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屋上防水(陸屋根)——見えない場所だから、気づくのがいちばん遅い

平らな屋根の建物には、必ず防水層があります。ところがこの場所には普段まったく上がらない。ベランダなら洗濯物を干すたびに目に入りますが、屋上は誰も見ていないまま10年が過ぎることがある。そのうえ見積書に出てくるのは「ウレタン防水 通気緩衝工法 一式」といった見慣れない言葉です。このページでは、塗料メーカー2社が公表している材工単価と、国土交通省の標準仕様書を並べて、その一式の中身を数字で開けていきます。

このページの内容全20項目

上がらずに、異変を察する方法

屋上防水のいちばんの問題は、技術ではなく「気づくのが遅れること」です。ひび割れも膨れも、上がらなければ見えません。そこで、地上や室内から拾えるサインを挙げておきます。

  • 最上階の天井・壁のシミ——いちばん分かりやすい合図ですが、ここまで来ると防水層はすでに切れています
  • 雨のあと、いつまでも建物から水が垂れている——溜まった水が抜けきっていない可能性
  • 外壁の上のほうだけ、汚れ方や濡れ方が違う——屋上から水が回っているサイン
  • 排水管(縦樋)から水が出ない/いつも出ている——排水口の詰まりか、逆に溜まり続けている状態

そのうえで年に1回、点検のときに写真を撮ってもらうことをおすすめします。自分で上がらなくても、業者が点検で上がったときに撮ってもらえば記録が残る。見えない場所ほど確認を頼むという考え方は、軒天や屋根と同じです。

ベランダ防水とは別物です

同じ「塗る防水」でも、屋上とベランダでは条件がかなり違います。ベランダ防水のページと合わせて読む場合は、この違いを頭に置いてください。

項目ベランダ屋上(陸屋根)
面積数㎡程度建物と同じ広さ。材料費も手間も桁が変わります
目に入る頻度毎日ほぼゼロ。だから発見が遅れます
排水口1〜2か所複数。1か所詰まると広い面積に水が溜まります
人が乗るか頻繁に乗る・物を置く点検時のみ(歩行用に作られていない屋上もあります)
下に何があるか下階の部屋最上階の居室。漏れたときの被害が直接的

屋上防水の種類は、だいたい4つです

「うちの屋上は何で防水されているのか」——ここが分からないと、次の工事の話が進みません。まず全体像を押さえます。

工法見た目の特徴どんな建物に多いか
アスファルト防水防水層の上にコンクリートや平板が載っていることが多い(保護工法)。むき出しの場合は黒っぽい仕上げ鉄筋コンクリート造。人が歩く屋上で採用されることが多い
シート防水
塩ビシート/ゴムシート
1〜2mm程度のシートが張られている。継ぎ目(ジョイント)が見える。円盤状の金具が透けて見えることも。素材は塩ビ(塩化ビニル樹脂系)と加硫ゴム系に分かれます面積の広い屋上。改修でもよく使われる
ウレタン塗膜防水
いわゆるウレタン防水
継ぎ目のない、塗って作った膜。ところどころに脱気筒が立っていることがある形が複雑な屋上、既存の上から重ねる改修。設備や配管をよけながら塗れるので、小規模な屋上の改修でよく使われます
FRP防水硬く、光沢がある。ガラス繊維の質感小面積向き。屋上より木造のベランダで多い

国土交通省の「公共建築工事標準仕様書」も、防水工事をこの系統で分けて定義しています。シート防水ならJIS A 6008(合成高分子系ルーフィングシート)、塗膜防水ならJIS A 6021(建築用塗膜防水材)というように、材料にJIS規格があります。

シート防水の「接着」と「機械的固定」

シート防水には、大きく2つの留め方があります。

  • 接着工法——下地に接着剤でシートを貼る方法。下地が乾いていて状態が良ければ選べます。
  • 機械的固定工法——固定金具(ディスク)で機械的に留める方法。国の仕様書では固定金具について「防錆処理した鋼板、ステンレス鋼板等で厚さ0.4mm以上」と規定されています。

機械的固定が選ばれる理由は、下地の水分に影響されにくいことです。既存の防水層の上から重ねる改修では、下地が乾いているとは限りません。接着では剥がれや膨れのリスクがあるので、金具で留めてしまう——という考え方です。

だから見積書に「機械的固定工法」と書かれていても、それは手抜きではありません。むしろ改修では合理的な選択であることが多い。なぜその工法を選んだのかを聞けば、下地をどう見たのかが分かります。

ウレタン防水の「密着工法」と「通気緩衝工法」

そしてもうひとつ、ウレタン防水にも2つの留め方があります。ここから先の金額の話は、ほぼこの2つの違いで決まります。

  • 密着工法——下地にプライマーを塗り、その上に防水材を直接つくる方法。国土交通省の標準仕様書では種別X−2と呼ばれ、工程の2番目で補強布(メッシュ)を張り込むことになっています。
  • 通気緩衝工法(絶縁工法)——下地との間に通気緩衝シートを1枚はさんでから防水材をつくる方法。同じ仕様書で種別X−1。工程1が「接着剤塗り/通気緩衝シート張り」から始まります。

違いは、下地の水分をどう扱うかです。密着は下地と一体になるので、下地に水が残っていれば逃げ場がない。通気緩衝はシートの層が水蒸気の通り道になるので、そこを通して脱気筒から抜けます。

だから「通気緩衝工法です」と言われたら、下地の水分や既存の層の状態を見たうえでの判断が入っている、ということです。そして次の章のとおり、この判断で単価はおよそ1.7倍から1.9倍になります。理由を聞く価値がある場所です。

見積書の「X−1」「X−2」「P0X」「L4X」は何のことか

屋上防水の見積書には、ときどき記号だけの行が出てきます。「ウレタン塗膜防水 X−1仕様」「L4X工法」といった書き方です。説明を求めても「国の仕様書の記号です」で終わってしまうことがある。中身はこうです。

