ナノコンポジットW——「艶を出さない」が最大の個性の外壁塗料

見積書や業者の提案で「ナノコンポジットW」という名前を見て、調べに来た方へ。作っているのは水谷ペイント(大阪)という塗料メーカーで、2004年発売のロングセラーです。この塗料の性格は、他の主力塗料とかなり違います——仕上がりは公式に「落ち着いた3分艶有」の一択で、ピカッとした新築の艶を出さない。そして「無機」の正体を、メーカー自身が種明かししている。検索で多い「艶消しなの?」「耐用年数は?」「費用は?」に、公式資料だけで順番に答えます。

このページの内容

ナノコンポジットWとは——家族構成と実績

ナノコンポジットは水谷ペイントの外壁用シリーズで、主な顔ぶれは3つです。

製品名位置づけ
ナノコンポジットW基本形。水性1液。このページの主役
ナノコンポジットW防藻+防藻・防カビを強化した派生版
ナノコンポジットF耐候性をさらに追求した上位版(フッ素系)

下塗りにも専用品(ナノコンポジットシーラーII・フィラーN)が用意されている、体系の整ったシリーズです。実績は公式カタログに数字があります——2004年の発売から2025年までの出荷量を戸建て住宅塗装に換算すると、シリーズ累計約150,000戸に相当(当社換算)。戸建てだけでなく商業施設・マンション・鉄道駅にも使われてきたと書かれています。パーフェクトトップの「戸建て70万棟分」と同じ型の当社試算値ですが、20年以上売られ続けている製品であることは確かです。

もうひとつの特徴は出自で、産学官連携で開発され、ナノコンポジットエマルション(樹脂)は井上春成賞・工業技術賞を受賞しているとメーカーが掲げています。技術に賞が付いている塗料は珍しい部類です。

艶消しですか?——公式の答えは「3分艶」一択

検索でいちばん多い質問のひとつが「ナノコンポジットWは艶消しですか?」。公式カタログの表現はこうです——「落ち着いた3分艶有」「光沢を抑えた色味により、上品で新築のような美しい仕上がりをご提供します」

つまり正確には完全な艶消し(マット)ではなく、艶をかなり抑えた「3分艶」です。そしてここが大事なところですが、多くの塗料が艶有り〜艶消しの中から選べるのに対し、この塗料は仕上がりの艶を選びません。3分艶のしっとりした質感こそが製品の個性で、それを気に入るかどうかが、選ぶかどうかの入り口になります。

  • 艶の「3分」がどんな見え方か艶有りと艶消しの間で、かなりマット寄りの落ち着いた質感です。艶の段階の意味と選び方は艶あり・艶なしのページにまとめています。
  • ピカピカの仕上がりを期待していると、逆にがっかりします「塗りたてなのに艶がない」は、この塗料では不具合ではなく仕様です。逆に「新築のときのようなテカテカは好みじゃない」という方には、まさにそのための塗料です。
  • 契約前に、実物で確認してください艶の感じ方は画面や色見本帳では伝わりにくいので、塗り板見本(実際に塗った板)や施工例の実物を見せてもらうのが確実です。

「無機の正体は、超微粒子シリカ」——メーカー自身の種明かし

この塗料のカタログには、業界ではあまり見ない率直な文章があります。

「今、市場には『無機』を謳う塗料が溢れています。(中略)私たちの『無機』の正体は、超微粒子シリカ。シリカはガラスの主成分で、過酷な環境下でも劣化しにくい圧倒的な耐久性を誇ります」(ナノコンポジットW カタログ)

「無機塗料」と聞くと石やガラスだけでできた特別な塗料を想像しがちですが、実際には有機の樹脂に無機成分を組み合わせたハイブリッドが普通です——この話はエスケープレミアム無機のページで書いたとおりで、ナノコンポジットWはその構造を自分から名乗っている側です。カタログの説明では、ナノテクノロジーで無機成分(親水性のシリカ)を有機成分で包み、超低汚染性と耐久性を両立させたとしています。

