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コーキングのひび割れ——何年もつかの前に、割れ方を見れば原因が分かります

外壁の目地に入っているゴム状の材料(コーキング、シーリング)にひびが入ると、まず調べたくなるのが「何年もつのか」です。ところが調べても、10年と書くページ、20年と書くページ、30年と書くページが並んでいて、答えが定まりません。理由は、メーカーの数字の出し方にあります。同じ公式サイトでも、製品一覧には「驚異の耐用年数約30年」と書かれているのに、その製品の個別ページには年数の表記がありません。数字だけが一人歩きして、条件のほうが置いていかれます。このページでは、なぜ年数で決まらないのか、割れ方から何が読み取れるのか、そして「外壁にシリコンはダメ」と言われる本当の理由を、メーカー公式の説明をもとに整理します。

このページの内容全12項目

「何年もつ?」の答えが定まらない理由

先に、調べても答えが出ない理由のほうを書きます。理由は2つあります。

①同じメーカーのサイトでも、ページによって答え方が違う

高耐久をうたう製品として名前が挙がることの多いオート化学工業の「オートンイクシード」で、公式サイトを2か所見てみます。同じメーカーなのに、書き方が違います。

製品一覧のページ(オート化学工業 公式)

「驚異の耐用年数約30年。外装リフォームでも人気。」

その製品の個別ページ(同じ公式サイト)

「経年で流出する可塑剤を配合せずに優れた柔軟性を実現」「経年による硬質化を防ぎ『柔らかさを長時間維持』」——こちらには年数の表記がありません。

つまり「メーカーが年数を出していない」のではありません。出しています。ただし出ているのは一覧側の「約30年」という幅つきの1つの数字で、その条件——どんな目地で、どんな下地で、どう施工したときか——は同じ場所には書かれていません。

検索すると10年・20年・30年が並ぶのは、ここが原因の一つです。「約30年」だけが数字として一人歩きし、条件のほうは置いていかれます。そしてこの数字はこの製品についてのものです。ほかの製品に当てはめられるものではありません。

もう一つ、年数が決まらない理由は家の側にもあります。同じ製品でも、日射の当たる南面と、ほとんど当たらない北面では傷み方が違います。

2026年9月14日に当サイトが公式サイトの両方のページを取得して確認しました(一覧のページと、そこからリンクされている個別の製品ページ)。製品の表記は改訂されることがあります。見積書に製品名が書かれていれば、その製品の公式ページで最新の表記を確かめられます。

②規格の側にも「年数」ではなく「区分」がある

建築用のシーリング材には日本産業規格(JIS A 5758)があり、耐久性の区分が記号で示されています。建材メーカーが公開している技術資料には、区分として10030・9030・9030G・8020・7020・7010といった記号が並び、すでに市販されていないものもあると注記されています。主成分による区分も、シリコーン系・変成シリコーン系・ポリサルファイド系・アクリルウレタン系・ポリウレタン系・アクリル系と分かれています。

つまり「コーキング」とひとくくりに言っても、中身は等級も材質も違う製品の集まりです。何年もつかは、どの製品が入っているかで変わる——ここが答えの出ない理由です。

だから、聞くべきことが変わります

「何年もちますか」と聞いても、返ってくるのは相手の経験則です。かわりに「どの製品を使いますか」と聞いてください。製品名が答えられれば、そのメーカーの公式資料であなた自身が中身を確かめられます。見積書に製品名と色まで書いてくる会社が信用できるのは、この確認ができるからです(コーキングの打ち替えのページ)。

割れ方で、原因の見当がつきます

年数より、いま出ている状態のほうが役に立ちます。目地をよく見てください。どこが壊れているかで、話が変わります。

見えている状態読み取れること
目地の上にも塗料がのっている(先打ち)△見えているひびが、コーキングではなく塗膜のひびであることがよくあります。目地は動き続けるので、その上にのった塗膜のほうが先に割れます。中のコーキングは無事なことも多いので、これだけで「寿命だ」と判断しないでください
表面に細かいひびが浮いている材料の表面が硬くなってきた段階。まだ目地の中はつながっていることが多いので、すぐに水が入る状態とは限りません
目地の真ん中が縦に切れている材料そのものが伸びについていけなくなった状態。柔らかさが失われたサインです
目地の端が壁から離れている材料と壁の接着が切れた状態。材料の寿命とは別に、下地の処理や接着剤(プライマー)の側の問題であることもあります
痩せて、目地が凹んでいる中の成分が抜けて体積が減った状態。指で押すと硬く、弾力が戻りません
指で押すと、まだ弾力がある表面だけの変化であることが多く、慌てる状態ではありません

まず「目地は塗られているか」を見てください

見分け方は簡単です。目地の色が外壁と同じなら、その上に塗料がのっています(先打ち)。目地だけ色が違うなら、塗装のあとに打たれています(後打ち)。

塗られている場合、表面に見えているひびは塗膜が目地の動きについていけずに割れたものであることがよくあります。コーキングそのものが傷んでいるとは限りません。ここを混同すると、まだ働いている目地を「寿命だ」と早合点することになります。逆に、塗膜のひびの下でコーキングも切れていることもあるので、表面だけを見て決められないという意味でもあります。判断できるのは、目地に触れる位置まで上がって見た人だけです。

ここで大事なのは、「端が離れている」と「真ん中が切れている」は別の話だということです。前者は接着、後者は材料の柔らかさ。同じ「ひび割れ」でも、原因の在りかが違います。写真を撮っておいて、見に来た会社に「これは真ん中ですか、端ですか」と聞いてみてください。答え方で、目地を見ている会社かどうかが分かります。

