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外壁の凍害(とうがい)——塗装では直りません。まず「うちは寒冷地域か」を確かめてください
外壁がボロボロ欠ける、うろこ状にはがれる、丸くえぐれている——それは凍害(とうがい)かもしれません。外壁材の中に入った水が凍って膨らみ、内側から材料そのものを壊す現象で、塗装では直りません。そして誤解されやすいのですが、水は表からではなく裏から入ります(メーカーの実験も「サイディングの裏面から十分に水分を吸収させます」と書いています)。さらに、外壁材メーカーは商品を一般地域用と寒冷地域用に分け、市町村まで公表していて、その一覧には京都府・兵庫県・滋賀県の市町も入っています。「うちは寒冷地じゃない」が間違っていることがある、ということです。
先に答えを書きます
- 凍害(とうがい)は、外壁材の中に入った水が凍って膨らむことで、内側から壊れる現象です。表面が塗装で守られていても起きます。塗り直しても、原因は残ります。
- 「うちは寒冷地じゃない」が、間違っていることがあります。外壁材メーカーのケイミューは、商品を一般地域用と寒冷地域用に分け、市町村まで指定しています。その一覧には京都府・兵庫県・滋賀県・岐阜県・山梨県の市町も入っています。
- 火災保険は、あてにしないでください。凍害は年月をかけて進む現象で、災害による損傷という組み立てにはなりにくいものです。それより現実的な道があります。
このページの内容全10項目
凍害は塗る前に別の工事で止める側です。壁が含んだ水が凍って壊れているので、上から塗ってもまた同じ場所が欠けます。仕分けの一覧は外壁の症状の仕分けに。
凍害とは——外壁材の中で、水が凍って膨らんでいます
「凍害」はとうがいと読みます。外壁材メーカーのケイミューは、こう説明しています。
外壁材の基材内部には目に見えないくらいの小さな空隙(くうげき)があります。この中に雨や結露がたまり、その水分が凍結すると膨張し、クラックや基材破損の原因になります。
同社はこれを、水をガラス容器に入れて凍らせる例えで説明しています。フタをしないで凍らせれば、水は上へ逃げます。フタをして凍らせると、逃げ場のない水が容器を割る。外壁材の中で起きているのは、後者です。
そして同社は、押し出し製法の外壁材が凍害に強い理由を「独立空隙(どくりつくうげき)」で説明しています。基材の中に大小多数の微細な空隙があり、「水分凍結時の体積膨張による圧力を吸収緩和して凍害を防ぎます」。逃げ場を、材料の中にあらかじめ作ってある、という考え方です。
壊れているのは塗膜ではなく、その下の基材そのものです。塗料は表面に膜を作るものなので、材料の中で起きている膨張には届きません。
むしろ、すでに水を含んでいる外壁材の表面を塗膜で塞ぐと、水の逃げ道が減ります。「凍害が出ているところに塗れば止まる」という説明が来たら、「中の水はどうやって抜きますか」と聞いてみてください。
凍害は「裏から」起きます——メーカーの実験がそう組まれています
凍害の話でいちばん誤解されているのが、水がどこから入るかです。
ケイミューは、耐凍害性の実験方法を公開しています。厳寒の北海道の実験施設で、こう繰り返すそうです。
[昼間]加湿器で室内を高温多湿に保ち人工的に結露させ、サイディングの裏面から十分に水分を吸収させます。
[夜間]外気温が-10〜-20℃に下がり、水分が凍結します。
→ 冬の間、これを120〜130回繰り返します。
読み飛ばしてほしくないのは「裏面から十分に水分を吸収させます」のところです。メーカーは、凍害を再現するために、わざわざ裏から水を含ませている。つまり、現場で凍害が起きるときも、多くは裏からです。
裏に水が回る理由は、家によって違います。壁の中の湿気が抜けない(通気が効いていない)/サッシや水切りから伝った水が裏へ回る/目地のシーリングが切れている——どれも、表面を塗っても変わりません。
