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外壁塗装の手抜き工事——5つの手口と、缶の数で検算する方法

手抜きが厄介なのは、塗り立てはどんな工事でもきれいに見えることです。差が出るのは5年後、10年後。だから「終わってから気づく」のでは遅い。工事中に確かめられることを、手口ごとに整理しました。あわせて、手抜きではないのに手抜きに見えることにも触れます。

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このページの内容

手抜きは、完成直後には見えません

最初にはっきりさせておきます。塗装業者の大多数は、まっとうに仕事をしています。このページは「業者を疑いましょう」という話ではありません。

ただ、外壁塗装には構造的な弱点があります。手を抜いても、その日の見た目が変わらないことです。

  • 3回塗るところを2回にしても、塗り立ては同じに見えます
  • 塗料を規定より薄めても、色は付きます
  • 洗浄やケレンを省いても、上から塗れば隠れます
  • 下塗りを飛ばしても、完成写真は撮れます

差が出るのは数年後です。剥がれる、膨れる、色があせるのが早い——そのころには、原因を突き止めるのも難しくなっています。

だから確かめるなら工事中です。そして、確かめる方法はちゃんとあります。ほとんどは「聞く」か「見る」だけで済みます。専門知識は要りません。

※このページは工事の中身(質)の話です。契約や訪問販売のトラブル、クーリングオフについてはトラブル対処のページにまとめました。

手口①塗る回数を減らす

いちばん多いのがこれです。外壁塗装は「下塗り・中塗り・上塗り」の3回塗りが基本ですが、中塗りを飛ばして2回で終わらせても、見た目では分かりません。

見抜き方1——見積書に3行あるか

まともな見積書には、同じ面積が3回出てきます。

数量
外壁 下塗り120㎡
外壁 中塗り120㎡
外壁 上塗り120㎡

これが「外壁塗装 120㎡」の1行だけなら、何回塗るのかが書かれていません。契約前に「3回塗りですか。見積書に工程ごとに書いていただけますか」と頼めば済みます(見積書の見方)。

外壁は3回でも、付帯部は1回ということがあります

見落とされやすいのがここです。外壁の塗り回数ばかり気にしていると、付帯部が抜けます。

雨樋、破風、水切り、雨戸、庇——これらも本来は下塗り(必要な場合)と上塗り2回という工程があります。ところが「付帯部 一式」でまとめられていると、何回塗るのかが書かれていません。

聞き方はこうです。「付帯部も2回塗りですか。それぞれ何を塗りますか」。部位によって使う塗料が変わるので、答えが具体的なら実際に考えて見積もっています。付帯部の数え方は付帯部の塗装、雨戸については雨戸のページにまとめました。

※ただし「樋に下塗りをしない」は、正常なことがあります。素材と塗料の組み合わせによっては、下塗りなしで2回塗るのが標準的な仕様です。回数だけで判断せず、「なぜそうするのか」を聞いてください(後述の「手抜き」と「仕様の違い」)。

見抜き方2——工程写真をもらう

下塗り後、中塗り後、上塗り後。3枚あれば、3回塗ったことになります。契約のときに「工程写真をください」と頼んでおいてください。あとから頼むより自然ですし、頼まれた側も準備できます。

見抜き方3——国の仕様書は「色を変えて確認する」と定めています

公共建築工事標準仕様書には、こう書かれています。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)18.1.4(9)

中塗り及び上塗りの各層の色を変えること等により、中塗り及び上塗りが全面に均一に塗られていることを確認する。

中塗りと上塗りで色を変えれば、塗り残しも塗り回数も一目で分かる——国が発注する工事では、そういう方法が採られています。

⚠️ただし、これを戸建てでそのまま頼めるとは限りません。公共工事は監督員の検査を前提に単価が組まれていますが、戸建ての見積もりには「中塗りの色を変える」手間は乗っていないのが普通です。塗料を2色用意することになる場合もあります。頼んで断られても、それは手抜きではありません。「うちではやっていません」という答えは、正直な答えです。知っておくべきなのは「そういう確認方法が世の中に存在する」ということまでで、そのうえで工程写真を頼むほうが現実的です。

手口②塗料を薄める——缶の数で検算できます

これは見た目ではまず分かりません。規定より多く水やシンナーで薄めれば、同じ面積を少ない缶で塗れます。色は付きます。ツヤも出ます。ただし塗膜が薄くなるので、寿命が短くなります。

ところが、これには確かめる方法があります。国の仕様書に、そのやり方が書かれています。

公共建築工事標準仕様書 18.1.7(塗装面の確認等)

