スレート屋根の塗装——「コロニアル」「カラーベスト」も同じ話。メーカー公式資料で分かった3つの意外な事実
スレート、コロニアル、カラーベスト。検索すると3つの名前が出てきますが、どれも同じ屋根材の話です。この屋根材については、塗る意味の議論も縁切りの説明も屋根塗装の基本のページに書きました。このページでやるのはその先——屋根材を作っているメーカー自身の公式資料を読むことです。すると、「色あせは性能の問題ではない」「市販塗料は数年で剥離することがある」など、業者の説明とは食い違う記述がいくつも見つかります。塗る前に知っておいてください。
このページの内容
- まず名前の整理——スレートは素材名、コロニアル・カラーベストは商品名
- 事実①「色あせ=防水性能の低下」ではない、とメーカーが書いている
- 事実② 市販塗料は「数年で剥離することがある」ともメーカーが書いている
- 事実③ 縁切りの「差し込み型部材」を、メーカーは使わないでと書いている
- 製品名と製造時期で、話が大きく変わる屋根材です
- 契約前に確認する3つのこと
- よくある質問
まず名前の整理——スレートは素材名、コロニアル・カラーベストは商品名
「スレート(化粧スレート)」は、セメントを薄い板状に成形した屋根材の一般名です。「カラーベスト」はこの屋根材の代表的なシリーズ名、「コロニアル」はその中の商品名——現在はケイミュー(旧クボタと旧松下電工の外装事業が統合した会社)の製品です。あまりに普及したため、商品名がそのまま屋根材の呼び名として定着したという関係で、車で言う「セダン」と「カローラ」のようなものです。
ケイミューの塗替え用資料には「旧クボタおよび旧松下電工の平形屋根用スレート」という表現がそのまま出てきます。つまり呼び名が3つあっても、メンテナンスの考え方はひとつ。そして後で効いてくるので先に言っておくと、この屋根材は「スレートかどうか」より「どの商品名か」で話が変わります。新築時の書類で製品名を確かめる方法は屋根塗装の基本のページの冒頭にまとめてあります。
事実①「色あせ=防水性能の低下」ではない、とメーカーが書いている
屋根塗装の営業でよく聞くのは「色があせている。防水が切れているので塗装が必要」という説明です。ところが、カラーベストを作っているケイミューが公開している塗替え用塗料の資料には、こう書かれています。
ケイミューの公式資料は、こうです
「ケイミュー屋根材の表面の色が薄くなった場合でも基材に損傷等なければ防水性などの屋根材基本性能に問題はありません。リフレッシュコートは美観の回復・向上を図るための塗料です」——リフレッシュコートとは、同社がカラーベスト専用に用意している塗替え塗料の名前です。
メーカー自身が、色あせだけなら性能に問題はない、塗替え塗料の目的は美観だと明言している——これは覚えておく価値があります。屋根塗装の基本のページで書いた「雨漏りを止めている主役は屋根材の下の防水シート」という構造とも、ぴったり噛み合います。
ただし条件付きです。「基材に損傷等なければ」——スレートの素材はセメント系なので、表面の保護が衰えたまま長く置けば、吸水・コケ・反り・割れといった基材そのものの傷みに進みます。そうなる前の「色あせの段階」は性能の問題ではない、という話です。つまり正直な整理はこうなります。色あせを見て慌てる必要はない。ただし基材が傷む前という意味で、塗るならその段階がいちばん軽く済む。「防水が切れています、すぐ塗らないと雨漏りします」と急かす説明とは、距離を取って聞いてください。
事実② 市販塗料は「数年で剥離することがある」ともメーカーが書いている
同じ資料には、もうひとつ踏み込んだ記述があります。「市販の塗料の場合、種類によっては再塗装後、数年で剥離することがあります」——だから再塗装には専用塗料を使ってほしい、という文脈です。