ニチハも、自社の曝露実験について「風雪や伝い水を防ぐ軒のない、厳しい曝露実験(自然環境での実験)」と書いています。軒が無いこと、伝い水があることを、凍害が出やすい条件として挙げている、ということです。
だから、見てもらう場所は表面ではありません
見分け方——反りや、鉄筋の錆による破損とは別の症状です
外壁が傷んでいるときの見た目は似ていますが、原因はまるで違います。ここを取り違えると、直し方も相談先も変わります。
| 症状 | 何が起きているか |
|---|---|
| 凍害 | 基材に入った水が凍って膨らみ、内側から壊れる。表面が薄くはがれる、ボロボロ欠ける、部分的にえぐれる |
| 反り・浮き | 板の表と裏で水分の状態が違い、板そのものが曲がる/下地から離れる(サイディングの反り・浮きのページ) |
| 鉄筋の錆による破損 | コンクリートの中の鉄筋が錆びて膨らみ、表面を押し出す。外壁材ではなく躯体の話です |
| 塗膜のはがれ | 塗った膜だけが浮いて剥がれる。下の基材は生きていることが多い |
凍害に特徴的な壊れ方
現場では、次のような言葉で呼ばれます。
- スケーリング表面が薄い層になって、うろこ状にはがれていく壊れ方。凍結融解が繰り返された面に出ます
- ポップアウト小さな部分が、内側から押し出されるように欠ける壊れ方。丸くえぐれた跡が残ります
- 欠け・ボロボロになる指で触ると粉や欠片が落ちる。塗膜ではなく基材が崩れている状態です
触って確かめられるのが、凍害の分かりやすいところです。塗膜のはがれなら下に硬い面が残っていますが、凍害が進んでいると、下も一緒に崩れます。無理に削らず、写真を撮って見てもらってください。
うちは「寒冷地域」ですか——メーカーが市町村まで決めています
このページでいちばんお伝えしたいのが、ここです。
ケイミューのサイトには「お住まいの地域を確認」というページがあり、こう書かれています。
外壁材・装飾部材には一般地域用と寒冷地域用があります。エリアをお選びください。各地域の特性にあわせた外壁材・装飾部材をご用意しておりますので、必ずお客様がお住まいの地域用の商品をお選びください。
つまり、同じメーカーの外壁材でも、地域で商品が分かれているということです。そして同社は、寒冷地域にあたる市町村を、都府県ごとに具体的に挙げています。
| 都府県 | 市町村 |
|---|---|
| 宮城県 | 栗原市西部/大崎市西部/加美町西部/色麻町西部/大和町西部/泉区西部/青葉区西部/太白区西部/川崎町西部/蔵王町/七ヶ宿町 |
| 福島県 | 猪苗代町/磐梯町/北塩原村/喜多方市/湯川村/会津坂下町/西会津町/会津若松市/会津美里町/柳津町/三島町/金山町/下郷町/昭和村/南会津町/只見町/檜枝岐村 |
| 栃木県 | 那須町/日光市北部(旧今市市地区は一般地域) |
| 群馬県 | 沼田市/片品村/みなかみ町/川場村/昭和村/高山村/中之条町/東吾妻町/長野原町/草津町/嬬恋村/南牧村/上野村 |
| 山梨県 | 北杜市北西部/忍野村/山中湖村/富士吉田市/富士河口湖町/鳴沢村/甲府市南部 |
| 岐阜県 | 飛騨市/高山市/白川村 |
| 滋賀県 | 高島市/長浜市/米原市/彦根市/多賀町/甲良町/豊郷町/愛荘町/東近江市/近江八幡市 |
| 京都府 | 京丹後市/伊根町/宮津市/与謝野町/舞鶴市/福知山市/綾部市/京丹波町/南丹市/亀岡市 |
| 兵庫県 | 豊岡市/香美町/新温泉町/養父市/朝来市/丹波市 |
京都に10市町、兵庫に6市町、滋賀に10市町。「寒冷地」と聞いて思い浮かべる場所とは、だいぶ違うのではないでしょうか。近江八幡も、亀岡も、彦根も入っています。
これが、施主にできるいちばん具体的な確認です
やることは2つです。
- ①ご自分の市町村が、この一覧に入っていないかを見る。入っていれば、メーカーは寒冷地域用の商品を選ぶよう求めています
- ②「うちに張られているのは、どちらの地域用ですか」と聞く。外壁材の品番が分かれば、メーカーのサイトで施主でも調べられます
凍害が出ている家で、寒冷地域なのに一般地域用が張られていた——これは災害でも経年劣化でもなく、選び方の問題です。だとすれば、話す相手は保険会社ではなく施工した会社になります。