工事現場塗装の場合は、使用量から単位面積当たりの塗付け量を推定する。

国も、缶の使用量から逆算して確かめています。同じことを施主がやればいいわけです。

検算のしかた(4ステップ)

  1. 見積書から、塗料の製品名と塗る面積(㎡)を確認する
  2. メーカーのサイトで「標準塗布量」を調べる——製品ページや技術資料に、1㎡あたり何kg(または何L)と書かれています。外壁用は1回あたり0.10〜0.20kg/㎡程度が一般的です
  3. 面積 × 塗布量 × 塗り回数で、必要な量を計算する
  4. 現場の缶や、空き缶の数を見る——「工事の記録として、使った塗料の缶の写真をいただけますか」

参考までに、国の仕様書が定める塗付け量です(コンクリート面などに耐候性塗料を塗る場合)。

工程塗付け量
下塗り0.08 kg/㎡
中塗り0.14 kg/㎡
上塗り0.10 kg/㎡
3工程の合計0.32 kg/㎡

※公共建築工事標準仕様書 表18.7.3より。使う塗料によって数値は変わるので、実際の検算は見積書に書かれた製品のカタログ値で行ってください。

この数字で計算すると、外壁120㎡なら 0.32×120=38.4kg。16kg缶なら約2.4セット分です。缶が1セットしか届いていなければ、計算が合いません。

そして、薄める量そのものにも決まりがあります。公共建築工事標準仕様書は、材料の練混ぜについて「仕上塗材の製造所の指定する量の専用薄め液で均一になるように行う」と定めています。「指定する量」——つまり、薄めること自体は正常な工程ですが、どれだけ薄めるかはメーカーが決めているということです。現場の判断で「もう少し伸ばそう」と足していいものではありません。塗りやすさのために規定を超えて薄めれば、塗膜はそのぶん薄くなります。

難しく聞こえるかもしれませんが、やることは「缶の写真をもらう」だけです。計算はあとからでもできます。そしてこの一言を言っておくこと自体に、効果があります。詳しい計算は吹き付けとローラーのページにまとめました。

手口③混ぜ方——硬化剤を計らない、撹拌が足りない

ここは、塗料を扱ったことがある人でないと出てこない話です。そして施主にはいちばん見えにくいところでもあります。

2液型の塗料は、混ぜて初めて塗料になります

外壁に使われる塗料には、1液型(缶を開けたらそのまま使える)と2液型(主剤と硬化剤を混ぜて使う)があります。2液型は、混ぜたときに起きる化学反応で固まるタイプで、一般に耐久性が高いとされます。

問題は混ぜ方です。ここで手を抜くと、どんな高級塗料でも性能が出ません。

何が起きるか結果
硬化剤を計量せず、目分量で入れる硬化剤が少なければいつまでも硬化せず、べたつく・汚れが付きやすい・耐久性が出ない。多すぎても、硬くなりすぎて割れやすくなります
撹拌(かくはん)が足りない缶の底に沈んだ成分が混ざりません。色ムラ・艶ムラが出るほか、性能を担う成分が均一に行き渡らない
一度に大量に混ぜてしまう混ぜた塗料には使える時間の限度(可使時間・ポットライフ)があります。過ぎたものを塗ると、密着せず後で剥がれます
薄めすぎる塗膜が薄くなり、寿命が短くなります(手口②)

国の仕様書は、ここまで決めています

「混ぜ方くらい、職人の裁量では」と思われるかもしれません。そうではありません。公共建築工事標準仕様書には、次のように書かれています。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版より

2液形上塗材は、薄める前に基剤と硬化剤を仕上塗材の製造所の指定の割合で混ぜ合わせる。
・材料の練混ぜは、仕上塗材の製造所の指定する量の専用薄め液で均一になるように行う。
・なお、練混ぜ量は、仕上塗材の製造所の指定する可使時間以内に使い終わる量とする。
・(マスチック塗材について)施工に先立ち、かくはん機を用いてかくはんする。

4つとも、決まっているのは同じことです。

  • 混ぜる割合は「製造所の指定」——つまり目分量ではありません
  • 順序は「薄める前に」混ぜる——先に薄めてから硬化剤を入れるのではありません
  • 薄め液も「指定する量」——薄める量まで決まっています
  • 撹拌は「かくはん機を用いて」——棒で軽く混ぜる作業ではありません
  • 一度に混ぜる量は「可使時間以内に使い終わる量」——余ったぶんを翌日使うことはできません