記号正式な呼び方やっていること
X−1絶縁工法通気緩衝シートを1枚はさんでから防水材をつくる。いわゆる通気緩衝工法
X−2密着工法プライマーの上に補強布を張り込みながら防水材をつくる。いわゆる密着工法
P0X改修工事の工法区分既存に保護層(保護コンクリートなど)がある屋上の改修。仕様書には保護層を撤去する場合と、平場は残す場合の両方が書かれています
L4X改修工事の工法区分既存の防水層が露出している屋上の改修

この対応は、国土交通省の「公共建築改修工事標準仕様書」にそのまま書かれています。

公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)3章 防水改修工事 3.6.3

新規防水層の種別及び工程は表3.6.1及び表3.6.2により、種別は特記による。特記がなければ、表3.6.1により、P0Ⅹ工法の場合は、種別X−1とし、L4Ⅹ工法の場合は、種別X−2とする。

読み替えると、「保護層のある屋上なら、とくに指定がなければ通気緩衝。既存の防水層が露出している屋上なら、とくに指定がなければ密着」——これが国の標準の考え方だということです。ただし「とくに指定がなければ」です。指定すれば変えられるので、現地を見たうえで別の種別を選ぶこと自体は、仕様書に反しません。

なお、これは公共工事の基準です。戸建てやアパートの工事にそのまま適用されるものではありません。ただし民間の見積書でもこの記号がそのまま使われていることがあります。書いてあれば、指しているものは同じです。

屋上防水の費用——設計価格表に載っている単価

「屋上防水 費用」で検索すると、㎡あたり何円という数字がいくつも出てきます。ただ、その数字がどこから来たのかまで書いてあることは、あまりありません。

ここでは塗料メーカー2社が公表している設計価格表から、屋上防水材の欄をそのまま引きます。メーカーが自社製品について公表している材工価格なので、出どころがはっきりしています。

日本ペイント「パーフェクトプルーフ」(ウレタンゴム系高伸長形)

工法平場仕様(円/㎡)立上り仕様(円/㎡)
密着工法(厚さ2ミリ)11,92014,310
密着工法(メッシュ入り)(厚さ2ミリ)14,72017,430
通気緩衝工法(厚さ2ミリ)19,79017,430

日本ペイント「建築用塗料・外装仕上げ塗材 設計価格表」より。JIS A 6021 建築用塗膜防水材 ウレタンゴム系高伸長形(旧1類)相当品。施工方法はローラー・こて。

同じ表の下に、読み飛ばすと金額を読み違える注記が4行あります。原文のまま引きます。

同表の注記(原文)

※材工価格は原則として300㎡以上を基準といたします。
・300㎡未満〜 100㎡は30%増しとなります。
・脱気筒設置は別途15,000円/箇所を加算ください。(100㎡毎に1箇所設置)
・上記はパーフェクトプルーフプライマーを使用するコンクリート面、FRP防水面改修の場合の価格です。
・パーフェクトプルーフ層間用プライマーを使用するウレタン防水面、塩ビシート面改修の場合は、平場で900円/㎡加算してください。

戸建てや小規模なアパートの屋上は、300㎡に届かないことがほとんどです。30㎡や60㎡という規模になります。つまり表の数字は、そのままでは自分の家に当てはまりません。100㎡までは30%増しと書かれているので、密着工法の平場11,920円は、100㎡なら15,496円あたりから考えることになります。100㎡を下回る屋上については、この表は何も言っていません。

そして最後の1行が効きます。いまの屋上がウレタン防水か塩ビシートなら、同じ工事でも平場で900円/㎡高い。理由は、その上に重ねるために「層間用プライマー」という別の下塗りが要るからです。「うちの屋上はいま何で防水されていますか」という質問が、そのまま単価に直結している——このことは、次の表でも同じように出てきます。

エスケー化研「アーキルーフUAエコ」ほか(屋上塗膜防水材)

製品・工法記号膜厚設計価格(円/㎡)
アーキルーフUAエコ
上塗材:アーキトップウレタン
密着工法 SN−UAE2−UW2.0ミリ8,460
密着補強工法 SR−UAE3−UW3.0ミリ12,080
立上り工法 VT−UAE2−UW2.0ミリ12,040
通気緩衝工法 SV−UAE3−UW3.0ミリ16,020
クールタイトHIエコ工法
屋上防水・遮熱工法(軽歩行用カラー仕上げ)
密着工法 SN−HIE2−CUW2.0ミリ8,570
密着補強工法 SR−HIE3−CUW3.0ミリ12,350
立上り工法 VT−HIE2−CUW2.0ミリ11,820
通気緩衝工法 SV−HIE3−CUW3.0ミリ16,190
水性アーキルーフ
水和凝固形塗膜防水材
密着工法 SN−W11.0ミリ6,740

エスケー化研「設計価格表2026年度版」より。いずれもシーラー・プライマー込みの価格。JIS A 6021 屋根用ウレタンゴム系高伸長形。

この表には、もうひとつ大事な列があります。同じ表の中で、公共建築工事標準仕様書のX−1仕様・X−2仕様にも価格が振られているのです。そしてその数字が、上の工法と一致します。

仕様書の種別アーキルーフUAエコクールタイトHIエコ工法同じ価格が付いている工法
X−1仕様16,02016,190通気緩衝工法
X−2仕様 平場用12,08012,350密着補強工法
X−2仕様 立上り用12,04011,820立上り工法