この一覧はケイミューが同社の商品について定めている区分で、法令上の寒冷地の定義ではありません。また、上の表は「一部の市町村だけが寒冷地域にあたる都府県」を挙げたもので、北海道や東北北部のように広い範囲が対象になる地域は、この一覧の形では載っていません。他社の外壁材には、そのメーカーごとの区分があります。ご自宅の外壁材のメーカーで確かめてください。
JISの「耐凍結融解性」は、表示する場合に適用される項目です
窯業系サイディングにはJIS A 5422という規格があります。その性能表に、耐凍結融解性の欄があります。
まず、日本窯業外装材協会(NYG)が公表しているJIS A 5422の性能表(表5)から、合否の中身を引きます。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 耐凍結融解性 | 表面の剝離面積率が2%以下で、著しい層間剝離がなく、かつ、厚さ変化率が10%以下 |
そして、この欄には注記が付いています。
d) 耐凍結融解性を表示する場合に適用する。
ここが、いちばん大事なところです
耐凍結融解性は、表示する場合に適用される項目です。つまり——「JIS A 5422に適合」と書かれていても、耐凍結融解性まで表示されているとは限りません。厚さや曲げ破壊荷重のように、すべての製品が必ず満たす欄とは扱いが違います。
だから、寒い地域で外壁材を選ぶときに聞くのはこれです——「この製品は、耐凍結融解性を表示していますか」。表示しているなら、上の基準(剝離面積率2%以下、著しい層間剝離なし、厚さ変化率10%以下)で確かめられたということになります。
試験の回数は、メーカーが書いています
では何回の凍結融解で確かめるのか。NYGが公表している性能表には、回数は載っていません。いっぽう、ニチハは自社の製品ページの注記でこう書いています。
※JIS A 5422 窯業系サイディングの耐凍結融解性能:空気中(-20℃)での凍結と水中での融解を200サイクル繰り返す耐凍結融解性試験にて、表面のはく離面積率は2%以下、著しい層間はく離が無く、厚さ変化率10%以下に適合すること。
そして同社は、押し出し製法のモエンサイディングSについて「耐凍結融解性試験(JIS試験方法)を600サイクル繰り返しても、表面の塗膜はく離や層間はく離、厚み変化はほとんどありません」としています。
合否の基準(2%以下・層間剝離なし・10%以下)はNYGが公表している規格の表にあります。いっぽう「200サイクル」という回数は、当サイトが確認した範囲ではニチハの注記にあり、NYGの性能表には見当たりませんでした(2026年9月12日時点)。
ですので「規格が200サイクルを求めている」とは書きません。「ニチハが試験条件としてそう書いている」までが、確かめられたことです。
そのうえで、ケイミューの北海道の実験が「冬の間、これを120〜130回繰り返します」だったことと並べると、桁が見えてきます。試験の1サイクルと自然の冬の1回は条件がそろわないので換算はできませんが、回数は無限ではないし、メーカーが「600でもほとんど変化がない」とわざわざ書く意味も見えてきます。
だから見積もりで効くのは、この3つです。「うちの地域は寒冷地域の区分に入りますか」「この製品は寒冷地域用ですか」「耐凍結融解性は表示されていますか」。ケイミューが耐凍害性の対象商品として挙げているのは、押し出し製法のレジェール・ネオロック・セラディール・フィルテクトNの各シリーズです。
タイルの外壁にも、凍害は起きます
ここまでは窯業系サイディングを中心に書いてきましたが、タイルの外壁も凍害と無縁ではありません。硬くて水を通さないように見えても、材料の中に水が入れば同じことが起きます。
一般財団法人 日本建築総合試験所は、外装材料の耐凍害性をこう説明しています。
ボードやスレートなどの外装材料は、冬期や山間部地域のように一日の気温の変動が大きい状況下では、内部に浸透した水や表面に付着した水が凍結と融解を繰り返すことで、微細なひび割れが発生します。耐凍害性とは、このような現象に耐えうる性能をいいます。