混合比は製品ごとに違います。主剤:硬化剤=10:1、5:1など、カタログに明記されています。そして正確に量るには、はかりが要ります。

施主に見えることは、意外とあります

ここまで読んで「現場を見張れということか」と思われたかもしれませんが、そうではありません。見えるものが3つあります。

  1. 現場に「はかり」があるか——2液型を使う工事なら、計量する道具があるはずです。目に入ったら、それは良い兆候です
  2. 攪拌機(電動ミキサー)があるか——ドリルの先に羽根が付いた道具です。缶を棒で混ぜているだけなら、規定どおりではない可能性があります
  3. 缶が現場で開けられているか——塗料は現場で混ぜるものです。どこかで混ぜてきたものを持ち込んでいる場合、可使時間の管理が見えません

そして、聞ける質問はこれです。「この塗料は2液型ですか。混合比はいくつですか」。答えられる職人なら、まず問題ありません。製品名と混合比は、カタログに書いてあることですから、隠す理由がない情報です。

💡この項目が重要なのは、完成後に絶対に分からないからです。硬化剤が足りない塗膜も、塗り立ては普通に見えます。差が出るのは1年後、2年後——べたついて汚れが付く、色があせるのが早い、触ると粉が出るといった形で現れます。だからこそ、契約前に「製品名を見積書に書いてもらう」ことに意味があります。製品名が分かれば、あとから仕様を確認できます。

手口④下地処理を省く

塗る前の作業——高圧洗浄、ケレン、シーリング、下塗り。ここを省いても、上から塗れば見えなくなります。そしてここを省くと、どんな高級塗料を使っても数年で剥がれます。

省かれやすい工程省くとどうなるか確かめ方
高圧洗浄汚れやチョーキングの粉の上に塗ることになり、密着しない2日目に行われます。音がするので在宅なら分かります
乾燥(洗浄後)濡れたまま塗ると密着不良。洗った翌日にすぐ塗り始めていないか工程表と実際の日程を照らす
ケレン(鉄部)錆の上から塗ることになり、錆が塗膜を押し上げるケレン後の写真をもらう(雨戸のページに種別の解説)
シーリングの打ち替え切れた目地から水が入り続ける見積書に「打ち替え◯m」があるか。増し打ちとの違いを聞く
下塗りいちばん重い。上塗りが密着せず、まとめて剥がれます見積書に下塗りの行があるか。製品名が書かれているか

そしてもうひとつ、「下塗りはしたが、指定のものではなかった」という形もあります。本来使うべきプライマーやシーラーではなく、手元にある別の塗料や、前の現場で余ったものを下塗りに回す——というやり方です。塗ってはいるので、工程写真は撮れてしまいます。

これを防ぐのも、結局は製品名です。「下塗りの製品名を見積書に書いてください」と頼み、缶の写真をもらう。この2つがそろえば、代用は成り立ちません(手口⑧)。

とくに下塗りは、外壁材によって使うものが変わります。難付着サイディングには専用のプライマー、傷んだモルタルには浸透性のシーラー、というように。「下塗りは何を使いますか」に製品名で答えられるか——これが、下地を考えているかどうかの分かれ目です。

そして、洗った翌日にすぐ塗り始めていないかは在宅していれば分かります。国の仕様書も「気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない」と定めています。濡れた壁は、この「乾燥に不適当な場合」そのものです。

手口⑤数量をごまかす

これは工事中ではなく、見積書の段階で起きます。

  • 実際より広い面積で見積もる——測っていなければ、施主には分かりません
  • 「一式」でまとめる——検証そのものができなくなります
  • 付帯部の数を多めに書く——雨戸の枚数、庇の数

もうひとつ、シーリングで起きやすい形があります。見積書は「打ち替え」なのに、実際には「増し打ち」で済ませるというものです。

  • 打ち替え=古いシーリングを撤去してから、新しく充填する。手間がかかります
  • 増し打ち=古いものを残したまま、上から足す。手間は少なくて済みます

増し打ちが常に悪いわけではありません。サッシまわりなど、構造上撤去できない場所は増し打ちが正解です。問題は、打ち替えの金額をもらって増し打ちで済ませることです。

確認は簡単です。「どの目地を打ち替えて、どこを増し打ちにしますか」と聞き、見積書で行が分かれているかを見てください。そして撤去した古いシーリングは、必ずゴミとして出ます。打ち替えたなら、その量が出ているはずです。詳しくはシーリングのページにまとめました。

