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外壁塗装の下塗り——シーラーとフィラーは「どちらか」ではありません
見積書に「下塗り」とだけ書いてあって、調べたら「シーラー」「フィラー」「プライマー」と用語が出てきて余計に分からなくなった——という方へ。
国土交通省が出している「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」に、工程が表で載っています。そこを読むと、シーラーとフィラーは別々の工程として並んでいます。どちらかを選ぶものではありません。(2026年8月30日確認)
国の仕様書に、工程の表があります
仕様書の18章が塗装工事で、その2節が「素地ごしらえ」です。コンクリート面とALCパネル面については、こういう表になっています。
| 工程 | 内容 | A種 | B種 | 使う材料 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 乾燥 | ○ | ○ | 素地を十分に乾燥させる |
| 2 | 汚れ、付着物除去 | ○ | ○ | 素地を傷つけないように除去する |
| 3 | 吸込止め | ○ | ○ | 合成樹脂エマルションシーラー(JIS K 5663)/全面に塗り付ける |
| 4 | 下地調整塗り | ○ | ○ | 建築用下地調整塗材(JIS A 6916)C-1、C-2、CM-2 又は E/全面に塗り付けて平滑にする |
| 5 | 研磨紙ずり | ○ | ○ | 研磨紙 P120〜220/乾燥後、表面を平らに研磨する |
| 6 | パテしごき | ○ | — | 建築用下地調整塗材 C-1/合成樹脂エマルションパテ(耐水形) |
| 7 | 研磨紙ずり | ○ | — | 研磨紙 P120〜220 |
🔑工程3が「吸込止め」で、ここに使うのがシーラーです。そして工程4が「下地調整塗り」で、ここで使う「建築用下地調整塗材」が、いわゆるフィラーにあたります。
3と4は続けて並んでいます。「シーラーかフィラーか」ではなく、「吸込みを止めてから、平らにする」という順番の話です。
⚠️注記も付いています。「コンクリート面の場合は、工程3を省略する」——つまり下地によって工程が変わります。そして「合成樹脂エマルションパテは、外部に用いない」。外壁で使えないものが明記されています。
A種とB種の違いは、パテと研磨の2工程
表を見ると、A種とB種で差が出るのは工程6と7だけです。パテしごきと、そのあとの研磨紙ずり。この2つがA種にはあって、B種にはありません。
そして仕様書はこう定めています。
コンクリート面及びALCパネル面の素地ごしらえは表 18.2.5 により、種別は特記による。特記がなければ、B種とする。
🔑何も指定しなければB種です。公共工事の話ではありますが、「下地を平滑にする工程は、標準では入っていない」という考え方が分かります。
戸建ての塗り替えでも同じことが起きます。「下地調整」と書いてあっても、どこまでやるかは決まっていません。見積書を何社かで並べると、この部分の書き方が最も割れます。工程を分けて書く会社と、「下地調整一式」でまとめる会社があります。
🔑 下塗り材は「上塗りメーカーの指定品」と書いてあります
これがいちばん実務に効きます。仕様書の別の表(押出成形セメント板面など)に、こういう注記があります。
工程4のシーラー及び工程5のパテは、上に塗り重ねる塗料の製造所の指定するものとする。
さらに、共通事項にもこうあります。
塗装に使用する塗料の副資材は、上塗塗料の製造所が指定する製品とする。(18.1.3)
下塗りは、上塗りのメーカーが指定するものを使う。これが原則として書かれています。
🔑だから見積書で見るべきなのは、下塗り材の「製品名」です。「下塗り 一式」としか書いていなければ、何を使うか決まっていない可能性があります。上塗りの製品名と下塗りの製品名が、同じメーカーで揃っているかを確かめてください。揃っていない場合は、なぜかを聞く価値があります。
実際、メーカーは下塗り材にも個別の製品名を付けています。屋根用の遮熱塗料に遮熱の下塗り材があったり、外壁材に応じた専用シーラーがあったりします。上塗りだけ良いものにして下塗りが合っていない、という組み合わせは作れてしまいます。
モルタルの家は、工程の名前が変わります
仕様書は下地ごとに表を分けています。モルタル面には別の表があり、工程4の名前が違います。
| 工程 | コンクリート面・ALCパネル面 | モルタル面・せっこうプラスター面 |
|---|---|---|
| 3 | 吸込止め(合成樹脂エマルションシーラー) | 吸込止め(同じ) |
| 4 | 下地調整塗り——全面に塗り付けて平滑にする | 穴埋め、パテかい——ひび割れ、穴等を埋めて、不陸を調整する |
| 5 | 研磨紙ずり | 研磨紙ずり(同じ) |
| 6・7 | パテしごき+研磨(A種のみ) | パテしごき+研磨(A種のみ) |
🔑コンクリートは「全面に塗って平らにする」、モルタルは「ひび割れや穴を埋める」。目的の書き方が違います。モルタルはひび割れが出る前提で工程が組まれているということです。