「ずっと寒い」より「凍ったり融けたり」のほうが効きます
同じ資料に、読者の直感とは少し違うことが書かれています。
一般には、凍結状態が長く続く環境に比べると、凍結と融解の繰り返し回数が多いほど、凍害を受けやすくなり、吸水率の大きな材料ほど、凍結融解の影響を受けやすい傾向があります。
凍りっぱなしの場所より、昼に融けて夜に凍る場所のほうが危ないということです。メーカーが寒冷地域として挙げている市町村に、京都や兵庫や滋賀が入っている理由も、ここにつながります。いちばん寒い場所だけが対象なのではありません。
そしてこの一文は、凍害が裏から起きるという話とも噛み合います。ケイミューの実験が「冬の間、これを120〜130回繰り返します」という形で組まれているのは、回数こそが効くからです。
「吸水率が低いから凍害に強い」は、古い読み方です
タイルの説明でよく見るのが、吸水率による分類です。ただ、ここは2008年に規格が変わっています。
愛知県の公設試験研究機関(愛知県産業技術研究所 常滑窯業技術センター)が、JIS A 5209(陶磁器質タイル)の改正についてこう解説しています。
旧 JIS では自然吸水率を測定してタイルの素地を分類し耐凍害性の目安としても利用されてきました。これに関しては新たに「吸水率の区分」が規定化され、また耐凍害性については耐凍害試験で評価することになりました。
つまり、「吸水率の区分」と「耐凍害性」は、いまは別々に評価されます。吸水率が低いタイルが凍害に強い傾向はあっても、それは目安であって、耐凍害性の証明ではない——というのが2008年以降の整理です。
同じ解説には、改正でこうなったとも書かれています。「耐凍害性試験に JIS A 1435 に規定する試験方法を導入する件」については、気中凍結気中融解法及び気中凍結水中融解法が導入され、回数は国際規格と同じ100回とされました。JIS A 1435は「建築用外壁材料の凍結融解試験法」です。
日本建築総合試験所の案内によれば、気中凍結水中融解法は——試験片(幅100mm・長さ200mm・厚さは製品の厚さ)を水中に48時間浸せきし、そのあと気中で凍結(最低温度-20±2℃)→水中で融解(最高温度+10±2℃)を1サイクル(3〜6時間)として繰り返します。測定するのは外観観察・質量変化率・厚さ変化率・長さ変化率・体積変化率・強度変化率の6項目。サイクル数は製品ごとに異なります。
窯業系サイディングのほうは、ニチハが試験条件として「200サイクル」と書いているだけで、NYGが公表している規格の表に回数は載っていません。いっぽうタイルは、2008年の改正で回数が国際規格と同じ100回と決められました。材料ごとに、回数の決まり方そのものが違うので、「何サイクルの試験に通っているか」は材料をまたいで比べられません。
古いカタログの数字と、新しい数字は比べられません
同じ解説は、はっきりこう書いています——「今回の改正で試験方法が見直された試験規格よる試験結果は、旧 JIS による試験結果との間で直接比較することが困難です」。吸水率の測り方が自然吸水率から強制吸水率に変わったためです。
だから、築年の古い家のタイルの数字を、いまのカタログの数字と並べても意味がありません。タイルの外壁で凍害が疑われたら、数字で遡るより、いま欠けている場所と、その上に何があるかを見るほうが早いです。
タイルの外壁は、塗装するかどうかから考え方が違います。手入れと補修の全体像はタイル外壁のページにまとめました。タイルそのものと、目地(シーリング)は別の部材なので、欠けているのがどちらかも確かめてください。目地が切れていれば、そこから裏へ水が回ります。
火災保険は使えるのか——そして、その代わりに動かせる道
「凍害 火災保険」で調べる方が多いので、正面から書きます。
当サイトは「下りる/下りない」を断定しません。支払いを決めるのは保険会社で、業者でも当サイトでもないからです(火災保険と外壁のページ)。
