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アパートの大規模修繕——木造なら1回目は11〜15年目。国交省の事例(木造6戸)では、屋根・外壁・足場まで約370万円の計画でした

アパートを持っていて、「そろそろ大規模修繕の時期と言われたけれど、何年ごとに、いくらかかるものなのか」「どれくらい積み立てておけばいいのか」を調べている大家さんに向けたページです。国土交通省は、賃貸住宅の大家さん向けに「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」を出していて、部位ごとの修繕の目安と、建物の種類ごとの費用のイメージを載せています。外壁・屋根の塗装は11〜15年目前後、屋根の防水や葺き替えは21〜25年目が目安で、同省の事例集にある木造6戸のアパートでは、1回目の屋根・外壁・鉄部・足場・経費で約370万円の計画でした。このページは、国の資料の原文と数字で整理しています。外壁塗装そのものの単価や、入居者への案内はアパートの外壁塗装のページに分けました。

先に答えを書きます

  • 何年ごと——国交省のガイドブックの目安で、外壁の塗装は11〜18年目、屋根の塗装・補修は11〜15年目、屋根の防水・葺き替えは21〜25年目、階段・廊下の鉄部の塗装は4〜10年目です。
  • いくら——同じガイドブックの木造10戸(1LDK〜2DK)のイメージでは、1回目にあたる11〜15年目が1棟あたり約640万円(給湯器の交換なども含む)。同省の事例集の木造6戸では、屋根・外壁・鉄部・足場・経費で約370万円の計画でした。
  • 積み立て——管理会社向けの手引きには、「建築費の1%を毎年」「大規模修繕の費用が年間の家賃収入を超えない程度」という2つの目安の例が載っています。足りなければ、融資の相談は早めに、と書かれています。
このページの内容全10項目

大規模修繕では工事の保証書が次の修繕計画の前提になります(何年後に何をやるかの起点が、前回の保証期間で決まるため)。書面で押さえる4点は外壁塗装の保証期間は何年?に。

大規模修繕とは——足場を組んで、外まわりをまとめて直す工事です

このページでは「大規模修繕」を、屋根・外壁・ベランダ・階段や廊下の塗装や防水を、足場を組んで何年かに一度まとめて行う工事、という意味で使います。国交省のガイドブックでも、築11〜15年目と21〜25年目の欄に、屋根・外壁の塗装(2回目は葺き替えも)と、ベランダ・階段・廊下の塗装・防水がまとめて並んでいます。

ガイドブックは、建物を「人の身体と一緒」と書き、手入れをしないと起きる不具合を部位ごとに挙げています。原文のまま並べます。

部位ガイドブックが挙げる不具合(原文)
屋根「塗装や防水処理の劣化によって、漏水や雨漏りが発生!」
外壁「ひび割れやタイルが浮いて、外観の劣化とともに、雨水が建物内部に浸水!」
手すり「錆や腐食によって、美観が損なわれるだけでなく、損壊・崩落の危険性が増大!」
給排水管「傷みや詰まりによって、水道水の濁りや室内に排水が逆流!」
給湯器・エアコン「故障しがちになって、入居者からのクレームが続出!」

出典=国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」1ページ「建物も人の身体と一緒です」。

このうち、足場が要るのは屋根・外壁・手すりまわりです。足場は組むだけで費用がかかるので、同じ足場で済む工事は同じ時期にまとめる、というのが大規模修繕の考え方の芯になります(あとで見る木造6戸の事例では、1回目の約370万円のうち足場が92万円でした)。給排水管や給湯器は、同じ計画表に入りますが、工事の時期はそれぞれの周期で動きます。