放置すると、何が起きるのか

正確に書きます。目地のコーキングは、外壁材と外壁材のあいだをふさいでいる部分です。とくにALCの壁は目地の数が多く、しかも協会が「モジュラスの低いシーリング材を使う」よう指定しています(ALC外壁の塗装)。とくにサイディング(板を張って作った壁)では、板と板のすきまを埋めているのがこの材料で、雨を止める線の一部を受け持っています(サイディング外壁のページ)。

ですから目地が完全に切れている、端が浮いて口が開いている——この状態を長く放っておくのは勧められません。一方で、表面に細かいひびが浮いているだけの段階で、すぐ危険が迫っているわけでもありません。

境目は「開いているかどうか」です。ひびの向こうに黒い線が見える、すきまに紙が入りそう——そこまで来ていたら、幅を測るより先に見てもらってください。

目地だけを直すか、塗装と一緒にやるか

ここは判断が分かれるところですが、足場を組む工事は、まとめたほうが合理的です。目地の打ち替えにも塗装にも足場が要るので、別々にやると足場代を2回払うことになります。逆に、目地が切れているのに塗装だけを済ませると、水の入り口を残したまま表面だけを新しくすることになります。時期が近いなら、まとめて見積もりを取るほうが先に進みます。

「外壁にシリコンはダメ」の本当の理由

ホームセンターに行くと「シリコーンシーラント」が並んでいます。これを外壁の目地に使ってよいか——よく検索されている質問です。答えははっきりしていて、メーカー自身が公式に説明しています。

メーカー公式(シーリング材メーカーのよくある質問)

質問「シリコーンの上に塗装はできますか?」

回答「シリコーン系シーリング材には塗装できません。塗装する場合は、変成シリコーン系のシーリング材をお薦めします。(推奨塗料は水性塗料のみです)」

ここを読み違えないでください。シリコーン系が悪い材料だという話ではありません。耐水性の高さから浴室やガラスまわりで広く使われている材料です。問題は上に塗料がのらないこと——ただそれだけです。

  • 塗装しない場所なら問題にならない浴室、キッチン、ガラスまわりなど。
  • 塗装する外壁の目地では困るそこだけ塗料がはじかれる、あるいは付いてもすぐ剥がれる。次の塗り替えのときに、その目地が丸ごと問題になります。

だから「外壁にシリコンはダメ」と言われるわけです。性能の優劣ではなく、あとから塗るかどうかの話だと理解しておくと、売り場で迷いません。外壁で塗装を前提とする目地には、メーカーが薦めているとおり変成シリコーン系が使われます。つまりこれは「ダメな材料がある」という話ではなく、「材料の選び方」の話です。

「NB」と書いてあれば塗れる、ではありません

売り場やカタログで「NB」「ノンブリード」という表示を見かけます。ここも誤解されやすいところです。NBは「塗装できる」という意味ではありません。可塑剤(材料を柔らかく保つ成分)が染み出して塗膜を汚さない、という意味です。

実際、コニシの変成シリコーン系のNB製品を公式の商品情報で見ると、特長欄に「ノンブリードタイプ」と「塗装可」が別々の項目として並んで書かれています。2つは別の性質だということです。

ですから、選ぶときの見方はこうなります——「NBだから大丈夫」ではなく、「変成シリコーン系であること」と「塗装可と書かれていること」の両方を見る。

そして、その「NB」という表示に、実は公的な統一規格がありません。この話は次の章でします。

すでにシリコーン系で埋めてしまった場所があるなら

塗装を頼むときに必ず伝えてください。黙っていると、塗ったあとにその部分だけ不具合が出て、原因探しから始まることになります。基本は撤去して打ち直すことになりますが、それだけが方法ではありません。

塗料をはじく面に塗るための下塗り材として、「逆プライマー」と呼ばれる製品が市販されています。ただし使える相手が製品によって違い、公式に「純シリコーン系には使用不可」と明記しているものもあれば、シリコーン用をうたう製品もあります。自分で買って塗る前に、施工する会社に相談してください。ここを間違えると、上に塗った塗料ごとやり直しになります。

ブリード現象——目地の上が、帯のように汚れてくる

塗り替えから何年か経って、目地の位置に沿って、そこだけ黒っぽく汚れてくることがあります。壁全体が汚れたのではなく、目地の線がそのまま浮き出るように見える——これがブリード現象による塗膜の汚染です。ひび割れとは別の不具合ですが、原因は同じ「可塑剤」にあります。

正体は可塑剤——輪ゴムがトレーにくっつくのと同じことです

日本シーリング材工業会が住宅の外壁改修向けに出しているガイドは、この現象を身近な例で説明しています。

日本シーリング材工業会「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」

「可塑剤は製品に柔軟性をもたせるために配合される材料で……この可塑剤には不思議な性質があり、可塑剤が配合された製品の表面にモノが触れていると、触れているモノに移行することがあります。例えば、輪ゴムや消しゴムをプラスチックのトレーに置いたままにしておくと、くっついてしまったという経験をされたことがあると思います。これがブリード現象と呼ばれる可塑剤の移行です。」

消しゴムを机の上に置きっぱなしにして、跡がついた——あの現象です。シーリング材の中の柔らかくする成分が、触れているものへ染み出していく。外壁では、触れている相手がその上に塗られた塗膜になります。