そのうえで、構造だけ押さえてください。火災保険が想定しているのは、台風・強風・雹・雪などの災害による損傷です。いっぽう凍害は、裏に回った水が、冬のあいだに何十回も凍っては融けることを、何年も繰り返して進みます。「ある日の災害で壊れた」という形にはなりにくい——これが正直なところです。
やってはいけないこと
「凍害でも申請の仕方で下りますよ」「台風のせいにして出しましょう」——この種の持ちかけには、乗らないでください。
保険金を請求するのは契約者であるあなた自身です。事実と違う内容で請求すれば、責任を負うのは業者ではなくあなたになります。手口と見分け方は火災保険のページにまとめました。屋根の場合は火災保険で屋根の修理はできる?、雨樋は火災保険で雨樋は直せる?へ。
また、そもそも支払いに届かないことがあります。免責額や、「損害額が20万円以上のとき」といった条件が契約に付いていることがあるためです。ご自身の保険証券で確かめてください。
代わりに、動かせる道が2つあります
①外壁材の選び方の問題なら、相手は施工会社です。寒冷地域にあたる市町村なのに、一般地域用の外壁材が張られていた——そうであれば、それは災害ではなく仕様の話です。まず施工した会社に確認してください。話が進まないときの公的な窓口として、国土交通省の住宅不具合無料相談「住まいるダイヤル」(0570-016-100)があります。
②裏に水が回る原因が直せるなら、そこが本体です。シーリングの切れ、水切りの不足、通気の詰まり——これらは今の工事で直せます。凍害の補修だけして原因を残すと、同じ場所がまた壊れます。
どちらも、見積もりのときに原因の説明を出してもらうところから始まります。何社かに同じ壁を見てもらって、説明を並べてください。
直し方——パテで埋めるのは、どこまでの手当てか
凍害の補修で、よく出てくるのがパテ(補修材)で欠けを埋めるやり方です。DIYで試す方もいます。
ここは、はっきり分けて考えてください。
| やり方 | 何が直るか |
|---|---|
| パテで埋めて塗る | 見た目が直ります。基材の中の状態は変わりません。すでに水を含んだ材料に蓋をする形になることもあります |
| その板だけ張り替える | 壊れた材料が新しくなります。ただし同じ品番が手に入るか、周囲と色柄が合うかの問題が出ます |
| 面ごと張り替える/カバー工法 | 広い範囲に出ている場合の選択(張り替え/カバー工法) |
| 裏に水が回る原因を直す | ここが本体です。シーリング、水切り、通気。上のどれを選んでも、これをやらないと繰り返します |
「今年はパテで持たせて、次の塗り替えのときに張り替える」——これは、予算の都合として成り立つ判断です。ただしそう説明してくれる会社かどうかが分かれ目になります。「パテで埋めれば直ります」で終わる説明なら、原因の話をしてもらってください。
費用の考え方は、範囲と足場で決まります。1〜2枚の部分補修なら材料は小さく、金額の大半は人と足場です。この構造は見積もりの内訳のページと同じです。
見積もりのときに確かめる質問
- 地域うちの市町村は、外壁材メーカーの区分で寒冷地域に入りますかケイミューは市町村まで公表しています。施主でも見られます
- 製品いま張られているのは、一般地域用ですか、寒冷地域用ですか品番が分かればメーカーのサイトで確認できます。ここが合っていないなら、災害の話ではありません
- 原因裏に水が回っている場所は、どこだと思いますかシーリング・水切り・通気。表面の話しか出てこないなら、もう1社に聞いてください
- 範囲パテで埋めるのは何枚で、張り替えるのは何枚ですか見た目を直すのか、材料を替えるのか。枚数で聞くと、はっきりします
- 次この直し方だと、次に同じことが起きるのは何年後ですか原因を直していない補修なら、繰り返します。答えの具体性に差が出る質問です
- 保険(勧められたら)保険で出るかどうかは、どなたが決めますか正解は保険会社です。業者が「出ます」と言い切るなら、距離を取ってください
よくある質問
凍害は塗装で直りますか?
