外壁塗装のピンホール——「施工不良の証拠」と決めつける前に、やっておくことがあります

足場が外れた壁を見たら、針で刺したような小さな穴が点々と。あるいは、ぷつぷつとした泡の跡。検索すると「ピンホールは施工不良です」「早めに再塗装を」と書かれていて、不安になって手が止まる——ここまでが、たいていの流れだと思います。このページでは、まずメーカーが公表している発生の原因を確かめ、そのうえで手直しを言い出す前にやっておく3つのことを書きます。急いで結論を出さないほうがいい理由は、ひとつです。言い方と順番を間違えると、直せるものも直しにくくなるからです。

このページの内容

ピンホールとは——泡が破れた跡だと考えると分かりやすい

ピンホールは、乾いた塗膜の表面にできる針の穴ほどの小さな穴です。名前のとおり「ピン(針)の穴」。ひとつだけ見つかることもあれば、日の当たる面にだけ点々と出ていることもあります。

できかたを想像しやすくするために、順番で書きます。塗料の中や、塗った直後の塗膜の中に小さな泡ができる。ふつうはその泡が消えてから乾くのですが、泡が消えないうちに表面だけ先に乾いてしまうと、泡は逃げ場を失います。そこで泡が破れたり、抜けたりすると、そのあとに穴が残る——これがピンホールです。

「泡が抜けた跡が残る」と考えると、原因の話がつながります

ピンホールができるまでの3段階 塗った直後の塗膜の中に空気や溶剤の泡ができる。表面が先に乾くと泡が逃げられなくなる。泡が抜けた跡が小さな穴として残り、ピンホールになる。 ① 塗った直後 ② 表面が先に乾く ③ 泡が抜けた跡が残る 下 地 下 地 下 地 塗膜の中に泡ができる 泡が逃げられなくなる 穴として残る=ピンホール だから原因は「泡ができる理由」と「表面だけ早く乾く理由」の両方にあります 職人の塗り方だけでなく、気温・下地の状態・希釈の具合が関わってきます
この図は仕組みを説明するための模式図です。ぬりごろでは、他社が施工した現場の写真を載せて良し悪しを論じることはしません。写真だけで原因は特定できませんし、それは現場を見た人の仕事だからです。

なぜできるのか。メーカーが挙げている原因

ここは、業者ブログの説明ではなく塗料メーカーが公開している解説を見にいきます。日本ペイントの用語集は、塗膜の中に残る「泡」について、こう説明しています——ピンホールや膨れの原因になり、「希釈が適切でなかった」「気温が高く乾燥が速すぎた」「攪拌や塗装の仕方が妥当でなかった」場合に起こりやすい、と。

もうひとつ。エスケー化研は「塗料はなるべく厚く塗るほうがいいのか」という質問に対して、厚く塗りすぎると、たれやピンホールの発生など施工不良につながるという趣旨の回答を出しています。塗料は厚ければ良いわけではなく、決められた量で塗るものだということです。

原因の系統中身施主から見ると
希釈薄めすぎ・薄め方の指定を外れている製品ごとに希釈率は決まっています。指定どおりに薄めたかは現場の管理の話
気温・天候気温が高く、表面だけ先に乾いた真夏の直射日光が当たる面で起きやすい。腕とは別の要因です
攪拌・塗り方混ぜ方や塗り方で泡を巻き込んだローラーの転がし方でも変わります
厚塗り一度に厚く塗りすぎた「たっぷり塗ってもらった」が良いとは限りません
下地下地に微細な穴や水分・湿気が残っていたモルタルやコンクリートの巣穴、洗浄後の乾燥不足など

この表を見ていただくと分かるとおり、ピンホール=手抜き、と一対一で結びつくものではありません。真夏の南面という条件だけでも起こりえます。だからといって「仕方ない」で終わる話でもない——だから次の章で、判断を二つに分けます。

「施工不良ですか?」——判断を2つに分ける

ネットの記事は「ピンホールは施工不良の証拠です」と書きがちです。ただ、その一行で動くと、相手が身構えるだけで話が進まないことがあります。実際に見るべきは、次の二つの分かれ目です。

まず様子を見て構わないもの早めに伝えたほうがよいもの
数えられる程度の数で、離れて見ると分からない面で広がっている。一枚の壁のあちこちに点々と続く
穴が浅く、下の色が見えていない穴の底に下地や前の色が見えている(塗膜を貫いている)
時間が経っても増えていない日を追って増えている・大きくなっている
触っても粉が付かない、膨れていない近くに膨れ・浮き・剥がれを伴っている