汚れているのは塗料ではなく、柔らかくなった塗膜に付いた埃です

同じガイドは、外壁で何が起きるかをこう書いています——「従来の一般的なシーリング材には可塑剤が含まれていますが、上記と同じく塗膜と接しているとブリード現象が発生して、塗膜を柔らかくし、そこに埃などが付着して塗膜汚染の原因になります」。

つまり順番はこうです。

  • 可塑剤が、上の塗膜へ移っていく目地のシーリング材から、接している塗膜へ染み出します
  • その部分の塗膜が、柔らかくなる可塑剤が移った場所だけ、性質が変わります
  • 埃がくっついて、離れなくなる柔らかくなった面は、空気中の埃を抱え込みます
  • 目地の上だけが、帯のように黒ずむ壁の他の場所はきれいなのに、目地の線だけが浮き出て見えます

ここが分かると、対処のしかたも見えてきます。洗っても戻りにくいのは、汚れが「乗っている」のではなく「くっついている」からです。そして塗り直すだけでは、下の目地が同じ材料のままなら、また同じことが起きます。

「ノンブリード」に、公的な統一規格はありません

ここが、売り場でもカタログでも書かれていない事実です。同じガイドが、正直にこう書いています。

同ガイドより

「実際に市場でも多数のノンブリードタイプシーリング材が流通していますが、ノンブリード性能に関する統一的な規格は現時点ではありません。したがって、製品メーカーの自主的な性能基準となっているのが現状です。そうした中では、長期に渡る多くの実績と塗料との相性試験を継続して行っているメーカーの製品を選択することが必要でしょう。」

「NB」という表示は、どこかの試験に合格した証ではありません。メーカーが自社の基準で名乗っているものです。だからといって意味がないわけではなく、業界団体自身が「実績と、塗料との相性試験を続けているメーカーの製品を選ぶ」という選び方を示しています。

施主として使える形にすると、こうなります。「ノンブリードですか」だけで終わらせず、「どのメーカーの、どの製品ですか」まで聞く。製品名が出てくれば、その先はメーカーの公式情報で確かめられます。打ち替えのページで「見積書に製品名を書いてもらう」と書いているのは、こういう場面のためです。

ノンブリードの効きめは、汚れ対策だけではありません

もうひとつ、あまり語られていない利点があります。同ガイドは「ノンブリードタイプは、部材への可塑剤の移行(可塑抜け)が少ないことから、長期に渡る柔軟性の維持が期待出来ることもメリットのひとつとなります。この柔軟性の維持は、接着耐久性にも大きく影響を及ぼすので、この効果は見過ごすことが出来ません」と書いています。

このページの最初で書いた「可塑剤が抜けると硬くなり、硬くなると切れる」という話と、ここでつながります。可塑剤が外へ出ていかないということは、材料が柔らかいままでいられるということで、それはひび割れにくさそのものでもあります。ノンブリードは「見た目のための仕様」ではありません。

増し打ちをすると、古い材料の可塑剤が上がってきます

もうひとつ実務的な話を。古いシーリングの上に新しいものを重ねる増し打ちのとき、同ガイドは不具合のひとつとしてこう挙げています——古い材料がノンブリードタイプでない場合、そこに含まれる可塑剤が、増し打ちされた新しいシーリング材に移行・透過して、その上に塗膜があるとブリード汚染が発生することが多い。

新しいほうをノンブリードにしても、下から通ってくるということです。これは「増し打ちは持ちが短い」とは別の理由で、増し打ちを避けたほうがよい根拠になります。打ち替えと増し打ちの使い分けは打ち替えのページにまとめました。

国の仕様書も、場所によってノンブリードを指定しています

公共の工事でも、この現象は織り込み済みです。国土交通省の公共建築改修工事標準仕様書は、被着体の組み合わせごとにシーリング材の種類を決めた表を持っていて、その注記のひとつが「可塑剤などの配合成分がシーリング材表面に発生しないノンブリードタイプとする」です。押出成形セメント板どうしの目地で、表面に塗装をする場合——つまり「上に塗る」ときに指定されています。

読み取れることは単純です。塗る目地にはノンブリード。戸建てのサイディングも、目地の上から塗る工事であることは同じです。

※これは国が発注する工事の仕様であって、戸建て住宅の見積書に同じ表記を求められるという話ではありません。ここで読み取ってほしいのは、塗装する目地でノンブリードが選ばれるのは、業者の好みではなく理由のある選択だという一点です。

自分の家がブリードかどうか、見分けるには

見え方考えられること
目地の線に沿って、そこだけ帯状に黒いブリードによる塗膜汚染の可能性。壁の他の場所はきれいなのに、目地だけ浮き出て見えるのが特徴
壁全体がうっすら黒い、北面だけ緑がかっているふつうの汚れやコケ・カビ。洗って落ちることが多い(コケ・カビのページ)
雨が当たる線に沿って黒い筋雨だれの汚れ。目地とは位置が一致しません
目地の上が黒く、しかも触るとべたつく塗膜が柔らかくなっている状態。ブリードの可能性が高くなります

そして、いちばん大事なことを書きます。ブリードで汚れているなら、それは「洗って直すもの」ではありません。次の塗り替えのときに、目地の材料ごと入れ替える(打ち替える)のが本筋です。上から塗り重ねても、下の材料が同じなら同じことが起こります。

逆に言えば、次の塗り替えは、この汚れを繰り返さないための一回にできます。見積もりを取るときに「目地の上が汚れてくるのが気になっている」と伝えてください。その一言に対して、材料の名前で答えられる会社かどうかで、見立ての深さが分かります——「洗えばきれいになりますよ」で終わる会社と、「ノンブリードの製品に替えましょう」と言う会社では、5年後の壁が変わります。