何年ごと——外壁・屋根の塗装は11〜15年目前後、防水と葺き替えは21〜25年目

ガイドブックは「建て方・資材、立地等にもよりますが、主な部位について、一般的に修繕を行う目安」として、次の年数を載せています。

部位工事目安
屋根塗装・補修11〜15年目
防水・葺替21〜25年目
外壁塗装11〜18年目
タイル張り補修12〜18年目
階段・廊下鉄部塗装4〜10年目
塗装・防水11〜18年目
給湯器・エアコン交換11〜15年目
給排水管高圧洗浄5年目
取替30年目

出典=国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」2ページ「不具合はいつごろから発生するの?」。ガイドブックは、この目安を国交省の「長期修繕計画作成ガイドライン」(2008年)、日本賃貸住宅管理協会「賃貸住宅版 長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)」(2014年)などを参考に作ったと注記しています。

国交省の管理会社向けの手引きには、日本賃貸住宅管理協会のマニュアルから引いた、もう少し細かい表もあります。木造のアパートに多い屋根と外壁の行を抜き出します。

部位工事修繕周期(年目)
傾斜屋根(カラーベスト)塗装11〜15
陸屋根・ルーフバルコニー塗装11〜15
防水処理21〜25
外壁(モルタル・サイディング・パネル)塗装11〜15
雨樋塗装11〜15
ベランダ塗装5〜10
防水処理11〜15
階段・廊下塗装5〜10
防水処理11〜15
土台防蟻処理11〜15

出典=国土交通省「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」34ページ。資料欄は「賃貸版長期修繕計画案作成マニュアル(改訂版)(公益財団法人日本賃貸住宅管理協会)より」。同じ手引きの33ページには分譲マンション向けの周期(外壁塗装等の塗替は12〜15年)もありますが、注記のとおり「中高層の単棟型マンション」を想定した表です。

2つの表を重ねると、読み取れることが2つあります。1つは、外壁・屋根・雨樋の塗装がそろって11〜15年目に来ること。足場を1回で済ませる理由が、周期の上でも重なっています。もう1つは、ベランダ・階段・廊下の塗装は5〜10年目で、外壁の半分くらいの周期だということです。1回目の大規模修繕の前に、鉄部やベランダの塗装が一度来る計算になります。ガイドブックの費用イメージでも、5〜10年目の欄に「ベランダ・階段・廊下(塗装)」が入っています。

予定の年は1つに決めず、「幅」で持つ

管理会社向けの手引きは、長期修繕計画の作り方の中で、こう書いています。

「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」(原文)

「修繕実施予定年は必ずしも特定年次にする必要はありません。○〜○年目など、幅で定めておき、その期間の中で実施するものとして取り扱います。」

幅のどこで工事をするかを決めるのは、点検です。ガイドブックは「実際の修繕を効果的に実施するタイミングを判断するためには、こまめな点検が大切です」とし、日常の清掃とあわせた点検、1年に1回などの定期点検、台風や地震のあとの臨時点検を挙げています。壁を触ると白い粉がつく「チョーキング」の見方はチョーキングのページにまとめています。

築12年目の診断で「劣化は軽度」。それでも早めの工事を提案された事例

国交省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック 事例編」の1つ目は、木造2階建てのアパートです。

項目事例編の記載
建物木造2階建て・6戸(2LDK)・延床面積288㎡・2007年築(事例の時点で築13年)
屋根・外壁鋼板・ガルバリウム鋼板/サイディング
まわりの状況駅徒歩15分・閑静な住宅街/周辺に競合物件が増加/入居者は建物の外観を重視
築12年目の建物診断チョーキング、外壁の一部汚れ、美観を損ねるごみ置き場
診断結果「外壁の劣化は軽度」
提案「修繕工事の早期の実施」「外壁の改修」
効果「建物の劣化の抑制」「修繕費の負担軽減」「物件イメージ向上」

劣化が軽いうちに工事をすると、なぜ修繕費の負担が軽くなるのか。管理会社向けの手引きは、その理由を「不具合や劣化が進行し、建物に腐朽や破損が生じてから修繕を行う場合の方が、計画修繕と比較して工事費がかさんでしまいます」と書いています。塗装で済むうちに塗る、ということです。チョーキング(壁を触ると白い粉がつく)は、その入口のサインです。

