サーモアイSiとクールタイトSi——屋根の遮熱塗料を、公式の数字で比べる

屋根の遮熱塗料を調べると、この2つの名前にたどり着きます。日本ペイントのサーモアイSiと、エスケー化研のクールタイトSi。ところが検索すると、同じ製品なのに耐用年数が「6〜8年」と書くサイトと「12〜15年」と書くサイトが並んでいます。倍近く違う。どちらが本当なのか——調べた結論を先に書きます。両メーカーとも、公式には年数を書いていません。このページでは、両社が実際に公表している数字(規格・設計価格・色ごとの日射反射率)だけで2製品を並べます。そして、製品選びより効く要素も出てきます。

このページの内容

まず、耐用年数の食い違いから片づけます

実際に検索結果に並んでいる数字を拾うと、こうなっていました(2026年8月時点)。

製品あるサイト別のサイトさらに別のサイト
クールタイトSi6〜8年10〜13年12〜15年
サーモアイSi8〜12年12〜15年約12〜15年

クールタイトSiは6〜8年と12〜15年が同時に存在する状態です。倍違います。どれかが嘘というより、誰も出どころを示していないのが実態でした。

そこで両メーカーの公式製品ページを確認しました。結果は次のとおりです。

  • 日本ペイント サーモアイSi製品ページに期待耐用年数の記載はありません。書かれているのは規格(JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 2種2級)と、色ごとの日射反射率です。
  • エスケー化研 クールタイトSiこちらも年数の記載はありません。書かれているのは一般名称「低汚染・超耐久型アクリルシリコン樹脂系屋根用遮熱塗料」、規格(同じくJIS K 5675 2種2級)、設計価格です。

ここが面白いところです。エスケー化研は外壁の塗料では期待耐用年数を年数で明記しています(エスケープレミアムシリコンは14〜16年)。同じメーカーが、屋根の塗料には年数を書いていない。屋根は日射も雨も直接受け、勾配や屋根材で条件が大きく変わる場所です。書かない判断そのものに理由があると読むほうが自然でしょう。
当サイトも、根拠のない年数をここで足すことはしません。「◯年もちます」と言われたら、その年数がどこに書いてあるのかを聞いてください

公式スペックで並べる——同じ規格・同じ等級

両社が公表している数字を、同じ条件で並べます。

サーモアイSi(日本ペイント)クールタイトSi(エスケー化研)
樹脂・液型シリコン/弱溶剤・2液アクリルシリコン/弱溶剤・二液
規格JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 2種2級JIS K 5675 屋根用高日射反射率塗料 2種・2級(艶有り)
色数公式ページに40色(色ごとに反射率を公表)標準41色
つやつや有り艶有り/3分艶
設計価格(スレート屋根)6,400円/㎡(3工程・下塗りサーモアイシーラー)5,430円/㎡(下塗材込)
設計価格(金属・トタン屋根)6,240円/㎡(3工程・下塗りサーモアイプライマー)5,380円/㎡(下塗材込)
適用下地スレート・波形スレート、金属屋根・トタン、住宅用化粧スレート彩色スレート瓦・スレート屋根・金属屋根・トタン屋根等

読みどころは3つです。

  • 規格も等級も同じですどちらも JIS K 5675 の 2種2級。遮熱塗料としての土俵は同じところに立っています。「うちの塗料は特別」という説明が出てきたら、この規格表示を確認してください。
  • 設計価格には1,000円前後の差がありますスレート屋根で6,400円と5,430円。ただしこの2つは同じ会社が同じ方法で積算した数字ではないので、単純な優劣ではありません。見るべきは「同じグレード帯でもメーカーで価格の置き方が違う」という構造のほうです。
  • そして、この金額を見積書と比べないでください両社とも「300㎡以上を基準とする材工共の価格」と明記し、下地調整費は含まれていません(エスケー化研は「下地調整費は含んでおりません」と明記)。戸建て1棟の屋根は300㎡よりはるかに小さいので、実際の見積もりはこの単価より高くなると考えてください。規模で単価がどれだけ変わるかを公式に数字で出しているメーカーもあります(ビーズコートのページに実例があります)。