直りません。壊れているのは塗膜ではなく、その下の基材だからです。ケイミューは凍害を「基材内部の小さな空隙にたまった水分が凍結して膨張し、クラックや基材破損の原因になる」と説明しています。表面に膜を作っても、材料の中で起きている膨張には届きません。
それどころか、すでに水を含んだ外壁材を塗膜で塞ぐと、水の逃げ道が減ります。「塗れば止まります」と言われたら、「中の水はどうやって抜きますか」と聞いてみてください。
外壁の凍害は火災保険で補償されますか?
決めるのは保険会社で、業者でも当サイトでもありません。そのうえで構造だけ言うと、火災保険が想定しているのは台風・強風・雹・雪などの災害による損傷で、凍害は何年もかけて繰り返し進む現象です。「ある日の災害で壊れた」という形にはなりにくいものです。
「申請の仕方で下ります」「台風のせいにしましょう」には乗らないでください。請求するのは契約者であるあなたなので、責任もあなたが負います。代わりに動かせる道を2つ用意しました。
うちは寒冷地ではありません。凍害は関係ないですよね?
そうとは限りません。ケイミューが寒冷地域として挙げている市町村には、京都府10市町、兵庫県6市町、滋賀県10市町が含まれています。近江八幡市、亀岡市、彦根市、豊岡市なども入っています。
まずご自分の市町村が一覧にあるかを見て、次に「うちに張られているのはどちらの地域用ですか」と聞いてください。この2問で、話がかなり具体的になります。
凍害と、反りや爆裂はどう違いますか?
原因が別です。凍害は基材に入った水が凍って膨らみ、内側から壊れるもの。反り・浮きは板の表と裏で水分の状態が違い、板そのものが曲がるもの(サイディングの反り・浮き)。鉄筋の錆による破損は、コンクリートの中の鉄筋が錆びて膨らみ、表面を押し出すもので、外壁材ではなく躯体の話です。
見た目は似ていても、直し方も相談先も変わります。指で触って下の面が一緒に崩れるなら、凍害の可能性が高くなります。
サイディングの凍害はパテで補修できますか?
見た目は直ります。ただし基材の中の状態は変わりません。すでに水を含んでいる材料に蓋をする形になることもあります。
「今年はパテで持たせて、次の塗り替えで張り替える」は、予算の都合として成り立つ判断です。大事なのは、そう説明してくれるかどうか。「パテで埋めれば直ります」で終わる説明なら、裏に水が回る原因の話をしてもらってください。
凍害に強い外壁材はありますか?
メーカーは、製法で説明しています。ケイミューは押し出し製法の基材が「独立空隙」で凍結時の圧力を吸収緩和するとして、レジェール・ネオロック・セラディール・フィルテクトNの各シリーズを対象商品に挙げています。ニチハも押し出し製法のモエンサイディングSについて、層間の引張強度が高くJISの試験方法で600サイクル繰り返してもほとんど変化がないとしています。
ただし、強い材料に替えても、裏に水が回る原因が残っていれば条件は同じです。材料選びと原因の手当ては、両方です。
凍害の補修費用はいくらですか?
