アパートの外壁塗装——戸建てと違うのは「入居者がいること」と「経費の扱い」です

工事そのものの中身は、戸建てもアパートも大きくは変わりません。足場を組み、洗い、下地を直し、塗る。違うのは、その周りにあるものです。ひとつは他人が住んでいること——洗濯物も、駐車場も、生活の時間帯も、こちらの都合では動かせません。もうひとつはお金の扱い——事業として持っている建物なので、支出が修繕費になるのか、資本的支出になるのかで、その年の帳簿がまるきり変わります。このページは、その2点に絞って書きます。

このページの内容

戸建てと違うのは、2点だけです

まず全体像です。塗料の選び方、下地の見方、工程の考え方——このあたりは戸建てと共通なので、塗料の種類工程と工期のページがそのまま使えます。

アパート特有なのは、次の2つだけだと考えてください。

違うところ何が起きるか
入居者がいる洗濯物・駐車場・在宅時間・臭い・音。不便を引き受けるのは、工事を決めた人ではなく住んでいる人です。ここを軽く扱うと、苦情や退去につながります
事業用の資産である支出が修繕費(その年の経費)になるか、資本的支出(減価償却)になるかで、税金の出方が変わります

逆に言えば、この2点さえ押さえれば、あとは戸建てと同じ判断でいけます。

入居者に、いつ・何を伝えるか

入居者にとって外壁塗装は、頼んでもいないのに生活が制限される出来事です。事前に何も知らされず、朝いきなり足場が組まれ始めたら、誰でも不満に思います。

伝えるべきことは、多くありません。「いつからいつまで」「何ができなくなるか」「誰に連絡すればいいか」——この3つです。

  • 着工の前に、書面で配る工程表をそのまま配るのが確実です。日ごとに何をするかが分かれば、入居者は自分で予定を組めます。
  • 「できなくなること」を具体的に書く洗濯物が干せない日、窓を開けられない日、ベランダに出られない日、車を移動してもらう日。工事中の暮らしのページの一覧がそのまま使えます。
  • 連絡先を明記する大家さん・管理会社・現場責任者のうち、誰に言えばいいのかをはっきりさせます。ここが曖昧だと、入居者は我慢するか、退去を考えるかになります。

入居者への配布物は、業者に作ってもらえます

集合住宅の工事に慣れている会社なら、入居者向けのお知らせを用意していることがほとんどです。見積もりのときに「入居者への告知はどうしますか」と聞いてみてください。この質問への答え方で、集合住宅の経験があるかどうかが分かります

苦情が出やすい場所と、先回りの仕方

実際に検索されている言葉を見ると、入居者側が困っていることは、はっきりしています。洗濯物、物干し竿、臭い、音——生活に直結するものばかりです。

苦情の種中身先回りの仕方
洗濯物・物干し竿ベランダが養生される、竿を外される、干せない日が続く何日間干せないかを事前に伝える。竿を外す場合は「いつ外して、いつ戻すか」まで書く
臭い窓を開けられない、部屋に入ってくる強くなる日を先に知らせる。臭いはゼロにできないので、隠さず伝えるほうが結果的に苦情が減ります(臭いのページ
駐車場・車足場の位置で停められない、飛散が心配移動が必要な日と場所を、部屋番号ごとに示す
音・在宅ワーク足場の組み立て・解体、高圧洗浄の音音が大きい日を明示。在宅で仕事をしている入居者には影響が大きいので、日付だけでも早めに
防犯足場があると外から上がれるのでは、という不安足場の施錠やセンサーの有無を業者に確認し、その旨を伝えると安心されます

共通しているのは、「先に知らせてあれば、たいていの不便は受け入れられる」ということです。逆に、知らされないまま起きたことは小さな不便でも不満になります。

修繕費か、資本的支出か——国税庁の判定基準

ここが、オーナーにとっていちばん実利のある部分です。その年の経費にできるのか(修繕費)、それとも減価償却していくのか(資本的支出)。

国税庁は、この区別についてこう説明しています——「修繕費と資本的支出の区別は、修繕や改良という名目によるのではなく、その実質によって判定します」。名前ではなく中身で決まる、ということです。

国税庁が示している内容
修繕費
(その年の必要経費)
通常の維持管理や修理のための支出。加えて、①おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良、または一つの修理・改良の金額が20万円未満のとき②資本的支出か修繕費か明らかでない金額が、60万円未満のとき、またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10パーセント相当額以下のとき
資本的支出
(減価償却)
資産の使用可能期間を延長させたり、価値を高めたりする部分の支出。原則として、物理的に付け加えた部分/用途変更のための模様替えなど改造・改装/部分品を特に品質または性能の高いものに取り替えた場合の、通常の取替金額を超える部分

外壁塗装は、どちらになるのか

ここが気になるところだと思いますが、このサイトでは断定しません。国税庁自身が「実質によって判定する」としている以上、工事の中身によって変わるからです。原状回復として塗り替えるのか、それとも塗料のグレードを大きく上げているのか。金額が上の基準に収まるのか。同じ「外壁塗装」でも結論が違いえます。