いくら——国交省の費用イメージと、木造6戸の事例の計画額

ガイドブックには、建物の種類ごとに30年分の「修繕時期・費用のイメージ」が載っています。木造10戸の2つを並べます(金額は1棟あたり)。

時期主な工事木造10戸(1LDK〜2DK)木造10戸(1K)
5〜10年目ベランダ・階段・廊下(塗装)、室内設備(修理)、排水管(高圧洗浄等)約90万円約70万円
11〜15年目屋根・外壁(塗装)、ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)、給湯器等(修理・交換)、排水管(高圧洗浄等)約640万円約520万円
16〜20年目ベランダ・階段・廊下(塗装)、室内設備(修理)、給排水管(高圧洗浄等・交換)、外構等(修繕)約230万円約180万円
21〜25年目屋根・外壁(塗装・葺替)、ベランダ・階段・廊下(塗装・防水)、浴室設備等(修理・交換)、排水管(高圧洗浄)約980万円約800万円
26〜30年目ベランダ・階段・廊下(塗装)、室内設備(修理)、給排水管(高圧洗浄等・交換)、外構等(修繕)約230万円約180万円
30年の合計約2,160万円(1戸あたり約216万円)約1,740万円(1戸あたり約174万円)

出典=国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」6〜7ページ。1LDK〜2DKの11〜15年目の欄は、ガイドブックの図では「屋根・外壁(塗装)」「ベランダ・階段・廊下(塗装)」「給湯器等(修理・交換)」「排水管(高圧洗浄等)」。注記は「30年目以降も修繕は必要になります。」「※税制上の耐用年数は、木造の場合、22年とされています。」「個別の物件によって、具体的な時期や金額は異なります。」

表から読めることを3つ書きます。

  • 1回目の大きな山は11〜15年目1LDK〜2DKの10戸で約640万円、1戸あたり約64万円。この欄には給湯器の修理・交換も入っているので、外まわりだけの金額ではありません。
  • 2回目は1回目の約1.5倍21〜25年目は約980万円で、1回目の約640万円の1.53倍です。この欄には、屋根・外壁の「葺替」、ベランダ・階段・廊下の「防水」、浴室設備などの交換が入っています(1回目の欄は塗装と給湯器など)。
  • 30年でならすと、年に約72万円1LDK〜2DKの10戸で30年に約2,160万円。1年あたりにすると約72万円です(当サイトで割った数字)。

木造6戸の事例では、1回目が約370万円——そのうち足場が92万円

前の章の木造6戸のアパートについて、事例編は長期修繕計画の表を載せています。建物本体の行だけを抜き出します(単位は万円)。

工事内容11〜15年目21〜25年目
屋根・屋上防水塗装3535
外壁塗装・シーリング打替173207
鉄部・非鉄部塗装1414
足場仮設9292
経費・消費税5656
合計(当サイトで足したもの)370404

出典=国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック 事例編」2ページ「長期修繕計画の概要」。事例編の表では、これに日常修繕(日常修理・消防点検)が加わり、建物全体の小計は11〜15年目が422万円、21〜25年目が457万円と書かれています。同じ事例は国交省の管理会社向けの手引きにも載っていて、そちらには建物の建設費「42,000千円」とあります。

  • 足場は370万円の約25%92万円は、外壁の173万円の半分を超えます。屋根・外壁・鉄部を同じ足場でまとめる理由が、金額で見えます。
  • 1戸あたりにすると約62万円ガイドブックの木造10戸のイメージ(1戸あたり約64万円・給湯器なども含む)と、範囲は違いますが、同じくらいの大きさです。
  • 建設費の約9%370万円÷4,200万円=約8.8%。次の章の「建築費の1%を毎年」の物差しと突き合わせられます。
  • 2回目は外壁だけが上がる173万円→207万円(約2割増)。事例編は理由を書いていません。

