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ビーズコート——「水を弾いて汚れを落とす」側の塗料です

見積書に「ビーズコート」と書いてあった方へ。作っているのはスズカファイン(三重県鈴鹿市が社名の由来)で、この塗料の性格は名前のとおりです——塗膜の表面に微細な凹凸を作り、ハスの葉と同じ「ロータス効果」で水を玉にして弾く超撥水タイプ。実はここが面白いところで、汚れに強い塗料には正反対の2つの流派があります。ビーズコートは、いま主流の「親水(水になじませて流す)」とは逆の道です。加えてこのメーカーには、他社が絶対に書かない数字が公開されています——戸建てサイズだと単価がいくら上がるのか、です。

このページの内容全11項目

汚れ対策には2つの流派がある——親水と撥水

外壁塗料のカタログを何社か並べると、どれも「汚れにくい」と書いてあります。ところがその実現方法は、正反対の2つに分かれます。

流派仕組み代表例
親水(しんすい)塗膜を水になじみやすくして、雨水が汚れの下に入り込み、浮かせて流すナノコンポジットW、エスケープレミアム無機、ハイパーユメロックほか、いまの主流
撥水(はっすい)塗膜を水を弾く状態にして、水滴が汚れを絡めとって転がり落ちるビーズコート(超撥水・ロータス効果)

公式の説明はこうです——「塗膜表面に微細な凹凸構造を施し、ハスの葉と同様のロータス効果を再現した超撥水性塗膜です」「超撥水効果により塗膜への汚れが付着しにくい低汚染タイプです」。ハスの葉の上で水滴が真ん丸になって転がる、あの現象を塗膜で再現しているわけです。製品名の「ビーズ」も、玉になった水滴のことだと分かれば腑に落ちます。

どちらが優れているという話ではありません。知っておくと役に立つのは「他社と比べて何が違うのか」を業者に聞けるようになることです。「この塗料は撥水で汚れを落とすタイプですよね。うちの壁だと、親水タイプとどちらが合いますか」——この質問ができれば、業者が製品を理解して勧めているかどうかも一緒に分かります。

なお撥水の効果を保つ工夫も公式に書かれています。「ラジカル制御されたシリコーン樹脂により、長期にわたり撥水性を維持します」——紫外線による劣化因子ラジカルを抑える技術(塗料の種類のページ参照)が、ここでは「撥水を長持ちさせる」ために使われています。同じ技術が、メーカーごとに違う目的で使われているのが分かる例です。

ビーズコートの家族構成——Si・F・BIO・無機・フレッシュ・基礎用

検索すると似た名前が大量に出てきますが、整理すると「樹脂グレード違い」と「塗る場所違い」の2軸です。

製品系統位置づけ
ビーズコートアクリルシリコン樹脂系シリーズの基本形
ビーズコートSiシリコーン樹脂系・ラジカル制御形検索が多い主力。適用下地が幅広い
ビーズコートFふっ素樹脂系・ラジカル制御形上位グレード。「フッ素にもラジカル制御はある」の実例として当サイトでも引用
ビーズコートBIOシリコン樹脂系強力防かび・防藻タイプ。北面や湿気の多い立地向け
ビーズコート無機無機・有機ハイブリッド樹脂系無機系。ここでも「無機=ハイブリッド」です
ビーズコートフレッシュ意匠仕上塗材塗替用意匠塗材の質感・素材を損なわずに塗替え可能と公式に明記。塗り壁調の外壁を持つ家に関係します(ジョリパットのページと同じ論点)
ビーズコート軒天用(P/S)軒裏・天井専用軒天は日が当たらず湿気がこもる場所。専用品がある部位です(付帯部のページ)
ビーズコート基礎用(P/S)基礎巾木用基礎コンクリート用。基礎に塗る専用塗料が存在することは、それ自体が知っておく価値のある事実です(基礎の塗装のページ)

見積書に「ビーズコート」とだけ書かれていたら、どれなのかを聞いてください。SiとFではグレードが違い、当然金額も変わります。BIOを提案されたなら「うちはカビ・藻が出やすい立地だと判断された」ということなので、その理由を聞くと家の状態が分かります(コケ・カビのページ)。

仕上がりは「つや消し」一択

公式の「仕上がり(つや/模様)」欄はつや消し。艶あり・7分艶といった選択肢はありません。ここはナノコンポジットW(3分艶の一択)と同じ考え方で、質感そのものが製品の個性という設計です。

