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火災保険で雨樋は直せる?——分かれ目は「いくらの工事になるか」

雨樋について実際に多く聞かれているのは「使えますか」ではなく、「いくら下りますか」「いくらから適用されますか」のほうです。これには理由があります。雨樋は、災害で壊れたことがはっきりしていても、金額のところで結果が分かれやすい部位だからです。保険会社の公式説明にも、「20万円以上の損害が発生した場合に、損害額をお支払いいたします。損害額が20万円未満の場合、お支払いの対象外となります」と書かれた契約の形があります。このページでは、支払いの形が契約によって違うこと、雨樋の工事がその境目をまたぎやすい理由、そして対象になりやすい壊れ方とそうでない壊れ方を整理します。

このページの内容

いくら下りるのか——支払いの形が契約で違う

先に結論を書きます。保険金は「雨樋の交換費用の相場」から決まるのではありません。決まり方はこうです。

  • ①その被害を直すのにいくらかかるかを出すこれが損害額です。見積書がその根拠になります。
  • ②契約に書かれた自己負担のルールを当てるここが契約ごとに違い、同じ損害額でも受け取る額が変わります

②には大きく2つの形があります。名前は聞き慣れませんが、意味はまったく違うので、ここだけは押さえてください

「20万円以上でないと出ない」形

加入した時期や商品によっては、この形の契約があります。損害保険会社は、この20万円について「免責金額ではありません。20万円以上の損害が発生した場合に、損害額をお支払いいたします。損害額が20万円未満の場合、お支払いの対象外となります」と説明しています。同じ説明の中で挙げられている例がわかりやすいので、そのまま引きます。

損害額支払われる保険金
18万円0円
21万円21万円

3万円の差で、受け取る額が21万円変わります。これがいちばん誤解されているところです。「20万円が自己負担で、超えた分が出る」ではありません。届かなければ1円も出ず、届けば全額の対象になる——そういうルールです。

「超えた分だけ出る」形

もうひとつは、あらかじめ決めた自己負担額を損害額から差し引いて支払われる形です。保険会社の解説では「損害額が免責金額を超えた場合に超過分のみ補償されるもの」と説明され、選べる額としては自己負担なし・5万円・10万円あたりが挙げられています。自己負担を大きくすると、そのぶん保険料は下がります。

2つを並べると、雨樋のような金額の小さい被害では差が極端に出ます。

直すのにかかる費用20万円以上でないと出ない契約自己負担5万円の契約自己負担なしの契約
8万円0円3万円8万円
18万円0円13万円18万円
25万円25万円20万円25万円

※実際の支払額は損害の認定内容や契約の保険金額によって変わります。上の表は、支払いの形の違いだけを取り出したものです。

「相場でいくら下りますか」に答えが出せない理由

ここまで読むとわかるとおり、受け取る額は被害の大きさと契約の形の掛け算で決まります。同じ「雨樋が外れた」でも、1階か2階か、部分か全体か、そして契約がどちらの形かで結果が変わります。相場で答えが出る質問ではない、というのが正確なところです。

「いくらから適用されるか」は証券にしか書いていない

この質問の答えは、残念ながらインターネット上のどこにもありません。あなたの保険証券(または契約内容のお知らせ)にしか書かれていないからです。見るのは3か所です。

  • 1風災・雹災・雪災の補償が付いているか火災保険という名前ですが、雨樋の被害で使うのはこの部分です。保険料を抑えるためにこの補償を外している契約もあります。付いていなければ、どんなに強い風で壊れても対象になりません
  • 2自己負担がどちらの形で、いくらか「20万円以上でないと出ない」なのか、「◯万円を超えた分」なのか。証券には金額しか書かれていないことが多いので、数字だけ見て自己負担額だと思い込まないでください。わからなければ、証券番号を手元に置いて保険会社に電話で聞くのがいちばん早いです
  • 3建物の補償に何が含まれるか保険会社は建物の範囲について「建物についていて動かせないもの」も含まれると説明しています。雨樋は建物に固定された設備なので、通常はこちら側です。カーポートや物置は別扱いになる契約もあるため、あわせて確認しておくと安心です

新価(同じものを新しく作り直す金額)で払われる契約か、時価(そこから古くなったぶんを引いた金額)の契約かでも受け取る額は変わります。この違いは火災保険は使える?のページで表にしてあります。

