水性セラミシリコン——「弾性」に払う220円は、長持ち代ではありません

見積書にこの名前があったら、まず確かめてほしいことが1つあります。この製品には「水性セラミシリコン」と「水性弾性セラミシリコン」の2つがあり、設計価格が220円/㎡ちがいます。ところが期待耐用年数は、どちらも12〜15年で同じです。つまり弾性タイプの差額は「長くもつ」ためのお金ではありません。では何に払っているのか——そしてその「弾性」を実際に担っているのは、上塗りではなく下の層だということを、メーカー自身が書いています。順に見ていきます。

このページの内容

まず、セラミシリコンは2つあります

エスケー化研の製品ページには、名前のよく似た2つが並んでいます。どちらも公式に数字が出ているので、そのまま並べます。

水性セラミシリコン水性弾性セラミシリコン
一般名称超耐久低汚染型一液水性セラミックシリコン樹脂系塗料超耐久低汚染型一液水性弾性セラミックシリコン樹脂塗料
主要構成成分セラミックシリコン樹脂セラミックシリコン樹脂エマルション
公式の分類一液/シリコン樹脂系/低汚染性/防かび・防藻性一液/シリコン樹脂系/低汚染性/ひび割れ追従性/防かび・防藻性
設計価格2,710円/㎡
(複層塗材の上塗りに用いる場合)
2,930円/㎡
期待耐用年数12〜15年12〜15年(同じ)
つや艶有り・半艶・3分艶・艶消し(4段階)艶有り・半艶・3分艶(3段階
荷姿/標準塗坪16kg石油缶・4kg缶/45〜64㎡(16kg缶)16kg石油缶・4kg缶/45〜64㎡(16kg缶)

差額220円/㎡に対して、期待耐用年数は動きません。増えているのは公式の分類にある「ひび割れ追従性」の1行だけです。そしてつやは、弾性のほうが1段階少なくなります(艶消しが選べません)。

この事実だけで、判断の軸が決まります。「弾性のほうが上位グレードだから長持ちする」ではありません。ひび割れが心配な壁かどうか、という別の問いです。

「弾性」の正体は、上塗りではありません

ここがこのページでいちばんお伝えしたい部分です。水性弾性セラミシリコンの「ひび割れ追従性」について、公式にはこう書かれています。

エスケー化研の製品ページより(ひび割れ追従性の項)

複層仕上げの場合、主材にアクリルゴム系の材料を使用するため、躯体のひび割れに対し、抜群の追従性を示し、雨水の浸入を防ぎます」

読み替えると、こうです。ひび割れに追従しているのは、いちばん上に塗る仕上げ材ではなく、その下にある「主材」のほうです。塗り替えの塗膜は下塗り・主材・上塗りと層になっていて、伸び縮みして割れに追いつく役目は下の層が持っている——公式がそう説明しています。

これは施主にとって実利のある話です。

  • 「弾性塗料にすればひび割れが止まる」とは限らない上塗りの製品名だけを弾性タイプに変えても、下に何を使うかが伴わなければ、公式が説明している仕組みにはなりません。見積書で見るべきは上塗りの行より、下塗り・主材の行です。
  • ひび割れの幅と原因のほうが先塗膜で追従できるのは、動きの小さいひび割れです。構造に関わる幅のものは、塗装の前に補修の話になります。ひび割れの見方はチョーキングとひび割れのページに整理しました。
  • 弾性は万能ではない塗膜が柔らかいぶん、条件によっては膨れの原因になることがあります。壁の中の湿気が抜けにくい状態と重なると、水ぶくれのように浮くことがある——という話はコケ・カビのページの膨れの節でも触れています。

つまり「弾性かどうか」は、塗料のグレードの話ではなく、その壁に何が起きているかの話です。

サイディングの家は、ここを必ず確認してください

弾性タイプを検討しているなら、自分の家の外壁が何でできているかを先に確かめてください。別のメーカーですが、日本ペイントが公式のよくあるご質問で、この組み合わせについてはっきり答えています。

