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外壁のコケ落とし——落ちます。でも、環境は変わりません

外壁の緑の汚れは、落とせます。市販の道具でも、業者の洗浄でも。ただ、検索して出てくる「落とし方」の記事が言わないことがひとつあります——コケが生えた原因はその面の環境で、落としても環境は変わらないということ。だから「落とすこと」と「生えにくくすること」を分けて、順番に整理します。

このページの内容全16項目

コケ・カビは塗り替えが答えになる側です。落とすだけなら塗装工事でなくても済みます。ほかの症状がどちらに入るかは外壁の症状の仕分けに。

「保証で直せますか」——法律の答えははっきりしています

コケを見つけた方がまず考えるのが、これです。「新築のときの保証で直してもらえないのか」「前に塗ってもらった業者に言えないのか」。順番に整理します。

新築の10年保証の場合

新築住宅には法律で定められた10年間の責任があります。住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)の第94条です。

品確法 第94条(住宅の新築工事の請負人の瑕疵担保責任)

住宅を新築する建設工事の請負契約においては、請負人は、注文者に引き渡した時から十年間、住宅のうち構造耐力上主要な部分又は雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものの瑕疵(構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く。)について、(中略)担保の責任を負う。

そして「政令で定めるもの」の中身が、施行令の第5条に書かれています。

品確法施行令 第5条第2項

雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
二 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分

ここから読み取れることは、はっきりしています。

外壁は、たしかに10年保証の対象部位です。施行令にそう書かれています。ところが、対象になる瑕疵は「雨水の浸入に影響のあるもの」に限られます。94条の括弧書きが「構造耐力又は雨水の浸入に影響のないものを除く」と明記しているからです。

コケが生えているだけでは、雨水の浸入には影響しません。だから、法律で定められた10年保証を根拠に「コケを落とせ」と請求することはできない——これが法的な答えになります。

塗り替え工事の保証の場合

数年前に塗り替えをしていて、その保証が残っている場合はどうか。こちらは法律ではなく、業者との契約の問題です。塗装工事の保証書には、たいてい「保証の対象」と「免責事項」が書かれています。

そして汚れ・コケ・カビは免責に入っていることが多いのが実情です。理由は単純で、生えるかどうかが立地と環境に左右され、施工の良し悪しだけでは決まらないからです。北面で植木が近い家と、南向きで風が通る家とでは、同じ工事をしても結果が変わります。

ただし、確かめる価値はあります。手元の保証書を出して、免責の欄を読んでください。書かれていなければ聞いてみればいい話です。保証の読み方は保証のページにまとめました。

ここが分かれ目です

コケ=保証の対象外だとしても、剥がれ・膨れ・著しい変色は対象になっていることが多いのが普通です。だから、コケと一緒にそういう症状が出ていないかを先に確かめてください。コケの下に膨れが隠れていることがあります(このページの後半で扱います)。

まず、汚れの「色」と「場所」を写真に撮る

ブラシや洗浄剤を買いに行く前に、スマホで記録してください。見るのは2点だけです。

  • 色——緑っぽいか、黒っぽいか。次の章のとおり、正体と対処が変わります
  • 場所——北側か、植木や隣家に近い面か、壁の下のほうか、窓の下か。「どこに生えているか」がそのまま原因の証拠になります

この写真は、あとで業者に相談するときの説明資料になるだけではありません。築数年でコケが出た場合、施工店や住宅会社への相談材料にもなります(保証や施工の話につながることがあるためです——詳しくはFAQで)。

緑と黒の正体——ざっくり見分ける

見た目正体(ざっくり)特徴
緑のうっすらした汚れ藻・コケ北面・日の当たらない面に面で広がる。外壁の「緑の汚れ」の大半はこれ
黒い点々・黒ずみカビ湿気がこもる場所に出やすい。緑の汚れと同居していることも多い
窓の下の黒い筋雨だれ汚れ生き物ではなく、雨が運んだ排気・土埃の汚れ。原因が違うので対処も別(サッシまわりの汚れの通り道の問題)