右の列に当てはまるなら、遠慮なく連絡してください。とくに塗膜を貫いている穴は、そこから水が入る入口になりえます。屋根の話にはなりますが、日本ペイントの用語集も、スレート屋根の端部にピンホールが生じると毛細管現象で雨水が逆流することがあると説明しています。小さな穴でも、場所と数によっては水の道になるということです。

「何個までなら合格」という公的な基準は、見当たりませんでした

私たちが確認した範囲では、戸建ての塗り替えについてピンホールの数や大きさの合否を定めた公的な基準は見つかりませんでした(新築住宅の瑕疵をめぐる国の技術的基準は、ひび割れや雨漏りなど別の対象を扱っています)。基準がないということは、判断のよりどころが、契約書・仕様書・保証書という当事者どうしの取り決めに戻るということです。だから次にやることは、感情の整理ではなく書類を出すことになります。

見つけたときの手順(この順番が大事です)

  1. 写真を撮る(日付が残る形で)離れた位置から壁一面、次に近くで数か所。同じ場所を同じ角度で撮っておくと、あとで「増えたのか」が分かります。スマホの日付情報はそのまま残してください。
  2. 見積書・工程表・保証書を手元に出す使った製品名、塗り回数、工期、保証の範囲。話し合いは、この3枚の上でしか進みません。製品名が書かれていない見積書だった場合は、それ自体を最初に聞くことになります。
  3. 連絡は「直してください」ではなく「見てほしい」から電話やメールで、事実だけを伝えます。「南側の壁に、小さな穴が点々と出ています。写真を送るので、一度見ていただけますか」。この言い方のほうが、結果的に早く直ります。最初から責める言葉で始めると、相手は説明ではなく防御を始めるからです。

足場がまだ立っているなら、その日のうちに

手直しの費用でいちばん大きいのは、塗料代でも人件費でもなく足場です。解体したあとで手直しが必要になると、掛け直しの話が出てきます。だから、足場があるうちに見ておくことに意味があります。どこを見ればいいかは完了検査のページにチェックリストとしてまとめました。工事の最終日は、施主が家にいる日にしてもらうのが理想です。

ピンホール以外の症状——気泡・液だれ・塗りムラ

塗り上がりで気になるものは、ピンホールだけではありません。よく検索されているものを並べます。症状ごとに、様子見でよいものと、早めに言ったほうがよいものが違います。

症状どう見えるか考え方
気泡・膨れ塗膜がぷくっと浮いている。押すと空気が動く下からの水分や熱が疑われます。広がる場合は早めに連絡を。弾性のある塗料を合わない下地に使った場合も膨れの原因になりえます(サイディングのページで触れています)
液だれ(たれ)塗料が流れて筋になり、そのまま固まっている厚塗りや希釈の具合で起こります。見た目の問題として手直しを相談できる部分です
塗りムラ・透け色の濃さが場所によって違う。下の色が透けている乾く前後で見え方が変わるので、完全に乾いてから、曇りの日に見るのがおすすめです。それでも透けているなら伝えてください
艶ムラ光の当たり方で艶が均一に見えない面の向きや下地の吸い込みでも出ます。正面から見て気になるかを基準に
刷毛目・ローラー目塗った跡が筋として残るまったく消える仕上げばかりではありません。気になる箇所を具体的に伝えるのが早いです

なお、塗った直後ではなく数年たってから出てきた剥がれや粉は、この記事の範囲ではなく劣化のサインとして見ます。そちらはチョーキングと、ひび割れにまとめています。

自分で埋めてもいいですか?

結論から言うと、連絡する前に手を加えるのはおすすめしません。理由は3つあります。

  • 証拠手を加えると、元がどうだったかが分からなくなります写真を撮る前に埋めてしまうと、話し合いの材料が消えます。まず撮る、それから相談する
  • 保証施主が手を入れた箇所は、保証の対象から外れることがあります保証書に「第三者が手を加えた場合」の除外条項があるのはよくあることです。保証のページで読み方を書いています
  • 安全手の届く高さでも、脚立に乗って壁を触る作業は危険です足場のない状態で2階部分に上がるのは論外です。ここは「やらない」で構いません