日本ペイント公式FAQ「弾性塗料はALCパネルや窯業系サイディングの外壁塗り替えに適さないといわれたがなぜですか?」

「弾性塗料で塗り替えると、次回塗り替えの際、塗膜の膨れが生じやすいためです。カタログの『施工上の要点・注意事項』等でも注意喚起しています

ALCパネル、窯業系サイディングや軽量モルタル等の断熱性が高い材質の外壁は、特に夏場、直射日光の影響を受けると、表面温度が50〜60℃以上に上ることがあり、外壁内の湿気が熱せられて水蒸気になりやすいといわれます。弾性塗料に新たに塗料を塗り重ねると、水蒸気が逃げにくくなり、その結果、弾性塗料の柔らかな塗膜を膨らませてしまう傾向があります

ここで見落としてほしくないのは、膨れるタイミングです。「弾性で塗った直後」ではなく「次回の塗り替えのとき」と書かれています。つまり今回きれいに仕上がっても、次に塗り重ねる人が困るという形で表に出てきます。今の工事が、次の工事の条件を決めてしまう構造です。

同じ構造は他の仕上げでも起きます。塗り壁を普通の塗料で塗ると次に風合いを戻す材料が使えなくなる話はジョリパットのページに、打ちっぱなしコンクリートで「守る」と「作り直す」が分かれる話は打ちっぱなしのページに書きました。塗り替えは、次の塗り替えの前提を作る工事でもあります。

ただし、メーカーによって書き方が違う点は正確にお伝えします。上の記述は日本ペイントのものです。一方でエスケー化研の水性弾性セラミシリコンは、適用下地に「各種サイディングボード」を含めて記載しています。ですから当サイトは「サイディングに弾性は使えない」とは書きません。書けるのは「大手メーカーが、この組み合わせについて次回塗り替え時の膨れを理由に注意喚起している」という事実までです。だからこそ、採用する製品のカタログの注意事項を施工店に確認してもらうのが確実です。

自分の家の外壁がサイディングかモルタルか分からない場合は、サイディングのページに見分け方をまとめています。

同じくらいの金額で、選べるものが3つある

ここまでの数字を、同じメーカーの中で並べ直すと、選択の形がはっきりします。

製品設計価格期待耐用年数この金額で買っているもの
水性セラミシリコン2,710円/㎡12〜15年定番の耐久・低汚染
エスケープレミアムシリコン2,920円/㎡14〜16年年数(ラジカル制御世代)
水性弾性セラミシリコン2,930円/㎡12〜15年ひび割れ追従

プレミアムシリコンと弾性セラミシリコンは、設計価格でわずか10円/㎡しか違いません。それなのに、返ってくるものが違います。年数を買うのか、ひび割れへの追従を買うのか——ほぼ同じ予算で、性格の違う選択ができるということです。

だから聞くべきことは「どれが一番良いですか」ではありません。「うちの壁は、年数とひび割れのどちらが問題ですか」です。プレミアムシリコン側の詳細はエスケープレミアムシリコンのページにまとめました。

なお、この3つはいずれも設計価格どうしの比較で、見積書の金額差ではありません。条件(複層塗材の上塗りに用いる場合など)も製品によって付いています。金額の位置関係を知るための表として見てください。

公式スペック

項目水性セラミシリコン
一般名称超耐久低汚染型一液水性セラミックシリコン樹脂系塗料
主要構成成分セラミックシリコン樹脂
区分水性塗料/一液/シリコン樹脂系/低汚染性/防かび・防藻性
設計価格2,710円/㎡(複層塗材の上塗りに用いる場合)
期待耐用年数12〜15年(次の塗り替え時期の目安・参考値)
つや艶有り、半艶、3分艶、艶消し
適用下地コンクリート、セメントモルタル、ALCパネル、スレート板、各種サイディングボード、各種旧塗膜(活膜)など
荷姿/標準塗坪16kg石油缶・4kg缶/45〜64㎡(16kg缶)
希釈清水
ホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆
備考「下地の種類に応じ、適切な下塗材を選定してください」