厳密な区別は顕微鏡の世界なので、実用上は「生き物系(緑・黒)か、汚れ系(筋状)か」が分かれば十分です。生き物系はこのページの以降で扱います。筋状の汚れ=雨だれは原因も対処も別なので、次の章にまとめました。

窓の下の黒い筋——「雨だれ」はコケではありません

上の表の3行目です。窓やサッシの下、水切りの下、庇の下から、縦に落ちてくる黒い筋。これはコケでもカビでもありません。「外壁にカビが出た」という相談で見に行くと、かなりの割合がこれです。

ニチハは自社サイトで、こう書いています——「外壁の雨筋汚れは、雨水に汚れが混じって付着することが主な原因です」。生き物ではなく、雨が運んできた排気ガスや土埃が、同じ場所を通り続けて残ったものです。

だから、洗っても同じ場所にまた出ます

コケなら、日当たりと乾きの問題なので環境を変える話になります。雨だれは違います。水が同じ道を通っているかぎり、洗った翌年も同じ筋が出ます。

ニチハは、掃除の方法と並べて予防の方法も書いています——「そもそも雨筋汚れが付かないように雨樋に破損がないかチェックしたり、窓枠の下に伝い水を防止する水切りを付けたりする対策もあります」。

つまり、雨だれの相談で見るべきものは外壁ではなく、その筋の上にあるものです。

筋がどこから始まっているかで、疑うものが変わります
筋の始まり疑うもの詳しく
窓・サッシの下サッシ下に水切りが無い/効いていない外壁の水切りのページ
壁の途中から広く雨樋のあふれ・外れ・たわみ雨樋の修理のページ
庇(霧除け)の下庇の先から壁を伝っている付帯部・庇の章
ベランダの笠木の下笠木の水切りの出が足りない笠木のページ

落とし方は、コケと少し違います

雨だれは生き物ではないので、コケ取り剤の出番ではありません。ニチハの案内は、雨筋汚れについて「基本的には、水を含ませた柔らかい布や柔らかいブラシで拭きとることで綺麗になります」としています。

そして家庭での洗い方について、同社はこう書いています——水圧が強すぎると傷が付く可能性があるため、家庭でのお手入れなら高圧洗浄機ではなく散水ホースが適している。さらに「窯業系サイディングや金属製サイディングに高圧洗浄やスチーム洗浄を行うと、塗膜に悪影響を及ぼす恐れがある」とも書いています。ケルヒャーの章と合わせて読んでください。

「雨だれが目立たない色はありますか」

よく聞かれる質問ですが、色で消える汚れではありません。雨だれとして残るものは一色ではないからです。排気ガスや土埃は黒っぽく残り、水垢は白っぽく残ります。どちらの色を選んでも、反対側の汚れのほうが目立つようになります。

色で悩むより先に、上の表で筋の出どころを止めるほうが効きます。そのうえで塗り替えの色や塗料を考えるなら、生えにくくする章と人気色のページが参考になります。

コケと雨だれが同居していることもあります

北面で、緑の面汚れの上に黒い筋が乗っている——これは珍しくありません。そのときは2つとも手当てが要ります。コケは乾かない面の問題、雨だれは水の道の問題で、原因が別だからです。

業者に見てもらうときは、「緑の面」と「黒い筋」を分けて写真を撮って渡してください。色と場所を撮るのは、そのためです。

なぜ生えるのか——本当の原因は「乾かない面」

藻もコケもカビも、必要なものは同じです。水分が残り続ける表面。だから生える場所は決まっています——日が当たらない北面、植木や隣家が近くて風が通らない面、湿気が上がってくる壁の下部。

そしてもうひとつ、時間の要素があります。新しい塗膜は水を弾くので、壁の表面はすぐ乾きます。ところが塗膜が古びてチョーキングが始まるころには、壁の表面が水を保持しやすい状態に変わっている。つまり築十数年の家の北面にコケが広がってきたら、それは「汚れの問題」であると同時に、塗膜が水を弾かなくなってきたサインでもあります。恐怖をあおる話ではなく、順番の話です——コケそのものが壁を壊すのではなく、コケが生えるほど乾かなくなった壁が、劣化の入り口に立っている。

