ビーズコート——「水を弾いて汚れを落とす」側の塗料です
見積書に「ビーズコート」と書いてあった方へ。作っているのはスズカファイン(三重県鈴鹿市が社名の由来)で、この塗料の性格は名前のとおりです——塗膜の表面に微細な凹凸を作り、ハスの葉と同じ「ロータス効果」で水を玉にして弾く超撥水タイプ。実はここが面白いところで、汚れに強い塗料には正反対の2つの流派があります。ビーズコートは、いま主流の「親水(水になじませて流す)」とは逆の道です。加えてこのメーカーには、他社が絶対に書かない数字が公開されています——戸建てサイズだと単価がいくら上がるのか、です。
このページの内容
- 汚れ対策には2つの流派がある——親水と撥水
- ビーズコートの家族構成——Si・F・BIO・無機・フレッシュ・基礎用
- 仕上がりは「つや消し」一択
- 弾くのに、湿気は通す——透湿タイプという設計
- 🔑戸建てだと単価はいくら上がるのか——公式が数字で答えている
- 塗れない下地・注意のいる下地
- JIS「該当せず」と正直に書くこと
- よくある質問
汚れ対策には2つの流派がある——親水と撥水
外壁塗料のカタログを何社か並べると、どれも「汚れにくい」と書いてあります。ところがその実現方法は、正反対の2つに分かれます。
| 流派 | 仕組み | 代表例 |
|---|---|---|
| 親水(しんすい) | 塗膜を水になじみやすくして、雨水が汚れの下に入り込み、浮かせて流す | ナノコンポジットW、エスケープレミアム無機、ハイパーユメロックほか、いまの主流 |
| 撥水(はっすい) | 塗膜を水を弾く状態にして、水滴が汚れを絡めとって転がり落ちる | ビーズコート(超撥水・ロータス効果) |
公式の説明はこうです——「塗膜表面に微細な凹凸構造を施し、ハスの葉と同様のロータス効果を再現した超撥水性塗膜です」「超撥水効果により塗膜への汚れが付着しにくい低汚染タイプです」。ハスの葉の上で水滴が真ん丸になって転がる、あの現象を塗膜で再現しているわけです。製品名の「ビーズ」も、玉になった水滴のことだと分かれば腑に落ちます。
どちらが優れているという話ではありません。知っておくと役に立つのは「他社と比べて何が違うのか」を業者に聞けるようになることです。「この塗料は撥水で汚れを落とすタイプですよね。うちの壁だと、親水タイプとどちらが合いますか」——この質問ができれば、業者が製品を理解して勧めているかどうかも一緒に分かります。
なお撥水の効果を保つ工夫も公式に書かれています。「ラジカル制御されたシリコーン樹脂により、長期にわたり撥水性を維持します」——紫外線による劣化因子ラジカルを抑える技術(塗料の種類のページ参照)が、ここでは「撥水を長持ちさせる」ために使われています。同じ技術が、メーカーごとに違う目的で使われているのが分かる例です。
ビーズコートの家族構成——Si・F・BIO・無機・フレッシュ・基礎用
検索すると似た名前が大量に出てきますが、整理すると「樹脂グレード違い」と「塗る場所違い」の2軸です。
| 製品 | 系統 | 位置づけ |
|---|---|---|
| ビーズコート | アクリルシリコン樹脂系 | シリーズの基本形 |
| ビーズコートSi | シリコーン樹脂系・ラジカル制御形 | 検索が多い主力。適用下地が幅広い |
| ビーズコートF | ふっ素樹脂系・ラジカル制御形 | 上位グレード。「フッ素にもラジカル制御はある」の実例として当サイトでも引用 |
| ビーズコートBIO | シリコン樹脂系 | 強力防かび・防藻タイプ。北面や湿気の多い立地向け |
| ビーズコート無機 | 無機・有機ハイブリッド樹脂系 | 無機系。ここでも「無機=ハイブリッド」です |
| ビーズコートフレッシュ | 意匠仕上塗材塗替用 | 意匠塗材の質感・素材を損なわずに塗替え可能と公式に明記。塗り壁調の外壁を持つ家に関係します(ジョリパットのページと同じ論点) |
| ビーズコート軒天用(P/S) | 軒裏・天井専用 | 軒天は日が当たらず湿気がこもる場所。専用品がある部位です(付帯部のページ) |
| ビーズコート基礎用(P/S) | 基礎巾木用 | 基礎コンクリート用。基礎に塗る専用塗料が存在することは、それ自体が知っておく価値のある事実です |