公式が挙げている特長は、超耐久性(シロキサン結合を持つ架橋塗膜)、優れた低汚染性、防かび・防藻性、環境対応(水性なので溶剤中毒や火災の心配がない)、そして資産価値の向上です。最後の項目に、この製品の出自が出ています——「従来のアクリル樹脂系塗料や、ポリウレタン樹脂系塗料に比べて耐久性が高いため、長期メンテナンスサイクルを含めたライフサイクルコストが低く、資産価値の向上と大きなコストメリットを生みます」。1回の工事費ではなく、建物を持ち続けるコストで語られているということです。

設計価格に付いている「複層塗材の上塗り」という条件

細かく見えて、実は性格を表している一行です。水性セラミシリコンの設計価格2,710円/㎡には、「複層塗材の上塗りに用いる場合」という条件が付いています。

複層塗材というのは、下塗り・主材・上塗りを重ねて模様のある仕上げをつくる材料のことです。吹き付けタイルのような凹凸のある壁を思い浮かべてもらうと近いはずです。つまりこの設計価格は、そういう構成の中で上塗りとして使うことを前提にした数字だということです。

ですから、条件の違う他製品の設計価格と引き算しても、正確な差にはなりません。前の章の表を「位置関係を知るためのもの」と書いたのは、この理由です。

もうひとつ、この設計価格には「300㎡以上を基準とする材工共の価格であり、下地調整費は含んでおりません」という共通の注記が付いています。戸建て1棟の外壁は、その基準にまったく届きません。ですから実際の見積もりは、この単価より高くなると考えてください。加えて、ひび割れの補修もコーキングの打ち替えも洗浄も「下地調整」の側なので、この数字の外にあります。この製品を検討している方にとっては、そこが特に効きます——ひび割れが理由で弾性タイプを勧められているなら、補修そのものの費用が別に乗るということだからです。金額の組み立ては見積書の内訳のページへ。

ラジカル制御は入っていません

公式の分類を見ると、水性セラミシリコンには「ラジカル制御」の記載がありません。同社のエスケープレミアムシリコンには入っています。

これは優劣ではなく世代の違いです。ラジカル制御は後から広まった技術で、セラミシリコンはそれ以前から使われてきた定番。だから「古いからダメ」でも「新しいから必ず良い」でもありません。期待耐用年数の差も12〜15年と14〜16年で、劇的ではありません。

ラジカルとは何か、なぜグレードの階段に混ぜて並べてはいけないのかは塗料の種類のページに書きました。

見積書での読み方

この名前を見つけたら、確認するのは3つです。

  • 1. 弾性かどうか「水性セラミシリコン」と「水性弾性セラミシリコン」は別物です。弾性なら、なぜ弾性なのかを聞いてください。ひび割れの状態を見て選んでいるなら、説明できます。
  • 2. 下塗り・主材に何を使うか特に弾性で提案されている場合、追従性を担うのは下の層だと公式が書いています。上塗りだけ弾性にして下が伴っていないと、期待した仕組みになりません。
  • 3. 外壁材が何か窯業系サイディングやALCなら、上の章のとおり次回塗り替え時の膨れについてメーカーが注意喚起しています。採用製品のカタログの注意事項を確認してもらってください。
  • 4. つやをどうするか無印は艶消しまで4段階、弾性は3段階です。艶消しにしたい場合、弾性タイプでは選べません。つやの話はつやのページへ。

そもそも見積書に製品名が書かれていない場合は、ここから先に進めません。「シリコン塗装一式」で終わっているなら、製品名を書いてもらうところからです。

よくある質問

この名前で見積もりが来ました。安い塗料を使われているのでしょうか?

