基礎の塗装は必要?——「塗ってはいけない」説の答え合わせ

外壁の下、地面から立ち上がっているコンクリートの部分。ここを塗るかどうかで調べると、「安易に塗ってはいけない」と書くページと「塗ったほうがいい」と書くページが真っ二つに出てきます。どちらも塗装会社が書いていて、素人には判断がつきません。そこで当サイトは、業者の意見ではなく塗料メーカーの製品情報を見に行きました。結果、はっきりしたことがあります——メーカーは「基礎専用」の塗料を作っており、その製品説明に、反対派が挙げるデメリットへの回答が書かれていました。論点は「塗るか塗らないか」ではなかったのです。

このページの内容

なぜ意見が割れるのか

まず、両方の言い分を整理します。実際に検索上位に出てくる主張です。

「塗らないほうがいい」派の主張「塗ったほうがいい」派の主張
塗膜が湿気を閉じ込め、かえって傷める見た目が整う(外壁だけきれいだと基礎の汚れが目立つ)
基礎のひび割れに追従できず、割れる・剥がれるコンクリートを保護できる
塗膜が劣化のサインを隠してしまう汚れや苔が付きにくくなる
外壁より早く傷むので、塗り替えサイクルが合わない

読み比べて気づくのは、両者が違う前提で話していることです。反対派が想定しているのは「外壁用の塗料を基礎にも塗った場合」で、賛成派が言っているのは主に見た目の話。かみ合っていないまま、施主だけが迷う構造になっています。

そこで、第三の資料を見ます。塗料メーカーは、基礎について何と言っているのか。

メーカーは「基礎専用」の塗料を作っています

結論から言うと、基礎(正確には「基礎巾木=きそはばき」と呼ばれます)専用の塗料は、複数のメーカーが商品として出しています。2社の公式製品情報を見てみます。

製品メーカー公式の位置づけ
ビーズコート基礎用P/Sスズカファイン「超撥水タイプの基礎巾木用アクリルシリコン樹脂系塗料」(Pはペイントタイプ、Sはセラミック配合細骨タイプ)
基礎ガード菊水化学工業「ポリマーセメント系基礎巾木用塗材」(2材形・上塗不要)

ここが大事な点です。「基礎は塗るものではない」なら、メーカーが基礎専用の塗料を商品として作り続けている説明がつきません。しかも両社とも、単なる化粧ではない機能を公式に挙げています。次の2つの章がその中身です。

「湿気がこもる」への回答=透湿性

反対派の最大の論拠が「塗膜が湿気を閉じ込める」です。これに対して、スズカファインの製品説明にはこう書かれています。

「●下地からの水蒸気を放散する透湿性塗膜です。●塗膜の透湿性により、床下の湿気を屋外に放散すると同時に基礎コンクリートの中性化を抑制します」(スズカファイン ビーズコート基礎用P 製品説明書)

2つのことが同時に書かれています。

  • 湿気は通す設計になっている「水は弾くが、水蒸気は通す」という考え方です。液体の水(雨・跳ね返り)は入れず、内側から出てくる気体の水(湿気)は逃がす。だから基礎用として設計された塗料なら、「湿気がこもる」は前提から違います。この考え方は外壁塗料でも使われています(ビーズコートのページ)。
  • 中性化の抑制が機能として挙げられているコンクリートは本来アルカリ性で中の鉄筋を錆から守っていますが、空気中の二酸化炭素で表面から中性化が進み、鉄筋の位置まで届くと錆が始まります(詳しい仕組みは20年放置した家のページに書きました)。その進行を遅らせることを、メーカーが機能として明記しているわけです。

では、逆に透湿性のない塗料を基礎に塗ったらどうなるか。ここが、この記事でいちばん実務的な部分です。

逃げ場を失った水蒸気は、塗膜を押し上げます——いわゆる「膨れ」です。
基礎は地面に接していて、下からの水分と床下の湿気を絶えず受けている場所です。そこに水蒸気を通さない塗膜でフタをすれば、内側にたまった水蒸気の圧力が塗膜を持ち上げます。メーカーがわざわざ「透湿性」を機能として掲げていること自体が、その裏返しと読めます。