つまり「X−1」と書かれた見積書は、通気緩衝工法の見積書です。記号のままでは分かりませんが、値段は同じところを指しています。

2社を並べて分かること

  • 通気緩衝工法は、密着工法のおよそ1.7倍から1.9倍——日本ペイントで11,920円が19,790円(1.66倍)、エスケー化研で8,460円が16,020円(1.89倍)。工法名がひとつ変わるだけで、屋上全体の金額が変わります。
  • 膜厚が工法ごとに決まっている——エスケー化研の表は、密着工法2.0ミリ、通気緩衝工法3.0ミリと明記しています。単価だけでなく、できあがる膜の厚みが違う。「何ミリで仕上げますか」は成立する質問です。
  • 2社の絶対額はそろわない——同じ通気緩衝工法でも19,790円と16,020円です。片方が高いのではなく、含まれている範囲と製品が違います。1社の価格表を根拠に「相場はこれ」と言うことはできません。
ここに書いた単価を、そのまま見積書と比べないでください

設計価格表の数字は、材料と塗る手間の価格です。エスケー化研は巻末に、こう書いています——「設計価格には、法定福利費、下地調整費、足場代、養生費、運搬費、諸経費は含まれておりません」。さらに「設計価格は、新築下地で同一淡彩色300m2以上を(特に指定がない場合)基準とする材工共の価格です」「改装の場合は下地の状況や仕様により割高になりますので予めご了承ください」。

屋上の改修では、その除かれている「下地調整費」こそが工事の本体になることがあります。既存を剥がすのか、水を含んだ下地をどう乾かすのか、排水口をどう納めるのか。だから見積書の総額がこの単価より高いのは、それ自体はおかしなことではありません。おかしいかどうかは、加算されている項目に名前が付いているかどうかで判断してください。

平場と立ち上がりで単価が違うのは、正常です

屋上の見積書は、床面(平場)と立ち上がり(パラペットの内側の壁)で行が分かれていることがあります。単価も違う。ここで「なぜ2つに分かれているのか」と身構える必要はありません。仕様書がそう決めているからです。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 表9.5.1 注2

立上り部は全て、種別X−2とし、工程3及び工程4のウレタンゴム系防水材の使用量を( )内とする。

読み替えると、「通気緩衝工法を選んでも、立ち上がりだけは密着工法でやる」ということです。壁面に通気緩衝シートを張っても意味がない、というより張れません。

この決まりは、価格表にもきれいに現れています。日本ペイントの表をもう一度見てください。通気緩衝工法の立上り仕様17,430円は、密着工法(メッシュ入り)の立上り仕様17,430円とぴったり同じ額です。工法名が違うのに同額——仕様書の「立上り部は全て種別X−2」と重ねると、つじつまが合います。

そしてもうひとつ。通気緩衝工法だけ、立ち上がり(17,430円)のほうが平場(19,790円)より安くなります。ほかの工法は逆で、立ち上がりのほうが高い。数字が逆転しているように見えますが、これも同じ理由です。平場は通気緩衝シートの分だけ手数が増え、立ち上がりは密着のままだからです。

見積書で確かめること

立ち上がりの面積が書かれているか。屋上は「平場◯㎡」だけで見積もられていることがありますが、パラペットの内側は必ずあります。高さ40センチのパラペットが1周20メートルあれば、それだけで8㎡です。平場と立ち上がりで単価が違う以上、面積も分かれていないと検算できません。

脱気筒は、何のために立っているのか

屋上に、キノコのような形の部材が立っていることがあります。脱気筒(だっきとう)です。

役割はひとつ。下地に閉じ込められた水分を、水蒸気として逃がすことです。コンクリートの中には水分が残っていますし、改修では古い防水層の下に水が入っていることもある。この水分が温められて水蒸気になったとき、逃げ場がないと防水層を押し上げて膨れます。

だから脱気筒が立っているのは、下地の水分を想定した設計になっているということです。ウレタン塗膜防水の絶縁工法(通気緩衝工法)や、シート防水の機械的固定工法と組み合わせて使われます。同じ考え方はベランダ防水にもあり、そちらはベランダ防水のページで扱っています。

脱気筒は何本要るのか、1本いくらか

脱気筒は本数で数える部材です。だから見積書に「脱気筒 ◯箇所」と書けます。書いていない見積書があったら、それは平場の単価に含めているのか、忘れているのか、どちらかです。

本数の決め方について、国の仕様書はこう書いています。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 9.5.3(1)(イ)

種別X−1において、脱気装置の種類及び設置数量は、特記による。特記がなければ、主材料の製造所の仕様による。

仕様書は本数を決めていません。「メーカーの言うとおりに」と書いてあるだけです。ではメーカーは何と言っているか。日本ペイントの設計価格表には、先ほど引いた注記のとおり「脱気筒設置は別途15,000円/箇所を加算ください。(100㎡毎に1箇所設置)」とあります。

ここまで来ると、自分の屋上で検算ができます。60㎡の屋上なら1箇所、150㎡なら2箇所。1本15,000円。見積書に「脱気筒 3箇所 45,000円」と書いてあれば、面積とつじつまが合っているかを確かめられます。

ただし、この本数はあくまで日本ペイントの製品についての数字です。メーカーが違えば別の指定になりますし、屋上の形が複雑なら増えます。「なぜこの本数ですか」と聞いたときに、面積か形状で答えが返ってくるかどうか——確かめたいのはそこです。

逆に言えば、ウレタン防水で脱気筒が1本も入っていない見積書は、密着工法の見積書だということでもあります。仕様書の文が「種別X−1において」と限定しているとおり、ウレタン防水では脱気筒は通気緩衝工法のほうの部材だからです。工法名と脱気筒の有無が食い違っていたら、そこは聞いてください。

ただし脱気筒はウレタン防水だけのものではありません。シート防水の機械的固定工法でも同じ考え方で使われます。「脱気筒がある=通気緩衝工法」とは限らないので、まず工法名を確かめてください。

屋上で「膨れ」を見つけたら

防水層が部分的に浮いて、踏むとぶよぶよする——これは下地の水分が逃げられていないサインです。放置すると、その部分から割れます。ただし、慌てて自分で穴を開けないでください。水を抜くつもりが、防水層に穴を開けることになります。見つけたら記録して、業者に見てもらってください。