塗ったあとに割れて見えるとき

「塗り替えたばかりなのに、目地に細かいひびが見える」——これも多い相談です。原因はいくつかありますが、目地の上に塗料をのせる工法(先打ち)では、塗膜が目地の動きについていけずに細かいひびが入って見えることがあります。これは順番の選び方の話で、コーキングの打ち替えのページで扱っています。

コーキングの乾燥時間——「塗れるようになるまで」には上限もあります

「コーキングの乾燥時間はどれくらいか」もよく調べられています。打った直後に触れるかどうかは製品ごとに違い、カートリッジや製品カタログに書かれている数字を見るしかありません。ただ、外壁塗装で工程に効いてくるのは「打ってから塗れるようになるまで」の日数のほうです。ここはメーカーが目安を公開しています。

メーカー公式(変成シリコーンに塗装する場合)

「水性塗料の場合、春・夏季・秋季は1日後、冬季は4日後から、いずれも7日以内を目安として施工を行ってください。表面の皮膜がある程度厚くなれば塗装可能ですが、その時間は湿度、温度によって異なります。油性塗料は、塗料の硬化不良を起こすことがありますので、使用をお薦めいたしません」

注目してほしいのは「7日以内」という上限があることと、季節で待つ日数が変わること、そして油性塗料は薦められていないことです。早すぎても遅すぎてもいけない——工程の組み方に条件があるわけです。

施主にできるのは、この工程を管理しろと言うことではありません。「うちは先打ちですか、後打ちですか」と一言聞いておくだけで十分です。答えられる会社は、その先の条件も分かって組んでいます。

1か所でも壊れているなら、全体を検討したほうがいい

「切れているのは1か所だけだから、そこだけ直せないか」——当然の発想です。ただ、目地は家を長持ちさせるうえで非常に重要な部分なので、ここは考え方を先に書きます。

どこかでトラブルが出ているなら、全体の打ち替えを前提に考える

理由は3つあります。①同じ時期に、同じ材料で、同じ職人が打った目地は、同じように寿命を迎えます——1か所で出たということは、ほかの場所でも進んでいる可能性が高いということです。②見えている場所がすべてではありません——地上から見える範囲と、足場から見える範囲は別物です。③少しだけの工事は、そもそも割高です——足場の費用は「1か所」でも「全部」でもほとんど変わりませんし、職人が現場に入る手間も同じようにかかります。1メートルあたりで見ると、部分補修のほうが高くつきます。ケチって部分補修で済ませ、数年後にまた足場を組むことになれば、なおさらです。

部分的な補修が成り立つのは、その場所固有の理由がはっきりしている場合です。何かをぶつけた、そこだけ後から手が入っている、といったケース。「年数で傷んできた」側の症状なら、1か所直しても翌年は隣が切れます。

業者が全体の打ち替えを勧めてきたとき、それは多くの場合、売りつけようとしているのではなく、この理屈です。もちろん確認はしてください——「いま切れているのはどこか」「打ち替えと増し打ちのどちらを想定しているか」を見積書に書いてもらえば、考え方が見えます。書き方の見分けはコーキングの打ち替えのページにまとめています。

自分で直せるか——ホームセンターのコーキングで埋める前に

「外壁コーキング 自分で」「DIY 増し打ち」「応急処置」——このあたりもよく検索されています。割れた目地を、とりあえず自分で塞げないかという問いです。

一時的に塞ぐこと自体はできます。ただ、材料を選ぶ前に知っておいてほしい落とし穴が3つあります。

  • ①「シリコン」と書かれたものを選ばない——シーリング材メーカーのFAQは、はっきりこう書いています。「シリコーン系シーリング材には塗装できません。塗装する場合は、変成シリコーン系のシーリング材をお薦めします。」次の塗り替えのときに、塗料が乗らない目地を自分で作ってしまうことになります。理由は上の章に書きました。買うなら「変成シリコーン系」です。
  • ②プライマーは、別の製品です——メーカーは、シーリング材とは別に専用のプライマー(接着を助ける下塗り)を製品として出しています。たとえばコニシの変成シリコーン系シーリング材の商品情報には、関連商品として「シールプライマー#7N」「シールプライマー#7」が並んでいます。カートリッジ1本を買えば終わる作業ではない、ということです。
  • ③自分でやるのは、たいてい「増し打ち」になります——古い目地を取らずに、上から足すやり方です。費用の章で書いたとおり、打ち替え(取ってから入れ直す)とは手間がまるで違います。古い材料の上に薄く乗るだけなので、下の傷んだ目地はそのまま残ります。
1本でどれくらい打てるか——メーカーの数字で見る

同じコニシの製品(変成シリコンコークNBクイック・333ml)は、標準塗布量を「12〜13m/本(5×5mm目地)」としています。幅5mm・深さ5mmの目地なら、1本で12〜13mです。

幅も深さも倍(10×10mm)になると、断面は4倍なので、1本で3m強しか打てない計算になります。目地の太さを見ずに本数を決めると、途中で足りなくなります。

なおこの製品は、同社の商品情報で「建築現場施工用」に分類されています。

だから考え方はこうです。応急処置で塞ぐなら、変成シリコーン系を選び、次の塗り替えまでのつなぎと割り切る。そして年数で傷んできた目地なら、1か所塞いでも翌年は隣が切れます(1か所でも壊れているなら)。