専用塗料を使うかどうかはさておき、屋根材メーカーが「塗料と屋根材には相性があり、外すと数年で剥がれる」と公式に書いていることが重要です。これは難付着サイディングやモニエル瓦で見たのと同じ構造で、剥がれ事故の原因は塗料の品質より下地との相性と下塗りの選定にあります。つまり見積書で見るべきは「シリコン」「フッ素」という分類名ではなく、下塗りと上塗りの商品名。商品名さえあれば、その塗料の公式ページで化粧スレートへの適用を確かめられます。
柄のあるカラーベストは、塗ると柄が消えます
同じ資料の注意書きに「窯変調の色合いは再塗装によって再現することはできません」とあります。焼き物のような色ムラ・グラデーションのある製品は、塗装すると単色になります。ガルバリウム外壁の印刷柄と同じで、柄を残したいなら塗装ではなく別の工法の話になります。ここは契約前に仕上がりイメージを必ず確認してください。
事実③ 縁切りの「差し込み型部材」を、メーカーは使わないでと書いている
スレート塗装の要注意工程が「縁切り」——塗料で塞がった水の逃げ道を確保し直す作業——であることは、基本のページと見積書のページで書いたとおりです。いまの現場で広く使われているのは、屋根材の重なりに部材を差し込んで最初から隙間を確保しておく方法(タスペーサーという商品名で知られます。部材そのものの解説はタスペーサーのページへ)です。
ところが、ケイミューの塗替え資料の注意書きには、こう書かれています。
原文のままです
「水切り部に塗料がたまると雨漏れにつながりますので、必ず『縁切り』をしてください。ただし、差し込み型の縁切り補助部材は割れの原因になるため使用しないでください」
縁切りそのものは「必ず」。しかし差し込み型の部材は「割れの原因になるため使用しないで」——特定の商品名を挙げているわけではありませんが、屋根材を作った側と、塗装の現場の標準的なやり方が、ここで食い違っています。
どちらが正しいかを、このサイトは断定しません。部材の側にも改良や施工条件の話があり、屋根の状態によっても答えは変わるはずです。大事なのは、この食い違いが存在すると知ったうえで、業者に聞いてみることです。「縁切りはどの方法でやりますか。屋根材メーカーの資料では差し込み型の部材を使わないよう書かれていると読んだのですが、どうお考えですか」——この質問に、根拠を挙げて自分の言葉で答えられる会社なら、縁切り以外の工程も考えて施工している可能性が高い。答えに詰まる会社なら、その逆です。質問の目的は正解当てではなく、会社の力量を測ることです。
製品名と製造時期で、話が大きく変わる屋根材です
冒頭で「スレートかどうかより、どの商品名か」と書いた理由がここです。化粧スレートは2000年前後に、石綿(アスベスト)を使わない製法への切り替えという大きな転換点を経験していて、この移行期の一部製品では、塗装を勧めない業者が多いという現実があります。ただし、業者の経験談とメーカーの公式見解は必ずしも一致しません。実例をひとつ見てください。
- 製品名が分かると、メーカーの公式のお知らせにたどり着けますニチハの「パミール」という屋根材(公式リリースによれば1996〜2008年販売の無石綿屋根材)には、販売時に配布された専用釘の一部に耐食性処理の薄いものが混入していたという公式のお詫びが出ています。腐食が早く進むと「屋根材のズレ・落下などが生じる可能性」があり、安全処置が必要なものは無償で対応、窓口はお客さま相談室——ここまで全部、メーカー自身が公表している情報です。なおニチハは同じ文書で「『パミール』本体の安全性については、問題ありません」とも明記しています。一方でこの製品は、表面が層状にめくれる劣化を理由に塗装を勧めない業者が多い屋根材としても知られています。
- ケイミュー系は、製品名と発売時期の対応表が公式にあります塗替え用資料には「2008年1月以降に発売」「2002年1月から発売」「2001年12月まで発売」……と、商品名を発売時期ごとに並べた一覧表が載っています。コロニアル、ニューコロニアル、コロニアルNEO、コロニアルクァッド、コロニアルグラッサ——同じ「コロニアル」でも世代が違えば別製品で、推奨される塗替え塗料も分かれています。
