屋根の点検商法——「ドローンで撮りました」の写真を見せられたら
「近所で工事をしていて、お宅の屋根瓦がずれているのが見えたので」。突然の訪問でこう言われて、点検を受けてしまった/これから受けようとしている方へ。これは国民生活センターが「典型的な勧誘トーク」として公表している言い回しです。屋根工事の点検商法の相談は5年で約3倍に増え、契約者の8割超が60歳以上。そして近年はドローンで撮った写真を見せる手口も、実際の相談事例として載っています。ここでは公的資料をもとに、手口の型と、その場での断り方、そして断ったあとに何をすればいいかまでを整理します。
このページの内容
- 点検商法とは——公的な定義
- 相談は5年で約3倍。屋根が3分の1を占めます
- 🔑ドローン写真——それは、あなたの家の屋根ですか
- 典型的な勧誘トークの4つの型
- その場でどう断るか
- 「保険で直せます」と言われたら
- 断ったあと——本当に不安なら、こうします
- 離れて住む親の家が心配な方へ
- よくある質問
点検商法とは——公的な定義
まず、言葉の定義から。国民生活センターの説明をそのまま引きます。
「点検商法とは、『近所で行う工事の挨拶に来た』などと言って突然訪問し、『屋根瓦がずれているため点検してあげる』と言って点検した後、『このままだと瓦が飛んでご近所に迷惑がかかる』などと不安をあおって工事の契約をする手口です」(国民生活センター 2023年10月11日公表)
ポイントは「点検」が入口になっていることです。いきなり工事を売り込むのではなく、無料の点検という「親切」の形で家に近づく。だから受けた側は断りにくく、点検が終わったころには話が進んでいます。
そして屋根には、この手口が刺さる理由があります。屋根は、住んでいる人が自分で確認できない場所だからです。「ずれている」と言われても、自分で上がって確かめるわけにはいきません(そして絶対に上がらないでください——プロでも命綱なしでは登らない場所です)。
相談は5年で約3倍。屋根が3分の1を占めます
感覚の話ではなく、公的な統計があります。全国の消費生活センターに寄せられた屋根工事の点検商法に関する相談件数です。
| 年度 | 相談件数 | 点検商法の相談全体に占める屋根工事の割合 |
|---|---|---|
| 2018年度 | 923件 | 16.2% |
| 2019年度 | 1,157件 | 20.1% |
| 2020年度 | 1,824件 | 26.0% |
| 2021年度 | 2,352件 | 31.6% |
| 2022年度 | 2,885件 | 35.4% |
2022年度は2018年度の約3倍。しかも点検商法全体のなかで屋根工事が占める割合が16.2%から35.4%へ増えている——つまり点検商法の主戦場が屋根になってきたということです。
そして、契約当事者の8割超が60歳以上と公表されています。狙われている層がはっきりしているタイプのトラブルです。
ドローン写真——それは、あなたの家の屋根ですか
近年増えているのが、ドローンで撮影した屋根の写真を見せるという手法です。これは国民生活センターの相談事例にも、はっきり載っています。
【事例5】ドローンで撮影したという写真を見せられ契約したが解約したい。
【事例2】実家の父がずれた瓦の写真を見せられ修理工事の契約をしたがキャンセルできるか。
(国民生活センター 公表資料の相談事例より)
ドローン点検そのものは、まっとうな会社も使う技術です。問題は技術ではなく、見せられた画像を、施主が検証できないという一点にあります。
- その写真が「自分の家の屋根」だと確認する方法がありません屋根を上から見た写真を見せられても、多くの人は自分の家の屋根をその角度で見たことがありません。他所の家の写真でも、見分けがつかないのです。
- 「いつ撮ったか」も分かりませんその場で飛ばして撮ったのでなければ、いつのものかは撮った側しか知りません。
- 写真は不安をあおる道具として非常に強い「口で言われた」より「写真を見せられた」ほうが、人は信じます。手口として洗練されている、ということです。
だから、その場でやることは1つだけです。写真の真偽を議論しない——素人には無理です。かわりに「その写真、データでいただけますか」とだけ言ってください。まっとうな会社なら断る理由がありません。渋る、その場で決めさせようとする——それ自体が判断材料になります。
そして、受け取った写真が示す傷みが本当にあるのかどうかは、あとで自分で呼んだ会社に見てもらえば分かります。玄関先で言い返す必要はありません。その場は預かって帰す、判定は後日、こちらの土俵で——これが唯一の勝ち方です。
典型的な勧誘トークの4つの型
国民生活センターは、相談事例から見えた勧誘トークを4つに分類して公表しています。
| 型 | 言われ方の例 |
|---|---|
| ① 訪問・点検のきっかけをつくる | 「近所で行う工事の挨拶に来た」「屋根瓦がずれているのが見えた」「無料で点検します」 |
| ② 不安をあおる | 「このままだと瓦が飛んでご近所に迷惑がかかる」「雨漏りする」 |
| ③ 負担が軽くなると思わせる | 保険金が使える、今なら安い、といった話 |
| ④ 次々に違う工事を勧める | 屋根の次は外壁、その次は床下——と広がっていく |
相談事例には「『近所で工事している』と言うので点検を依頼したが、近所の工事はうそだった」というものもあります。入口のきっかけ自体が事実でないケースがある、ということです。
4つの型を知っておくだけで、その場で「あ、これだ」と気づけます。国民生活センターの資料のタイトルが「典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!」となっているのは、そういう意味です。
その場でどう断るか
公的なアドバイスの筆頭がこれです。
「突然訪問してきた業者には安易に点検させないようにしましょう」「屋根工事はすぐに契約せず、十分に検討したうえで契約しましょう」(国民生活センター 消費者へのアドバイス)
点検させないことが、いちばん手前の防御線です。いったん上がらせてしまうと、「見てしまった以上は」という空気が生まれ、断りにくくなります。