  • ピカピカにしたい人には向きません艶で選ぶなら、艶を選べる塗料から選ぶのが正解です。艶の段階と選び方は艶あり・艶なしのページへ。
  • 塗り板見本を見せてもらってくださいつや消しの見え方は写真では伝わりません。とくに濃い色はつや消しにすると印象が大きく変わります。
  • 「つや消しは汚れやすい」の一般論は、この塗料には単純に当てはまりませんつや消しは表面が粗くなるぶん汚れやすいと言われますが、ビーズコートはその表面の凹凸そのもので撥水させている設計です。一般論より、製品の設計を見てください。

弾くのに、湿気は通す——透湿タイプという設計

公式スペックにもう一行、見逃せない特徴があります——「ナノサイズの細孔を通して建物内部の水蒸気を外部に発散する透湿タイプです」。

矛盾しているようですが、そうではありません。外から来る液体の水(雨)は弾き、内側から出る気体の水(水蒸気)は通すという設計です。塗膜が水蒸気を閉じ込めると、逃げ場を失った水蒸気が塗膜を押し上げて膨れの原因になります——弾性塗料の膨れの話(水性セラミシリコンのページ)と同じ理屈で、外壁塗料にとって「通すこと」は地味に重要な性能です。

撥水で汚れを防ぎつつ、通気は殺さない。カタログの宣伝文句としては地味ですが、モルタルや塗り壁の家では効いてくる性格です。

戸建てだと単価はいくら上がるのか——公式が数字で答えている

当サイトは塗料の記事で毎回、同じ注意書きを繰り返してきました。メーカーの公表単価は「300㎡以上」を基準にした数字なので、戸建て1棟ではもっと高くなる——と。ただしこれまでは「高くなる方向」までしか書けませんでした。どのメーカーも、小さい規模の数字を出していなかったからです。

スズカファインは、それを出しています。同社の製品ページでは施工面積を300㎡以上/300㎡未満/100㎡未満/50㎡未満から選べて、しかもこう明記されています。

「※ 戸建住宅など、300m2未満の場合は割高になります。下記より選択ください。」(スズカファイン 標準材工単価ページ)

実際にビーズコートSi(本品のみ・下塗りを含まない材工単価/税抜)で切り替えると、こうなります。

施工面積公式の材工単価
300㎡以上2,500円/㎡
300㎡未満3,250円/㎡
100㎡未満375,000円/一式(㎡単価ではなくなる)
50㎡未満250,000円/一式(同上)

ここから読み取れることが2つあります。

  • 300㎡以上と300㎡未満で、単価が3割上がります2,500円→3,250円。同じ製品・同じ塗り方で、規模が小さいというだけでこれだけ違う。下塗りを含む仕様(WBリメークサーフEPO+ビーズコートSi)でも3,650円→4,750円と、やはり同じ幅で上がります。「メーカーの単価どおりにならない」のではなく、メーカー自身が規模で単価を変えているのです。
  • 100㎡を切ると、メーカーは㎡単価で答えるのをやめます「375,000円/一式」という表示に変わる。小さい工事は面積に比例しないからです。段取り・運搬・職人の移動といった費用は、面積が小さくても大きく減りません。戸建ての外壁が仮に100㎡なら1㎡あたり3,750円、80㎡なら約4,700円——同じ塗料でも、家が小さいほど1㎡は高くつきます。

これは他社の塗料を検討している方にも役立つ考え方です。ネットで見た「◯◯円/㎡」がどの規模の数字かを確かめ、戸建てはそこから上振れする前提で見積書を読む。安い見積もりを見つけたとき、それが「上手に安い」のか「何かを抜いている」のかを考える物差しになります(見積書の内訳のページ)。

なお、この単価にも足場代・下地調整費・養生費・塗替えの下地洗浄費は含まれていません(公式注記)。消費税も別。塗り替え工事のかなりの部分が、この数字の外側にあります。

缶の数と塗装間隔——見積書はここで検算できます

ビーズコートを使うと書かれた見積書が来たとき、確かめられる数字がメーカーの資料に出ています。スズカファインの製品資料から、外壁でいちばん多いセメント系素地の仕様を引きます。

工程塗料希釈標準塗付量塗回数塗装間隔(23℃)
下塗りワイド浸透シーラーEPO無希釈0.08〜0.20 kg/㎡/回14時間以上・1ヶ月以内
上塗りビーズコート——0.12〜0.20 kg/㎡/回2——