汚れに強い仕組みも同じ理屈です。塗膜の中に超微粒子シリカが緻密に分散して石やガラスのような特性を持ち、汚れの浸入をブロックし、親水性の塗膜が雨で汚れを洗い流す(セルフクリーニング)。「無機っぽさ」を宣伝文句でなく、汚れにくさという実利で説明している構成です。

ちなみに、汚れ対策のやり方はこれだけではありません。水になじませて流す「親水」の逆に、水を弾いて汚れを転がり落とす「撥水」の流派もあります(ビーズコートのページ)。カタログの「汚れにくい」が、どちらの方法なのかを見分けられると比較が一段深くなります。

耐用年数——水谷ペイントは「西表島」で示す

「ナノコンポジットWの耐用年数は?」——ここも正直に書きます。公式資料に「期待耐用年数◯〜◯年」という年数の記載は見当たりません。代わりに水谷ペイントが出しているのは、実地の暴露試験です。

カタログにはこうあります——「実際の暴露結果ほど信頼のおけるデータはありません」。同社は大阪本社と沖縄県・西表島(日射量・降水量が多く海辺に近い過酷な環境)に試験板を置いて耐候性試験を行っており、暴露3年の色差比較グラフまで載せています。促進試験機で紫外線を当てる方法(キセノンランプ法など)とは別の、実際の空の下に何年も晒す方法です。

これで、当サイトで見てきた塗料メーカーの「数字の出し方」は4つの型が揃いました。

メーカー耐用年数の示し方
エスケー化研期待耐用年数を年数で明記プレミアムシリコン14〜16年など)
日本ペイント年数は書かず、JIS耐候形1種「相当」(社内試験)で示す
ロックペイント年数は書かず、促進試験の数値(キセノン2,500時間)で示す(ユメロック
水谷ペイント年数は書かず、実地の暴露試験(西表島)で示す

紫外線への強さの中身は、いま各社の主力と同じ潮流のラジカル制御です。カタログの説明では、劣化因子ラジカルの発生源である酸化チタンの表層を保護し、さらに酸化チタンの周りに多くのHALS(光安定剤)を配置してラジカルを捕捉する——同社はこれを「ハイラジカル制御」と呼んでいます。仕組み自体は塗料の種類のページで書いたラジカル制御と同じ系統で、各社が同じ敵(ラジカル)と戦っている構図がここでも確認できます。

残りの機能の読みどころ——難燃・速乾・防カビ

公式は「6つの機能」を掲げています。施主目線で読みどころを絞ると:

  • 燃えにくさは「認定」の裏付けつき公式サイトによれば、従来型の水性塗料では非常に難しいJIS A 1321 難燃一級に合格し、塗膜は防火認定材料としても認定されています。塗料で家が燃えなくなるわけではありませんが、水性でこの認定を持つのは製品の個性です。
  • 速乾性は「工期の安定」に効きます無機成分の分散により、従来の水系塗料では不可能だった速乾性を実現したとしています。乾きが速いことは、天気に左右される塗装工程が予定どおり進みやすいという実利につながります。
  • 防カビ・防藻とF☆☆☆☆防カビ・防藻剤入り、ホルムアルデヒド放散等級は最上位のF☆☆☆☆。このあたりは現行の主力塗料の標準装備です。

費用——公式の「物差し」が見当たらない塗料の確かめ方

「ナノコンポジットWの費用はいくら?」が検索の最大需要ですが、ここは他の塗料と事情が違います。エスケー化研やロックペイントは公式の設計価格(材工の目安単価)を公開していますが、ナノコンポジットWについては、当サイトが確認した範囲で、メーカー公式の設計価格は見当たりませんでした。ネット上には施工店ごとの価格が並んでいますが、根拠と条件がバラバラなので、当サイトはここに数字を書きません。