そしてモルタル面の表にも同じ注記があります。「合成樹脂エマルションパテは、外部に用いない」。さらに「アクリル樹脂系非水分散形塗料塗りの場合、工程3の吸込止めは、塗料の製造所の指定するものとする」——ここでもメーカー指定が出てきます。
⚠️自分の家の外壁がどれかで、必要な工程が変わります。サイディングなのか、モルタルなのか、ALCなのか。見積もりを頼むときに、外壁材が何かを最初に伝えてください。同じ「下地調整」でも中身が変わります。
鉄部の「ケレン」も、同じ表の中にあります
見積書に「ケレン」と書いてあることがあります。これも素地ごしらえの一部で、仕様書では鉄鋼面の表に入っています。
| 工程 | A種 | B種 | C種 | 面の処理 |
|---|---|---|---|---|
| 汚れ、付着物除去 | ○ | — | ○ | スクレーパー、ワイヤブラシ等で除去 |
| 油類除去 | ○ | — | — | アルカリ性脱脂剤で加熱処理後、湯又は水洗い |
| — | ○ | ○ | 溶剤ぶき | |
| 錆落し | ○ | — | — | 酸漬け、中和及び湯洗いにより除去 |
| — | ○ | — | ブラスト法により除去 | |
| — | — | ○ | ディスクサンダー、スクレーパー、ワイヤブラシ、研磨紙 P120〜220 等で除去 | |
| 化成皮膜処理 | ○ | — | — | りん酸塩処理後、水洗い乾燥 |
🔑注記が決定的です。仕様書には「A種及びB種は、製作工場等で行うものとする」と書かれています。つまり現場でできるのはC種だけです。酸漬けもブラストも、工場の設備が要ります。
そして「特記がなければC種とする」とあります。戸建ての塗り替えで行われるケレンは、この表のC種——ディスクサンダーやワイヤブラシ、研磨紙で錆を落とす作業にあたります。
⚠️「ケレンにも1種・2種・3種・4種という別の区分がある」と説明されることがありますが、それはこの表とは別の分類です。当サイトでは、国の仕様書に載っている区分だけを紹介します。見積書に「ケレン」とだけ書いてあったら、どの程度の処理を指しているかを聞いてください。言葉は同じでも、指している作業が会社によって違います。
雨戸やトタンは、また別の表です
雨戸やトタンのような亜鉛めっき鋼面には、さらに別の表が用意されています。
| 工程 | A種 | B種 | 面の処理 |
|---|---|---|---|
| 汚れ、付着物除去 | ○ | ○ | スクレーパー、ワイヤブラシ等で除去 |
| 油類除去 | ○ | — | 弱アルカリ性脱脂剤で加熱処理後、湯又は水洗い |
| — | ○ | 溶剤ぶき | |
| 化成皮膜処理 | ○ | — | りん酸塩処理後、水洗い乾燥又はクロメートフリー処理後、乾燥 |
ここにも「A種は、製造所等で行うものとする」という注記があります。現場で行うのはB種——汚れの除去と溶剤ぶきです。
🔑亜鉛めっき面には「錆落し」の工程がありません。鉄鋼面の表にはあるのに、こちらには無い。めっきが生きているうちは、落とすべき錆が無いという前提です。逆に言えば、錆が出ている雨戸やトタンは、めっきが切れた状態だということになります。
見積書で「ケレン」がどの部位に何回出てくるかを見てください。鉄部と亜鉛めっき面では、やることが違います。まとめて「ケレン一式」になっている見積書は、部位を分けて考えていない可能性があります。
仕上がりの確認方法も決められています
工事が終わったあと、何を見ればいいのか。仕様書には確認の表があります。
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 見本塗板等との比較 | 見本塗板等と色、つや及び仕上げの程度が同様であること |
| 仕上り面の状態 | むら、しわ、へこみ、はじき、つぶ等がないこと |
確認は目視とされています。専門の機械は要りません。
🔑「見本塗板等と色、つや及び仕上げの程度が同様であること」——ここで見本塗板が前提になっています。仕様書には別に「仕上げの色合は、あらかじめ監督職員に提出した見本帳又は見本塗板による」という条文もあります。
つまり、比べる相手を先に作っておくという考え方です。戸建てでも同じで、色見本や塗板を手元に残しておけば、完了時に見比べられます。「思っていた色と違う」を防ぐのは、この一手です(外壁塗装の色のページ)。
そして「はじき」「つぶ」という言葉が挙がっているのも参考になります。塗膜に出る不具合として、国の仕様書が名前を挙げている症状です。気になる点があれば、この言葉で伝えると話が通じます。
下塗りの色が違うのは、手抜きではありません
「下塗りが白かったけど、頼んだ色と違う」という不安をよく聞きます。仕様書に理由が書いてあります。
中塗り及び上塗りの各層の色を変えること等により、中塗り及び上塗りが全面に均一に塗られていることを確認する。(18.1.4)
🔑色を変えるのは、塗り残しを見つけるためです。同じ色を重ねると、塗ったところと塗っていないところの区別がつきません。色が違うのは、確認のための決まりごとです。
⚠️逆に言えば、中塗りと上塗りが同じ色だと、確認しにくくなります。実務では同じ色を重ねることも多いのですが、そのぶん「本当に2回塗ったか」を後から見分けるのが難しくなります(手抜き工事のページ)。工事中の写真を工程ごとに残してもらうと、この点は解決します。