鉄部(金属系素地)は別仕様です。下塗りが1液ワイドさびストップで0.12〜0.18kg/㎡/回・1〜2回・塗装間隔16時間以上、上塗りが0.12〜0.20kg/㎡/回・2回。屋根(ビーズルーフ系)は上塗り0.10〜0.16kg/㎡/回・2回で、塗り重ねは7日以内です。

30坪の家なら、何缶いるのか

上塗りは0.12〜0.20kg/㎡を2回=1平方メートルあたり0.24〜0.40kg。
外壁の塗装面積を120㎡とすると——28.8kg〜48kg。
ビーズコートSiは16kg缶と3kg缶(ビーズコートは20kg/4kg、無機BIOは15kg/3kg、フレッシュFは20kg)なので、16kg缶で2〜3缶という計算になります。
——見積書に「ビーズコートSi 1缶」とだけ書かれていたら、面積と合っているか聞いてください。足りない缶数で見積もられていれば、どこかで薄まります(面積の出し方)。

塗装間隔も、工程表を見るときの物差しになります。下塗りのあと4時間以上あけることになっているので、下塗りと上塗り1回目を同じ日に詰め込む工程は、朝から始めない限り無理があります。鉄部は16時間以上なので、こちらは必ず日をまたぎます。

シーリングの上に塗るなら、下塗りが指定されています

ビーズコートにはウォールバリアNBシステムという組み合わせがあり、メーカーはこう書いています。

「シーリング汚染を抑制するには、下塗りとして必ずWBリメークサーフNBをご使用ください。」

「必ず」と書かれている下塗りです。——シーリングを打ち替えたうえから塗る工事では、この下塗りが見積書に入っているかを見てください。入っていないと、シーリングの成分が表に出て、その部分だけ黒く汚れることがあります(ひび割れとシーリング)。

塗れない下地・注意のいる下地

公式スペックの注記から、施主が知っておくべき条件を拾います。

  • 要確認前回、弾性塗料で塗った壁適合主材の欄に「※弾性主材には適しません」と明記。前の工事で何を塗ったかが、今回選べる塗料を決めます——弾性塗料の膨れの話と同じ構造です
  • 要確認シーリング(コーキング)の上を塗るとき備考に「シーリング面にはラフトン逆プライマーの事前塗装をお勧めします」。シーリングの成分が塗膜に移って汚れる(可塑剤移行)のを防ぐ専用材で、この一手間があるかどうかで数年後の見た目が変わります。詳しくはシーリングのページへ
  • 対応する塗り壁・意匠塗材の家シリーズの「フレッシュ」が意匠塗材の質感を損なわずに塗り替えるための製品として用意されています。塗り壁の風合いを残したい場合の選択肢になります
  • 向くカビ・藻に困っている立地全製品が防かび・防藻タイプで、さらに強力なBIOがあります。ただし塗料で環境そのものは変わりません(コケ・カビのページ)

JIS「該当せず」と正直に書くこと

最後に、資料の読み方としてひとつ。ビーズコートSiの公式スペック表には、こう書かれています——JIS規格:該当せず/防火認定:該当せず/JASS18:該当せず。

これは欠陥の告白ではありません。その規格の対象製品ではない、という事実の表示です。当サイトで見てきたとおり、メーカーによって数字や規格の示し方はかなり違います——年数を明記する会社、JIS「相当」と書く会社、促進試験の数値で示す会社、実地暴露で示す会社。スズカファインは該当する規格は書き、しないものは「該当せず」と書くタイプです。

施主にとっての教訓はシンプルで、「JIS◯種取得」といった表記は、あるかないかより"誰が何を測ったか"を見るということ。営業トークで規格の名前が出てきたら、その製品ページで裏を取れば済みます。

この塗料を扱えるかどうかは会社によります。指定したいなら、見積もりを頼む段階で伝えてください。何社かに同じ製品名を出して、施工の経験を聞いてみてください。扱ったことがある会社は、下塗りや乾燥の条件まで具体的に答えます。そこまで話せるかどうかが、仕上がりの差になって出ます。

「汚れにくい」には、2つの考え方があります

低汚染をうたう塗料は複数ありますが、仕組みが違います。——勧められたときは「どちらの考え方ですか」と聞くと、話が具体的になります。

水を弾く方向水になじませる方向
考え方水滴が転がって、汚れを連れていく水が膜のように広がって、汚れを浮かせて流す
効きやすい場所どちらも「雨が当たる面」です
効きにくい場所軒下、ベランダの内壁、雨のかからない北側