雨樋の工事は、この境目をまたぎやすい

ここが、雨樋という部位のいちばん特徴的なところです。「20万円」という金額は、雨樋の工事にとって、越えることも越えないこともある微妙な高さにあります。

理由は雨樋そのものの値段ではなく、そこに手が届くかどうかです。

  • 脚立で届く範囲なら、工事は小さく収まる1階の軒先や、平屋の一部だけ。部材を替えて金具を留め直す作業で終わるので、金額は小さくなります。
  • 2階の高さになると、足場が必要になるそして足場は、雨樋の部材そのものより高くつきます。当サイトが公開相場を調べた範囲では、30坪前後の2階建てで足場だけで15〜25万円という帯です(見積書の内訳のページ)。

つまり同じ壊れ方をしていても、1階なら20万円に届かず、2階なら足場だけで届いてしまうということが起こります。「うちは出たのに、隣は出なかった」という話の正体は、たいていここです。

ここで順番を間違えないでください

「20万円を超えるように工事を大きくしましょう」という話には乗らないでください。必要のない範囲を足して金額を作るのは、保険金の不正請求です。責任を負うのは契約者本人であって、そう勧めた業者ではありません。正しい順番は、必要な工事を決める→その金額が結果として境目を超えるかどうかを保険会社が判断する、です。

そしてもうひとつ。損害額の根拠になるのは見積書です。その金額が妥当かどうかは、1社だけでは判断できません。とくに足場が絡むと総額が大きく動くので、複数社に同じ壊れ方を見てもらうと、どこまでを直すべき範囲と考えているかの違いまで並びます。保険の話をする前に、まず工事の見積もりを揃えておくのが結局いちばん早い進み方です。

対象になりやすい壊れ方、なりにくい壊れ方

金額の話の前に、そもそも原因で落ちる場合があります。線引きは「外から力が加わって壊れたのか、時間が経って傷んだのか」です。保険会社も「建物の経年劣化による破損とみなされれば保険金は下りません」と明記しています。

状態扱われ方
台風・強風で外れた、飛んだ、垂れ下がった⭕️対象になりえます。風災の代表例です
雪の重みで曲がった、折れた、金具ごと引きちぎれた⭕️対象になりえます(雪災の補償が付いている場合)
雹が当たって割れた、穴が開いた⭕️対象になりえます(雹災の補償が付いている場合)
飛来物が当たって破損した⭕️対象になりえます。何が当たったかを記録しておいてください
落ち葉やゴミで詰まっている対象外。壊れているのではなく、溜まっている状態です
掃除をしたい対象外。保険は壊れたものを直すためのもので、手入れの費用は出ません
金具の緩みや樋の垂れが、何年もかけて進んだ対象外になりやすい。原因が時間だからです
色あせ・変色・表面のざらつき対象外。機能が壊れているわけではありません

迷いやすいのが「詰まっていないのに、あふれる」です。この場合は、勾配が狂っているか、どこかが変形している可能性があります。変形の原因が災害なら対象になりえますし、金具の緩みが年数で進んだのなら対象外——つまり原因を見に行かないと判断できません。あふれる仕組みそのものは雨樋の詰まり・あふれのページにまとめました。

災害のあとは、家のまわりを一周して撮っておく

雨樋の被害は、あとから見ると経年劣化と区別がつきにくいのが厄介なところです。台風や雹のあとは、その日のうちに壊れた場所の全体・近く・地面に落ちた部材を撮っておいてください。日付が残る写真は、あとで原因を説明するときの材料になります。

一部が壊れただけなのに、全部交換になるとき

雨樋は建物をぐるりと一周しています。壊れたのが一部でも、業者から「同じ形の部材がもう作られていないので、その面はまとめて替えることになります」と言われることがあります。これは工事としては筋の通った話です。

ただし保険の側は、災害で壊れた範囲の復旧を対象にするという考え方をします。つまり、

  • 工事として必要な範囲直す以上ここまで替えないと収まらない、という技術的な判断。
  • 保険が対象と認める範囲災害によって壊れたのはどこか、という保険会社の判断。

この2つは一致しないことがあります。差額は自己負担になるので、「保険で全部替えられます」と言われたら、どこまでが保険の対象で、どこからが自己負担になる想定なのかを、工事を頼む前に書面で確認してください。災害のあとに増える訪問業者への向き合い方は屋根の点検商法のページにまとめてあります。

共済に入っている場合

「うちは全労済(こくみん共済)だけど雨樋の修理はできますか」という質問も多く見かけます。ここで大事なのは、損害保険会社の火災保険と、共済の火災共済は、支払いの考え方そのものが違うという点です。

共済には、修理費の実額を積み上げるのではなく「見舞」という形で決められた基準にそって支払う仕組みを持つものがあります。基準は組合ごとに定められていて、一定額を超える損害であることが条件になっている例もあります。これは共済が劣っているという話ではなく、保障を絞って掛け金を抑える設計になっているということです。問題になるのは、基準を知らないまま「修理費が全部出る」と思い込んでいた場合だけです。