コケ落としの正直な話——自分でやる場合の順番と、高圧洗浄機の注意

  • OK:手の届く範囲を、やわらかい道具で——水と中性洗剤、やわらかいブラシやスポンジで、こすり落とす。1階の目線の高さまでなら、これで十分きれいになります。強くこすりすぎて塗膜を傷めないことだけ注意
  • 注意:家庭用高圧洗浄機——じつは要注意の道具です。すでに弱った塗膜に高圧を当てると、コケと一緒に塗膜ごと剥がれることがあり、シーリングの切れ目やサッシまわりに水を打ち込んでしまうリスクもあります。新しめの壁の軽い汚れなら距離を取って使えますが、チョーキングが出ているような壁には向きません
  • 注意:コケ取り剤・塩素系漂白剤——落ちますが、壁材や塗膜との相性・変色・植木への影響があります。使うなら目立たない場所で試してから。「原液をかけてこすらず放置」のような強い使い方は、汚れと一緒に塗膜の寿命も削ります
  • 2階から上は、業者へ——屋根や雨樋と同じで、高所のDIYはリスクと釣り合いません。塗装前の高圧洗浄やバイオ洗浄(洗浄剤で根から分解する方法)はプロの領域です

そして冒頭の話に戻ります。どの方法で落としても、北面が北面であること、風が通らないこと、塗膜が水を弾かなくなってきたことは変わりません。だから軽い汚れのうちは「ときどき落とす」でいいのですが、落としても半年〜1年で戻ってくるようになったら、次の章の話に進むタイミングです。

「ケルヒャーで落とせますか」——メーカー自身が条件を書いています

この質問は本当に多いのですが、答えを持っているのは塗装業者ではなく高圧洗浄機のメーカーです。ケルヒャーは公式サイトに外壁洗浄の手引きを載せていて、そこにやってはいけない条件まで書いています。

ケルヒャー公式「外壁洗浄のための高圧洗浄機の選び方・使い方」より

・欠けたりひび割れしている箇所はないかチェック。その部分の洗浄は避けましょう。年数が経った塗装やコーキング部分も確認し、該当箇所は水圧を落として洗浄しましょう。
※外壁の粉吹き、ひび割れ、シーリングの剥がれなどがある場合は劣化が進んでいるサインです。高圧洗浄は避け、早急にメンテナンスを行いましょう。
・外壁材の種類によっては、高圧洗浄できないものもありますのでハウスメーカーにあらかじめご確認ください。

読み飛ばさないでください。「粉吹きがあるなら高圧洗浄は避けろ」とメーカーが言っています。粉吹きというのはチョーキングのことで、壁を手でこすったときに白い粉が付く現象です。劣化サインのページで扱っているとおり、塗膜が寿命に近づくと出てきます。

ここで、このページの前半とつながります。コケが広がってきた壁は、塗膜が水を弾かなくなってきた壁です。そして水を弾かなくなった壁は、チョーキングが始まっていることが多い。つまり「コケがひどいから高圧洗浄で落とそう」と考えた時点で、すでにメーカーが避けろと言っている条件に当てはまっている可能性があるということです。

だから、洗う前にやることが決まります。手でこすって、白い粉が付くかどうかを確かめてください。付くなら、高圧洗浄で落とす話ではなく、塗り替えの時期を考える話に変わります。

それでも使う場合の、メーカーが書いている条件

粉吹きもひび割れもなく、比較的新しい壁の軽い汚れなら、ケルヒャーは使えます。公式が挙げている使い方は次のとおりです。

項目メーカーの記載
まず試す外壁の隅など目立たない部分でお試し洗浄をして、水圧を調整し、汚れの落ち具合と外壁の状態を確認してから本番
距離ノズルと洗浄面との距離は20〜30cmを保つ
方向上から下へ向け、汚れが流れ落ちるように。面に対してなるべく直角に当てる
動かし方ノズルはゆっくり動かす
水圧の目安外壁の汚れを落とすなら吐出圧力7MPa以上の機種を推奨
連続使用家庭用の定格使用時間(連続使用時間)は1時間。1時間使ったら電源を切って休ませる
近隣隣家が近いと水が飛散する可能性がある。音も出るのであいさつをしておくとよい