そのうえで、塗装から年数がたっていて、業者との関係もすでに終わっている——という場合まで「触るな」とは言いません。ただ、その場合も穴を埋めるだけでは原因は消えません。下地の側に水分や劣化の理由があるなら、上から塞いでも同じことが起きます。判断が付かないときは、次の塗り替えの相談ついでに見てもらうのが結局は早道です。

保証書の、どこを見るか

手直しの話は、最後は保証の中身に着地します。見る場所は3つです。

見る場所何を確かめるか
対象「塗膜の剥離」「変色」など、何が起きたときに使えるのか。ピンホールのような仕上がりの不具合が含まれるかは書き方によります
期間と起算日何年で、いつから数えるのか(引き渡し日か、完了日か)
除外天災・経年・第三者が手を加えた場合など、使えないケース。ここがいちばん読まれていません

保証書そのものの読み方と、契約前に確認しておくべき点は外壁塗装の保証は何年?にまとめました。話が折り合わないときの公的な相談先(消費者ホットライン188・住まいるダイヤル)はトラブル対処のページに窓口ごとの使い分けを書いています。いきなり窓口ではなく、まず施工した会社に見てもらう。順番はこれで構いません。

よくある質問

ピンホールは、何個までなら普通ですか?

数で線を引ける質問ではありません。前述のとおり、公的な合否基準は確認できませんでした。実際に見るのは数より深さと広がり方です。塗膜を貫いていて下地が見えているか、面で広がっているか、日を追って増えているか。この3つに当てはまらないなら、まずは定点で写真を撮って様子を見る、で構いません。

塗ってから半年後に出てきました。もう遅いですか?

遅くありません。まず保証の期間内かどうかを確認してください。そのうえで、施工した会社に連絡します。時間が経っている場合ほど、いつ気づいたか・そのときどう見えたかの記録が効いてきます。撮った写真の日付が、そのまま話の土台になります。

業者に「問題ありません」と言われました。どうすれば?

まず、その判断の理由を聞いてください。「この程度なら塗膜の性能に影響しない」と言うのなら、なぜそう言えるのかを説明してもらいます。理由を自分の言葉で説明できる会社なら、たいてい信頼して構いません。説明が「大丈夫ですから」で止まる場合は、第三者の意見を聞く選択肢があります——工事の中身についての相談は、国土交通大臣指定の住まいるダイヤルで建築士に相談できます(窓口の詳細はトラブル対処のページ)。

手直しになると、どんな作業になりますか?

範囲によって変わります。数か所なら部分的な補修で済むこともありますし、面で出ているならその面を塗り直す話になります。ここで金額を左右するのは、繰り返しになりますが足場が残っているかどうかです。足場の位置づけは見積もりの内訳のページで扱っています。

ピンホールを防ぐことはできますか?

施主にできるのは、塗る作業そのものではなく条件を整えることのほうです。工期を無理に詰めさせない(乾燥の時間を削らせない)、真夏や真冬の施工では乾燥の扱いを聞いておく、製品名と塗り回数を見積書に書いてもらう——このあたりです。工程と乾燥の関係は工程と工期のページ、塗料の選び方は塗料の種類のページにあります。

あわせて読みたい

完了検査

足場を外す前に見る。素人でも見られる場所のチェックリスト

保証は何年?

年数より先に読む場所。除外条項がいちばん読まれていません

トラブル対処

話が折り合わないときの窓口。188と住まいるダイヤルの使い分け

チョーキングと、ひび割れ

数年たってから出てきた粉や割れは、こちらの話です

工程と工期

乾燥の時間はどこにあるか。工期を詰めさせない理由

水性と油性の違い

希釈するものが違います。臭いと、塗れる下地の話

参考にした情報

  • 日本ペイント株式会社 ニッペラボ 用語解説「泡(あわ・気泡)」——ピンホール・膨れの原因、および希釈・気温・攪拌/塗装方法との関係(2026年8月21日確認)
  • 日本ペイント株式会社 ニッペラボ 用語解説「縁切り」——スレート屋根の端部にピンホールが生じた場合の毛細管現象について
  • エスケー化研株式会社 よくあるご質問「塗料の性能について」——厚く塗りすぎた場合のたれ・ピンホールに関する説明
  • 公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」(国土交通大臣指定)——工事内容に関する相談窓口
  • 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材

このページは一般的な考え方の整理です。実際に手直しが必要かどうかは、現場を見た専門家の判断と、契約書・仕様書・保証書の内容によります。他社の施工に対する評価を目的としたものではありません。最終確認日:2026年8月21日。