公式の物差しがない塗料で見積もりの妥当性を確かめる方法は、構造の確認です。

  • 塗回数と下塗りの行を見る公式仕様はどの下地でも下塗り(または下地調整材)1回+上塗り2回が基本です。ただし注記に「下地のテクスチャーパターンにより、上塗り3回塗りを必要とする場合があります」「金属系サイディングでは上塗りの色によっては3回塗装が必要な場合があります」とあり、3回塗りの提案は水増しとは限りません。理由を聞けば済む話です。
  • 下塗りが専用体系から選ばれているか仕様書はモルタル・サイディング・金属系など下地別に、専用シーラー・フィラー等を細かく指定しています。見積書の下塗りの行に製品名があるか、下地に合っているかが品質の分かれ目です。
  • 相見積もりが唯一の物差しになります公式単価がない以上、金額の妥当性は同じ条件で2〜3社に頼むことでしか確かめられません。内訳の見方は見積書のページへ。

向く家・向かない家

公式の仕様書・注意書きから、判断材料になる条件を拾います。

  • 向く艶を抑えた落ち着いた外観にしたい家3分艶の質感はこの塗料の主役です。塗り壁調・マット系の意匠と相性がよく、「新築のテカリが好きではなかった」人の受け皿になります
  • 向く汚れの筋・雨だれが気になっている家超低汚染(親水性シリカ+セルフクリーニング)が看板機能です。いま汚れに困っている家ほど、払う理由がはっきりします
  • 要確認光触媒・無機・フッ素系のコーティングがされたサイディング公式仕様に「付着しない場合がありますので、付着性を確認の上、施工してください」と明記。いわゆる難付着サイディングの話で、サイディングのページで書いた確認がそのまま必要です
  • 要確認前回、弾性塗料で塗った壁公式注意書きに「旧塗膜が弾性塗材で爪で押して弾性が残っている場合は塗装を避けてください」。前回の塗料が何かで、そもそも塗れるかが変わります
  • 向かないピカッとした艶のある仕上がりが好みの家艶は選べません。艶有りが希望なら、艶を選べる他の塗料から選ぶのが正解です

よくある質問

ナノコンポジットWはフッ素樹脂塗料ですか?

いいえ。Wは水性のナノコンポジットエマルション(シリカ×有機樹脂のハイブリッド)で、フッ素ではありません。シリーズの上位版ナノコンポジットFが、耐候性をさらに追求した位置づけの製品です。見積書にどちらが書かれているかで、価格も変わるはずです。

人気の色は?色は選べますか?

専用の標準色(NC色)を中心に選ぶ製品です。3分艶の質感は淡い色・グレー系・ベージュ系との相性で語られることが多いですが、人気色のランキングより、わが家の屋根・サッシとの組み合わせで決めるほうが失敗しません。色選びの考え方と「色で値段が変わる」話は色のページへ。

「割れる」という検索候補を見て不安です

塗膜のひび割れは、この塗料に限らず下地の動きと施工条件で起きるものです。公式の注意書きも、弾性が残る旧塗膜を避けることや、下地別の下塗り指定を細かく定めています——裏を返せば、そこを外すと不具合につながるということです。ひび割れの見方そのものは劣化サインのページ剥がれのページにまとめています。

水谷ペイントってどんな会社ですか?

大阪の塗料メーカーで、製品は屋根用・内外壁用・床用の3本柱。実務者の間では、床用塗料の定番メーカーとして昔からよく知られた会社です(外壁より先に、倉庫や工場の床で名前を覚えた職人が多いはずです)。外壁用のナノコンポジットは、その会社が産学官連携で開発した20年選手のシリーズ、という位置づけになります。

最終確認日:2026年8月22日。出典:ナノコンポジット公式サイト(toso-nano.com)「6つの機能」「塗装仕様」、ナノコンポジットW公式カタログ(無機の正体・3分艶・西表島暴露試験・ハイラジカル制御・出荷実績約150,000戸換算・防火認定・注意事項)、水谷ペイント公式サイト(製品ラインアップ)。仕様・認定内容は改定される場合があります。

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