いま切れているのがどこか、ほかにも進んでいる場所がないかは、足場が無いと見えない面もあります。何社かに見てもらうと、「打ち替えか、増し打ちか」と「何メートル分か」が見積書に並ぶので、自分で塞ぐのとどちらが割に合うかを比べられます。

費用は、壁の面積では決まりません

コーキングの費用を「30坪でいくら」で調べても答えが揃わないのは、この工事が壁の面積ではなく、目地の長さで積まれるからです。同じ坪数でも、板の割り付け方や窓の数が違えば、目地の総延長は変わります。

さらに、金額は打ち替え(古いのを取ってから入れ直す)か、増し打ち(上から足す)かでも変わります。手間がまるで違うからです。

ぬりごろは、見積書の中で施主が自力で妥当性を検証できるのは足場くらいだと考えています(見積書の内訳のページ)。シーリングは単価そのものより、「どこを、どちらの方法で、何メートル」が書かれているかで見てください。書かれていれば、他社の見積書と同じ土俵で比べられます。

そして、この判断がいちばん割れるのがシーリングです。同じ壁を見ても、打ち替えと増し打ちのどちらを提案するかは会社によって変わります。だから何社かに同じ壁を見てもらうと、シーリングの扱いで差がはっきり出ます。見積書に「打ち替え」「増し打ち」のどちらで何メートル分と書かれているか——そこを並べて比べてください。金額の差より、この差のほうが数年後に効いてきます。

見積書の「シーリング工事 一式」——国の仕様書では、4つの工法に分かれています

「シーリング工事」という言葉で調べると、出てくるのはビルやマンションの大規模修繕を請け負う会社ばかりです。戸建ての見積書に同じ言葉が一行だけ載っていて、何が含まれているのか分からない、という相談があります。

この言葉は現場の符丁ではなく、国が定めた正式な工事の区分名です。国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」は、防水改修工事の章で「(2) シーリング工事」という項目を立て、仕上がりに求めることを3つだけ書いています。

  • 「シーリング工事に用いる材料は、所定のものであること。」
  • 「シーリング部は、所定の形状及び寸法を有し、所要の仕上り状態であること。」
  • 「シーリング部は、漏水がないこと。」

言い換えれば、指定した材料を、指定した形と寸法で入れて、水が入らないこと。この3つだけです。ではその中身はどう決まるのか——同じ仕様書が、次の表で工事そのものを4つに割っています。

表3.1.2 シーリング改修工法の種類及び工程(国土交通省「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」より)

工程シーリング
充填工法
シーリング
再充填工法
拡幅シーリング
再充填工法
ブリッジ工法
1 既存シーリング材の除去—○○—
2 既存目地の拡幅——○—
3 下地処理○○○○
4 エッジング材の取付———○(注)
5 新規シーリング材の充填○○○○
6 エッジング材の撤去———○(注)

(注)エッジング材を使用した場合。工法の種類は「特記による」——つまり設計図書で指定します。仕様書は「工程は、種類に応じて、○印のある工程を行う」としています。

読むところは1行目だけです。古い目地を取るか取らないかが、工法の名前そのもので決まっています。取る側(再充填・拡幅再充填)と、取らない側(充填・ブリッジ)。「シーリング工事 一式」の一行では、4つのどれなのかが分かりません。そして手間が違うのは、この1行目です。

この仕様書に「増し打ち」という工法はありません

全文を検索しても、「増し打ち」は一度も出てきません。古い目地を残したまま上から足す、という工程が表に立っていないということです。

取らない側の2つも、増し打ちとは違うものです。充填工法は除去の工程を持たない代わりに下地処理から始まります。ブリッジ工法は、古いシーリング材の上にボンドブレーカー(くっつかないテープ)を、既存が完全に隠れるように張ってから、その上に橋を架けるように新しい材料を打つ工法です。古い目地とわざと縁を切る点で、上に足すだけの増し打ちとは設計思想が逆になります。

戸建ての見積書にある「打ち替え」は再充填工法に近く、「増し打ち」に相当する工法は、国の改修工事には用意されていません。打ち替えと増し打ちの違いは別ページにまとめています。

同じ仕様書から、戸建てでもそのまま使える3つの線

公共の工事用に書かれた文書ですが、材料と天気の話は家の大小で変わりません。施主が日程を考えるときの物差しになる数字が3つあります。

  • 壁の温度が5℃以下、または50℃以上になりそうな日は中止——「プライマーの塗布及び充填時に被着体が、5℃以下又は50℃以上になるおそれのある場合は、作業を中止する」。ただし仮囲いやシート覆いで保温・遮熱をするなら、この限りではないとも書かれています。気温ではなく被着体(壁そのもの)の温度である点に注意してください。真夏の西面は、気温が35℃でも壁は50℃を超えます。
  • 降りそうな日は、そもそも古い目地を剥がさない——「降雨等のおそれがある日は、既存の防水層及び外部に面するシーリング材の撤去等の作業を行わない」。撤去した日に打ち切れないと、目地が開いたまま雨に当たります。止めるべきは「打つ作業」より先に「剥がす作業」、という順番です。
  • 打つのは、塗る前が原則——「充填は、原則として、仕上げ塗材等の施工前に行う」。国の既定は、戸建てでいう先打ちのほうです。後打ちが誤りという意味ではなく、既定から外すなら理由があるはず、という読み方をしてください。

三面接着は、いつでも手抜きというわけではありません

「目地は二面接着でなければいけない」と書かれた記事を読んで、サッシまわりの施工を疑ってしまう方がいます。仕様書はこう書き分けています。

「目地深さが所定の寸法の場合は、目地底にボンドブレーカーを用いて二面接着とする。ただし、動きの小さい打継ぎ目地、ひび割れ誘発目地、建具枠回り等の場合は、三面接着とすることができる。」