決めつける必要はありません。判断のしかたはエスケープレミアムシリコンのページのFAQに書きましたが、要点は製品名ではなく「なぜそれを選んだか」を聞くことです。このページの内容で言えば、弾性かどうかの判断根拠を答えられるかが分かれ目になります。

「セラミック」と付いていますが、陶器のようなものが入っているのですか?

公式の主要構成成分は「セラミックシリコン樹脂」と書かれています。当サイトは配合の中身までは確認できていないので、成分比の説明は行いません。判断材料として使えるのは、公式が示している一般名称・期待耐用年数・設計価格・機能の記載のほうです。

弾性タイプにすれば、ひび割れは出なくなりますか?

「出なくなる」とは言えません。公式が説明しているのは複層仕上げの場合に主材(アクリルゴム系)が追従するという仕組みで、上塗りを弾性にすれば解決するという話ではありません。ひび割れの幅と原因を先に見てもらってください。

16kg缶と書いてありますが、他の塗料と違うのですか?

この製品は16kg石油缶で、同社のエスケープレミアムシリコン(15kg)などとは荷姿が違います。標準塗坪は45〜64㎡/16kg缶。缶数から面積を逆算するときに、缶の大きさが違うと計算がずれます。見積書に缶数が書かれている場合は、そこも見ておくと精度が上がります。

模様のある壁ですが、塗ると模様は消えますか?

この製品は複層塗材の上塗りとして使われることが前提に置かれた設計価格になっており、公式のパターン表示にも「吹放し」「凸部処理」「小粒」といった仕上げが並んでいます。模様を活かす塗り方が想定されているということです。ただし実際にどう仕上がるかは、既存の模様の状態と工程で変わります。色と仕上がりの決め方は色のページへ。

途中で「弾性ではないほう」に変えてもらえますか?

契約前なら相談できます。ただし下塗り・主材の構成ごと変わる可能性があるので、上塗りの製品名だけ差し替える話にはなりません。工程が変われば金額も変わります。「変えると、どの行がいくら動きますか」と聞くのが実用的です。他社の同じ帯と見比べたい場合はパーフェクトトップのページもどうぞ。

最終確認日:2026年8月22日。製品仕様・設計価格・期待耐用年数は変更されることがあります。最新の仕様はメーカー公式サイトおよび施工店にご確認ください。掲載した設計価格はメーカー公表値であり、実際の見積金額を保証するものではありません。

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つや有り・つや消し

弾性タイプでは艶消しが選べません

見積書の内訳

下地調整費は、設計価格に入っていません

参考にした情報

  • エスケー化研 公式サイト 製品情報「水性セラミシリコン」——一般名称、主要構成成分、公式分類、設計価格と期待耐用年数、つや、適用下地、荷姿16kg石油缶、標準塗坪、F☆☆☆☆、特長の5項目(超耐久性/優れた低汚染性/防かび・防藻性/環境対応/資産価値の向上)、およびパターン表示(吹放し・凸部処理・小粒)
  • エスケー化研 公式サイト 製品情報「水性弾性セラミシリコン」——上記に加え、公式分類の「ひび割れ追従性」と、その説明文(本文に引用したとおり、追従性を担うのは複層仕上げの主材であること)、つやが3段階であること
  • 比較表のエスケープレミアムシリコンの数値は、同社の当該製品ページによります。詳細は当サイトの解説ページに出典ごとまとめました
  • 日本ペイント 公式サイト よくあるご質問「弾性塗料はALCパネルや窯業系サイディングの外壁塗り替えに適さないといわれたがなぜですか?」——回答の全文(次回塗り替え時の膨れ、カタログの施工上の要点・注意事項での注意喚起、表面温度50〜60℃以上、水蒸気が逃げにくくなる仕組み)
  • 設計価格および期待耐用年数の注記は、いずれも各製品ページに共通で記載されている公式の但し書きです