見積書に「ビーズコート」とだけ書かれていたら、どれなのかを聞いてください。SiとFではグレードが違い、当然金額も変わります。BIOを提案されたなら「うちはカビ・藻が出やすい立地だと判断された」ということなので、その理由を聞くと家の状態が分かります(コケ・カビのページ)。
仕上がりは「つや消し」一択
公式の「仕上がり(つや/模様)」欄はつや消し。艶あり・7分艶といった選択肢はありません。ここはナノコンポジットW(3分艶の一択)と同じ考え方で、質感そのものが製品の個性という設計です。
- ピカピカにしたい人には向きません艶で選ぶなら、艶を選べる塗料から選ぶのが正解です。艶の段階と選び方は艶あり・艶なしのページへ。
- 塗り板見本を見せてもらってくださいつや消しの見え方は写真では伝わりません。とくに濃い色はつや消しにすると印象が大きく変わります。
- 「つや消しは汚れやすい」の一般論は、この塗料には単純に当てはまりませんつや消しは表面が粗くなるぶん汚れやすいと言われますが、ビーズコートはその表面の凹凸そのもので撥水させている設計です。一般論より、製品の設計を見てください。
弾くのに、湿気は通す——透湿タイプという設計
公式スペックにもう一行、見逃せない特徴があります——「ナノサイズの細孔を通して建物内部の水蒸気を外部に発散する透湿タイプです」。
矛盾しているようですが、そうではありません。外から来る液体の水(雨)は弾き、内側から出る気体の水(水蒸気)は通すという設計です。塗膜が水蒸気を閉じ込めると、逃げ場を失った水蒸気が塗膜を押し上げて膨れの原因になります——弾性塗料の膨れの話(水性セラミシリコンのページ)と同じ理屈で、外壁塗料にとって「通すこと」は地味に重要な性能です。
撥水で汚れを防ぎつつ、通気は殺さない。カタログの宣伝文句としては地味ですが、モルタルや塗り壁の家では効いてくる性格です。
戸建てだと単価はいくら上がるのか——公式が数字で答えている
当サイトは塗料の記事で毎回、同じ注意書きを繰り返してきました。メーカーの公表単価は「300㎡以上」を基準にした数字なので、戸建て1棟ではもっと高くなる——と。ただしこれまでは「高くなる方向」までしか書けませんでした。どのメーカーも、小さい規模の数字を出していなかったからです。
スズカファインは、それを出しています。同社の製品ページでは施工面積を300㎡以上/300㎡未満/100㎡未満/50㎡未満から選べて、しかもこう明記されています。
「※ 戸建住宅など、300m2未満の場合は割高になります。下記より選択ください。」(スズカファイン 標準材工単価ページ)
実際にビーズコートSi(本品のみ・下塗りを含まない材工単価/税抜)で切り替えると、こうなります。
| 施工面積 | 公式の材工単価 |
|---|---|
| 300㎡以上 | 2,500円/㎡ |
| 300㎡未満 | 3,250円/㎡ |
| 100㎡未満 | 375,000円/一式(㎡単価ではなくなる) |
| 50㎡未満 | 250,000円/一式(同上) |
ここから読み取れることが2つあります。
- 300㎡以上と300㎡未満で、単価が3割上がります2,500円→3,250円。同じ製品・同じ塗り方で、規模が小さいというだけでこれだけ違う。下塗りを含む仕様(WBリメークサーフEPO+ビーズコートSi)でも3,650円→4,750円と、やはり同じ幅で上がります。「メーカーの単価どおりにならない」のではなく、メーカー自身が規模で単価を変えているのです。
- 100㎡を切ると、メーカーは㎡単価で答えるのをやめます「375,000円/一式」という表示に変わる。小さい工事は面積に比例しないからです。段取り・運搬・職人の移動といった費用は、面積が小さくても大きく減りません。戸建ての外壁が仮に100㎡なら1㎡あたり3,750円、80㎡なら約4,700円——同じ塗料でも、家が小さいほど1㎡は高くつきます。
これは他社の塗料を検討している方にも役立つ考え方です。ネットで見た「◯◯円/㎡」がどの規模の数字かを確かめ、戸建てはそこから上振れする前提で見積書を読む。安い見積もりを見つけたとき、それが「上手に安い」のか「何かを抜いている」のかを考える物差しになります(見積書の内訳のページ)。
なお、この単価にも足場代・下地調整費・養生費・塗替えの下地洗浄費は含まれていません(公式注記)。消費税も別。塗り替え工事のかなりの部分が、この数字の外側にあります。
塗れない下地・注意のいる下地
公式スペックの注記から、施主が知っておくべき条件を拾います。
