ブロック塀の塗装——「塗ると膨れる」仕組みを知ってから決める

外壁塗装の見積もりのとき、「せっかくなら塀もきれいに」という話がよく出ます。ここで知っておいてほしいことがあります。塀は、家の外壁と同じ感覚で塗ってはいけない場所です。理由は水。塀は屋根のない壁で、てっぺんからも地面からも水を吸うため、家の壁で優秀な塗料(弾性・微弾性)が、塀では膨れの原因側に回ることがあるのです。膨れる仕組み、それでも塗るなら確認すること、そして「塗らない」という選択肢まで、順番に整理します。

このページの内容

塀は「屋根のない壁」——水の入り口が3方向にある

家の外壁には屋根と軒があり、壁の内側は室内です。つまり水は基本的に表側からしか来ません。塀は違います。

  • てっぺん(天端)から——屋根がないので、雨は塀の頭に直接落ちて、しみ込みます
  • 地面から——ブロックやコンクリートは水を吸い上げる素材です。雨のあと、塀の根元だけ色が濃いのを見たことがあるはずです
  • 裏側から——塀は両面が外です。表だけ塗っても、裏から吸った水は中を通って表に向かいます

この「水の入り口が多い」という一点が、塀の塗装のすべてを決めます。表面に何を塗っても、水は別の入り口から中に入ってくる——この前提で読み進めてください。

膜を張る塗料だと膨れる——仕組みの種明かし

塀の塗装でいちばん多いトラブルは「数年で膨れて、パリパリ剥がれてきた」です。原因は施工の腕の前に、塗料の選び方の構造問題であることが多い。塗料販売店のペイントシティーコムが公式FAQで、仕組みをそのまま説明しています。

ブロック塀が膨れる仕組み(塗料販売店の公式FAQより)

「ブロック塀は、雨天時に天面や地中からの水分を吸収し、晴天時の気温上昇に伴い、水分が塗膜内面から外に出ようとします。この時に、通気性がない塗膜が塗装されている場合、フクレの現象を起こします」——対策として挙げられているのは、天端を覆う笠木の設置と、通気性・透湿性に優れた塗料の選定です。

整理するとこうです。塀の中の水は、晴れた日に水蒸気になって外へ出ようとする。そこにぴったり密着した防水膜があると、行き場のない水蒸気が塗膜を内側から押して、風船のように膨らませる。つまり——

ひび割れに強い「弾性・微弾性」の塗料ほど、塀では膨れの原因側に回りやすいのです。水を通さない柔らかい膜、という長所がそのまま裏目に出ます。これは塀に限った話ではなく、日本ペイントの公式FAQも、塗膜の膨れの原因として水分を含む素地への塗装や、弾性塗料の上への塗り替えを挙げています。同じ構造の話は窯業系サイディングに弾性塗料を使わない理由でも書きました。「ひび割れ対策に弾性で」という家の外壁の正解が、塀では要注意になる——ここが、ついで塗装の落とし穴です。

それでも塗るなら——契約前に確認する3つのこと

膨れの仕組みが分かれば、確認すべきことは自動的に決まります。

  • 塗料塀に使う塗料の商品名は?透湿性はどうなっていますか?「外壁と同じ塗料でまとめて」の提案だったら、この質問が効きます。塀の膨れの仕組みを知っている会社なら、透湿(水蒸気を逃がす性質)の説明が返ってくるはずです
  • 天端てっぺん(天端)の水はどうしますか?水の最大の入り口です。笠木で覆う・天端の処理を変えるなど、塗る前に水の入り口を減らす発想があるかどうかで、提案の質が分かります
  • 下地下塗り(シーラー)は何を使いますか?いま湿っていても塗れますか?湿った素地への塗装は膨れの典型原因です。「雨のあと何日あける」という段取りの話が出る会社は、仕組みを分かって施工しています

なお、塗りつぶし以外の仕上げもあります。砂壁のような質感になる石材調の塗材(エスケー化研の「サンドフレッシュSi」など、専用の下塗りとセットで使う製品群)は、ベタッとした「塗った感」を避けたい場合の選択肢として実在します。どの仕上げでも、上の3つの確認は同じです。

「塗らない」も立派な選択肢です

正直に書きます。塀は、塗らないという答えが正解になることが珍しくない場所です。

  • ブロックやコンクリートは、素地のままで成立している材料です。家の外壁のように「塗膜が防水を担っている」構造ではないので、塗らないこと自体は放置ではありません
  • 一度塗ると、塗り続けることになります。膨れ・剥がれが出た塀の再塗装は、傷んだ塗膜を落とす手間が乗るぶん、初回より面倒になります
  • 汚れが気になるだけなら、洗浄という手当てがあります。コケ・黒ずみはコケ・カビのページの考え方がそのまま使えます