排水口(ルーフドレン)まわりと、改修用ドレン

排水口は、防水層に穴を開けて配管をつなぐ場所です。面ではなく点で処理する箇所なので、構造的に弱点になりやすい。国の改修仕様書が、ここだけを別扱いで書いているのもそのためです。

国の改修仕様書は、排水口のまわりだけを特別扱いしています。数字で決まっているので、見積書と照らせます。

公共建築改修工事標準仕様書 3章 3.2.3(オ)・3.2.4(イ)(ウ)

平場の既存保護層等を残し、改修用ドレンを設けない場合は、ルーフドレン端部から500㎜程度まで保護コンクリート等の既存保護層を四角形に撤去する。

(既存保護層を撤去した後のルーフドレン周囲は)既存下地に損傷を与えないように、ルーフドレン端部から300㎜程度まで既存防水層を四角形に撤去する。

つまり平場をぜんぶ残す工事でも、排水口のまわりだけは30センチから50センチ四方を四角く切り取って作り直す——それが標準の考え方です。屋上の写真を見せてもらったときに、排水口のまわりだけ四角く色が違っていたら、それは手抜きではなく、そういう納まりです。

そして「改修用ドレン」という部材があります。

改修用ドレンとは

既存の排水口に差し込んで新しい排水口をつくる部材です。仕様書では「P0X工法において、改修用ドレンを設ける場合は、特記による」とされ、材料は「新設する防水材の製造所の指定する製品」と定められています。つまり使うか使わないかは、そのつど決める項目——見積書に名前が出ていなければ、使わない前提で組まれています。

既存の排水口が腐っていたり、納まりが悪かったりする場合、仕様書は「漏水のおそれがある場合は、監督職員と協議する」としています。公共工事の言い方ですが、民間なら「発注者と相談して決める項目」だということです。つまり、施主が知らないまま決まっていていい場所ではありません。写真と一緒に選択肢を出してもらえば、判断の材料が残ります。

屋上を見てもらうときは、排水口の写真を撮ってもらってください。上がらなくても、そこだけは状態が分かります。何社かに見てもらうときも、この1枚があるかどうかで説明の具体性が変わります。

パラペットと笠木——屋上で見落とされる場所

屋上の防水というと床面に目が行きますが、実際に水が入ってくるのは端のほうということがよくあります。

屋上のまわりにはパラペットと呼ばれる立ち上がりの壁があります。転落防止と、雨水が外へ流れ落ちないようにするための壁です。その上端をどう処理するかが、新築住宅の瑕疵保険で使われる設計施工基準に定められています。

JIO「わが家の保険」設計施工基準 第18条(パラペットの上端部)

パラペットの上端部は、金属製笠木の設置又は防水材料の施工等、雨水の浸入を防止するために有効な措置を講じることとする。

同じ基準の第19条には、こうもあります。防水層が施されていない屋根躯体(パラペットや架台等)を設備配管が貫通する部分、金物が埋め込まれた部分は、その周囲をシーリング材で処理する——つまり屋上に載っている設備の足元や、手すりの支柱の根元も水の入り口になり得るということです。

屋上にエアコンの室外機、給湯設備、太陽光パネルの架台、避雷針、手すりなどがある家は、その足元がどう処理されているかを見てもらってください。床の防水をやり替えても、ここが残っていれば止まりません。

水たまりが残るのは、勾配の問題かもしれません

屋上は平らに見えますが、完全な水平ではありません。水が流れるように、わずかに傾けて作られています。

JIO「わが家の保険」設計施工基準 第20条(排水勾配)

防水下地面の勾配は防水材メーカー(製造所)が定めた勾配とする。ただし、保護コンクリート等により表面排水が行いやすい場合の勾配は、1/100以上とする。

1/100というのは、1メートル進んで1センチ下がるという傾きです。見た目ではほとんど分かりません。

雨のあとに水たまりが残るなら、考えられるのは3つです。①排水口(ドレン)が詰まっている ②勾配が足りない、または下地が沈んで水が溜まる形になった ③防水層の施工時に不陸(凹凸)ができた。

①なら掃除で解決します。まず排水口を見てください。②③は工事の話になりますが、水たまりが直ちに雨漏りになるわけではありません。防水層が健全なら、溜まっていても漏りません。ただし常に濡れている場所は傷みが早く進むので、次の改修時期が早まると考えてください。

そして②と③は、工事のときの扱いが分かれます。国の改修仕様書は、部分的な水はけの悪さと、屋上全体の勾配不良を別の話として書いています。

公共建築改修工事標準仕様書 3章 3.2.6(2)(ア)(e)

部分的な水はけ不良がある場合の処理は、ポリマーセメントモルタルで補修する。ただし、勾配不良がみられる場合は、監督職員と協議する。

部分的な凹みなら、モルタルで埋めて直す。屋上全体の傾きが足りないなら、その場で決めずに相談する——これが標準の切り分けです。前者は下地調整の一部として工事に含められますが、後者は屋上の作り直しに近い話になるので、金額も工期も別物になります。

だから「水たまりが残る」と伝えたときに、返ってくる答えが2種類あるのは自然です。「削って埋めます」と「勾配自体が足りないので、そこは別に考えましょう」。どちらの話をしているのかを、こちらから確かめてください。

同じ仕様書には、ひび割れの扱いにも数字があります——「ひび割れ幅が2㎜以上の場合は、Uカットのうえ、ポリウレタン系シーリング材等を充填する」。2ミリ未満と2ミリ以上で処理が変わる、ということです。

「何年もつか」——年数が書いてある場所と、書いていない場所

屋上防水では、よく出てくる質問です。ところが調べていくと、年数そのものを定めた条文は、なかなか見つかりません。今回あたったのは、公共建築工事標準仕様書の9章5節(塗膜防水)、公共建築改修工事標準仕様書の3章2節・6節、そして日本ペイントとエスケー化研の設計価格表の屋上防水材の欄です。この範囲では、次のようになっていました。