- 要確認前回、弾性塗料で塗った壁適合主材の欄に「※弾性主材には適しません」と明記。前の工事で何を塗ったかが、今回選べる塗料を決めます——弾性塗料の膨れの話と同じ構造です
- 要確認シーリング(コーキング)の上を塗るとき備考に「シーリング面にはラフトン逆プライマーの事前塗装をお勧めします」。シーリングの成分が塗膜に移って汚れる(可塑剤移行)のを防ぐ専用材で、この一手間があるかどうかで数年後の見た目が変わります。詳しくはシーリングのページへ
- 対応する塗り壁・意匠塗材の家シリーズの「フレッシュ」が意匠塗材の質感を損なわずに塗り替えるための製品として用意されています。塗り壁の風合いを残したい場合の選択肢になります
- 向くカビ・藻に困っている立地全製品が防かび・防藻タイプで、さらに強力なBIOがあります。ただし塗料で環境そのものは変わりません(コケ・カビのページ)
JIS「該当せず」と正直に書くこと
最後に、資料の読み方としてひとつ。ビーズコートSiの公式スペック表には、こう書かれています——JIS規格:該当せず/防火認定:該当せず/JASS18:該当せず。
これは欠陥の告白ではありません。その規格の対象製品ではない、という事実の表示です。当サイトで見てきたとおり、メーカーによって数字や規格の示し方はかなり違います——年数を明記する会社、JIS「相当」と書く会社、促進試験の数値で示す会社、実地暴露で示す会社。スズカファインは該当する規格は書き、しないものは「該当せず」と書くタイプです。
施主にとっての教訓はシンプルで、「JIS◯種取得」といった表記は、あるかないかより"誰が何を測ったか"を見るということ。営業トークで規格の名前が出てきたら、その製品ページで裏を取れば済みます。
よくある質問
ビーズコートの耐用年数は何年ですか?
公式の製品ページに年数の記載は見当たりませんでした(同社は「期待耐用年数」の資料を別に用意していますが、閲覧に会員登録が必要です)。当サイトは根拠のない年数を書かない方針なので、ここでは断定しません。判断材料になるのはグレード(Si/F/無機)と、下塗りを含む仕様が適切に組まれているかです。年数の考え方そのものは何年ごとに塗るかのページにまとめています。
ビーズコートとビーズコートSiの違いは?
公式の分類では、無印がアクリルシリコン樹脂系、Siがシリコーン樹脂系(ラジカル制御形)です。どちらも超撥水・つや消し・水性1液という性格は共通で、樹脂と耐候の作りが違うと理解してください。上にはふっ素のF、無機ハイブリッドの無機があります。グレードの考え方は塗料の種類のページへ。
評判はどうですか?
検索で出てくるのは、この塗料を扱う塗装会社のブログがほとんどです(扱う塗料を悪く書く理由はないので、評判記事は好意的に寄ります)。素性を確かめたいなら、このページで見たように公式スペックで「超撥水・つや消し・透湿・弾性主材不可・シーリングに逆プライマー」を押さえるほうが確実です。あとは業者に「うちの壁でこの塗料を選ぶ理由」を説明してもらってください。
スズカファインはどんな会社ですか?
建築用塗料のメーカーで、外壁の仕上塗材(塗り壁調の意匠材)に強い系統の会社です。当サイトでもラジカル制御や塗り壁の塗り替えの説明で同社の公式資料を引用しています。知名度より、公式サイトで単価・仕様・注意事項をここまで細かく公開していることのほうが、施主にとっては有り難い会社です。
最終確認日:2026年8月22日。出典:スズカファイン公式サイト「ビーズコートSi」製品説明書(特徴・機能/概要/適合下塗材・適合主材/備考)、同社「標準材工単価」ページ(施工面積別の単価および注記。単価は税抜・法定福利費を含み、足場代・下地調整費・養生費・下地洗浄費は含まない)、および同社製品一覧のシリーズ各製品の分類表記。単価・仕様は予告なく変更される場合があります。実際の見積もりは下地の状態・立地・付帯部の範囲で変わります。
あわせて読みたい
ナノコンポジットW
「親水」で汚れを流す側の代表格。艶を出さない設計も対照的
塗料の種類とグレード
ラジカル制御は「グレード」ではないという話
艶あり・艶なし
つや消しを選ぶときに知っておくこと
シーリングの打ち替え
可塑剤移行と、逆プライマーという一手間
見積書の内訳の読み方
単価の外側にある足場・下地調整・養生の話
コケ・カビが出る壁
防かび・防藻タイプを勧められた家が確かめること