「目立たない場所で試す」が最初に来ているのが重要です。いきなり正面の壁から始めない。試した場所で塗膜が薄く剥がれるようなら、そこで中止する判断ができます。

そして2階から上は、この話に含まれません。脚立や梯子に乗って高圧洗浄機を構えると、反動でバランスを崩します。高さのある場所は、足場を組んで作業する領域です(足場の話はこちら)。

プロの高圧洗浄と、何が違うのか

塗装業者が塗り替え前に行う高圧洗浄は、目的が違います。汚れを落として見た目をきれいにするためではなく、塗料が密着する下地をつくるためにやります。だから、落とすのはコケだけでなく、脆くなった古い塗膜そのものです。

洗浄剤を使ってコケや藻を分解してから流す方法(バイオ洗浄と呼ばれることがあります)を採る会社もあります。これも「きれいにする」ためではなく、根が残って再発するのを抑えるための工程です。

つまり自分でやる洗浄とプロの洗浄は、同じ機械を使っていても目的が別物です。前者は掃除、後者は下地づくり。掃除で足りる段階なのか、下地づくりが必要な段階なのかを見分けるのが、このページの本題です。迷ったら、何社かに壁を見てもらってください。洗えば済む状態なのか、塗り替えの時期なのか——現地を見た人の見立てが揃えば、判断できます。

カビキラーやハイターを使う前に

「カビキラーで落ちますか」「ハイターは使えますか」という質問も多く出ます。落ちることは落ちます。塩素系の主成分である次亜塩素酸ナトリウムには、カビの細胞と色素を酸化・分解する作用があるからです(ジョンソン株式会社の公式解説より)。

問題は、浴室と外壁では条件がまるで違うことです。

  • ①洗い流しきれない——浴室ならシャワーで流せますが、外壁は面積が広く、洗剤が下へ垂れていきます。残った薬剤が壁を傷めることがあります。
  • ②植木と地面に落ちる——壁の下に植栽があれば、そこへ流れます。塩素系は植物を枯らします。
  • ③隣家に飛ぶ——風がある日は霧状に飛びます。隣の車や洗濯物に付けば、こちらの責任です。
  • ④壁材と塗膜との相性——変色することがあります。使うなら目立たない場所で試してから。
混ぜると危険——メーカーが明記しています

ジョンソンの公式解説によれば、次亜塩素酸ナトリウムは酸性タイプの製品や酢などの酸性物質が混ざると急激に分解し、危険な塩素ガスが発生する場合があります。さらにアルコールやアンモニア等も混ざると有害なガスが発生すると書かれています。
「塩素系のカビとり剤は、必ず単独で使いましょう」——これがメーカーの指示です。別の洗剤を使いたい場合は、必ず水で充分洗い流してから。
屋外は屋内より安全だと思われがちですが、壁際の狭い場所やベランダは風が抜けません。「まぜるな危険」は外でも同じです。

整理すると、こうなります。手の届く範囲の軽い汚れなら、水とやわらかいブラシで十分落ちます。塩素系を持ち出すのは、それで落ちなかったときの次の手です。そして落ちないほど根が入っているなら、それは掃除で解決する段階を過ぎているサインかもしれません。

ホームセンターの「コケ取り剤」は、どう位置づけるか

外壁用のコケ取り剤・苔取りスプレーは、ホームセンターにも通販にも並んでいます。製品名を挙げて順位をつけることはしませんが、選ぶときに見るところは共通しています。

  • 成分が塩素系かどうか——塩素系なら、上の①〜④(洗い流し・植木・隣家・相性)がそのまま当てはまります。「外壁用」と書いてあっても、垂れて植木にかかる話は変わりません
  • 「流さないタイプ」か「流すタイプ」か——外壁は面積が広く、水で流しきるのが大変です。流さないタイプのほうが、家庭では扱いやすいことが多いです
  • 使える下地が書いてあるか——製品の注意書きに、使えない外壁材が挙げられていることがあります。自分の家の外壁材が分からないときは、4種類の見分け方から