どちらが優れているという話ではありません。——共通しているのは「雨が当たらないと働かない」という点です。

だから、聞くのはこれです
「うちの家だと、どの面で効きますか。」

——軒が深い家、ベランダに囲まれた面が多い家では、期待できる範囲が変わります。

「汚れない」ではなく「汚れが留まりにくい」です。——カタログの数値は塗ったばかりの状態のもので、年数が経つほど当初の状態からは離れていきます。そこまで含めて、差額に見合うかを考えてください。

判断は、この1問で足ります。——「この製品にした場合と、しなかった場合の差額はいくらですか」。2〜3社に聞くと、扱っている製品が違うので答えも変わります。

よくある質問

ビーズコートは何缶いりますか?

上塗りの標準塗付量は0.12〜0.20キログラム/平方メートル/回で塗回数は2回なので、1平方メートルあたり0.24〜0.40キログラムです。外壁の塗装面積を120平方メートルとすると28.8キログラムから48キログラム。ビーズコートSiは16キログラム缶と3キログラム缶なので、16キログラム缶で2缶から3缶という計算になります。見積書に缶数が書かれていたら、面積と突き合わせてください。

下塗りと上塗りを同じ日にやっても大丈夫ですか?

セメント系素地の下塗りはワイド浸透シーラーEPOを無希釈で1回、塗装間隔は4時間以上・1ヶ月以内です。朝から始めれば同日に上塗り1回目まで進む可能性はありますが、鉄部は下塗りが1液ワイドさびストップで塗装間隔16時間以上なので、必ず日をまたぎます。屋根のビーズルーフ系は上塗りの塗り重ねが7日以内とされています。

シーリングの上に塗るとき、注意することはありますか?

メーカーが下塗りを指定しています。ウォールバリアNBシステムについて「シーリング汚染を抑制するには、下塗りとして必ずWBリメークサーフNBをご使用ください。」と明記されています。シーリングを打ち替えたうえから塗る工事では、この下塗りが見積書に入っているかを確認してください。入っていないと、シーリングの成分が表に出てその部分だけ黒く汚れることがあります。

「汚れが落ちる」というのは、雨で落ちるということですか?

そういう考え方の製品です。——水を弾く性質で、汚れが表面に留まりにくくするという設計です。ただし「汚れない」わけではありません。雨が当たらない面(軒下、ベランダの内側)では、効き方が変わります。

雨が当たらない面はどうなりますか?

ここは確認する価値があります。——軒が深い家、ベランダの内壁、北側の日陰では、水で流れる仕組みが働きにくくなります。「うちの家だと、どの面で効きますか」と聞いてみてください。

低汚染をうたう塗料は、他にもありますよね

あります。そして、仕組みが違います。——水を弾く方向(撥水)と、水になじませて汚れを流す方向(親水)があります。どちらが優れているという話ではなく、考え方が違うので、勧められたときは「どういう仕組みですか」と聞いてください。

効果はどれくらい続きますか?

年数が経つほど、当初の状態からは離れていきます。——カタログの数値は、塗ったばかりの状態のものです。そこまで含めて、費用に見合うかを考えてください。

この製品を扱っていない会社が多いのですが

塗料には取扱店の仕組みがあります。——「扱いがない」は正直な答えです。同じ考え方の別製品を提案してもらうという選び方もあります。

普通の塗料との差額は、どう判断すればいいですか?

「この製品にした場合と、しなかった場合の差額はいくらですか」——この1問で判断できます。差額が小さいなら試す価値があり、大きいなら他の工事に回せます(塗料ごとの単価)。

参考にした情報

  • スズカファイン株式会社「ビーズコート」シリーズ製品ページ——製品仕様、標準材工単価(施工面積300㎡以上/300㎡未満/100㎡未満/50㎡未満の区分)、および「※ 戸建住宅など、300m2未満の場合は割高になります。下記より選択ください。」の注記
  • 同製品ページのJIS区分に関する記載(該当規格なしとされている点)、標準塗付量・塗装間隔・適用下地の記載

標準材工単価はメーカーが示す目安です。実際の見積額は下地の状態・面積・地域によって変わります。製品仕様は必ずメーカーの公開資料でご確認ください。最終確認日:2026年9月8日。

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