目地は、板と板が伸び縮みするぶんを引き受ける部分です。両側の面だけで接着していれば、材料は自由に伸び縮みできます。目地の底までくっついてしまうと(三面接着)、動いたときに逃げ場がなく、真ん中から切れます。だから動く目地は二面接着——ここまでは、よく書かれているとおりです。

その逆に、ほとんど動かない目地と、窓やドアの枠まわりは三面でよい、と国は書いています。枠まわりは奥行きが浅く、無理に底を切ると材料の厚みが確保できないからです。日本シーリング材工業会の住宅向けの手引きも、窓枠回りについては「撤去が難しく、撤去した場合に却って漏水の原因を誘発することにもなりかねない」として、ゴム弾性が健全なら無理に撤去せず、厚みをできるだけ確保するように施工してくださいとしています。

底を切る道具は2つあり、役割が違います

バックアップ材は、目地が深すぎるときに底に詰めて、シーリング材の深さを所定の寸法に合わせるものです。仕様書は寸法まで決めていて、裏面に接着剤のついているものは目地幅より1mm程度小さいもの、ついていないものは目地幅より2mm程度大きいものとされています。太いほうを押し込むのは、抜けてこないようにするためです。

ボンドブレーカーは、深さはちょうどいいが底にくっついてほしくないときに張る、紙・布・フィルムの粘着テープです。目的は同じ「二面接着にすること」で、使い分けは目地の深さで決まります。

国の工事では、打つ前に「本当にくっつくか」を試しています

意外に知られていない条文があります。「外部に面するシーリング材は、施工に先立ち、接着性試験を行う」。同じ材料の組合せで実施した試験成績書があれば省略できますが、既定は試験をするほうです。

しかも既定の方法は、研究所に送る試験ではありません。簡易接着性試験といって、現場でできます。

  • 被着体は「実際の部材又は化粧見本」——つまり、その家の壁か、同じ仕上げの見本板
  • マスキングテープを張ってプライマーを塗り、角形バックアップ材を取り付けてシーリング材を充填する
  • 弾性が出るまで硬化させたら、180°の方向に引っ張る
  • 「シーリング材が凝集破壊又は薄層凝集破壊した場合に、合格とする」

言い換えると、材料自身がちぎれれば合格、壁からきれいに剥がれてきたら不合格です。剥がれるということは、その壁とその材料の組み合わせでは、くっついていないということなので。

戸建ての塗り替えでここまでやる会社は、まずありません。ただ、道具はマスキングテープとバックアップ材だけで、費用はほぼかかりません。前回の塗装が残っている壁や、外壁材のメーカーが分からない家——つまり「何の上に打つのか」がはっきりしない現場なら、「うちの壁で一度試せますか」と聞いてみる価値はあります。断られたとしても、その理由の説明で相手の力量が見えます。

2成分形(現場で基剤と硬化剤を練り混ぜるタイプ)については、仕様書は「1組の作業班が1日に行った施工箇所を1ロットとして、各ロットごとにサンプリングを行う」とも定めています。練り混ぜ比率が狂えば硬化しないので、その日の分を採っておく、という趣旨です。

この仕様書に、窯業系サイディングは一度も出てきません

ここまで国の仕様書を引いてきましたが、戸建てでいちばん多い外壁材は、この文書に載っていません。全文を通して「窯業」は0回です。材料を決める表3.7.1の被着体も、金属・コンクリート・ガラス・石・タイル・ALC・押出成形セメント板・樹脂製建具・プレキャストコンクリートで、窯業系サイディングの行そのものがありません。公共の建物を前提にした文書だからです。

ただし「国の文書のどこにも無い」わけではありません。新築の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」のほうには1か所だけ出てきます——建具まわりの条で「窯業系サイディング『公共建築木造工事標準仕様書』20章3節[サイディング工事]に取り付ける建具は、建具の下枠の水切りをサイディング表面から30mm程度出す。」。参照先が「木造」の仕様書である点が、そのまま答えになっています。窯業系サイディングは、国の文書のなかでは木造の側で扱われています(2026年9月14日に当サイトが両方のPDFを取得して確認。改修の仕様書は全文で「窯業」0回)。

だから、「シーリング工事」で検索して出てくるのがビル・マンションの会社ばかりなのは、自然なことでもあります。言葉のほうが、もともと大きな建物の側から来ています。

窯業系サイディングの目地を正面から扱っているのは、日本シーリング材工業会の「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド」のほうです。ここに、戸建ての目地が何をしているかの実測があります。

戸建ての目地は「毎日伸び縮みしながら、じわじわ広がっていく」

実物大の窯業系サイディングを屋外に5年間置いて目地幅を測った報告(2016年 日本建築学会大会発表論文、カネカほか)が、この手引きに載っています。

  • 設置から4年後に、目地幅は初期より約7%広がっていた(明色で約7%、暗色で約6%)
  • その間、1日のうちに±約4%の伸縮が毎日繰り返されている
  • 1日の変位量は季節で違い、冬季は大きく約8%、夏季は小さく約3%

広がるのは、サイディングに含まれる水分が乾き、セメント分が炭酸化して板そのものが縮むためだと説明されています。ビルの金属パネルのように「同じ率で伸びて縮む」動きとは形が違います。

工業会は、この手引きで住宅用シーリング材の初期の不具合は「施工後3年以内に集中して発生する」とも書いています。打ち替えてから3年が、ひとつの見どころということです。