外壁の行が「塗装・シーリング打替」と、シーリング(サイディングの継ぎ目のゴム状の材料)とセットになっている点も見ておいてください。この事例の計画は、壁の塗装と継ぎ目の打ち替えを同じ行に入れ、同じ時期に見込んでいます。継ぎ目の話はシーリングのページにあります。

計画の金額は「いまの値段」。上に振れることがある

管理会社向けの手引きは、計画の修繕費の出し方について、次のように書いています。

「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」Step4 修繕費の算定(原文)

「使われている部材のグレードや、経過年数などによって大きく異なってくることから、厳密には、施工業者などから見積を取り、それに基づいて設定することが望ましいと言えます。」

「計画上の修繕費は現時点で想定される工事をした場合の金額であり、将来工事費が高騰した場合には上振れする可能性があること、想定より劣化・不具合が進行している場合、想定した工事より規模が大きくなる可能性があること等については、あらかじめオーナーに理解してもらう必要があります。」

つまり、上の約640万円や約370万円は、あくまで国の資料の目安と事例の計画額です。自分のアパートでいくらになるかは、建物を見てもらった見積もりでしか分かりません。外壁塗装の部分の単価が、戸建てと違って「300㎡以上」の列で読めることはアパートの外壁塗装のページに書きました。

積み立ての目安——国交省の手引きにある2つの物差し

長期修繕計画があれば、いつ・いくら要るかが分かるので、積み立てる額も逆算できます。管理会社向けの手引きは、計画をもとに積立額を決める方法とは別に、「次のような積立額の目安をオーナーに案内している管理業者の例」を2つ載せています。

物差し手引きの例(原文)
例1:建築費の一定割合を毎年「建築費が1億円で、その1%を積み立てると、年間100万円積み立てて、10年後の大規模修繕には1,000万円を資金として利用できます。」
例2:大規模修繕の費用が年間の家賃収入を超えない程度「年間家賃収入が300万円であれば、10年後の大規模修繕までに300万円積み立てることを目安に、毎月の家賃収入から2万5,000円を積み立てることになります。」

出典=国土交通省「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」。手引きは続けて「いずれにしても、修繕に必要な積立額を具体的に、オーナーに示すことが重要です」と書いています。

例1を、前の章の木造6戸の事例に当てはめてみます。建設費4,200万円の1%は年42万円。11年目の終わりまでに462万円たまり、1回目の計画額370万円を上回ります。ただしこれは、途中の5〜10年目の鉄部やベランダの塗装、設備の修理をこの積立から出さない場合の計算です。

ガイドブックには、鉄筋コンクリート造20戸の例で、25年目までの修繕費をまかなう積立を「毎月1戸あたり約7,000円と仮定」したグラフもあります。建物の構造も戸数も違うので、そのまま使える数字ではありませんが、「1戸あたり月いくら」で考える見方の参考になります。

積み立てが足りないとき——国の資料が挙げている手

ガイドブックは「修繕を実施していない賃貸人の多くは『資金的余裕がない』ことを理由として挙げています」と書いたうえで、資金の確保の方法として、積み立て(定期預金などの預貯金・金銭信託・修繕などを目的とした共済など)と、融資を挙げています。

「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」(原文)

「もし、積立額が不足しそうであれば、金融機関等からの融資が可能かどうか、早めにご相談しましょう。

もう1つ、事例編には、工事そのものを年ごとに分ける「分割施工方式」の例があります。鉄筋コンクリート造8階建て・33戸の賃貸マンションで、屋上防水を1年目、外壁を東面・南面・西面・北面の順に2〜5年目に分けて工事し、契約は「原則15年の発注請負契約」、支払いは「工事費総額の20%を当初2年間で支払い、残りの80%を契約期間月数で毎月定額にて支払う」形です。