雨の日に塗らない基準も、数字で書いてあります
「今日は曇りだけど塗るのか」という場面での判断基準です。
気温が5℃以下、湿度が 85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない。ただし、採暖、換気等を適切に行う場合は、この限りでない。
外部の塗装は、降雨のおそれのある場合又は強風時は、原則として、行わない。(18.1.6)
🔑「気温5℃以下」「湿度85%以上」という数字が出ています。感覚ではなく、線が引かれている。降雨の「おそれ」がある場合も原則として行わないとされています。降ってからではありません。
ただし「ただし、採暖、換気等を適切に行う場合は、この限りでない」という但し書きが付いています。絶対禁止ではないということです。冬場の工事がすべて不可になるわけではありません(季節と外壁塗装のページ)。
「下塗りと中塗りの間隔」に、一律の数字はありません
よく検索される質問ですが、仕様書はこう書いています。
各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める。なお、標準工程間隔時間を超えて、上に塗り重ねる場合は、適切な処理を行う。(18.1.4)
「材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める」——つまり塗料ごとに違うので、製品の仕様書を見るしかありません。「〇時間空ければいい」という共通の数字はありません。
🔑後半のほうが大事です。「標準工程間隔時間を超えて塗り重ねる場合は、適切な処理を行う」——間隔が空きすぎた場合にも処理が要るということです。雨で工事が中断したときなどに関わってきます。
塗る量も決められています
塗付け量は、平らな面に実際に付着させる塗料の標準量(一工程当たり)とする。ただし、塗料の標準量は、薄める前のものとする。(18.1.4)
🔑「薄める前のもの」という一行が効きます。塗料は現場で希釈しますが、基準になる量は薄める前の数字だという定義です。
希釈についても規定があります。「塗料は、調合された塗料をそのまま使用する。ただし、素地面の粗密、吸収性の大小、気温の高低等に応じて、適切な粘度に調整することができる」——調整はできるが、理由が挙げられています。
⚠️施主が現場で希釈率を確かめるのは現実的ではありません。ただ「塗料の缶が何缶使われたか」は見えます。気になるなら、見積もりの段階で使用量の目安を聞いておくと、あとで照合できます。
シーリングの上に塗るときの決まり
シーリング面に塗装仕上げを行う場合は、シーリング材が硬化した後に行うものとし、塗重ねの適合性を確認し、必要な措置を講ずる。(18.1.4)
🔑「塗重ねの適合性を確認し」という部分が要点です。シーリング材の種類によっては、上に塗った塗料が乾かなかったり、変色したりします。だから打ち替えるシーリング材を選ぶ段階で、上に塗る塗料との相性が決まります(シーリングの打ち替えのページ)。
先打ち・後打ちという言い方をすることがありますが、仕様書の書き方は「硬化した後に塗る」です。
まとめ——見積書で確かめる3行
- ①下塗りに製品名が書いてあるか——「下塗り 一式」では何を使うか分かりません。仕様書は上塗りメーカーの指定品を原則としています
- ②上塗りと同じメーカーで揃っているか——違う場合は、なぜかを聞く価値があります
- ③下地調整が工程として書かれているか——「吸込止め」と「下地調整(穴埋め・パテかい)」は別の工程です
この3つはすべて紙の上で確かめられます。現場に立ち会う必要も、専門用語で問い詰める必要もありません。複数社の見積書で、この3行に線を引いて並べてみてください。
🔑そして下塗りは、終われば見えなくなります。上塗りが2回乗ったあとでは、下に何が塗られたか外から確かめる方法はありません。だからこそ、契約前に紙で決めておく意味があります。
参考にした情報
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18章 塗装工事より——18.1.3[材料]、18.1.4[施工一般](塗料の取扱い、塗付け量、工程間隔時間、中塗り及び上塗りの色替え、シーリング面への塗装)、18.1.6[施工管理](気温・湿度・降雨時の規定)、18.2.6[コンクリート面、ALCパネル面及び押出成形セメント板面の素地ごしらえ](表18.2.5、表18.2.6および各注記)、18.1.5[見本]、18.1.7[塗装面の確認等](表18.1.1)、18.2.3[鉄鋼面の素地ごしらえ](表18.2.2)、18.2.4[亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえ](表18.2.3)、18.2.5[モルタル面及びせっこうプラスター面の素地ごしらえ](表18.2.4)
最終確認日:2026年8月30日。この仕様書は公共建築工事に適用されるものです。戸建て住宅の塗り替えに法的な強制力があるわけではありませんが、工事の考え方を確かめる物差しとして参照しました。実際の仕様は、使用する塗料の製造所の仕様書と、工事契約の内容によります。
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