加入している組合の名前と、手元の書類にある風水害等の欄を確認してください。共済と保険の違いは火災保険は使える?のページで詳しく整理しています。

連絡と見積もりの順番

雨樋は放っておくと外壁が濡れ続ける部位なので、保険の結論を待って何か月も止めるのは得策ではありません。順番はこうです。

  • ①壊れた状態を写真に撮る直したあとでは証明できません。ここだけは最優先です。
  • ②保険会社(共済)に連絡する請求は契約者本人が自分でできます。手数料はかかりません。
  • ③修理業者に見てもらい、見積書をもらうこれが損害額の根拠になります。ここで複数社に見てもらうと、範囲の考え方の違いが並びます。
  • ④保険会社の判断を待つ調査が入ることもあります。ここまでは工事を始めないでください。
  • ⑤工事をする結果として対象外になっても、雨樋は直しておくべき部位です。保険の判断と、直すかどうかの判断は分けて考えてください

なお、保険金を請求できる権利には期限があり、保険法では3年と定められています。数年前の台風を思い出したなら、まず保険会社に確認してみてください。

よくある質問

火災保険で雨樋交換費用はいくらですか?

金額が先に決まることはありません。受け取る額は「直すのにかかる費用(損害額)」に、契約ごとの自己負担のルールを当てて決まります。20万円未満は1円も出ない契約なら、小さい修理は対象になりません。まず見積書を取り、次に自分の証券を見る——この順番になります。

雨樋の火災保険はいくらから適用されますか?

契約によって違います。自己負担なしの契約なら少額でも対象になりえますし、「損害額20万円以上」という条件の契約なら、それに届くまでは出ません。その金額はあなたの保険証券に書かれています。

火災保険で雨樋が外れた場合、補償されますか?

外れた原因が台風・強風・雪・雹などの自然災害で、その補償が契約に付いていれば対象になりえます。逆に、金具の緩みが年数をかけて進んだ結果であれば対象外になりやすいです。見られているのは「外れていること」ではなく「なぜ外れたか」です。

雨樋の詰まりや掃除は火災保険の対象ですか?

対象外です。詰まりは壊れた状態ではなく、溜まった状態だからです。ただし詰まりを放置した結果ではなく、災害で変形したせいであふれているのなら話は別なので、原因を見てもらってください。

共済(全労済など)でも雨樋の修理はできますか?

加入内容によります。共済には修理費の実額ではなく、定められた基準にそって支払う仕組みを持つものがあります。「保険と同じように修理費が出る」とは限らないので、加入先に直接確認してください。

保険会社によって結果は変わりますか?

変わるのは会社の名前ではなく、契約の中身です。同じ会社でも、加入した年や選んだ自己負担額によって結果は違います。他人の「下りた・下りなかった」は参考になりません。比べるべきは自分の証券です。

申請は業者に代行してもらったほうがいいですか?

その必要はありません。請求は契約者本人が無料でできます。「保険が下りたら◯割」という契約でトラブルになる例が報告されています。詳しくは火災保険のページにまとめました。

参考にした情報

  • 損害保険ジャパン「よくあるご質問」(公式・風災の20万円について「免責金額ではありません。20万円以上の損害が発生した場合に、損害額をお支払いいたします。損害額が20万円未満の場合、お支払いの対象外となります」/損害額18万円は0円、21万円は21万円の例・2026年8月確認)
  • ソンポダイレクト(セゾン自動車火災保険)の解説記事(公式・「損害額が免責金額を超えた場合に超過分のみ補償されるもの」/フランチャイズ方式は「損害額が免責金額以上になれば、保険金額を上限に損害額の全額が支払われます」/自己負担額の選択肢は0円・5万円・10万円などが一般的/「建物の経年劣化による破損とみなされれば保険金は下りません」/建物の補償範囲には「建物についていて動かせないもの」も含まれる・2026年8月確認)
  • 東京海上日動火災保険(公式・台風などの自然災害で屋根や雨どいが破損した場合は補償されるが、経年劣化は対象外)
  • 足場15〜25万円の帯=当サイト見積書の内訳のページに出典を記載
  • 保険法第95条(保険給付請求権の消滅時効=3年)
  • 共済の支払いの仕組みおよび請求代行のトラブルの出典は火災保険は使える?のページを参照

最終確認日:2026年8月23日。補償の内容・支払いの可否は個々の保険契約(および共済の加入内容)によって異なります。実際の適用可否は保険会社・共済の判断によります。必ずご自身の契約先にご確認ください。

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