対策は単純です。数量が書かれた見積書をもらうこと。そして2社以上並べること。

同じ家なのに、A社が外壁150㎡、B社が120㎡と書いていたら、どちらかが測っていません。3社取れば、2社が近い数字を出すはずです。それが実際の面積です。1社だけでは、この判定ができません。

同じ条件で複数社に見積もりを出してもらうと、数量の差がそのまま見えます。面積の出し方そのものは塗装面積のページに書きました。

手口⑥塗ってはいけない日に塗る

工期が押していると、塗るべきでない日に塗ってしまうことがあります。これも見た目では分かりません。

国の仕様書は、塗ってはいけない条件を明確に定めています。

公共建築工事標準仕様書 18.1.6(施工管理)

(1) 気温が5℃以下、湿度が85%以上、結露等で塗料の乾燥に不適当な場合は、塗装を行わない。ただし、採暖、換気等を適切に行う場合は、この限りでない。
(2) 外部の塗装は、降雨のおそれのある場合又は強風時は、原則として、行わない。

ここで注目してほしいのは(2)です。「降ってから中止」ではなく「降りそうなら塗らない」——これが標準です。

だから施主が見るべきなのは、たった2つです。

  • 雨の予報が出ている日に、塗り始めていないか
  • 1日で3回塗りを終えていないか——乾燥時間を無視しています

この2つだけで十分です。気温や湿度を測る必要はありません。在宅していれば分かる範囲のことです。

そして、逆のことも知っておいてください。雨で工事が止まるのは法令が求めていることでもあります。労働安全衛生規則の第522条は、高さ2メートル以上の箇所での作業について「強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない」と定めています。止まるのは正常、進めるほうが心配——この向きを間違えないでください(工程と工期)。

手口⑦塗り方が雑——ローラー目、塗りムラ

ここまでの手口は、どれも完成後には見えなくなるものでした。この項目だけは違います。塗り方の雑さは、仕上がった壁に出ます。

ローラー目とは

ローラーで転がした跡が、筋やムラになって残る状態です。光の当たり方で見え方が変わるので、朝と夕方で印象が違うこともあります。

出やすくなる原因は、いくつか重なります。

  • 塗料を薄めすぎている——伸びは良くなりますが、隠ぺい力が落ちて下地が透け、ムラに見えます(手口②)
  • 塗料の含ませ方が均一でない——ローラーに含ませすぎ、または足りない
  • 乾きかけの面をもう一度触っている——表面が引っ張られて跡が残ります
  • 撹拌が足りない——艶や色が均一にならない(手口③)
  • 塗り継ぎの位置が悪い——面の途中で止めると、その線が残ります

つまりローラー目は、単独の手抜きというより「他の手抜きの結果」として出てくることが多い症状です。だから見つけたときは、それだけを直せば済む話とは限りません。

見るなら、曇りの日に、離れて

確認のコツがあります。

  • 完全に乾いてから見る——乾く前の塗面は色が違って見えます。途中経過で判定しないこと
  • 曇りの日に、正面から——直射日光や斜めからの光は、実際以上にムラを強調します
  • 2〜3m離れて見る——外壁は近づいて見るものではありません。生活する距離で判断してください

そのうえで気になるなら、足場があるうちに伝えてください。解体してからでは、直すのに足場代がもう一度かかります。症状ごとの見方と、手直しを頼むときの順番はピンホール・塗りムラのページにまとめました。

※模様のある壁(リシン・スタッコ・凹凸のあるサイディング)は、もともと光の当たり方で陰影が出ます。模様の陰影とローラー目は別のものです。気になったら、まず「これは模様ですか、塗りムラですか」と聞いてください。

手口⑧見積書と違う塗料を使う

ここからの3つは、これまでの手口より一段重い話です。工程を省くのではなく、約束したものと違うものを使うためです。

「フッ素で見積もって、実際はシリコンを塗る」——完成した壁を見て、これを見分けられる人はまずいません。塗り立ての見た目は、グレードでは変わらないからです。差が出るのは、何年ももった後です。

これは「手抜き」ではなく、契約の問題です

塗料が違うということは、契約した内容と違う工事をしたということです。法律の側から見ると、こうなります。

民法 第415条(債務不履行による損害賠償)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき(中略)債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

消費者契約法 第4条第1項第1号

消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、(中略)重要事項について事実と異なることを告げること——により誤認をし、それによって契約の申込み又は承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

つまり「使う塗料」は、契約の重要な中身です。だからこそ、当サイトが繰り返し「見積書に製品名を書いてもらってください」と書いているのは、この一点のためでもあります。製品名が契約書に書かれていなければ、違うものを使われても「違う」と言えません。