同じ構造は、外壁でも公式に説明されています。日本ペイントは弾性塗料について、断熱性の高い材質では表面温度が上がって水蒸気が逃げにくくなり、柔らかい塗膜を膨らませる傾向があると自社FAQで注意喚起しています(水性セラミシリコンのページに原文を引用しました)。水蒸気の逃げ場をなくすと膨れる——これは基礎に限らず、塗膜という材料に共通する話です。

だから「基礎を塗ると傷む」という主張は、正確には「基礎に、透湿性のない塗料を塗ると傷むことがある」です。反対派の警告は、外壁用塗料の流用を前提にすれば的を射ている——ただし専用品を使う場合には、その前提が変わります。

菊水化学工業の基礎ガードも、同じ方向のことを書いています。

「ポリマーセメント系塗材が雨や二酸化炭素による基礎の中性化を抑止し、劣化による強度低下を防ぎます」(菊水化学工業 基礎ガード 製品情報)

メーカーが2社とも「中性化」を挙げている——ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。基礎塗装は見た目だけの工事とは限らない、というのがメーカー側の設計思想です。

「ひび割れたら割れる」への回答=微弾性

もうひとつの論拠、「基礎はひび割れるから、塗ってもすぐ割れる」。これにも製品側の回答があります。菊水化学工業の基礎ガードの特長の1つめがこれです。

微弾性の塗膜が基礎巾木の微細なひび割れに柔軟に追従します」(菊水化学工業 基礎ガード 製品情報)

ひび割れが起きることを前提に、塗膜側が伸びて追いかける設計です。もちろん、地震などで構造的に大きく割れれば追従の限界を超えます——そこは正直なところで、「どんなひび割れでも大丈夫」ではありません

なお、基礎のひび割れには公的な判定の目安があります。国土交通省の告示(平成12年建設省告示第1653号)で、幅0.3mm・0.5mmという基準が定められているのは鉄筋コンクリート造の壁と、基礎です。木造住宅の壁には幅の基準がない一方で、基礎は「幅」で語れる数少ない部位ということになります(この話の詳細と適用条件はひび割れのページにまとめました)。塗る前に、幅の大きいひび割れがないかを見てもらってください。

それでも残るデメリットは、1つあります

ここまでメーカー資料で反論できる点を挙げてきましたが、反対派の主張のうち1つは、そのまま残ります

塗膜は、基礎の状態を見えにくくします。ひび割れも、鉄筋の錆が出てきたサインも、塗ってしまえば表面からは分かりにくくなります。これは製品の性能でどうにかなる話ではありません。

だから順番が大事です。塗る前に、基礎の状態を確認してもらってください。大きなひび割れ、鉄筋が見えている箇所、錆汁が出ている箇所——こうしたものは塗って隠すのではなく、先に補修する対象です。逆に、汚れと軽微な劣化だけなら、塗る判断はふつうにあり得ます。

もう1つ、正直に書いておきます。基礎は外壁より条件が厳しい場所です。地面に近く、雨の跳ね返りを受け、湿気も上がってきます。スズカファインは期待耐用年数について「屋根では、日射や降雨降雪の影響を受けやすいため、期待耐用年数は、一般の壁面(垂直面)の50〜70%程度になります」と部位差を明記していますが、基礎も「壁と同じ年数もつ」と考えないほうが安全です。当サイトは基礎の年数の公表値を確認できていないので、具体的な数字は書きません。

だから論点は「何を塗るか」です

ここまでを整理すると、こうなります。

  • 確認1見積書の基礎の行に、製品名が書かれていますか「基礎巾木用」と明記された専用品なのか、外壁用塗料をそのまま流用するのか。反対派が言うデメリットの多くは後者を想定した話です。ここを聞くだけで、その業者が基礎をどう考えているかも分かります
  • 確認2塗る前に、基礎の状態を見てもらいましたか大きなひび割れ・錆汁・欠けがあるなら、塗装ではなく補修が先。塗膜は状態を見えにくくします
  • 確認3下塗りは何を使いますか基礎はコンクリート・モルタル面です。両社とも専用の下塗り(カチオンシーラーEPOなど)や、下塗り+主材の2工程を前提にしています。1回塗りで終わる工事ではありません
  • 確認4やらない、という選択も普通にあります基礎が健全で、見た目も気にならないなら、塗らない判断は間違いではありません。外壁の予算を優先するのは合理的な考え方です