  • 標準仕様書が決めているのは、耐用年数ではない——材料のJIS規格、工程、使用量、下地の処理です。「何年もつ」に当たる条項は、この節には置かれていません。
  • 設計価格表が示しているのも、耐用年数ではない——単価と工程と膜厚です。
  • 年数が書いてあるのは、保証書です——ただしこれは「もつ年数」ではなく「無償で直す約束の期間」です。意味が違います。

ではまったく手がかりがないのかというと、そうでもありません。仕様書と価格表が決めている「膜厚」が、いちばん近い手がかりです。

エスケー化研の表は、密着工法に2.0ミリ、通気緩衝工法に3.0ミリという膜厚を示しています。同じ表で価格が倍近く違うのは、シート1枚ぶんの手間だけでなく、1.5倍の厚みをつくっているからでもある。工法を選ぶことは、膜の厚さを選ぶことでもある——ということです。

ただし厚さがそのまま年数に換算できるわけではありません。価格表も仕様書も、そこまでは言っていません。

そのうえで、実際の年数は屋上の使われ方で大きく動きます。人が歩く屋上と、点検でしか上がらない屋上。日当たり。水たまりが残るかどうか。だから「何年ですか」より「うちの屋上は、次はいつ見ればいいですか」のほうが、答えの出る質問です。

そして年数を延ばす方法は、トップコートの塗り替えです。防水層そのものではなく、その上の仕上げ塗料を先に更新していく。仕様書でも仕上塗料は防水材とは別の工程(X−1なら工程4、X−2なら工程5)として立てられています。使用量については「特記による。特記がなければ、主材料の製造所の仕様による」とされ、エスケー化研の該当製品の欄では0.2㎏/㎡と示されています。最初から別の層として設計されているので、そこだけ先にやり替えられる——これがトップコートの塗り替えが成り立つ理由です。

比較表より先に、業者へぶつける4つの質問

「ウレタン・シート・アスファルト」を並べた表は、検索すれば山ほど出てきます。読み込む価値がないとは言いませんが、あなたの屋上で選べる選択肢は現地を見た時点でかなり絞られています。だから質問に変えたほうが早い。

  • 下地に水を含んでいませんか——屋上で最も多い失敗がこれです。湿気を閉じ込めたまま新しい層を作ると、夏場に水蒸気が膨張してボコボコと膨れ上がります。だから通気を確保する工法(脱気筒を立てる方式)が選ばれることがある——この判断をしているかどうかが、屋上では決定的です
  • 既存を撤去しますか、上から被せますか——撤去には産廃処分が伴い、被せる場合は建物への荷重が増えます。どちらにも理由があるので、なぜそちらなのかを聞く
  • ドレン(排水口)はどう納めますか——屋上の漏水はドレンまわりから始まることが多く、既存の排水口に新しい部材を差し込む処理が要る場合があります。見積書に項目があるか見てください
  • 立ち上がりとパラペットの天端は——屋上を囲う低い壁(パラペット)の上端は、雨風を最も受けながら見落とされやすい場所です

ここまで聞ければ十分です。屋上は「面で塞ぐ」のではなく「水の逃げ道を確保しながら囲う」工事——その設計思想を説明できる相手かどうかが、判断材料になります。

「かぶせる」か「撤去する」か——ここで金額が変わります

屋上防水の改修で、いちばん金額が動くのがこの判断です。

かぶせる(重ね工法)撤去してやり直す
工事既存の防水層の上から新しい層をつくる既存を剥がして下地から作り直す
費用撤去と処分の費用がかからない撤去費と廃材処分費が加わります
工期短い長い
選ばれる条件既存の傷みが表層にとどまっている下地まで水が回っている、既存が何層も重なっている

かぶせるほうが安いのは事実です。ただし何度でも重ねられるわけではありません。重ねるたびに荷重が増えますし、下に閉じ込めた水分の逃げ場も減ります。「前回もかぶせた」なら、今回は撤去の判断が入る可能性があります。

だから業者に聞くのは、この順番です。

  • ①いま何層になっていますか——過去に何回改修したか。
  • ②かぶせられますか、撤去が要りますか——そしてその理由。
  • ③撤去する場合、廃材処分費は見積もりに入っていますか——別途になっていないか。

③は要注意です。撤去した防水材の処分費は、まとまった金額になることがあります。アスファルト系の保護コンクリートを撤去するなら、なおさらです。「一式」の中に含まれているのか、別途なのかを確認してください。

国の仕様書では、この2つが別の節になっています

改修仕様書は、この判断を「かぶせる/撤去する」ではなく「既存が何なのか」で分けています。先ほどの記号のとおり、L4X工法(既存の防水層が露出している屋上)とP0X工法(既存に保護層がある屋上)で、下地の処理がそれぞれ別に定められています。

なおP0X工法が「必ず全部撤去する」という意味ではありません。同じ仕様書には「平場の既存保護層等を残し、改修用ドレンを設けない場合は…」という条文もあり、残す選択肢も想定されています。

L4X工法(既存が露出防水層)P0X工法(既存に保護層がある)
既存の扱い既存露出防水層の表面のゴミを取り除き、水洗いする既存下地に付着している異物はケレンし、全面を清掃する
傷んだ箇所破断・穴あきの浮き部分とふくれ部分は切除し、ポリマーセメントモルタルで平滑に補修欠損部・ぜい弱部はポリマーセメントモルタルで平滑に補修。浮き部は撤去して補修
その上に層間接着用プライマーを塗布する既存目地の処理(充填、突出材の撤去など)を行う
既定の種別X−2(密着工法)X−1(通気緩衝工法)