そして、いちばん大事なところです。コケ取り剤で落ちるのは「いま生えているコケ」だけです。——生える理由は「乾かない面」なので、環境が変わらなければ、また生えてきます。1〜2年ごとに同じ作業を繰り返すことになる、と見込んでおいてください。

手が届く高さなら、それでも十分に意味があります。——問題は2階の壁と、北側の高いところです。そこは脚立に乗る話になり、転落事故のデータの世界に入ります。高いところのコケは、足場を組む工事のついでに落としてもらうのがいちばん安全で、結局いちばん安く済みます。

屋根の苔は、外壁とは対処が変わります

「屋根の苔」で来られた方へ。生える理由は外壁と同じ「乾かない面」ですが、やれることが3つ違います。

  • 自分で落とすのは、まず無理です——傾いた面の上に、苔で滑る状態で乗ることになります。屋根のDIYで書いたとおり、ここは道具の話ではありません
  • スレート屋根の苔は「塗膜が切れたサイン」でもあります——表面の保護が衰えると吸水しやすくなり、乾かない時間が延びます。苔そのものより、塗り替えの時期が来ているかどうかが本題です(スレート屋根の塗装)
  • 塗り替えのとき、防藻の効く塗料を選べます——屋根用の塗料には防かび・防藻をうたう製品があります。ただし「二度と生えない」ではありません——北面で日が当たらない条件は変わらないからです

陶器瓦の苔は、また別です。——陶器瓦はそもそも塗らない屋根材なので、塗料で防ぐという手が使えません。落とすだけになります。

放置すると、どうなるのか

ここは正直に書きます。コケが生えているだけで、家がすぐに壊れることはありません。「コケを放置すると家が腐ります」と急かす説明を見かけますが、そこまで直線的な話ではありません。

実際に起きるのは、もっと地味なことです。

起きること中身
落ちにくくなる根が入り込むと、水とブラシでは落ちなくなります。早い段階なら自分で落とせたものが、業者の洗浄が必要な状態に変わります
壁が乾く時間が延びるコケ自体が水を保持するので、その面はさらに乾きにくくなります。条件が悪いほうへ動くということです
下のサインが見えなくなる緑に覆われると、その下のひび割れや膨れが見えません。本当に困る症状のほうが隠れます
洗浄で落とせる時期を逃すチョーキングが進むと、メーカーが言うとおり高圧洗浄そのものが避けるべき作業になります

いちばん実害があるのは3つめです。コケは、他のサインを隠します。ひび割れがどこまで伸びているか、塗膜が浮いていないか——緑に覆われた壁では確認できません。

だから「コケが気になる」という段階でやることは、落とすことそのものより、下に何があるかを見ることです。手の届く範囲を洗ってみて、その下の壁がどうなっているかを確かめる。それだけでも判断材料が増えます。

そして、この確認を自分でやりきるのは難しいのが実際です。2階から上は見えませんし、北面の高い位置ほどコケは濃く出ます。何社かに現地を見てもらうと、高い場所まで含めた状態が分かります。写真を撮って見せてくれる会社なら、自分の目でも確かめられます。「まだ洗浄で足りる」と言われたなら、それはそれで安心材料です。

生えにくくする——塗り替え時にできること

生えにくくする対策が本格的に打てるのは、塗り替えのタイミングです。

  • 防藻・防カビ性のある塗料を選ぶ——多くの塗料に防藻・防カビ機能を持つ製品があります。北面や植栽の近くなど「生える条件が揃っている家」では、塗料選びの際に「うちはコケが出やすいので防藻性を重視したい」と伝える価値があります。汚れにくさそのものを主戦場にした製品もあります(エスケープレミアム無機)
  • ただし「絶対に生えない塗料」はありません——防藻・防カビは「生えにくくする」機能で、環境が強ければいつかは生えます。「この塗料なら二度と生えません」という営業トークは、その時点で盛りすぎです
  • 環境側も少しだけ動かせる——壁ぎわの植木を刈って風の通り道を作る、壁に立てかけた物をどける。地味ですが、乾く時間を作ることが唯一の根本対策です