当サイトでは単価の目安を出しません。凍害は、出ている枚数・範囲・同じ品番が手に入るか・足場が要るかで金額の構造が変わるためです。
比べるための4点を挙げます。①パテで埋める枚数と張り替える枚数が分けて書かれているか ②同じ品番の板が手に入るか ③裏に水が回る原因(シーリング・水切り・通気)の手当てが工事に入っているか ④足場の行があるか。とくに③が入っていない見積書は、同じ工事をもう一度やることになりかねません。
タイルの外壁でも凍害は起きますか?
起きます。日本建築総合試験所は、外装材料の凍害を「内部に浸透した水や表面に付着した水が凍結と融解を繰り返すことで、微細なひび割れが発生します」と説明しています。硬い材料でも、中に水が入れば同じです。
注意したいのは「吸水率が低いから凍害に強い」という言い方です。2008年のJIS A 5209の改正で、吸水率の区分と耐凍害性は別々に評価されるようになりました。吸水率は目安であって、耐凍害性の証明ではありません。カタログを見るなら「耐凍害性は試験で確認されていますか」と聞いてください。
ずっと寒い地域のほうが、凍害はひどくなりますか?
そうとは限りません。日本建築総合試験所は「凍結状態が長く続く環境に比べると、凍結と融解の繰り返し回数が多いほど、凍害を受けやすくなり、吸水率の大きな材料ほど、凍結融解の影響を受けやすい傾向があります」としています。
凍りっぱなしより、昼に融けて夜に凍るほうが効くということです。メーカーが寒冷地域として挙げる市町村に京都や兵庫や滋賀が入っているのも、この考え方と合います。
「JIS適合」なら、凍害に強いということですか?
そうとは限りません。JIS A 5422の性能表で、耐凍結融解性には「表示する場合に適用する」という注記が付いています(NYGの公表資料)。厚さや曲げ破壊荷重のように、すべての製品が必ず満たす欄とは扱いが違います。
だから聞くのは「この製品は、耐凍結融解性を表示していますか」です。表示しているなら、表面の剝離面積率2%以下・著しい層間剝離なし・厚さ変化率10%以下で確かめられたことになります。
あわせて読みたい
窯業系サイディングの後悔
選んだあとで気づきやすい点。凍害と同じクラスタです
サイディングの反り・浮き
凍害と似ていますが、原因が別の症状です
シーリング(コーキング)
切れていると、そこから裏へ水が回ります
外壁の水切り
伝い水を壁から離す部材。凍害の入口になります
火災保険は使える?
使える被害と使えない被害の線引き
外壁の張り替え
広い範囲に出ているときの選択肢
見積もりの内訳
部分補修ほど、足場と人の比率が上がります
凍害は、見た目を直すことと、原因を止めることが別々の工事になる症状です。何社かに壁を見てもらって、どこから水が入っていると考えるかを聞き比べてください。判断が割れたときは、その根拠になった写真を並べれば、どちらが丁寧に見ているか分かります。
参考にした情報
- ケイミュー株式会社「耐凍害性|外壁材 性能・特長」——凍害の定義(「外壁材の基材内部には目に見えないくらいの小さな空隙があります。この中に雨や結露がたまり、その水分が凍結すると膨張し、クラックや基材破損の原因になります」)、水をガラス容器に入れて凍結させる例(フタ無し/フタあり)、押し出し製法の「独立空隙」が水分凍結時の体積膨張による圧力を吸収緩和する旨、対象商品(レジェール、ネオロックシリーズ、セラディールシリーズ、フィルテクトNシリーズ)、北海道での実験方法([昼間]加湿器で室内を高温多湿に保ち人工的に結露させ、サイディングの裏面から十分に水分を吸収させる/[夜間]外気温が-10〜-20℃に下がり水分が凍結/冬の間、これを120〜130回繰り返す)(2026年9月12日確認)