ここで、価格表の注記とつながります。日本ペイントが「層間用プライマーを使用するウレタン防水面、塩ビシート面改修の場合は、平場で900円/㎡加算」と書いていた、あの層間用プライマーです。かぶせる工事には、必ずこの下塗りが1層増える。だから被せるほうが安いとはいえ、まるごと同じ値段にはなりません。

撤去する側にも、金額に効く規定があります。

公共建築改修工事標準仕様書 3章 3.2.3(ウ)

やむを得ず、質量15㎏以上のハンドブレーカー等を使用する場合は、監督職員と協議する。

保護コンクリートの撤去は、大きな機械を屋上で使う工事だということです。仕様書がわざわざ協議事項にしているのは、それだけ音と振動が出るからです。アパートやマンションなら、この一行が入居者対応そのものになります。撤去の見積もりを受け取ったら、工期と作業時間帯を一緒に聞いてください。

そしてこの判断は、会社によって割れます。「かぶせられます」と言う会社と「撤去すべきです」と言う会社があったら、それぞれの根拠を聞いてください。何社かに屋上を見てもらって、判断と金額を並べる——屋上は自分で上がって確認しにくい場所なので、複数の目を入れる価値がとくに大きい工事です。

防水工事の保証は、年数だけを見ない

防水工事には保証が付くのが一般的です。ただし年数だけを見て比べると判断を誤ります。

確認したいのは次の3点です。

  • ①誰の保証か——施工した会社の自社保証か、材料メーカーの保証か、第三者機関の保証か。会社がなくなったときに残るのはどれかが変わります。
  • ②免責は何か——地震・台風などの自然災害、第三者による損傷、屋上に物を置いたことによる損傷などが除かれるのが普通です。
  • ③定期点検が条件になっているか——「◯年ごとの点検を受けること」が条件の保証があります。受けていないと無効になることがあります。

③は見落としが多いところです。保証書を受け取ったら、点検の条件が書かれていないかを読んでください。保証の考え方は保証のページにまとめています。

そして保証書の見本は、契約前に見せてもらえます。何社かに見積もりを頼むときに、保証書の見本も一緒に頼んでみてください。年数は同じでも、免責の書き方でまるで中身が違うことがあります。

周期を管理できれば、費用は下げられる

防水層の上には、紫外線を受け止めるトップコートという仕上げがあります。ここが先に痩せていき、そのまま放っておくと本体の層まで傷が届く。逆に言えば、表面を定期的に塗り直している屋上は、本体をほとんど減らさずに済みます。

そして屋上には、ベランダにはない事情があります。誰も見ないので、放置の期間がそのまま長くなる。だから年数ではなく「前回いつ、何をしたか」を書類で管理することが、そのまま費用管理になります。工事の報告書・保証書・点検写真を1か所にまとめておけば、次の業者が状態を推定でき、見積もりの精度も上がります。

なお賃貸物件や区分所有の建物では、この記録が修繕計画そのものになります。次にいつ手を入れるかを逆算できるからです。

屋上のDIYが成立しにくい理由

屋上用の防水材は市販されていて、施工動画も見つかります。それでも自分でやる人が少ないのには、面積という物理的な事情があります。

  • 塗る量が二桁違う——数㎡の床とは、必要な材料も体力も別世界です
  • 切れ目のない一枚の膜にできるか——防水は薄い膜が全面つながって初めて機能します。広くなるほど、塗り継ぎの跡や厚みのムラが弱点として残ります
  • 晴天が続く日程を押さえられるか——重ね塗りの合間に一度でも降られると、そこがやり直しになります
  • 足元に手すりがない——屋上の縁で作業する危険は、脚立とは比べものになりません

「厚く塗れば強い」が成立しない理由

もうひとつ、材料を買う前に知っておいたほうがいいことがあります。ウレタン防水は、一度に厚く塗ってはいけないことになっています。

公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 表9.5.1 注4・注5

ウレタンゴム系防水材塗りは、2回以上に分割して塗り付ける。

ウレタンゴム系防水材塗りの1工程当たりの使用量は、平場は2.5㎏/㎡、立上りは1.5㎏/㎡を上限とする。

種別X−1の防水材は合計3.0kg/㎡です。1工程の上限が2.5kg/㎡ですから、2回に分けなければ規定どおりの厚みにできません。そして分けるということは、1回目が乾くのを待つ日程が要るということでもあります。

同じ仕様書は、つなぎ目の重ね方も決めています——「塗継ぎの重ね幅は100㎜以上とし、補強布の重ね幅は50㎜以上とする」。さらに下地の形も「出隅は通りよく45°の面取りとし、入隅は通りよく直角とする」。塗る前に、下地の角を削る工程が入っているということです。

これらは全部、缶を買っただけでは満たせない条件です。逆に言えば、業者に確かめられる条件でもあります。「何回に分けて塗りますか」「1回あたり何kg/㎡ですか」——答えられる相手なら、この表を見て仕事をしています。

やるとしてもひび1本を一時的に塞ぐ程度まで。全面を考えているなら、材料代を払う前に見積もりを取ったほうが、結局は安上がりです。

屋上の見積書で確かめる、7つの数字

ここまでに出てきたものを、見積書を見るときの順に並べ直します。どれも「一式」では書けない数字なので、書いてあるかどうかがそのまま確認事項になります。

確かめる数字なぜそこか
1平場と立ち上がりの面積が、分かれているか単価が別なので、分かれていないと検算できない(立ち上がりの章)
2工法名が書いてあるか(密着/通気緩衝、またはX−1/X−2)ここで単価が1.7倍から1.9倍動く(費用の章)
3脱気筒の本数100㎡毎に1箇所が目安。工法と本数が食い違っていないか(脱気筒の章)
4膜厚(何ミリで仕上げるか)密着2.0ミリ、通気緩衝3.0ミリが価格表の設定
5既存の防水が何なのかウレタンや塩ビシートの上に重ねるなら、層間用プライマーの加算がある
6排水口まわりの項目があるか改修用ドレンを使うかどうかは、そのつど決める項目(排水口の章)
7下地調整と処分費が、別の行になっているか設計価格表の単価には、そもそも含まれていない