見抜き方——缶を見るのが、いちばん確実です

  1. 缶のラベルを見る/写真をもらう——塗料の缶には、メーカー名と製品名が大きく印刷されています。「使う塗料の缶の写真をください」と頼めば済みます
  2. 空き缶の数と種類を見る——手口②の缶数の検算と同じ材料です。1回の依頼で、量と種類の両方が確認できます
  3. メーカー保証書が出るかを聞く——製品によっては、メーカーの保証が付きます。保証書には製品名が入ります
  4. 納品書を見せてもらう——塗料販売店からの納品書には、製品名と数量が記載されています

この4つは、どれも「頼めば出てくるはずのもの」です。渋られる理由が思いつきません。そして頼むタイミングは、契約のときです。工事が終わってから「缶を見せてください」と言っても、もう処分されています。

手口⑨「特殊塗装」の中身を確認する

多彩模様、石材調、メタリック、光触媒——見た目や機能に特徴のある塗装は、いくつもあります。そして、これらには必ずメーカーの製品があります。

問題になるのは、「うちの特殊工法です」という説明だけで、中身の製品名が出てこない場合です。当サイトの取材では、特殊塗装をうたいながら、実際には別の塗料でそれらしく仕上げている例があることも聞いています。

⚠️誤解のないように書いておきます。施工店が自社の仕様に独自の名前を付けること自体は、まったく普通のことです。「◯◯工法」「当社標準仕様」といった呼び方は、複数の材料を組み合わせた自社の手順に名前を付けているだけ、という場合がほとんどです。問題は名前ではなく、中身を聞いたときに答えられるかどうかです。

聞くのは、この2つだけです

  • 「その工法で使う製品名を教えてください。メーカーはどこですか」
  • 「メーカーのカタログか、製品のページはありますか」

本物の製品を使っているなら、メーカーのサイトに製品ページがあります。そこに書かれている仕様(工程数、塗布量、期待耐用年数)と、見積書の内容が合っているかを見れば済みます。当サイトの塗料の平米単価のページには、各メーカーが公開している材工単価を並べてあるので、照合の材料になります。

逆に、製品名が出てこない、メーカーが分からない、カタログが存在しない——このときは、それが何なのかを確かめないまま契約しないでください。「高機能」「特殊」という言葉は、それ自体では何も意味しません。

手口⑩作業そのものを隠す

最後は、やっていない工程を、やったことにするケースです。工程写真や報告書が求められるようになったぶん、写真の側で辻褄を合わせるという形が出てきます。

ここも、施主に確認できることがあります。専門知識は要りません。

見るところ確認のしかた
自分の家が写っているかサッシの形、隣の建物、庭の木、電線の位置。「どこの壁か分からない写真」は、確認の材料になりません
日付と天気が合っているか雨だった日に「塗装中」の写真があれば、おかしい。天気は後から調べられます
写真の枚数と工程が対応しているか洗浄・ケレン・下塗り・中塗り・上塗り。同じ角度の写真が並んでいれば、進み方が見えます
足場があるうちに、自分でも撮っておく2階の窓から見える範囲でかまいません。自分の記録があれば、突き合わせられます

いちばん簡単なのは、工事期間中に自分でも何枚か撮っておくことです。毎日でなくてかまいません。朝、出かける前に1枚。それだけで、いつ何が行われていたかの記録になります。

そして、これは疑うための行為ではありません。まともな工事なら、その記録がそのまま「きちんとやってもらった証拠」になります。数年後に不具合が出たときも、この記録があるかないかで話がまったく違います。

⚠️ただし、写真での確認には限界があります。隠す気のある相手には、完成後の確認は届きません。より確実なのは、次の項で説明する「材料検収」です。

隠されたら見抜けない——だから「材料検収」という考え方があります

正直に書きます。前の項で挙げた写真の確認には、限界があります。

工程写真も報告書も、その気になれば作れます。施主が毎日現場に張り付くのは現実的ではありませんし、張り付いたところで、塗料が規定どおりに薄められているかは見て分かりません。隠す気のある相手に対して、完成後の確認で勝てるとは限らない——これが実際のところです。

では、どうするか。建設の現場には「材料検収」という考え方があります。できあがったものを検査するのではなく、材料が現場に入った時点で、種類と数量を確かめるという方法です。

国の仕様書は、これを制度にしています

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版

1.4.3 材料の搬入
工事現場へ材料を搬入するごとに、監督職員に報告する。

1.4.4 材料の検査等
(1) 工事現場に搬入した材料は、種別ごとに監督職員の検査を受ける。
(3) 検査の結果、不合格となった材料は、直ちに工事現場外に搬出する。