木造2階建てのアパートで同じ形になるとは限りません。面ごとに分けると足場を組む回数が増えることがあるので、分割を持ちかけられたら、足場代が1回ぶんなのか、面ごとなのかを見積書で確かめてください。

修繕しないと、どうなるか——国交省が描く「負のスパイラル」

ガイドブックは、修繕を先送りしたときの流れを6段階の図にしています。

  • 1 外観の劣化など築年数がたつと、周辺の新築物件などと比べた競争力が落ちていく。
  • 2 競争力の低下放置すると「家賃収入にも響いてくるでしょう」。
  • 3 修繕費の確保困難いよいよ大規模な修繕が必要なときに、費用を確保できない。
  • 4 一層の老朽化直せないまま、傷みが進む。
  • 5 さらなる競争力の低下入居が決まりにくくなる。
  • 6 人が住めない状態にガイドブックの言葉では「人が住めない状態にもなりかねません」。

管理会社向けの手引きは、もっと手前の具体例も挙げています。「劣化を放置したことで、外壁に破損が生じ雨水が住戸内に浸入した場合、修繕するために入居者には一時退居をしてもらわなければなりません。宿泊費や浸水した所持物の補償費用を負担する必要が生じるなど余計な出費が掛かってしまいます」。塗装の費用だけでは済まない出費が、ここで生まれます。入居者から雨漏りの連絡を受けたときの決まりは賃貸の雨漏りのページにまとめています。

計画的に修繕している大家さんは、約4割

国の調査では、計画修繕はまだ広まっていません。

調査結果
大家さんへのアンケート(国交省・令和4年度)計画的に修繕を実施しているオーナーは約4割、約2割は計画修繕を実施していないと回答
管理会社へのアンケート(国交省・令和5年3月の報告書)計画修繕を実施していない管理会社が21.4%。理由は「提案したくてもノウハウがない」37.8%、「計画修繕を管理委託業務にしていない」35.1%、「必要な時に修繕すれば十分」29.7%(複数回答)
管理会社10社への聞き取り(住宅改良開発公社・令和4年6月の報告書)物件ごとに長期修繕計画を作っているのは5社、共通の計画で提案しているのが2社、残り3社は「オーナーに頼まれた時のみ作成」。理由は「労力を要する割に修繕受注につながらない」

出典=国土交通省「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」(「はじめに」と「計画修繕の実態」)、一般財団法人住宅改良開発公社「賃貸住宅の長期修繕計画の現況及び適切性等に関する調査研究[報告書]」。

ここから言えるのは、管理会社に任せていれば、長期修繕計画が自然に出てくるとは限らないということです。まだ計画を見たことがなければ、管理会社に「この建物の長期修繕計画はありますか」と聞いてみてください。無ければ、次の章の段取りで、自分で骨組みを作れます。

長期修繕計画の作り方——ガイドブックの4つの段取り

ガイドブックは、計画修繕の流れを「準備→点検→修繕→次の修繕に備える」の4つで説明しています。

  • 1 準備をする屋根・外壁・階段や廊下・給排水管・外構などについて、いつ点検・修繕をして、どの程度の費用がかかるかを把握する。ガイドブックは「賃貸住宅を建てるときの建設会社からの提案に、これらの情報が含まれている場合もあります」とし、「点検チェックシート」と「長期修繕計画」を作ることを勧めています。
  • 2 点検をする日常の清掃とあわせた点検、1年に1回などの定期点検、台風や地震のあとの臨時点検。「早めに見つかれば、部分的な修繕による対応が可能」とあります。法令で決まっている点検(法定点検)も別にあります。
  • 3 修繕をする点検で不具合を見つけたり、計画の時期が近づいたりしたら、劣化診断や精密な検査をして、修繕の内容を決め、「工事費用の見積りを取って、修繕工事を実施しましょう」。
  • 4 次の修繕に備える「工事終了は、次の修繕に向けた出発点です」。今回の図面や現場写真などを整えて保管し、記録を残す。

