瓦に塗装は必要?——陶器瓦は塗らない、セメント瓦は塗る、モニエル瓦は要注意

「瓦は塗装しなくていい」も「瓦も塗装が必要」も、どちらも検索すると出てきます。どちらも正しい——指している瓦が違うだけです。焼き物の瓦は塗りません。セメントの瓦は塗って守ります。そしてモニエル瓦だけは、下地処理を間違えると、塗ってもすぐ剥がれることを塗料メーカー自身が公式に注意しています。まず自分の家の瓦がどれかを見分けるところから、順番に整理します。

このページの内容

まず「うちの瓦はどれか」——ここで答えが全部決まる

瓦の塗装の話は、瓦の名前を知らないまま読み進めても、どの結論も自分の家に当てはめられません。同じ「瓦」という名前で、素材がまったく別のものだからです。大きく分けて3つあります。

種類素材見た目の手がかり塗装は?
陶器瓦(粘土瓦・和瓦・洋瓦)粘土を釉薬(うわぐすり)をかけて焼いた焼き物表面にガラスのような光沢。古くなっても色があせにくい不要
セメント瓦セメントを型でプレス成形し、塗装で着色表面の色があせたり、塗膜がめくれたりする。切り口(小口)が平らでなめらか必要
モニエル瓦(乾式コンクリート瓦)コンクリート系。表面に「スラリー層」という着色層を持つセメント瓦とよく似ているが、切り口(小口)がゴツゴツと凹凸になっている必要。ただし下地処理が特殊

「小口(こぐち)」というのは、瓦の端の切り口のことです。軒先に並んだ瓦の先端を、地上や2階の窓から写真に撮って拡大すれば見えます。塗料メーカーの水谷ペイントも、乾式洋瓦(モニエルなど)は小口部分が凹凸になっていること、プレスセメント瓦は小口部分が平面であることを、見分けの手がかりとして公式に説明しています。

  • 家の書類が最短です——新築のときに受け取った書類のどこかに、屋根材の名前が載っています。「乾式コンクリート瓦」「モニエル」とあれば確定です
  • 写真は地上から——軒先の瓦の先端が写る角度で撮れば十分です。屋根には登らないでください。確認のためにご自身が登る必要はありません
  • 迷ったら、それ自体を質問にする——「うちの瓦はセメント瓦とモニエル瓦のどちらですか」。この質問への答え方で、業者の力量が分かります(あとで詳しく書きます)

陶器瓦(粘土瓦)——塗り替えは不要です

陶器瓦は、お茶碗と同じ焼き物です。色は塗料ではなく、釉薬をかけて焼き締めたガラス質の層でついています。だから塗膜のように紫外線で分解されて色があせる、ということが起きません。三州瓦の産地団体である愛知県陶器瓦工業組合は、公式サイトで「瓦はさびない!再塗装不要!」と明言し、瓦以外の屋根材のほとんどは塗装されているため色落ちして再塗装が必要になる、と対比しています。

ここから2つのことが言えます。

  • 「瓦も塗り替えどきですよ」と言われたら、瓦の名前を聞く陶器瓦に塗装をすすめる提案は、その時点でかみ合っていません。表面がガラス質なので一般の塗料は付きにくく、性能を回復させる意味もありません。(陶器瓦への塗装をうたう専用塗料は実在しますが、それは色を変えたい場合の選択肢で、性能のために塗る必要はないという結論は変わりません。)訪問営業でこの提案が出たら、断り方のページの出番です。
  • ただし「メンテナンスゼロ」ではない塗装が不要なだけで、棟の漆喰の傷みや瓦のズレ・割れは起きます。必要なのは塗装ではなく点検と部分補修——お金のかかる場所が違う、という話です。

なお、同じ焼き物でも釉薬をかけない「いぶし瓦」(銀色の和瓦)は別枠です。塗料メーカーの水谷ペイントは、いぶし瓦を原則塗装不可の瓦として整理しています。渋い銀色が変化していくのは劣化ではなく、この瓦の持ち味です。

セメント瓦——塗装が守っている屋根材

セメント瓦は名前のとおりセメントでできていて、焼き物ではありません。色も防水性も、表面の塗装が受け持っています。つまり構造は外壁のモルタルや窯業系サイディングと同じで、「塗膜が働いているあいだは守られ、塗膜が切れたら素材がむき出しになる」屋根材です。

だからセメント瓦の答えはシンプルです。塗り替えは必要。時期は年数ではなく状態で決める。色あせ・コケ・塗膜のめくれが出てきたら、それが塗膜の寿命のサインです。考え方は外壁の劣化サインとまったく同じで、屋根は外壁より紫外線と雨をまともに受けるぶん、進みが早いだけです。

セメント瓦で、モニエル瓦の話が必ずセットで出る理由

この2つは見た目がよく似ていて、塗装の現場でいちばん取り違えが起きる組み合わせだからです。セメント瓦のつもりで普通に塗ったら実はモニエル瓦だった——これが次の章の剥がれ事故の典型パターンです。だから契約前の確認は「塗るかどうか」より先に「どちらの瓦か」なのです。

モニエル瓦——「スラリー層」を知らない業者に塗らせてはいけない

ここがこのページの本題です。モニエル瓦(乾式コンクリート瓦)の塗り替えには、他の屋根材にはない落とし穴があります。業者ブログの脅し文句ではなく、塗料メーカーの公式FAQにそのまま書かれている話です。