色で反射率が3倍変わります

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。日本ペイントはサーモアイSiの全色について、日射反射率を公表しています。抜き出すと、こうです。

全日射反射率近赤外反射率
クールホワイト91.0%87.8%
クールパールライト75.9%85.0%
クールベビーブルー70.4%84.5%
クールクリーム67.0%85.0%
クールライトグレー54.0%77.3%
クールブラウン39.0%71.3%
クールブラック28.4%61.0%
クールナスコン26.6%57.4%

クールホワイト91.0%に対して、クールナスコンは26.6%。3倍以上の差です。同じ製品、同じ価格、同じ工程で、色を選ぶだけでこれだけ変わります。

つまり——「どの遮熱塗料を選ぶか」より、「何色にするか」のほうが、暑さへの効き方をはるかに大きく左右します。遮熱塗料の効果そのものや、断熱塗料との違いは遮熱塗料・断熱塗料のページに整理していますが、そこで書いた「最強の遮熱塗料の答えは製品ではなく色」という結論が、メーカーの公表値でそのまま裏付けられた形です。

ただし、白い屋根には現実的な話もあります。汚れが目立ちやすいこと、そして家の外観の印象が大きく変わること。屋根を真っ白にできる家はそう多くありません。だから実務的な落としどころは「黒に近い色を避けて、いける範囲で明るくする」になります。表を見ると、ライトグレー(54.0%)とブラック(28.4%)でも倍近い差がついています。この一段で十分意味があります。

なぜ濃い色でも「普通の塗料より」は効くのか

上の表をもう一度見てください。クールブラックは全日射28.4%なのに、近赤外は61.0%。この2つの数字の開きが、遮熱塗料の正体です。

  • 太陽の光には、目に見える光(可視光)と、見えない光(近赤外線)が含まれます熱をたくさん運んでくるのは、後者の近赤外線のほうです。
  • 可視光は「色そのもの」なので、反射率を上げると色が変わってしまいます黒い屋根を黒く見せるには、可視光を吸収するしかありません。ここは技術で動かせない部分です。
  • そこで遮熱塗料は、目に見えない近赤外線だけを選んで反射しますだから黒でも近赤外を61%返せる。見た目は黒いまま、熱を運ぶ成分だけ跳ね返す——これが「遮熱塗料」の技術の中身です。

この仕組みが分かると、営業トークの妥当性も判断できます。「濃い色でも遮熱塗料なら涼しくなります」は半分正しい——同じ濃い色の普通の塗料と比べれば効きます。しかし白い屋根には勝てません。両方を正直に言う業者なら、説明を信用していいと思います。

下塗りも遮熱に効きます——検索が多い理由

この2製品を調べていると、「サーモアイシーラー」「クールタイトプライマー」といった下塗り材の名前がやけに多く検索されていることに気づきます。理由は、公式の説明を読むと分かります。

「サーモアイシリーズ専用のスレート系屋根用下塗り(シーラー)。サーモアイと併せて下塗りに使用することにより、塗膜の日射反射率を向上させます」(日本ペイント サーモアイシーラー 製品ページ)

下塗りが、遮熱性能そのものに関わっているのです。上塗りをすり抜けた光を下塗りが反射して押し返す、という考え方です。エスケー化研の材工価格が「下塗材込」で示されているのも、上塗りと下塗りをセットで設計している表れといえます。

さらにサーモアイシーラーには、「エポキシ樹脂によって、ぜい弱素材の表面を補強し、素材と強固に密着します」という説明もあります。古いスレート屋根は表面がもろくなっていることがあり、その補強を下塗りが担っているわけです。

施主として確認することは1つで足ります——見積書の屋根の欄に、下塗りの製品名が書かれているか。「サーモアイSi 3回塗り」としか書かれていないなら、下塗りに何を使うのかを聞いてください。専用の下塗りを使わなければ、公表されている遮熱性能の前提が崩れます。見積書の読み方は屋根の見積書のページに、内訳全体は見積書の内訳のページにまとめました。