公共工事では、材料が現場に届くたびに報告し、種別ごとに検査を受けることになっています。塗り終わってから調べるのではなく、入ってきた時点で確かめる——これが制度として組み込まれているわけです。

そして、ここが肝心なところです。公共工事にはこれを行う「監督職員」がいます。戸建ての工事にはいません。

つまり、戸建てで材料検収に相当することができるのは、施主だけです。

施主にできる材料検収は、3つだけです

  1. 塗料が現場に届く日を聞いておく——「材料はいつ入りますか」。契約のときか、着工の打ち合わせで聞けます
  2. その日、缶を見る——メーカー名、製品名、本数。スマホで1枚撮るだけで十分です。缶は現場に積まれているので、探す必要もありません
  3. 納品書を見せてもらう——塗料販売店から届いた納品書には、製品名と数量が書かれています

そしてこの1回の確認が、3つの手口に同時に効きます。

見るもの効く手口
缶の本数手口②塗料を薄める——面積×塗布量で必要量を計算し、本数と照らせます
缶の種類(主剤・硬化剤)手口③混ぜ方——2液型なら硬化剤の缶があるはずです。硬化剤の缶がなければ、そもそも2液型ではありません
缶のラベルの製品名手口⑧塗料のすり替え——見積書に書かれた製品と同じかどうか

もうひとつ、仕様書には「JISまたはJASのマーク表示のある材料、規格証明書が添付された材料は、定める品質及び性能を有するものとして取り扱うことができる」という規定もあります。缶に書かれているJIS番号も、確認の材料になりますJIS K 5658の等級)。

搬入時だけでは足りません——空き缶もセットで

ここで、実務を知る人からの補足があります。搬入された缶を見るだけでは、まだ抜け道が残ります。

缶が現場に届いても、それが全部使われたとは限らないからです。届いた缶をそのまま持ち帰られてしまえば、搬入時の確認は意味を持ちません。

だから搬入時と、使い終わったあとの2回で見ます。

タイミング見るもの分かること
材料が入った日缶のラベル(メーカー・製品名)と本数約束どおりの塗料か。量は足りているか
工事の終盤空になった缶の数実際に使われた量。届いた本数と合っているか

頼み方は、搬入時と同じで構いません。「使い終わった缶も、片付ける前に写真を撮っておいてもらえますか」。廃材として処分される前の、一瞬の話です。

ただし、やりすぎると自分に返ってきます

ここは公平に書いておきます。確認を求めることには、代償がある場合があります。

施主の立ち会いを待つために作業が止まる、確認のたびに職人の手が空く——そうやって工期が延びれば、そのぶん足場を長く借りることになります。そしてその費用を請求されたとしても、文句は言えません。止めたのは施主の側だからです。

だから、現実的な落とし所はこうなります。

  • 立ち会いを要求しない——「その日に必ず見に行きます」ではなく、「写真を撮っておいてください」で頼む
  • 回数は2回まで——搬入時と、終盤の空き缶。それ以上は求めない
  • 作業を止めない——確認のために手を止めてもらう必要はありません。写真なら、職人が作業の合間に撮れます

「写真を1枚」で済ませられるなら、工期にも金額にも影響しません。逆に、毎日現場に出て一つひとつ確認するようなやり方は、結果として自分の費用を増やします。当サイトが追加費用のページで「工期を詰めさせないでください」と書いているのと、これは裏表の関係です。

💡これは「疑っているから見る」のではありません。公共工事では当たり前に行われている手順を、監督職員がいない現場で施主が代わりにやるだけです。頼み方も簡単です。「材料が入る日を教えてください。缶を見せてもらえますか」——まともな会社なら、むしろ歓迎されます。きちんとした材料を使っていることを、見てもらえる機会だからです。

「手抜き」と「仕様の違い」は別のものです

ここが、このページでいちばん書きたかったところです。手抜きに見えて、手抜きではないものがあります。これを混同すると、まともな会社を疑って失うことになります。

よく疑われること実際は
見積書が「一式」だった雨樋の曲がりや雨戸1枚のように、数えにくいものは一式が普通です。問題なのは「面積や長さで数えられるものが一式」のとき
中塗りと上塗りの色を変えてくれない戸建ての単価には、その手間が乗っていません。断られても手抜きではありません
雨樋に下塗りをしていない樋は下塗りなしで2回塗るのが標準的な仕様のことがあります。素材と塗料によります
工期が延びた雨・強風・低温で止まるのは法令の要求です。むしろ強行するほうが心配
足場を組んだあとに追加を言われた地上から見えなかった劣化は、実際にあります。写真と数量で説明できるかで判断(追加費用
職人が毎日来ない乾燥を待つ日は、その現場では何もできません。掛け持ちは普通の動き方です
書式が素っ気ない見積書だった書式の丁寧さと工事の質は、別のものです。立派な見積書を作る会社が、必ずしも良い工事をするとは限りません