日本ペイントの公式FAQは、こう答えています

質問「モニエル瓦屋根の塗り替えは注意が必要と聞いたがなぜですか?」への回答——「塗り替え時期を迎えたモニエル瓦等の洋風コンクリート瓦は、基材表層に脆弱なカラースラリー層が残存していることが多く、これが塗料の付着性を阻害して剥がれやすくなるため、専用塗料での塗り替えをおすすめします」

順番に読み解きます。モニエル瓦の表面には「スラリー層」という着色セメントの層があります。日本ペイントの用語解説によれば、これは厚さ1mm以上の防水層で、15年ほどでほぼ消失してしまう——だから塗り替えが必要になります。問題は、消えかけたスラリー層が粉状にもろくなって表面に残っていること。この上からどんな高級塗料を塗っても、塗料はもろい粉ごと剥がれます。壁土の上にテープを貼るようなもので、テープの品質の問題ではありません。

水谷ペイントも同じ構造を公式コラムで説明しています。スラリー層は大気中の二酸化炭素で中性化が進むと脆弱化・粉状になり、塗膜の密着を妨げる原因になる。だから対策は「下地処理の高圧洗浄で脆弱なスラリー層をしっかりと除去すること」——塗る前の洗浄と下地処理が、塗料選びよりも先に来るのです。

つまりモニエル瓦の塗装で起きる剥がれ事故は、ほとんどの場合塗料の不良ではなく、下地処理の不足です。そしてこれは、見積書と質問で契約前に見抜けます。

剥がれを防ぐ——契約前に確認する3つのこと

専門知識を覚える必要はありません。確認は3つ、ぜんぶ契約前にできます。

  • 種類うちの瓦は、セメント瓦とモニエル瓦のどちらですか?小口の形状など根拠つきで即答できるかを見ます。この2つを区別しない会社に、モニエル瓦の下地処理は期待できません
  • 洗浄スラリー層はどう処理しますか?モニエル瓦なら「高圧洗浄で脆弱な層を徹底的に落とす」方向の答えが返ってくるはずです。洗浄はどの見積もりにも載る行ですが、この瓦では洗浄が工事の主役です(高圧洗浄のページもどうぞ)
  • 下塗り下塗りは、どの製品を使いますか?日本ペイントは洋風コンクリート瓦用の下塗り材を専用品として用意しています。水谷ペイントは上塗りと専用下塗りをセットで選ぶ「システム」での選定を推奨し、異なるメーカーのシーラーを組み合わせると密着不良のリスクが高まるとしています。見積書に下塗りの商品名が書かれていれば、メーカーの公式ページで適用下地を自分で確認できます。なお「各種瓦素材」にまとめて対応する幅広い下塗り材も実在するので、専用品でなければ即アウトという話ではありません——「この瓦に使える根拠」を商品名で示せるかが本質です

ちなみに専用塗料は、大手だけのものではありません。「屋根の塗り替え塗料のエキスパート」を掲げる専門メーカー(オリエンタル塗料工業)が乾式コンクリート瓦向けの製品群を公式に揃えているほどで、塗り替えの現場では「モニエル瓦には専用塗料」が定番になっています。それだけ、普通の塗り方が通じない瓦だということです。

この「商品名で確認する」型は、難付着サイディングのページで書いた外壁の確認とまったく同じです。見積書のどの行を見るかは屋根塗装の見積書のページにまとめてあります。

よくある質問

セメント瓦やモニエル瓦を、塗装せずに放っておくとどうなりますか?

表面の塗膜やスラリー層は、素材を雨から守っている層です。日本ペイントの解説では、モニエル瓦のスラリー層は防水層と定義され、15年ほどでほぼ消失するとされています。守る層が消えたまま置けば、セメント系の素材そのものが雨と紫外線を受け続けることになります。どの段階まで進むと塗装で戻れなくなるかという考え方は、外壁の「塗装では直らない」のページと同じです。

モニエル瓦にカバー工法はできますか?

屋根カバー工法の対象は、化粧スレートなど平らな屋根材が基本で、波打った瓦形状はカバーの前提が違います。塗装以外を検討する段階なら、選択肢はカバーではなく葺き替えが軸になります。屋根カバー工法のページに、メーカーが公開している対象条件を整理してあります。

DIYで塗れますか?ホームセンターに瓦用塗料が売っていますが

瓦用塗料は実在しますし、買うこと自体は自由です。ただしこのページで見たとおり、瓦塗装の成否は塗料ではなく下地処理と足場のある高所作業で決まります。屋根の上は、プロも命綱なしでは作業しない場所です。「自分でやれば安い」の前に、屋根塗装の基本のページで工事として何が必要かを見てから判断してください。

費用はいくらぐらいですか?

瓦の種類と状態で工程が変わるため、このページで金額を断定することはしません。モニエル瓦は洗浄と下地処理に手がかかるぶん、同じ面積のスレートと同じ金額にはなりにくい、という構造だけ覚えておいてください。だからこそ1社の言い値ではなく、工程の説明ごと比べるのが確実です。

最終確認日:2026年8月21日。屋根材の種類や状態は個々の住宅で異なります。実際の判断は必ず現地の点検にもとづいて行ってください。

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参考にした情報

  • 日本ペイント「モニエル瓦屋根の塗り替えは注意が必要と聞いたがなぜですか?」(よくあるご質問)
  • 日本ペイント「洋風コンクリート瓦(乾式コンクリート瓦・モニエル瓦)」(用語解説)
  • 水谷ペイント「根強い人気 瓦屋根の塗料選定ポイント」(公式コラム)
  • 愛知県陶器瓦工業組合「実はお得な三州瓦」
  • オリエンタル塗料工業「乾式コンクリート瓦」(公式製品ページ)