7つ全部が書かれている見積書は、多くはありません。書いていないこと自体は、聞けば済む話です。確かめたいのは、聞いたときに屋上を見たうえでの答えが返ってくるかどうかのほうです。

もうひとつ。この7つのうち1・5は、同じ屋上を見た会社どうしなら答えがそろうはずの項目です。面積も、いまの防水の種類も、屋上の側の事実だからです。複数社の見積書を並べて、ここが食い違っていたら、どちらの見方が現地に即しているのかを聞き直してください。金額の高い安いより、先にそこを見たほうが早い。

アパート・ビル・分譲マンションの場合——決める順番が違います

屋上のある建物は、戸建てより賃貸アパート・事務所ビル・分譲マンションのほうが多くなります。ここでは判断の材料がひとつ増えます。入居者・テナント・区分所有者がいる状態で工事をするということです。

  • 臭いと騒音の告知——工法によっては施工中の臭いが出ます。工程表を先にもらって告知に使うと、苦情はかなり減らせます
  • 漏水が起きてからでは、修繕費以外の損失も出る——最上階の部屋がダメージを受ければ、内装の復旧や入居者対応まで発生します
  • 外壁・屋上・付帯部をまとめると足場が1回で済む——建物が大きいほど足場代の比重が効いてきます

誰が決めるかで、進め方が変わります

賃貸アパートやビルなら、オーナーが決めた日に着工できます。分譲マンションはそうはいきません。屋上も外壁と同じく共用部分なので、区分所有法にもとづく集会の決議が要ります。決め方の条文と、管理規約のどこを読むかはアパート・集合住宅のページにまとめました。

屋上防水に特有なのは、「見えない場所なので、緊急性が伝わりにくい」ことです。外壁の色あせは総会で写真1枚見せれば伝わりますが、屋上は誰も上がっていません。点検で撮った写真が、そのまま議案の資料になります。膨れ、水たまり、排水口の詰まり——このあたりを撮ってもらってください。

そして屋上は、最上階の部屋に直接つながっています。漏り始めてからでは、防水のやり直しに加えて室内の復旧と入居者対応が乗ります。「まだ漏っていない」段階の写真のほうが、議案としては通しにくく、しかし工事としては安い——ここが屋上のむずかしいところです。

撤去工事は、騒音の話とセットになります

先に引いた改修仕様書に、こういう条文がありました——「やむを得ず、質量15㎏以上のハンドブレーカー等を使用する場合は、監督職員と協議する」。

保護コンクリートを撤去する工事は、15キロ超の機械を屋上で使う工事だということです。国の仕様書ですら協議事項にしている。人が住んでいる建物なら、これは告知しないでは済みません。

  • 撤去があるかどうかを先に聞く——被せる工事なら、この騒音はほぼ出ません。ここが告知の内容を分けます。
  • 作業時間帯と、うるさい日が何日あるか——工期全部がうるさいわけではありません。撤去の日だけです。「◯日から◯日まで、9時から17時」まで出してもらえば、そのまま掲示に使えます。
  • 在宅勤務・乳児・夜勤の入居者がいないか——先に把握できていれば、個別に一報を入れられます。

臭いについては工法で変わります。ウレタン防水は溶剤系と水性で差がありますし、シート防水なら塗る工程自体が少なくなります。工程表を先にもらって告知に使うと、苦情はかなり減らせます。

屋上と外壁を、同じ工事にするかどうか

屋上防水だけを単独で発注すると、足場を屋上工事のためだけに架けることになります。外壁の塗り替えが数年以内に来るなら、まとめたほうが足場は1回で済む。建物が大きいほど足場代の比重が効きます。

逆に、屋上だけ先に急ぐ理由もあります。最上階で漏り始めているなら、外壁の時期を待っていられません。この判断は「いま漏っているか」で決まります。漏っていなければ、まとめる方向で日程を組めます。

アパートやマンションの外壁側の話は、アパート・集合住宅の外壁塗装のページにまとめています。入居者への告知の作り方や、修繕費と資本的支出の扱いはそちらです。

なお、規模の大きい工事では「建設業許可」が必要になる金額の線引きがあります。発注前に、その会社が必要な許可を持っているか確認しておくと安心です(業者選びガイドで許可の調べ方を紹介しています)。

よくある質問

屋上防水の費用はいくらですか?

屋上の面積と、選ぶ工法と、いまの防水が何かで決まります。手がかりとして、メーカーが公表している材工単価があります。日本ペイントの設計価格表では、ウレタン防水の密着工法(厚さ2ミリ・平場)が11,920円/㎡、通気緩衝工法が19,790円/㎡。エスケー化研では同じく8,460円/㎡と16,020円/㎡です。

ただしどちらも300㎡以上が基準で、下地調整費・足場代・諸経費は含まれていません。戸建てやアパートの屋上はこの基準に届かないので、そのまま当てはめず、単価の「比率」を見る材料として使ってください。

屋上の防水方法にはどのようなものがありますか?

大きく4つです。アスファルト防水、シート防水(塩ビシート・ゴムシート)、ウレタン塗膜防水、FRP防水。このうち改修でよく使われるのがウレタン防水とシート防水です。

さらにウレタン防水は密着工法と通気緩衝工法に、シート防水は接着工法と機械的固定工法に分かれます。見積書に出てくる「工法名」は、たいていこの2段目の名前です。

屋上の防水は自分でできますか?

材料は市販されていますが、規定どおりの厚みにするのが難しい工事です。国の標準仕様書は、ウレタン防水材について「2回以上に分割して塗り付ける」「1工程当たりの使用量は、平場は2.5㎏/㎡、立上りは1.5㎏/㎡を上限とする」と定めています。つまり1日で厚く塗って終わりにはできず、乾かす日程が要ります。

塗り継ぎの重ね幅100㎜以上、下地の出隅を45°に面取りといった条件もあります。ひび1本を一時的に塞ぐ程度なら現実的ですが、全面は面積と日程の問題で成立しにくい工事です。

屋上防水は何年ごとにやりますか?