- 「うちは決まったところに頼んでいます」——理由の説明はいりません。事実でなくても構いません。断るのに正当な理由を用意する必要はない、というのが大前提です。
- 「その場で決めない」と最初に言う「家族と相談してから」「今日は決めません」。急がせてくる相手ほど、急がせる理由があると考えてください。
- 連絡先だけ受け取って、こちらから連絡すると伝える玄関先での押し問答を短くする方法です。
言い方の具体例と、言わないほうがいい一言はトラブル対処のページにまとめてあります。チラシやポスティングで来た会社の見極めはチラシで来た業者のページへ。
「保険で直せます」と言われたら
国民生活センターのアドバイスには、こう明記されています。
「保険金を利用できるというトークには気をつけましょう」(国民生活センター 消費者へのアドバイス)
火災保険は、風災や雹(ひょう)などの被害には実際に使える制度です。制度そのものは正しい——だからこそ、この話は入口として使われます。「保険が下りるから実質無料」「申請を代行します」といった話が出てきたら、いったん止まってください。
火災保険で直せるもの・直せないものの線引き、経年劣化との切り分け、そして保険申請を代行するとうたう業者に関する注意は、火災保険のページに整理しています。
断ったあと——本当に不安なら、こうします
ここが、この記事でいちばん大事な部分かもしれません。断ったあとに残る「でも、本当に傷んでいたらどうしよう」という不安です。放っておくと、次に来た業者で同じことが起きます。
やることは単純です。不安の答え合わせを、向こうから来た人にさせない。——そして、ここが相見積もりのいちばん効く瞬間でもあります。訪問業者の指摘が本当かどうかを、こちらが選んだ会社に判定させる。一括見積もりサービスを使えば、自分で1社ずつ探さなくても複数社に見てもらえます。
- 自分で選んだ会社に見てもらう訪問してきた会社ではなく、こちらが探して呼んだ会社に点検してもらいます。ここが入れ替わるだけで、話の主導権が戻ります。
- できれば2社1社だけだと、その会社の言うことが正しいのか分かりません。診断が一致すれば信頼でき、割れたら理由を聞く——これが素人にできる唯一の検証方法です(見積もりの取り方)。
- 「訪問販売の人にこう言われたのですが」と正直に伝えていいまっとうな会社なら、その指摘が妥当かどうかを説明してくれます。説明できるかどうかが、そのまま相手を見る材料になります。
- そもそも点検が必要な時期かを知っておく屋根や外壁の劣化サインは自分でもある程度見られます(劣化サインのページ/屋根塗装のページ)。知っていれば、突然の指摘に動揺しにくくなります。
すでに契約してしまった場合は、クーリング・オフができる可能性があります。訪問販売なら書面を受け取った日を含めて8日以内。過ぎていても諦めなくていいケースがあります——手順はトラブル対処のページに、書き方まで載せています。
離れて住む親の家が心配な方へ
契約当事者の8割超が60歳以上という数字を、もう一度思い出してください。国民生活センターも、周囲の見守りを呼びかけています。
「消費生活センター等への相談は、家族やホームヘルパー、地域包括支援センターなどの職員からでも可能です」(国民生活センター)
本人でなくても相談できる、というのは知っておく価値があります。実家に帰ったときに、見覚えのない工事の契約書や、業者の名刺が置かれていないかを見るだけでも違います。相談事例にも「実家の父がずれた瓦の写真を見せられ契約した」というものがありました。
相談先は次の2つです。
- 消費者ホットライン「188(いやや!)」最寄りの消費生活センターにつながる、全国共通の3桁の番号です。覚えるのはこれだけで足ります。
- 住まいるダイヤル(公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター)0570-016-100/03-3556-5147。住宅リフォームの工事や費用に関する相談を受け付けています。
よくある質問
訪問してくる業者は、全部怪しいのですか?
いいえ。訪問営業をしているまっとうな会社もあります。問題は「訪問かどうか」ではなく、その場で決めさせようとするかどうかです。国民生活センターのアドバイスも「すぐに契約せず、十分に検討したうえで契約しましょう」であって、訪問業者を全否定するものではありません。持ち帰って、比べて、それでも良ければ頼む——この順番を守れる相手かどうかで判断してください。
点検を受けてしまいました。まずいですか?
点検を受けただけなら契約ではありません。そこで契約しなければ大丈夫です。写真を見せられて不安になったら、この記事の「断ったあと」の手順に進んでください。すでに契約書にサインしてしまった場合は、クーリング・オフの期間内かどうかをトラブル対処のページで確認を。
ドローン点検は信用してはいけないのですか?
そうではありません。ドローンは実際に有用な道具で、屋根に上がらずに状態を見られる利点があります。問題は道具ではなく、その画像を検証できない状況で契約を迫られることです。自分で選んだ会社がドローンを使って点検してくれるなら、それは何の問題もありません。
「近所で工事しているので」と言われました。本当かどうか確かめられますか?
相談事例には「近所の工事はうそだった」というケースが実際に載っています。確かめようはありますが(その現場を見に行く、近所に聞く)、確かめる労力をかけるより、その場で契約しないほうが早いです。本当に近所で工事をしている会社なら、後日あらためて連絡しても仕事は受けてくれます。
最終確認日:2026年8月22日。出典:独立行政法人国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」(2023年10月11日公表。点検商法の定義、PIO-NETによる年度別相談件数と割合、契約当事者の年齢構成、相談事例、勧誘トークの分類、消費者へのアドバイス、相談窓口)。相談件数は消費生活センター等からの経由相談を含みません。個別の事案については、消費者ホットライン188または住まいるダイヤルにご相談ください。
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