コケと一緒に「膨れ」があったら、話が変わります

コケの近くで、塗膜が水ぶくれのようにぷくっと膨れている場所を見つけたら、それは汚れの話ではなくなります。膨れは、塗膜の下に水分や湿気が入り込んでいるサインです。壁の内側からの湿気の逃げ道がない、あるいはどこかから水が入っている——いずれにしても「表面の掃除」では届かない場所で何かが起きています。

このとき絶対にやってはいけないのが、上から塗って隠すことです。水分の出口を新しい塗膜でふさげば、膨れは再発するか、もっと広がります。膨れを見つけたら、水の入口がないかの確認と、「なぜ膨れたと考えるか」を説明できる業者への相談が先です。原因の説明を飛ばして「塗り直しましょう」だけの提案なら、それは膨れの原因ごと塗り込める提案かもしれません。

コケやカビが出ているのは、塗膜が水を弾かなくなってきたサインであることが多いです。落として終わりにするか、塗り替えの時期と見るかで、その後が変わります。何社かに現地を見てもらって、いま塗るべきか、まだ待てるかを聞いてください。判断が一致すれば答えは出ています。洗浄だけで済ませられるなら、それも分かります。

業者に頼むと、何をしてもらえるのか

「コケ取りだけ」を業者に頼めるのかどうか——これも実際によく出る疑問です。

結論から言うと、洗浄だけを単独で請け負う会社と、塗り替えとセットでしか受けない会社があります。ハウスクリーニングの会社なら洗浄だけを扱っていますし、塗装店では「洗っても再発するので、塗り替えの時に一緒に」と言われることがあります。どちらが正しいという話ではなく、業種が違います。

費用については、正直に書きます。公表された相場の基準がありません。面積、階数、汚れの程度、足場が要るかどうかで大きく変わるためです。ここで「1平米あたり◯円」と書くことはできますが、根拠のない数字を並べても判断の役には立ちません。

代わりに、金額が動く条件を挙げます。

  • 足場が要るかどうか——2階から上を洗うなら足場が必要になり、これだけで金額の桁が変わります(足場代のページ)
  • 洗浄剤を使うかどうか——水洗いだけか、薬剤で分解してから流すか
  • 洗う範囲——北面だけか、全面か
  • 養生の必要性——隣家が近ければ、飛散を防ぐ手当てが要ります

ここで考えてほしいことがあります。足場を組んで洗浄するなら、その足場で塗り替えまでやってしまったほうが、長い目では安く済むことが多いのです。洗浄のために足場を組み、数年後に塗り替えでもう一度組むのでは、足場代を二度払うことになります。

だから相談するときは、「洗浄だけの見積もり」と「塗り替えまで含めた見積もり」の両方を出してもらってください。差額を見れば、いま洗うだけにするか、まとめてやるかを自分で判断できます。何社かに同じ頼み方をすれば、その差額の相場感もつかめます。片方だけ見せられて決めるより、両方並べたほうが納得できます。

※「洗浄だけを業者に頼む」を検討している方は、外壁クリーニングの料金もご覧ください。足場が要るかどうかで、塗り替えと同じ土俵に乗ります。

よくある質問

コケは自分で落とせますか?

手の届く範囲の軽い汚れなら落とせます。水とやわらかいブラシ、必要なら中性洗剤で十分です。2階から上は、足場のない高所作業になるので勧めません。また、壁を手でこすって白い粉が付く(チョーキング)状態なら、洗うより塗り替えの時期を考える段階です。

何年くらいで生えてきますか?

環境で大きく変わるので、年数では決まりません。北面で植木が近く風が通らない家では築数年で出ることがありますし、日当たりと風通しの良い家では十数年出ないこともあります。「何年で生えるか」より「生えてきたら塗膜が水を弾かなくなってきた合図」と考えるほうが実用的です。

火災保険は使えますか?