まとめると、この屋根材で最初にやることは見積もり取りではなく製品名の特定です。新築時の書類で製品名が分かれば、メーカーの公式サイトでその製品のお知らせや塗替え情報を確認でき、業者の「塗れます」「塗れません」を自分でも突き合わせられます。層状のめくれなど見た目のサインについては基本のページのスレートの条件を参照してください。
契約前に確認する3つのこと
- 製品名うちの屋根材の製品名は特定できますか?書類が残っていなければ、点検時に特定を求めます。「スレートですね」で止まる会社と、商品名と世代まで踏み込む会社の差は、そのまま提案の精度の差です
- 縁切り縁切りはどの方法ですか?メーカーが差し込み型部材について書いている注意は、どうお考えですか?上の事実③の質問です。根拠つきで答えられるかを見ます。見積書に縁切りの行があるかどうかは見積書のページへ
- 塗料下塗りと上塗りの商品名は?この屋根材に使える根拠も教えてください「市販塗料は数年で剥離することがある」とメーカーが書く屋根材です。専用塗料を使うかは別として、化粧スレートへの適用をメーカーページで確認できる商品名が書かれているかが最低ラインです
よくある質問
古いスレートにはアスベストが入っていると聞きました。塗装しても大丈夫ですか?
製造時期によっては石綿を含む製品があります。塗装は屋根材を撤去しない工事なので、撤去を伴うカバー工法や葺き替えとは扱いが変わりますが、石綿の事前調査が原則すべての工事で義務になっていることは変わりません。調査結果の報告を含めた流れは屋根カバー工法のページに、公的資料つきでまとめてあります。
スレートが1枚だけ割れています。全部やり直しですか?
いいえ。ケイミューは公式にカラーベストの差し替え(部分補修)の施工方法を公開しており、割れた1枚を交換する手当ては工事として存在します。ただし既存の色あせとの差や、同じ製品が手に入るかという問題は部分補修のページで書いたとおりです。割れの枚数が多い場合は、塗装より先に原因(下地・踏み割れ・製品の性質)の特定を求めてください。
築10年です。もう塗らないとダメでしょうか?
「築10年で塗装」という一律の答えはありません。事実①のとおり、色あせだけなら性能の問題ではないというのがメーカーの立場です。判断の軸は年数ではなく状態——色あせ・コケ・反り・割れのどの段階か。そして2回目の塗装を考える頃には、カバー工法との比較が合理的になることは基本のページに書いたとおりです。
「縁切り」って結局何ですか?
塗装で塞がった水の逃げ道を確保し直す工程です。仕組みは屋根塗装の基本のページ、見積書での確認方法は見積書のページにまとめてあります。このページの事実③は、その工程の「方法」についての話です。
最終確認日:2026年8月21日。屋根材の状態は個々の住宅で異なります。実際の判断は必ず現地の点検にもとづいて行ってください。
あわせて読みたい
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塗る意味の議論と縁切りの仕組み。まずこちらから
屋根塗装の見積書
縁切り・タスペーサーの行と、工程写真の約束のしかた
トタン屋根の塗装
金属屋根はケレンが主役。錆の段階別の判断
瓦に塗装は必要?
陶器瓦・セメント瓦・モニエル瓦の書き分け
屋根カバー工法
塗装で戻れない段階の選択肢。石綿の事前調査の話も
難付着サイディング
外壁にもある「下地と塗料の相性」の話
参考にした情報
- ケイミュー「グランネクスト/カラーベスト 周辺部材 リペイント塗料」(公式カタログ・リフレッシュコートの注意事項と推奨色一覧)
- ニチハ「ラスパート釘(屋根材『パミール』付属品)に関するお詫びとお知らせ」(公式・2010年11月5日)
- ニチハ ニュースリリース「無石綿高級屋根材 新生『パミール』発売」(公式)