材料の選び方も、住宅側は別に整理されています。工業会の適材適所表では、窯業系サイディングのパネル間目地・窓枠回り目地に使うのは変成シリコーン系(サイディング用のもの)で、2成分形のポリウレタン系は窯業系サイディング目地には適用外とされています。目地幅と深さについても、「幅10mmで深さ8mm以上を標準とする」との見解が示されています。

そして、動きが大きい目地に必要なのは低モジュラス(LM)——引っ張られたときに戻ろうとする力が弱い、よく伸びるタイプです。手引きは「窯業系サイディングの目地には低モジュラスタイプを選定することが重要です」としています。耐久性の区分の記号とは別の話なので、混ぜないでください。

見積書を前にして聞く3つ

ここまでの話を、そのまま3つの質問にできます。

  • 「この行は、古い目地を取りますか、取りませんか」——表3.1.2の1行目です。取るなら何メートル分か、取らない場所があるならどこか。
  • 「打つのは、塗る前ですか、後ですか」——国の既定は塗る前。後にする場合は、その理由を聞いてください。
  • 「使う製品名と、専用プライマーの品番を教えてください」——プライマーはシーリング材メーカーの指定品で、塗料用のシーラーとは兼用できません。品番が即答できるかどうかで、その会社が製品を決めて見積もっているか、金額だけ先に置いているかが分かります。

3つとも、答えが書面に残れば他社と並べられます。金額の高い・安いより、この3つが揃っているかどうかで比べるほうが、数年後の結果に効きます。同じ壁を何社かに見てもらうと、この3つの答えがそのまま並びます。

よくある質問

外壁のコーキングのひび割れは、自分で直せますか?

一時的に塞ぐことはできます。ただし3つの落とし穴があります。

①シリコーン系を選ばない——メーカーのFAQは「シリコーン系シーリング材には塗装できません」としています。②プライマーは別の製品です。③自分でやるのはたいてい増し打ちで、下の傷んだ目地は残ります。応急処置と割り切り、年数で傷んだ目地なら全体の打ち替えを検討してください。

外壁のコーキングは何年くらい持ちますか?

製品と環境で変わるため、年数では答えが出ません。メーカー自身も、製品ページで年数ではなく「柔らかさを長時間維持」といった性質で説明しています。規格の側にも耐久性の区分が記号で定められており、製品ごとに等級が違います。年数を聞くより、使う製品名を聞いて公式資料を見るほうが確実です。

外壁のコーキングがひび割れるまで何年かかりますか?

同じ理由で、年数では決まりません。ただし目安になる見方はあります——目地を指で押して弾力があるか、真ん中が切れていないか、端が壁から離れていないか。この3つは素人の目でも確認できます。

外壁にシリコンコーキングはダメですか?

塗装する外壁の目地には向きません。メーカーが公式に「シリコーン系シーリング材には塗装できません。塗装する場合は、変成シリコーン系のシーリング材をお薦めします」と説明しています。材料として劣っているという意味ではなく、上に塗料がのらないという性質の話です。浴室やガラスまわりでは適した材料です。

外壁のコーキングがひび割れた場合、放置してもいいですか?

開いているかどうかで分けてください。表面に細かいひびが浮いているだけなら、すぐに水が入る状態とは限りません。真ん中が切れて口が開いている、端が壁から浮いているなら、そこは雨を止める線が切れている状態です。早めに見てもらってください。

外壁塗装のあとにコーキングがひび割れるのはなぜですか?

目地の上に塗料をのせる工法では、塗膜が目地の動きに追従できず、細かいひびが入って見えることがあります。この場合、割れているのは塗膜であって、中のコーキングは無事なことも多い点に注意してください。また、シーリングを打ってから塗るまでの日数にも条件があり、メーカーは水性塗料で「春・夏季・秋季は1日後、冬季は4日後から、いずれも7日以内」を目安とし、油性塗料は硬化不良を起こすことがあるため薦めていません。まずは先打ちか後打ちかを確認してください。

コーキングとシーリング、呼び方が違うのはなぜですか?

現場ではほぼ同じ意味で使われています。呼び分けの経緯はコーキングの打ち替えのページで扱っています。見積書でどちらの言葉が使われていても、意味の違いを気にする必要はありません。

シーリング工事とは、どんな工事ですか?

外壁の板と板のすき間(目地)に、水と空気を止めるための材料を入れる工事です。国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書」も「シーリング工事」という区分名を使っていて、求めることを3つだけ挙げています——所定の材料を使うこと、所定の形状と寸法で所要の仕上り状態であること、漏水がないこと。同じ仕様書は改修の工法を4つに分けていて、古い目地を取る側(再充填・拡幅再充填)と、取らない側(充填・ブリッジ)に分かれます。見積書の「シーリング工事 一式」の一行では、このどれなのかが分かりません。

見積書に「シーリング工事 一式」としか書かれていません。何を聞けばいいですか?

3つ聞いてください。①この行は古い目地を取りますか、取りませんか(取る・取らないで手間がまるで違います)②打つのは塗る前ですか、後ですか(国の仕様書は「充填は、原則として、仕上げ塗材等の施工前に行う」としています)③使う製品名と、専用プライマーの品番はどれですか(プライマーはシーリング材メーカーの指定品で、塗料用のシーラーとは兼用できません)。この3つが書面に残れば、他社の見積書と同じ土俵で比べられます。

サッシまわりが三面接着になっていました。手抜きですか?