できるのは、判断の材料を揃えておくことです——見積書に工事の内訳と製品名を書いてもらう。「外壁塗装一式」では、税理士も税務署も判断できません。最終的な判定は、必ず税理士か所轄の税務署にご確認ください。

見積書を項目ごとに分けてもらう意味は、税務の場面でも効いてきます。内訳の見方は見積もりの内訳のページにまとめました。

助成金は、使えないことが多いです

先に現実的なところをお伝えします。市区町村の住宅リフォーム助成は、「申請者本人が居住する住宅」を条件にしている制度が多く、賃貸物件は対象外になりがちです。

ただし、制度によって条件はまったく違います。空き家の活用、省エネ改修、耐震改修——別の枠から出る場合もあります。「アパートだから無理」と決める前に、市の要綱で"対象となる建築物"の欄を見てください。東海3県の制度は助成金ガイドに一覧があります(多くの制度で申請は契約前です)。

見積もりの取り方(戸建てと違う点)

最後に、見積もりの段階で押さえることです。

  • 経験集合住宅の施工実績はありますか。入居者への告知はどうしますか戸建て専門の会社もあります。入居者対応の段取りを持っているかが、そのまま苦情の量に響きます
  • 共用部階段・廊下・手すり・鉄部は、どこまで含まれていますかアパートは鉄部(外階段・手すり)の面積が戸建てより大きいことがあります。ここが「別途」になっていないかを確認(付帯部のページ
  • 工程入居者の生活に配慮した工程を組めますか面ごとの順番、作業時間帯、洗濯物が干せない日の分散。配慮できる会社は、先に自分から提案してきます
  • 書類見積書は、工事内容ごとに分けて書いてもらえますか税務上の判断材料になります。「一式」では、あとで困るのはオーナー側です

一括見積もりサービスを使う場合の注意

正直に書きます。一括見積もりサービスは、持ち家(戸建て)を前提にしているものが中心です。アパート・賃貸物件が対象になるかはサービスによって違うので、申し込みの前に対象物件の条件を確認してください。各サービスの特徴は一括見積もりサービスの比較にまとめています。

よくある質問

入居者には、何日前に知らせればいいですか?

法律で日数が決まっているわけではありませんが、予定を組み替えられるだけの余裕が必要です。洗濯や車の移動、在宅ワークの調整を考えると、直前の数日では足りません。工程表が出来た段階で配る、というのが現実的な運用です。

空室のうちにやったほうがいいですか?

入居者対応という点だけを見れば、そのほうが確実に楽です。ただし外壁の塗り替え時期は、壁の状態で決まります。空室を待って傷みが進めば、塗装で済まない工事に近づきます(意味ない?しないとどうなる?)。入居状況ではなく壁の状態で決めるのが原則です。

減価償却になった場合、何年で償却しますか?

資本的支出とされた金額は、原則としてその建物の耐用年数に応じて償却していくことになります(国税庁「資本的支出を行った場合の減価償却」)。具体的な年数と計算は、建物の構造や取得の経緯によって変わりますので、税理士か税務署にご確認ください。

色は自由に決めていいですか?

オーナーの判断で決められますが、入居者募集の写真に写るのはこの色です。奇抜さより、清潔感と汚れの目立ちにくさを優先するほうが、空室対策としては効きます。色の選び方と、汚れの目立ちにくさの考え方は色のページグレーのページにあります。

工事中の家賃について、入居者から相談されたら?

ここでは法的な判断は書きません。個別の契約内容と状況によって考え方が変わるためです。管理会社が入っていれば管理会社に、いなければ不動産の実務に詳しい専門家に相談してください。そのうえで実務的に言えば、事前の告知が丁寧なほど、この種の相談自体が起きにくいのは確かです。

あわせて読みたい

工事中の暮らし

入居者向けの告知に、そのまま使える「できないこと」の一覧

臭いはいつまで?

ゼロにはできません。だから先に知らせるほうが揉めません

付帯部の塗装

外階段・手すりなど鉄部。見積もりで省かれやすい場所

見積もりの内訳

「一式」で困るのは、あとから見返すオーナー側です

しないとどうなる?

塗り替え時期は入居状況ではなく壁の状態で決まります

助成金ガイド

「自ら居住する住宅」が条件の制度が多い。要綱の確認から

参考にした情報

  • 国税庁 タックスアンサー「No.1379 修繕費とならないものの判定」(令和7年4月1日現在法令等)——修繕費と資本的支出は名目でなく実質で判定する旨、資本的支出とされる支出の例、修繕費として必要経費に算入できる場合の金額基準(20万円未満・おおむね3年以内の周期・60万円未満・前年末取得価額のおおむね10パーセント相当額以下)(2026年8月21日確認)
  • 国税庁 タックスアンサー「No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却」——資本的支出とされた金額の取り扱い

税務の取り扱いは、工事の内容・建物の状況・過去の経緯によって判断が変わります。このページは国税庁が公開している一般的な基準の紹介であり、個別の判定を行うものではありません。実際の申告にあたっては、税理士または所轄の税務署にご確認ください。最終確認日:2026年8月21日。