そもそも塗れない屋根があります

もうひとつ、メーカーが公式に書いている重要な注意があります。クールタイトSiの適用下地の欄です。

「※彩色スレート瓦・スレート屋根の場合、基材自体の強度低下が著しく、塗装できない場合もありますのでご注意ください」(エスケー化研 クールタイトSi 製品ページ)

塗料メーカー自身が「塗れないことがある」と書いています。遮熱かどうか以前に、その屋根がまだ塗って延命できる状態なのか——そこが先です。踏むと割れるほど傷んだスレートに塗料を重ねても、性能は出ませんし、割れは止まりません。屋根材ごとの判断は屋根塗装のページスレート屋根のページに書きました。塗装で済まない段階なら、葺き替えカバー工法の検討に移ります。

どちらを選ぶか

ここまでの整理をまとめると、選び方はシンプルになります。

  • 製品同じJIS等級なので、製品名で決める必要はありません2種2級という同じ土俵。どちらを扱っているかは業者の仕入れ事情による部分が大きいので、「なぜこの製品なのか」を聞いて、答えられるかどうかを見るほうが有益です
  • 暑さ対策が目的なら、色こそが本体です反射率で3倍変わります。外観として許せる範囲で、いちばん明るい色——これが遮熱の最適解です
  • 下塗り専用の下塗りが見積書にあるかを確認下塗りが日射反射率に関わります。ここを外すと、上塗りの性能値は前提から崩れます
  • 前提その屋根が「塗れる状態か」が最優先メーカー自身が「塗装できない場合もある」と書いています。遮熱の議論は、塗って延命できる屋根であることが前提です

そして、遮熱塗料を入れるかどうか自体も、金額と相談です。「遮熱あり」と「遮熱なし」の両方で見積もりを出してもらえば、差額に対して割に合うかを自分で判断できます。2階が夏に暑い家、屋根が濃い色の家ほど、払う価値は出やすくなります。

よくある質問

サーモアイSiとサーモアイ4F、サーモアイDFは何が違いますか?

同じサーモアイシリーズの樹脂グレード違いです(Siはシリコン、4Fはフッ素)。上のグレードほど耐候性を高めた設計になりますが、遮熱の効き方を決めるのは主に色という構造は変わりません。予算配分を考えるときは、「グレードを上げる」と「明るい色にする」のどちらが自分の目的に効くかで考えてください。

サーモアイウォールは屋根用ですか?

いいえ、名前のとおり外壁用です(水性サーモアイウォールSi、ファインサーモアイウォールSiなど)。屋根用のサーモアイと混同されやすいので、見積書のどの行に書かれているかを確認してください。外壁の遮熱については遮熱塗料のページへ。

遮熱塗料を塗ると、冬は寒くなりますか?

遮熱塗料は日射を反射するものなので、理屈のうえでは冬の日射取得も減ります。ただし冬は太陽高度が低く日射量そのものが少ないため、夏の効果ほど体感しにくいと説明されるのが一般的です。当サイトは体感差の数字を持っていないので断定しません。「熱を閉じ込める」働きは持っていない(=断熱ではない)という点だけは、混同しないでください。

「マイナス◯℃」という宣伝は本当ですか?

測っているのが屋根表面の温度なのか、室内の温度なのかで意味がまったく違います。屋根表面が下がっても、天井裏の断熱の状態によって室内までどれだけ届くかは変わります。数字を見たら「どこを測った数字ですか」と確認してください。当サイトが根拠を確認できるのは、ここで挙げた日射反射率までです。

最終確認日:2026年8月22日。出典:日本ペイント「サーモアイSi」製品ページ(規格・製品詳細情報・色別の全日射反射率/近赤外反射率・材工価格)、同「サーモアイシーラー」製品ページ、エスケー化研「クールタイトSi」製品ページ(一般名称・規格・設計価格・適用下地の注意書き)。材工価格・設計価格はいずれも原則300㎡以上を基準とする材工共の価格で、下地調整費・足場代等は含みません。戸建て1棟の見積もりは、この単価より高くなると考えてください。仕様は改定される場合があります。

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