コケやカビは経年による汚れなので、対象になりません。火災保険が使えるのは台風や雹などの自然災害による破損です。考え方は火災保険のページにまとめました。「保険でコケ取りが無料になる」と持ちかける業者には、その場で契約しないでください。

スチームクリーナーなら安全ですか?

高圧洗浄機より水圧は低いのですが、熱と水分を壁に当てることに変わりはありません。チョーキングやひび割れがある壁で使えば、塗膜を傷める可能性は同じようにあります。使う前に、目立たない場所で試してください。

築3年なのにコケが生えてきました。おかしくないですか?

環境次第では築浅でも生えます(北面・水はけ・風通しの条件が揃っている場合)。ただし、あまりに早い場合は施工や建材側の要因が関係していることもあるので、まず建てた住宅会社・施工店に写真を添えて相談してください。保証の対象になるかは契約によりますが、相談した記録を残すこと自体に意味があります。

北側だけ緑になるのはなぜですか?

日照が少なく、壁が乾くまでの時間がいちばん長い面だからです。同じ家でも南面に生えないのは、塗膜の差ではなく乾く速さの差。つまり北面は家の中でいちばん条件が厳しい「先行指標」で、北面の状態を見れば、家全体の塗膜の残り体力をいちばん早く教えてくれます。

コケが生えていたら、もう塗装が必要ということですか?

即断はしないでください。軽い汚れの段階なら掃除で十分です。判断の材料は、コケ単体ではなくチョーキング・ひび割れなど他のサインとの合わせ技——劣化サインのページと塗らなくていい家の話を合わせて見てもらうのが正確です。「コケが生えてますよ、今すぐ塗装を」という訪問営業への答え方も、そこに書いてあります。

窓の下の黒い筋もコケですか?

ちがいます。「雨だれ」で、生き物ではありません。ニチハは「外壁の雨筋汚れは、雨水に汚れが混じって付着することが主な原因です」としています。雨が運んだ排気ガスや土埃が、同じ道を通り続けて残ったものです。

だからコケ取り剤は効きませんし、洗っても水の道が変わらなければまた出ます。見るのは外壁ではなく、その筋の上にあるもの——サッシ下の水切り、雨樋、庇、笠木です。

雨だれが目立たない外壁の色はありますか?

色で消える汚れではありません。雨だれとして残るものが一色ではないからです。排気ガスや土埃は黒っぽく、水垢は白っぽく残るので、明るい色でも濃い色でも「反対側の汚れ」が目立つようになります。

色を考えるより先に、筋の出どころを止めてください。そのうえで塗り替えの色を選ぶなら人気色のページへ。

参考にした情報

  • ニチハ株式会社「ファサードを美しく保つ外壁のお掃除方法」(2024年4月1日)——雨筋汚れの原因は雨水に汚れが混じって付着することである旨、雨樋の破損確認と窓枠下の水切り設置という予防策、雨筋汚れは水を含ませた柔らかい布やブラシで拭き取る旨、家庭のお手入れは高圧洗浄機ではなく散水ホースが適する旨、窯業系・金属製サイディングへの高圧洗浄・スチーム洗浄は塗膜に悪影響を及ぼす恐れがある旨、藻・カビは菌が死んでも跡が残る旨(2026年9月12日確認)
  • 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11年法律第81号)第94条、同法施行令(平成12年政令第64号)第5条——e-Gov法令検索で条文を確認
  • ケルヒャー公式「外壁洗浄のための高圧洗浄機の選び方・使い方」——洗浄前の準備、粉吹き・ひび割れ・シーリング剥がれがある場合の注意、距離・方向・水圧・定格使用時間の記載
  • ジョンソン株式会社「まぜるな危険をちょっと科学しよう!」——次亜塩素酸ナトリウムの性質、酸性タイプ・アルコール・アンモニアとの混合で発生するガスについての記載

最終確認日:2026年8月25日。壁材や塗膜の状態は建物ごとに異なります。洗浄剤・機材の使用は製品の注意書きに従い、迷ったら現地の点検にもとづいて判断してください。