費用と、塗り方の目安

メーカーが公開している数字を挙げます。いずれも見積書と直接比べる数字ではありません——理由は後述します。

項目公表されている数字
菊水化学工業 基礎ガード設計価格 材料のみ22,400円/28kgセット(粉体16kg+混和液12kg)。所要量は下塗り0.3〜0.5kg/㎡、主材塗り0.7〜1.0kg/㎡
スズカファイン ビーズコート基礎用S材工単価 3,640円/㎡(本品のみ・下塗りを含まない)/下塗り込みの仕様で4,550円/㎡

スズカファインの材工単価は施工面積300㎡以上を基準とした数字で、足場代・下地調整費・養生費などは含みません。同社は公式に「戸建住宅など、300m2未満の場合は割高になります」と明記しており、実際に規模が小さいほど単価が上がる数字を公開しています(その仕組みはこちら)。基礎は面積が小さい部位なので、この上振れがそのまま効きます。「㎡単価×基礎の面積」で計算しても、実際の見積もりには届きません。

塗り方の目安も公式にあります。ビーズコート基礎用Pは2回塗り(塗付量0.2〜0.3kg/㎡/2回)、基礎ガードは下塗り+主材塗りで、上塗りは不要という設計です。検索で多い「基礎塗装は何回塗り?」への答えは、製品によって工程が違う——だから見積書に製品名が要る、ということになります。

よくある質問

積水ハウスなど、ハウスメーカーの家で基礎が塗られているのはなぜですか?

新築時から基礎に仕上げ材が施されている家はあります。理由として考えられるのは、上で見たとおり美観と、コンクリートの保護の両方です。ただし個別のハウスメーカーの標準仕様を当サイトは確認できていないので、断定はしません。大事なのは塗り替えのときで、もともと仕上げがある基礎は「塗るかどうか」ではなく「同じように仕上げ直すかどうか」の話になります。既存の仕上げが何かによって使える材料が変わるので、業者に現物を見てもらってください。

基礎塗装のDIYはできますか?

高所作業がない分、外壁よりは現実的です。ただし専用材は下塗りとセットの設計で、菊水の基礎ガードのように粉体と混和液を混ぜる2材形の製品もあります。混ぜる比率や可使時間の管理が必要で、ホームセンターの汎用塗料で代用すると、まさに反対派が言う「透湿性のない塗膜」になりかねません。DIYの線引きはDIYのページに書きました。

基礎の塗装が剥がれてきました。塗り直すべきですか?

まずなぜ剥がれたかです。前回に基礎用でない塗料が使われた、下地が湿っていた、下塗りを省いた——原因が残ったまま重ね塗りしても同じことが起きます。剥がれの見方そのものは剥がれのページに整理しました。剥離した塗膜は、除去してから塗り直すのが原則です。

おしゃれにしたいのですが、色は選べますか?

選べます。菊水の基礎ガードは基準色6色・艶消し・ゆず肌状の仕上がり、スズカファインの基礎用Sはセラミック配合の細骨タイプで、いずれも落ち着いた質感になる設計です。定番はグレー系や黒っぽい色で、地面の跳ね返り汚れが目立ちにくいという実利もあります。色の考え方は色のページグレーのページへ。

外壁塗装と一緒にやるべきですか?

やるなら同時が合理的です。基礎だけを後からやると、業者を呼ぶ手間も諸経費も別にかかります。付帯部をまとめて塗る損得の考え方は付帯部のページと同じです。ただし予算が足りないときに真っ先に削られるのもこの部分なので、見積書から基礎の行が消えていないかは確認してください。

最終確認日:2026年8月22日。出典:スズカファイン公式サイト「ビーズコート基礎用P」製品説明書(特徴・機能、概要、塗付量)および標準材工単価ページ(施工面積別の単価・注記)、菊水化学工業公式サイト「基礎ガード」製品情報(特長・基本情報・設計価格)、国土交通省 平成12年建設省告示第1653号。材工単価・設計価格は原則300㎡以上を基準とする価格や材料のみの価格であり、足場代・下地調整費・養生費等は含みません。戸建て1棟の見積もりはこれらの数字より高くなると考えてください。基礎の状態は家ごとに異なります。塗る・塗らないの判断は、現地を見た施工会社と相談してください。

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