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セラミック塗料とは——国の仕様書に、その分類はありません
「セラミック塗料なので長持ちします」「セラミックだからこの金額です」——そう説明されて調べに来られた方へ。
先に結論を書きます。「セラミック塗料」は、規格で決められた分類ではありません。国土交通省の公共建築工事標準仕様書(令和7年版)の塗装工事の章を読むと、塗料の区分にも、そこで引用されているJIS規格にも、「セラミック」は一度も出てきません。(2026年8月30日確認)
このページの内容
- 国の仕様書は、塗料をこう分類しています
- JISで「セラミック」が使われているのは、タイルのほうです
- では「セラミック」は何を指しているのか
- 🔑「セラミックだから高い」は成り立ちません
- 「無機」とは何が違うのか
- 名前が似ているだけの別物が3つあります
- 訪問販売で出てきた場合
- 見積書で確かめること
国の仕様書は、塗料をこう分類しています
公共建築工事標準仕様書は、国が発注する建物の工事で使われる仕様書です。戸建ての塗り替えを縛るものではありませんが、塗料がどう分類されているかを確かめる物差しにはなります。
その18章(塗装工事)に並んでいる節は、こうです。
| 節 | 塗装の種類 |
|---|---|
| 3節 | 錆止め塗料塗り |
| 4節 | 合成樹脂調合ペイント塗り(SOP) |
| 5節 | クリヤラッカー塗り(CL) |
| 6節 | アクリル樹脂系非水分散形塗料塗り(NAD) |
| 7節 | 耐候性塗料塗り(DP) |
| 8節 | つや有合成樹脂エマルションペイント塗り(EP-G) |
| 9節 | 合成樹脂エマルションペイント塗り(EP) |
| 10節 | ウレタン樹脂ワニス塗り(UC) |
| 11節 | ピグメントステイン塗り |
| 12節 | 木材保護塗料塗り(WP) |
🔑「セラミック塗料塗り」という節はありません。
節の名前だけでなく、そこで引用されている規格も見てみます。18章が名前を挙げているJIS規格は、次のようなものです。
| 規格番号 | 規格名 |
|---|---|
| JIS K 5516 | 合成樹脂調合ペイント |
| JIS K 5533 | ラッカー系シーラー |
| JIS K 5551 | 構造物用さび止めペイント |
| JIS K 5552 | ジンクリッチプライマー |
| JIS K 5659 | 鋼構造物用耐候性塗料 |
| JIS K 5660 | つや有合成樹脂エマルションペイント |
| JIS K 5663 | 合成樹脂エマルションペイント/合成樹脂エマルションシーラー |
| JIS K 5669 | 合成樹脂エマルションパテ |
| JIS K 5670 | アクリル樹脂系非水分散形塗料 |
このほかJASS 18(日本建築学会材料規格)やJPMS(日本塗料工業会規格)も引用されていますが、そこにも「セラミック」という名前の規格は出てきません。
⚠️これは「セラミック塗料は存在しない」という意味ではありません。製品としては実在します。「規格で定義された分類ではない」という話です。塗料の分類の考え方は、こちらで整理しています。
JISで「セラミック」が使われているのは、タイルのほうです
では、JISに「セラミック」という言葉がまったく無いのかというと、そうではありません。あります。ただし塗料ではありません。
JIS A 5209(セラミックタイル)に基づき、タイルの形状、寸法、耐凍害性の有無、耐滑り性などによる区分は特記による。
——公共建築工事標準仕様書 令和7年版 11章 タイル工事より
🔑「セラミック」はタイルの規格名です。しかも章がまったく別で、塗装工事(18章)ではなくタイル工事(11章)に出てきます。
ここが混乱のもとです。「セラミック=タイルのような硬い焼き物」というイメージが先にあるので、「セラミック塗料=タイルのような塗料」と受け取ってしまう。でも規格の世界では、この2つはつながっていません。
では「セラミック」は何を指しているのか
実際の製品で使われている「セラミック」は、おおむね「無機質の細かい粒(骨材やビーズなど)を配合している」ことを指しています。ただし——
- ①何を、どれだけ入れれば名乗れるかの決まりがない——規格の分類ではないためです
- ②だから中身は製品ごとに違う——同じ「セラミック」でも、別の会社の製品は別のものです
- ③土台の樹脂は別にある——セラミックの粒を入れた「シリコン樹脂塗料」「フッ素樹脂塗料」という形です
🔑③がいちばん大事です。塗膜の耐候性を主に決めているのは土台の樹脂です。「セラミック」はその上に付く説明であって、樹脂の代わりではありません。
ですから確かめる順番はこうなります。「セラミックかどうか」ではなく、「樹脂は何か」が先。シリコンなのかフッ素なのか無機なのか——そこが分かって、はじめて他社と比べられます。同じ家に何社かが出してくる提案を並べると、樹脂のグレードで金額がどれだけ動くかも見えます。
🔑「セラミックだから高い」は成り立ちません
金額の説明として「セラミックだから」と言われることがあります。これは根拠になりません。理由は単純で、何が入っていれば名乗れるという決まりがないからです。
⚠️実際、ネット上には「37坪のセラミック外壁塗装で350万円と言われたが妥当か」といった相談が出ています。言葉が独り歩きすると、金額の根拠として使われやすくなります。
判断のしかたは、他の塗料とまったく同じです。
- ①製品名とメーカー名を聞く——ここが分かれば、公式ページで仕様を自分で確かめられます
- ②樹脂の分類を確かめる——シリコンか、フッ素か、無機か
- ③同じ樹脂の他社製品と並べる——ここで初めて金額の比較になります(同じ条件で複数社に出してもらう)