- ケイミュー株式会社「お住まいの地域を確認|外壁材」——「外壁材・装飾部材には一般地域用と寒冷地域用があります」「各地域の特性にあわせた外壁材・装飾部材をご用意しておりますので、必ずお客様がお住まいの地域用の商品をお選びください」の記載、および同ページが掲げる寒冷地域の市町村詳細(宮城県・福島県・栃木県・群馬県・山梨県・岐阜県・滋賀県・京都府・兵庫県)(2026年9月12日確認)
- 一般社団法人 日本窯業外装材協会(NYG)「窯業系サイディングのJIS(JIS A 5422)」——表5「性能」の耐凍結融解性の基準(表面の剝離面積率が2%以下で、著しい層間剝離がなく、かつ、厚さ変化率が10%以下)、および同表の注 d)「耐凍結融解性を表示する場合に適用する。」(2026年9月12日確認)
- ニチハ株式会社「優れた基材特性 モエンサイディングS」——押し出し製法により層間の引張強度が高く水の凍結時の体積膨張の圧力に抵抗できる旨、「耐凍結融解性試験(JIS試験方法)を600サイクル繰り返しても、表面の塗膜はく離や層間はく離、厚み変化はほとんどありません」の記載、および同ページの注記「JIS A 5422 窯業系サイディングの耐凍結融解性能:空気中(-20℃)での凍結と水中での融解を200サイクル繰り返す耐凍結融解性試験にて、表面のはく離面積率は2%以下、著しい層間はく離が無く、厚さ変化率10%以下に適合すること」、自社の曝露実験を「風雪や伝い水を防ぐ軒のない、厳しい曝露実験(自然環境での実験)」としている旨(2026年9月12日確認)
- 一般財団法人 日本建築総合試験所「建築用外装材料の耐凍害性試験(気中凍結水中融解法)」——耐凍害性の定義、「凍結状態が長く続く環境に比べると、凍結と融解の繰り返し回数が多いほど、凍害を受けやすくなり、吸水率の大きな材料ほど、凍結融解の影響を受けやすい傾向があります」の記載、試験の手順(試験片 幅100mm×長さ200mm×製品の厚さ、水中浸せき48時間、気中凍結 最低温度-20±2℃/水中融解 最高温度+10±2℃で1サイクル3〜6時間、測定項目6種)、関連規格「JIS A 1435 建築用外壁材料の凍結融解試験法」(2026年9月12日確認)
- 愛知県産業技術研究所 常滑窯業技術センター「JIS A 5209 陶磁器質タイルの改正について」(愛産研ニュース2008年8月号)——平成20年3月20日付けの改正内容、「耐凍害性試験に JIS A 1435 に規定する試験方法を導入する件」について気中凍結気中融解法及び気中凍結水中融解法が導入され回数は国際規格と同じ100回とされた旨、「旧 JIS では自然吸水率を測定してタイルの素地を分類し耐凍害性の目安としても利用されてきました。これに関しては新たに『吸水率の区分』が規定化され、また耐凍害性については耐凍害試験で評価することになりました」の記載、および「今回の改正で試験方法が見直された試験規格よる試験結果は、旧 JIS による試験結果との間で直接比較することが困難です」の注意(2026年9月12日確認)
- 火災保険の免責額・支払い条件・不正請求の危険についての出典は、外壁塗装に火災保険は使える?の「参考にした情報」に記載しています
最終確認日:2026年9月12日。JIS A 5422の内容は、ニチハが自社サイトで注記として示しているものを引用しています(JIS規格の本文そのものは有償で公開されているため、当サイトでは原文を掲載していません)。地域の区分はメーカーごとに定められたもので、法令上の寒冷地の定義ではありません。また、外壁材のメーカーが違えば区分も商品も変わります。ご自宅の外壁材の品番とメーカーで確かめてください。凍害かどうかの判断、補修か張り替えかの判断は、実際に現地を見た施工者にご相談ください。