年数そのものを定めた条文は、なかなか見つかりません。国の標準仕様書もメーカーの価格表も、定めているのは材料・工程・使用量・膜厚であって、耐用年数ではありません。年数が書かれているのは保証書ですが、これは「もつ年数」ではなく「無償で直す約束の期間」です。

手がかりになるのは膜厚で、密着工法が2.0ミリ、通気緩衝工法が3.0ミリと価格表で決められています。実際の周期は屋上の使われ方で動くので、「何年ですか」より「次はいつ見ればいいですか」と聞くほうが答えが出ます。

屋上に人工芝やウッドデッキを敷いてもいいですか?

敷けますが、下が乾かなくなります。常に湿った状態が続けば防水層の傷みは早まりますし、敷いたままだと不具合に気づけません。膨れや剥がれが起きていても、めくらなければ分からない。置くなら、定期的にめくって下を見る前提で考えてください。

屋上に太陽光パネルを載せています。防水工事はできますか?

できますが、架台をどうするかで工事の内容と金額が変わります。いったん外すのか、避けて施工するのか。架台の足元は水の入り口になりやすい場所でもあるので、パネルがある屋上は、その足元の処理まで含めて見てもらってください。屋根の太陽光については太陽光パネルのページで扱っています。

屋上に室外機や物置があります。動かす必要がありますか?

床面全体を施工するなら、動かすことになります。誰が動かすのか(業者か施主か)、費用に含まれるのかを見積もりの段階で確認してください。重量物や配管がつながっている設備は、専門業者の手配が別に必要になることがあります。

防水工事の周期はどれくらいですか?

工法とトップコートの管理次第で変わるので、年数では決まりません。トップコートを定期的に塗り替えていれば、防水層そのものの寿命は延びます。逆に放置すれば、防水層まで傷んで全面やり替えになる。「安く済ませる」ではなく「早めに小さく手を入れる」ほうが、総額では安くなる工事です。

雨漏りしていますが、防水をやり替えれば止まりますか?

止まるとは限りません。屋上の雨漏りは、床面ではなくパラペットや設備の足元、外壁側から入っていることがあります。床の防水をやり替えても、そこが残っていれば漏り続けます。まず原因を特定してから工事の範囲を決めてください。散水調査という方法もあります(雨漏りのページ)。

戸建てでも屋上防水は関係ありますか?

関係します。陸屋根(平らな屋根)の戸建てや、屋上を設けた住宅では同じ話です。勾配のある屋根の家は屋根塗装のページのほうが該当します。

雨漏りしてから直すのでは遅いですか?

遅いというより高くつきます。防水のやり直しに加えて、濡れた下地や室内の補修が乗るためです。屋上は発見が遅れる場所なので、雨漏りの原因としても上位に入ります。

「屋上防水」と「陸屋根防水」は違うものですか?

ほぼ同じ意味で使われます。陸屋根(りくやね・ろくやね)は平らな屋根のことで、その防水工事が屋上防水です。見積書でどちらの表記でも、中身は同じと考えて差し支えありません。

参考にした情報

  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」9章 防水工事——シート防水(JIS A 6008 合成高分子系ルーフィングシート、固定金具は厚さ0.4mm以上)、塗膜防水(JIS A 6021 建築用塗膜防水材)、保護コンクリートを用いる工法の規定。公共工事の基準であり、戸建ての工事にそのまま適用されるものではありません
  • 株式会社日本住宅保証検査機構(JIO)「わが家の保険」設計施工基準——第18条(パラペットの上端部=金属製笠木の設置等)、第19条(屋根廻りのシーリング処理=設備配管の貫通部や埋込み金物の周囲)、第20条(排水勾配=保護コンクリート等の場合1/100以上)。新築住宅の瑕疵保険で用いられる基準の一例であり、法律そのものではありません
  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」3章 防水改修工事——2節(既存防水層等の撤去及び既存下地の処理)、6節(塗膜防水)。P0X工法・L4X工法と種別X−1・X−2の対応、ルーフドレン端部から300㎜・500㎜の撤去範囲、質量15㎏以上のハンドブレーカー使用時の協議、水はけ不良と勾配不良の切り分け、ひび割れ幅2㎜以上の処理。公共工事の基準であり、戸建てやアパートの工事にそのまま適用されるものではありません
  • 日本ペイント「建築用塗料・外装仕上げ塗材 設計価格表」屋上防水材の欄——パーフェクトプルーフ(JIS A 6021 ウレタンゴム系高伸長形相当品)の密着工法・密着工法(メッシュ入り)・通気緩衝工法の平場/立上り材工価格、300㎡以上を基準とする旨と100㎡までの30%増し、脱気筒15,000円/箇所(100㎡毎に1箇所設置)、層間用プライマー使用時の平場900円/㎡加算。メーカーが自社製品について公表している設計上の価格であり、実際の見積金額とは異なります
  • エスケー化研「設計価格表2026年度版」屋上塗膜防水材の欄・巻末注記——アーキルーフUAエコおよびクールタイトHIエコ工法の工法別設計価格と膜厚、公共建築工事標準仕様書X−1仕様・X−2仕様の価格。巻末注記「設計価格には、法定福利費、下地調整費、足場代、養生費、運搬費、諸経費は含まれておりません」「設計価格は、新築下地で同一淡彩色300m2以上を(特に指定がない場合)基準とする材工共の価格です」「改装の場合は下地の状況や仕様により割高になりますので予めご了承ください」

最終確認日:2026年9月10日。工法の可否や周期は既存の防水・下地・使用状況によって異なります。実際の判断は現地の点検にもとづいて行ってください。