🔑メーカーが価格を公開している製品もあります。エスケー化研は設計価格を公開していますし、ロックペイントやプレマテックスも材工価格を出しています。製品名が分かれば、そこまで辿れます。
「無機」とは何が違うのか
検索すると「セラミック塗料と無機塗料は何が違う?」という記事が出てきます。正直に書くと、規格の扱いは同じです。
公共建築工事標準仕様書の塗装工事の章には、「無機塗料塗り」という節もありません。同じ仕様書で「無機」という言葉が使われているのは、塗料の分類ではなく顔料についてです。
顔料は、耐アルカリ性の無機質で、直射日光等に対しても変色が少なく、金属を錆びさせないものとする。
——15章 左官工事(モルタルの材料)より
添加する顔料は、無機系とする。
——22章 舗装工事(着色舗装)より
🔑つまり「セラミックは規格外だが無機は規格にある」ではありません。どちらも、国の仕様書の塗装区分には出てきません。
⚠️ただし実務上の違いはあります。
| 「無機」 | 「セラミック」 | |
|---|---|---|
| 国の仕様書の塗装区分 | 無い | 無い |
| メーカーが樹脂の分類として使うか | 使っている(「無機ハイブリッド」「変性無機系上塗材」など公式の製品分類に登場) | 製品名の一部としては使われるが、樹脂の分類名としては使われにくい |
| 公式に仕様や価格が出ているか | 出ている製品が多い(エスケー化研・プレマテックス・アステックなど) | 製品による |
🔑ですからやることは同じです。「無機」と言われても「セラミック」と言われても、製品名まで聞いて、メーカーの公式ページで確かめる。無機については、実際にメーカー2社の公式仕様を並べたページがあります。
名前が似ているだけの別物が3つあります
調べていると、似た名前が出てきて混ざります。整理しておきます。
| 名前 | 正体 | 注意点 |
|---|---|---|
| セラミックタイル | タイル(JIS A 5209) | 塗料ではありません。貼る建材です |
| 水性セラミシリコン | エスケー化研の製品名 | 一般名詞ではなく、特定の会社の商品名です |
| 光セラ | ケイミューの外壁材(サイディング) | 塗料ではなく、壁そのものの商品名です |
⚠️「光セラの家にセラミック塗料を塗る」といった話は、まったく別の2つを並べていることになります。光セラは塗り替えのときに注意が要る外壁材なので、まず自分の家の壁が何かを確かめてください。
訪問販売で出てきた場合
「セラミック」という言葉は、説明がしやすく、専門的に聞こえ、比較されにくいという性質を持っています。だから訪問販売の場面で出てきやすくなります。
⚠️その場で契約しないでください。やることは3つです。
- ①製品名とメーカー名を紙に書いてもらう——言えない・書けない場合は、それ自体が判断材料です
- ②その場で契約せず、メーカーの公式ページを見る——製品ページがあれば、樹脂の分類が書かれています
- ③他社にも見てもらう——「悪質業者リスト」は存在しませんが、公的に調べられるデータベースはあります
🔑訪問販売による契約は、条件を満たせばクーリング・オフの対象になります。手続きの方法は、トラブル対処のページにまとめました。すでに契約してしまった場合も、まず日数を確かめてください。そのうえで改めて何社かに見てもらえば、その金額が妥当だったのかも分かります。
見積書で確かめること
- ①「セラミック塗装 一式」で終わっていないか——製品名がなければ、何を塗るのか確かめようがありません
- ②上塗りだけでなく、下塗りにも製品名があるか——下塗りは上塗りメーカーの指定品が原則です
- ③樹脂の分類が説明されているか——シリコン・フッ素・無機のどれなのか
- ④塗り回数が書かれているか——下塗り・中塗り・上塗りの3工程が基本です
この4つはすべて紙の上で確かめられます。現場に立ち会う必要も、専門用語で問い詰める必要もありません。見積書の見方のページと一緒に使ってください。
まとめ
- 「セラミック塗料」は規格の分類ではありません——国の仕様書の塗装工事の章にも、引用されているJIS規格にも出てきません
- JISで「セラミック」が使われているのはタイル(JIS A 5209)——章もタイル工事で、塗装とは別です
- だから中身は製品ごとに違います——何を入れれば名乗れるという決まりがないためです
- 耐候性を主に決めているのは土台の樹脂——確かめる順番は「セラミックか」ではなく「樹脂は何か」
- 金額の根拠にはなりません——製品名・メーカー名・樹脂の分類まで聞いてください
参考にした情報
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」より——18章 塗装工事の節構成(3節 錆止め塗料塗り〜12節 木材保護塗料塗り)および同章で引用されているJIS規格(JIS K 5516/5533/5551/5552/5659/5660/5663/5669/5670 ほか)、JASS 18(日本建築学会材料規格)、JPMS(日本塗料工業会規格)の記載。ならびに11章 タイル工事における JIS A 5209(セラミックタイル)の記載、15章 左官工事および22章 舗装工事における顔料に関する「無機質」「無機系」の記載
最終確認日:2026年8月30日。この仕様書は公共建築工事に適用されるもので、戸建て住宅の塗り替えを縛るものではありません。本ページは「セラミック塗料が規格上の分類として存在するか」を確かめるために参照しました。同仕様書および同章で引用されている規格の範囲で「セラミック」という塗料区分が見当たらなかった、という趣旨であり、個別の製品の性能を否定するものではありません。実際の性能は製品ごとにメーカーの資料でご確認ください。
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