでに通っています

写真は、業者に見せる材料としても効きます。「いつからこうなっているか」を答えられる施主は、扱いが変わります。そこから話が具体的になるからです。

サイディングやタイルが冬に割れるのは、別の現象です

検索していると、サイディングが冬に割れることを「爆裂」と書いている記事に行き当たります。呼び方が混ざっているだけで、中身は別の現象です。

こちらは凍害と呼ばれるもので、外壁材が吸った水が凍って膨らみ、材料そのものを壊していく現象です。鉄筋は関係ありません。

爆裂(欠損部)凍害
壊しているもの中の鉄筋の錆による膨張圧材料が吸った水が凍るときの膨張
起きる外壁鉄筋・ラス網が入っている壁(コンクリート、モルタル、ブロック塀)水を吸う外壁材(窯業系サイディング、タイル、モルタル)
手がかり茶色い錆汁、鉄の棒が見える寒冷地・北面に多い。表面が層状にめくれる
直し方はつって錆を止めて埋める板の交換や張り替えになることが多い

凍害は、規格の側でも別に扱われています。タイルの品質を定めたJIS A 5209(セラミックタイル)には耐凍害性の有無という項目があり、工事の仕様書では「特記による」——つまり凍害に耐える必要があるかどうかを、案件ごとに指定する形になっています。凍害は、規格があらかじめ想定している別の現象だということです。

あなたの家がどちらなのかは、茶色い錆汁が出ているかどうかでおおよそ見当がつきます。錆汁があれば鉄が絡んでいます。サイディングの割れ・反りについてはサイディングの反り・浮きのページにまとめました。

よくある質問

爆裂の補修費用はいくらですか?

当サイトでは金額を断定しません。爆裂補修には、塗料のような公表単価が存在しないからです。メーカーが価格を公表している塗料と違い、補修は「どこまで削ったら健全な部分に届いたか」で手間が決まるため、開けてみるまで数量が確定しません。動くのは、箇所数・深さ・鉄筋まで届いているか・高さ(足場が要るか)の4つです。見積書では、はつり・ケレン・防錆・充填が行として分かれているかを見てください。

外壁が膨らんでいるのは爆裂ですか?

膨らみには2種類あります。塗膜だけが風船のように浮いているなら、下地が濡れたまま塗られたなど塗膜側の問題です。壁そのものが押し出されていて、割れ目から茶色い汁が出ていたり、鉄の棒が見えていたりするなら、中の鉄筋が錆びている可能性があります。ただし高い場所は触らないでください。

塗装だけで直せませんか?

欠けてしまった部分は、塗装では戻りません。塗料は膜であって、失われたコンクリートの厚みを埋めるものではないからです。順番は、補修が先で塗装が後です。ただし塗装そのものが無意味なのではなく、公開資料では中性化の対策として「水分の供給の遮断=表面保護(塗装など)」が挙げられています。爆裂が起きる前なら、塗装は効きます。

錆びた鉄筋の上から、そのまま埋めてはいけないのですか?

国が発注する工事の仕様書は、鉄筋が露出している場合、鉄筋等の健全部が露出するまでコンクリートをはつり、ワイヤーブラシ等でケレンを行い錆を除去し、鉄筋コンクリート用防錆剤等を塗り付けて防錆処理を行う、と定めています。錆は水と空気があれば進むため、残したまま蓋をすれば、その下で膨らみ続けます。数年で同じ場所が戻ってくるのは、この工程が省かれたときです。

外壁を30年放置すると、どうなりますか?

塗膜の話で済む段階を越えて、下地の話に移ります。爆裂はその一例です。年数ごとに何が変わるのかは20年放置した外壁のページに、塗装では戻せなくなる線引きは塗装では直らない傷みのページに整理しました。

火災保険は使えますか?

経年の劣化が原因なら、対象外とされるのが原則です。保険が想定しているのは風災・雹災などの偶然の事故で、年月をかけて進んだ中性化や鉄筋の錆はこれに当たりません。台風で物が当たって欠けた、といった経緯があるなら話は別なので、日付の分かる写真を残しておいてください。

一括見積もりサービスで、爆裂の補修ができる会社は見つかりますか?

ここは正直に書きます。一括見積もりサービスが想定しているのは、ふつうの戸建ての塗り替えです。ただし爆裂は、外壁塗装の見積もりのときに一緒に見つかることがほとんどで、下地補修は塗装工事の中に含まれる作業でもあります。まずは複数社に現地を見てもらい、同じ場所を見て説明が一致するかを比べてください。説明が割れる場所こそ、複数の目が要る場所です。

最終確認日:2026年8月31日。工法・材料の仕様は最新の情報をご確認ください。実際の判断は現地調査にもとづいて行ってください。

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戻せる段階と、戻せない段階

見積もりの内訳

下地補修の行を、どう読み比べるか

爆裂は、見た目の派手さと、実際の深刻さが一致しない症状です。小さく欠けているだけに見えて中の鉄筋が広く錆びていることもあれば、逆に表面のモルタルが落ちただけのこともあります。だからこそ、1社の見立てで決めないでください。同じ壁を何社かに見てもらって、「どこまで削るつもりか」を聞いてみてください。答えが具体的な会社と、そうでない会社が、ここではっきり分かれます。

参考にした情報

  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」4章 外壁改修工事(4.1.1 適用範囲、4.1.4 改修工法の種類、4.2.2 ひび割れ部改修共通事項、4.2.3 欠損部改修共通事項、4.2.4 材料、4.2.8 充填工法)
  • 舞鶴工業高等専門学校 公開資料「コンクリート中性化入門」(不動態被膜、錆による断面積の減少と膨張圧、中性化試験のコア法・ドリル法、中性化の対策と補修工法)
  • 建築基準法施行令 第79条(鉄筋のかぶり厚さ、および第2項の目的)——e-Gov法令検索
  • JIS A 5209(セラミックタイル)——耐凍害性の区分について。公共建築改修工事標準仕様書での引用による
  • JIS A 6024(建築補修用及び建築補強用エポキシ樹脂)——同上