そうとは限りません。国土交通省の仕様書は「目地深さが所定の寸法の場合は、目地底にボンドブレーカーを用いて二面接着とする」としたうえで、「ただし、動きの小さい打継ぎ目地、ひび割れ誘発目地、建具枠回り等の場合は、三面接着とすることができる」と書き分けています。窓やドアの枠まわりは奥行きが浅く、無理に底を切ると材料の厚みが確保できないためです。日本シーリング材工業会の住宅向けの手引きも、窓枠回りは撤去が難しく、かえって漏水の原因を誘発しかねないとして、厚みをできるだけ確保する施工をすすめています。

参考にした情報

  • シーリング材メーカーの公式よくある質問(建築用)——「シリコーン系シーリング材には塗装できません。塗装する場合は、変成シリコーン系のシーリング材をお薦めします。(推奨塗料は水性塗料のみです)」/変成シリコーンへの塗装時期について「水性塗料の場合、春・夏季・秋季は1日後、冬季は4日後から、いずれも7日以内を目安として施工を行ってください。表面の皮膜がある程度厚くなれば塗装可能ですが、その時間は湿度、温度によって異なります。油性塗料は、塗料の硬化不良を起こすことがありますので、使用をお薦めいたしません」(セメダイン株式会社・2026年8月確認)
  • オート化学工業「オートンイクシード」製品ページ(公式・「経年で流出する可塑剤を配合せずに優れた柔軟性を実現」「経年による硬質化を防ぎ『柔らかさを長時間維持』」/主な用途として窯業系サイディングの外装目地などを記載。個別の製品ページに耐用年数の年数表記はありません。一方、同じ公式サイトの製品一覧には「驚異の耐用年数約30年。外装リフォームでも人気。」と記載(2026年9月14日に当サイトが両方を取得して確認)・2026年8月確認)
  • 小川彰(カネカ)・安藤克浩・矢野理子・幸光新太郎「窯業系サイディングのシーリング目地の動きに関する研究」(2016年 日本建築学会大会発表論文。上記ガイドの参考2に抜粋が掲載)——実物大試験体を5年間観察し、4年後に目地幅が初期比で約7%(明色)・約6%(暗色)拡大、日間の目地変位量は±約4%の範囲、冬季は約8%・夏季は約3%
  • 建築用シーリング材の日本産業規格(JIS A 5758)の耐久性区分(10030・9030・9030G・8020・7020・7010/一部は現在市販されていない旨の注記あり)および主成分による区分(シリコーン系・変成シリコーン系・ポリサルファイド系・アクリルウレタン系・ポリウレタン系・アクリル系)——YKK AP株式会社が公開している技術基準資料より(2026年8月確認)。同資料には「シーリング材への表面塗装については事前確認することが必要である」との記載があります
  • コニシ株式会社「ボンド 変成シリコンコークNBクイック」商品情報(公式・変成シリコーン樹脂系。標準塗布量「12〜13m/本(5×5mm目地)」、分類「建築現場施工用」、関連商品にシールプライマー#7N・#7。特長欄に「ノンブリードタイプ」と「塗装可」が別項目として記載・2026年8月確認)
  • 塗料をはじく面に塗るための下塗り材(逆プライマー)は複数のメーカーから市販されており、適用できる相手は製品ごとに異なります(公式に純シリコーン系・ブチル系への使用不可を明記する製品と、シリコーン用をうたう製品の双方が存在・2026年8月確認)
  • 製品の色数・ノンブリード対応など、打ち替えを頼むときの確認事項の出典はコーキングの打ち替えのページに記載
  • 日本シーリング材工業会「住宅外壁改修のためのシーリング材ガイド——当事者が知っておくべき基本的なポイント」(広報委員会 住宅用シーリング材ワーキンググループ。可塑剤の移行とブリード現象、ノンブリード性能に統一規格が存在しないこと、可塑抜けと柔軟性・接着耐久性の関係、増し打ちによる可塑剤の移行)。同ガイドより、窓枠回り目地の扱い(撤去が難しく、却って漏水の原因を誘発しかねない)/目地幅と深さの見解(幅10mmで深さ8mm以上を標準とする)/適材適所表(窯業系サイディングのパネル間目地・窓枠回り目地は変成シリコーン系のサイディング用を適用、2成分形ポリウレタン系は適用外)/モジュラスの区分(50%引張応力が0.2N/mm²未満を低モジュラス)/住宅用シーリング材の初期故障は施工後3年以内に集中する旨
  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」3章 防水改修工事——3.1.2 基本要求品質(2)シーリング工事/表3.1.2 シーリング改修工法の種類及び工程(4工法と6工程)/3.7.4 シーリング充填工法(被着体5℃以下・50℃以上での中止、「充填は、原則として、仕上げ塗材等の施工前に行う」、二面接着と三面接着の使い分け、バックアップ材の寸法)/3.7.5〜3.7.7(再充填・拡幅シーリング再充填・ブリッジ工法)/3.7.8 シーリング材の試験(簡易接着性試験の手順と合否)/3.1.3(5) 降雨等に対する養生/表3.7.1 被着体の組合せとシーリング材の種類(注5 ノンブリードタイプの指定)。なお同仕様書の全文に「窯業」の語は0回で、表3.7.1にも窯業系サイディングの行はありません(2026年9月13日に全文を検索して確認)

最終確認日:2026年9月13日(シーリング工事の章を追加)。製品の仕様・推奨条件は変更されることがあります。実際の施工にあたっては、使用する製品のメーカー公式資料と、建物を見た施工会社の判断をご確認ください。

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