この表を見て、ひとつ気づいてほしいことがあります。疑うべきなのは「行為」ではなく「説明できないこと」です。

一式でも、聞けば数量を出せるなら問題ありません。色を変えないのも、理由を言えるなら普通です。逆に、どんなに立派な見積書でも、「なぜそうするのか」に答えられないなら不安が残ります。

だから、判断の軸はここに置いてください。「聞いたときに、根拠を持って答えられるか」——これだけです。

なぜ手抜きが起きるのか——構造を知ると、防ぎ方が分かります

手抜きは、悪意だけで起きるわけではありません。起きやすくなる条件があります。ここを知っておくと、防ぎ方も見えてきます。

条件何が起きるか施主にできること
安すぎる受注その金額では、材料と手間が合わない。どこかを削らないと赤字になる極端に安い見積もりの理由を聞く。説明できる安さかどうか
工期の詰め込み乾燥時間を削るしかなくなる。1日に2工程を無理に入れる工期を詰めさせない。「余裕を持ってください」と言う
下請けの多重構造元請けから何段も下がると、現場に届く金額が減る「実際に塗るのはどこの職人さんですか」と聞く(どこに頼むか
施主が何も聞かない確認されない現場は、どうしても緩みます数量と製品名を聞くだけで変わります
天候で遅れて焦る取り戻そうとして、乾燥を待たずに進める工期が延びることを、こちらから許容しておく

この表で見てほしいのは、施主側の行動が原因になっている行が2つあることです。

値切りすぎることと、工期を詰めさせること。どちらも「良い工事をしてほしい」という気持ちから出た行動なのに、結果として逆に働きます。

とくに値引き交渉は注意が必要です。「10万円下げて」とだけ伝えると、削られる場所を業者が決めることになります。塗料のグレードが下がるか、3回塗りが2回になるか、付帯部が省かれるか——どれも施主には見えません。

下げてほしいときは、やらない工事を自分で決めてください。「雨戸は今回やめる」「屋根は次回に回す」。これなら仕上がりの質は落ちません。複数社の見積もりがあれば、どこを削れば妥当な金額になるかも判断できます

契約前にできる予防

工事が始まってからできることは、限られています。ほとんどは契約前に決まります。

  1. 数量が入った見積書をもらう——外壁◯㎡、シーリング◯m、雨戸◯枚。これが検証の土台です
  2. 工程ごとに行を分けてもらう——下塗り・中塗り・上塗りが別行で、同じ面積が3回出てくる形
  3. 塗料の製品名を書いてもらう——メーカー名と商品名。これがあればカタログで塗布量を調べられます
  4. 工程写真を約束しておく——「洗浄後・ケレン後・下塗り後・使った缶」の4枚。契約時に頼めば自然です
  5. 2社以上に見てもらう——数量・工程・製品名の3点を並べれば、違いは自分で見つけられます

この5つを頼んで嫌がる会社は、まずありません。むしろ「よく調べていますね」と言われることのほうが多いはずです。そして、嫌がられたとしたら——それ自体が、いちばん分かりやすい判断材料になります。

疑ったときの手順

工事中、あるいは工事後に「おかしいのでは」と思ったとき。感情的にならずに、順番どおり進めてください。

  1. 写真を撮る——気になる箇所と、日付。足場があるうちしか撮れない場所があります
  2. 質問を1つに絞って聞く——「下塗りは何を使いましたか」「洗浄は何日に行いましたか」。問い詰めるのではなく、確認する形で
  3. 答えを記録に残す——メールやアプリなど、日付が残る手段で。口頭だけにしない
  4. それでも納得できなければ、第三者に見てもらう——別の塗装会社、または住宅診断(ホームインスペクション)の会社
  5. 相談窓口へ——消費者ホットライン「188」(局番なし)、住宅リフォームなら住まいるダイヤルトラブル対処

⚠️支払いを止める前に相談してください。一方的に支払いを拒むと、こちらが契約違反を問われることがあります。「納得できないので、確認したい」と伝えて、記録を残しながら進めるのが安全です。

よくある質問

工事中、ずっと見張っていないといけませんか?