自分で作る計画は、最初は粗くてかまいません。上の2つの周期の表から、自分の建物にある部位の行を拾い、築年数を当てはめて、「11〜15年目に屋根・外壁・鉄部・足場」「21〜25年目に屋根の葺き替えか防水」の2つの山を置くだけでも、積み立ての額が決められます。金額の欄は、目安の表で仮置きし、見積もりが取れたら置き直します。

4の記録は、見落とされやすいところです。どの塗料を何回塗ったか、継ぎ目を打ち替えたか増し打ちだったかは、次の見積もりを比べるときの基準になります。工事が終わったら、塗料の製品名と工程が書かれた書類と写真を、建物ごとにまとめて保管してください。

誰に頼むか——発注の3つの形と、工事のまとめ方

事例編は、大規模修繕の頼み方を3つに分けて、それぞれの良い点を挙げています。

方式頼み方事例編が挙げる良い点(原文)
管理会社一任方式調査・設計から施工、工事監理、検査までを管理会社に一任(多くの場合、管理会社から施工会社へ外注)「オーナーの手間が軽減(工事中の苦情、要望等の窓口は日常管理業務と同じ)」「物件の入居状況や周辺家賃動向を踏まえ、リノベーションを含む修繕の投資提案も可能」
責任施工方式調査・設計から施工、工事監理、検査までを施工会社に一括して発注「初期の段階から施工等に配慮した検討が可能」「初期の段階から一社指名での発注となるため、公募・入札方式を採用することにより修繕費の削減も可能」
設計監理方式調査・設計、施工会社の選定、工事監理を設計コンサルタントに委託し、施工は施工会社に発注「中立的な立場で工事監理の委託が可能」「施工会社選定に競争原理が働き、修繕費の削減が可能」「統一仕様書による入札が可能なため、見積もりなどの比較検討が容易化」

出典=国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック 事例編」5ページ「計画修繕の発注方式」。

資料が費用を下げる手として挙げているのは、責任施工方式の「公募・入札」と、設計監理方式の「競争原理」「統一仕様書による入札」です。どちらも、同じ中身で複数の会社の金額を並べることです。管理会社に任せる場合でも、管理会社が出してきた見積もりを、別の会社の見積もりと並べて見ることはできます。並べるときは、屋根・外壁・鉄部・足場の行が分かれているか、外壁の塗料の製品名と塗る回数が書いてあるかをそろえてください。見方は見積書のチェック項目に一覧にしています。

工事のまとめ方には、事例編の言葉で「一括施工方式」(修繕周期に基づいて建物診断をしたあと、対象となる共用部分を一括して工事し、そのたびに請負契約を結ぶ)と、前の章で見た「分割施工方式」があります。木造2階建てのアパートなら、一括の形のほうが足場を組む回数は少なくて済みます。

税金の扱いは、別のページで

大規模修繕の支出が、その年の経費(修繕費)になるのか、建物の価値を上げたとして何年かに分けて経費にする資本的支出になるのかは、工事の中身ごとに判定します。事例編も、修繕費の税務上の取り扱いについて「※税務署の判断による」と注記しています。国税庁の基準の読み方は外壁塗装は修繕費になるかのページに、アパートの場合の注意はアパートの外壁塗装のページにまとめました。判定は税理士か税務署に確かめてください。

よくある質問

アパートの大規模修繕にかかる費用はいくらですか?

国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」の木造10戸(1LDK〜2DK)のイメージでは、1回目にあたる11〜15年目が1棟あたり約640万円、1戸あたり約64万円です(給湯器の修理・交換なども含む)。同省の事例編にある木造6戸のアパートでは、屋根・外壁・鉄部・足場・経費で約370万円の計画でした。どちらも目安で、実際の金額は建物を見てもらった見積もりで決まります。

大規模修繕は何年ごとに行うのが目安ですか?