「見た目を良くしたくて塗ったのに、数年後の剥がれ方が汚れよりも目立つ」——塀の塗装で後悔している方の典型がこれです。目的が美観なら、塗った直後ではなく5年後の姿で比べてから決めてください。

塗装より先に、安全の点検——国のチェックポイントがあります

塀の見た目を気にする前に、ひとつだけ確認してほしいことがあります。2018年の大阪府北部地震でブロック塀の倒壊被害が起きたのを受けて、国土交通省が「ブロック塀の点検のチェックポイント」を公開しています。高さ・厚さ・控え壁・基礎・傾きやひび割れ・鉄筋といった項目を、所有者が自分で確認できる形にしたものです。

  • 傾き・ぐらつき・大きなひび割れは、塗装で隠す場所ではなく、安全の問題です。この状態の塀に化粧をしても、リスクは1ミリも減りません
  • 点検して不安があれば、相談先は塗装業者ではなく市の建築指導課や、建築士・エクステリア業者です。自治体によってはブロック塀の撤去・改修に補助金を出しているところもあります(助成金のページから、お住まいの市の制度を確認してください)
  • 逆に、塗装の見積もりに来た業者が「この塀は傾きがあるので、塗装より先に安全の確認を」と言ったら、それは仕事を減らしてでも正しいことを言える会社です。覚えておく価値があります

擁壁は別物——水抜き穴を塞がない

斜面や高低差のある土地でコンクリートの壁(擁壁)を塗りたい、という相談もありますが、擁壁は塀とも別物です。裏に土があり、常に水と土の圧力を受けている構造物だからです。

  • 擁壁に開いている穴は水抜き穴です。裏の水圧を逃がすための機能部品で、塗装やモルタルで塞ぐのは厳禁です
  • 裏から水が回る度合いは塀よりさらに大きく、表面の塗装で水を止めることはできません。しみ出し・白い析出(エフロレッセンス)は、表面の美観処理より先に原因側の話です
  • ひび割れ・はらみ(膨らみ)・傾きのある擁壁は、塗装の話ではなく構造の安全の話。相談先は自治体や建築士です

よくある質問

自分で塗ってもいいですか?

塀は低くて足場が要らないぶん、屋根や外壁と違ってDIYの候補になりうる場所です。ただし、このページの仕組みはDIYでも同じです。膜厚の付く弾性系を避けて透湿性のある塗料を選ぶ・雨のあとの湿った塀に塗らない・天端の水を考える——ここを外すと、数年で膨れます。缶の説明書きにある下地条件と乾燥時間は必ず守ってください。自分でやれる範囲の線引きはDIYのページにまとめました。

外壁塗装のついでに「塀もサービスで」と言われました

金額の話の前に、塀に何を塗るのかを聞いてください。外壁と同じ塗料をそのまま塀に回す前提なら、このページの仕組みを知らないか、知っていて省いているかのどちらかです。サービスだから雑でいい場所、ではありません。

もう膨れて剥がれています。上から塗り直せますか?

膨れた塗膜の上から重ねても、下の膜ごとまた剥がれます。傷んだ塗膜を除去してからが前提で、そのうえで塗料の選び直し(透湿側へ)と水の入り口の処理をセットで考える必要があります。除去の範囲と方法は状態次第なので、現地で複数社の説明を比べてください。

塀の塗装にも助成金は出ますか?

「塀をきれいにする塗装」への補助は基本的にありません。一方で、危険なブロック塀の撤去・建て替えには補助制度を持つ自治体が実際にあります。美観より安全側にお金が付く、という構図は家の外壁と同じです。

最終確認日:2026年8月21日。塀・擁壁の状態は個々に異なります。安全に関わる判断は必ず自治体・専門家への相談にもとづいて行ってください。

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参考にした情報

  • ペイントシティーコム「ブロック塀に塗装した塗料が、フクレて一部剥がれています。補修方法を教えてください。」(公式FAQ)
  • 日本ペイント「外壁の塗膜が膨れてきたので塗り替えたが、また同じ場所が膨れてきた。考えられる原因は何ですか?」(よくあるご質問)
  • 国土交通省「ブロック塀の点検のチェックポイント」(平成30年6月・建築物の既設の塀の安全点検について)
  • エスケー化研「サンドフレッシュSi」(公式製品情報)