その必要はありません。見るべき日は限られています。高圧洗浄の日(2日目)、下塗りの日、そして最終日の確認。この3回だけ在宅していれば十分です。あとは工程写真をもらう約束をしておけば、見ていなくても記録が残ります。毎日職人に話しかけると、そのぶん手が止まるので、かえって逆効果です。

塗り終わってからでは、もう分かりませんか?

完全には分かりませんが、手がかりは残ります。使った塗料の缶(産業廃棄物として処分される前なら確認できます)、工程写真の有無、見積書と実際の工事内容の照合。そして数年後に不具合が出たときは、その時点で記録が効いてきます。だから見積書と工程表は捨てないでください。保証のページもあわせてご覧ください。

安い業者は手抜きをしますか?

安さと手抜きは、直結しません。自社で職人を抱えている会社は、下請けに出す会社より中間マージンのぶん安くなります。それは説明できる安さです。
問題なのは、説明できない安さです。「今日契約なら半額」「モニター価格」——半分にできる金額なら、もとの金額に根拠がなかったことになります。足場だけで15〜25万円かかるので、相場の半分以下という金額が出てきたら、どこが削られているかを見積書で確認してください。

大手や有名な会社なら安心ですか?

規模と工事の質は、必ずしも一致しません。実際に塗るのは現場の職人だからです。大手なら管理体制がある一方、下請けに出る分だけ現場との距離が生まれることもあります。見るべきなのは会社の大きさではなく、「誰が塗るのか」「どう管理するのか」に答えられるかです(どこに頼むか)。

近所で工事をしている業者に頼むのは危険ですか?

危険とは限りません。ただし「近所で工事をしているので」という入口には注意が必要です。国民生活センターに寄せられた「点検商法」の相談は、2023年度の12,550件から2025年度は19,696件へ増えています。「工事しませんか」ではなく「点検に来ました」という入口が増えているのが実態です。近所で実際に工事をしている会社なら、その現場の仕上がりを見せてもらうという手があります(点検商法の見分け方)。

手抜きだったと分かったら、やり直してもらえますか?

契約内容と実際の工事が違うなら、直してもらう話ができます。「3回塗りの契約で2回しか塗っていない」なら、契約どおりに履行されていないことになります。ただしそれを示すには記録が要ります。見積書、工程表、写真、やり取りの記録。だからこのページは「工事中に確かめる」ことを中心に書きました。証明できない状態からの交渉は、どうしても不利になります。

あわせて読みたい

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同じ条件で比べるための頼み方

参考にした情報

  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18.1.4(9)(中塗り及び上塗りの色を変えて確認)、18.1.6(1)(2)(施工管理/塗装を行わない条件)、18.1.7(使用量から塗付け量を推定)、表18.7.3(塗付け量)
  • 同仕様書 15章 仕上塗材仕上げ——「2液形上塗材は、薄める前に基剤と硬化剤を仕上塗材の製造所の指定の割合で混ぜ合わせる」「材料の練混ぜは、仕上塗材の製造所の指定する量の専用薄め液で均一になるように行う」「練混ぜ量は、仕上塗材の製造所の指定する可使時間以内に使い終わる量とする」「(マスチック塗材は)施工に先立ち、かくはん機を用いてかくはんする」
  • 同仕様書 1.4.3(材料の搬入/搬入するごとに監督職員に報告)、1.4.4(材料の検査等/搬入した材料は種別ごとに監督職員の検査を受ける、不合格の材料は直ちに搬出)
  • 民法 第415条(債務不履行による損害賠償)/e-Gov法令検索
  • 消費者契約法 第4条第1項第1号(重要事項について事実と異なることを告げること=取消し)/e-Gov法令検索
  • 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材(2液型の混合比の計量、撹拌の実際、希釈しすぎによる薄膜、ローラー目の出方、下塗りの代用、特殊塗装をうたいながら別の塗料で仕上げる例、付帯部の塗り回数、打ち替えと増し打ちの扱い、材料検収と空き缶の確認、確認を求めることで工期が延びた場合の費用負担)
  • 労働安全衛生規則 第522条(悪天候時の作業禁止)/e-Gov法令検索
  • 独立行政法人国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」PIO-NET登録相談件数

最終確認日:2026年8月25日。国の仕様書は公共工事に適用されるもので、戸建ての工事に同じ管理や検査を求められるわけではありません。このページは特定の事業者を指すものではなく、確認方法の整理です。個別の判断は、現地の状況をもとに行ってください。