同じガイドブックの目安では、外壁の塗装が11〜18年目、屋根の塗装・補修が11〜15年目、屋根の防水・葺き替えが21〜25年目、階段・廊下の鉄部の塗装が4〜10年目です。管理会社向けの手引きは、予定の年を1つに決めず「○〜○年目など、幅で定めておき」、点検の結果で時期を決めるよう書いています。

賃貸で10年以上住んでいても、修繕費は発生しますか?

外壁や屋根などの修繕は、大家さんの義務です。民法606条1項は「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」としています(入居者の責任で必要になった修繕は除く)。いっぽう、大家さんが建物の保存に必要な工事をするときは、入居者はそれを拒めません(同条2項)。

賃貸の大規模修繕で、よくあるトラブルは?

入居者にとっては、工事中の音やにおい、足場やネットで洗濯物が外に干しにくいことがよく挙がります。大家さんにとっては、劣化を放置した結果の雨漏りが大きく、国交省の管理会社向けの手引きは、入居者に一時退居してもらい、宿泊費や浸水した持ち物の補償が必要になる例を挙げています。入居者への案内の時期と内容は、アパートの外壁塗装のページにまとめています。

修繕の積み立ては、いくらを目安にすればいいですか?

管理会社向けの手引きには、管理会社が大家さんに案内している目安の例として、「建築費の1%を毎年」(建築費1億円なら年100万円、10年で1,000万円)と、「大規模修繕の費用が年間の総家賃収入を超えない程度」(年間の家賃収入300万円なら10年で300万円、毎月2万5,000円)の2つが載っています。長期修繕計画を作れば、必要な額はもっと具体的に出せます。

大規模修繕の費用が払えないときは、どうすればいいですか?

国交省のガイドブックは、積み立てが足りなさそうなら「金融機関等からの融資が可能かどうか、早めにご相談しましょう」と書いています。同省の事例編には、屋上と外壁の面ごとに年を分けて工事し、費用を15年の契約で月々払う「分割施工方式」の例もあります(鉄筋コンクリート造の賃貸マンションの例)。分割にすると足場を組む回数が増えることがあるので、足場代の入り方を見積書で確かめてください。

あわせて読みたい

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足場・外壁・屋根の行を並べて比べる

大規模修繕の計画は、国の資料の目安で骨組みを作り、自分の建物の見積もりで金額を置き直すものです。何社かに同じ建物を見てもらい、足場と外壁の行が分かれた見積もりを並べてください

このページの内容は、2026年9月11日に国土交通省などの公開資料で確認したものです。最終確認日:2026年9月11日。

参考にした情報

  • 国土交通省 住宅局「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」——部位ごとの不具合と修繕の目安、負のスパイラル、鉄筋コンクリート造・木造の修繕時期と費用のイメージ、点検・修繕・記録の流れ、積立のグラフ(毎月1戸あたり約7,000円の仮定)、資金の確保方法
  • 国土交通省「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック 事例編」——木造2階建て6戸の事例(建物診断・長期修繕計画の概要)、計画修繕の発注方式(管理会社一任・責任施工・設計監理)、一括施工方式と分割施工方式
  • 国土交通省 住宅局参事官(マンション・賃貸住宅担当)付「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」——家主アンケート(令和4年度)と管理業者アンケート(令和5年3月の報告書)の結果、修繕周期の表(賃貸版長期修繕計画案作成マニュアルより)、「幅で定めておき」、修繕費の算定、積立額の目安の例、外壁の破損による一時退居の例
  • 一般財団法人 住宅改良開発公社「賃貸住宅の長期修繕計画の現況及び適切性等に関する調査研究[報告書]」(令和4年6月)——管理会社10社への聞き取りの結果
  • 民法 第606条(e-Gov法令検索)——賃貸人の修繕義務と、保存行為を賃借人が拒めないこと

いずれも2026年9月11日確認。