スーパーシャネツサーモSiとFの違い——公式の説明文を並べたら、差は年数だけでした
見積書に「スーパーシャネツサーモSi」または「F」と書いてあった方へ。アステックペイントの屋根用遮熱塗料です。
この2つの違いを調べようとすると、たいてい「Fのほうが高級」で終わります。そこでメーカーの製品ページを2つ開いて、書いてあることを並べてみました。結果は単純で、公式が差をつけているのは期待耐用年数だけでした。特長の説明文は、「シリコン」か「フッ素」かの一語を除いてほぼ同じ文章です。(2026年8月30日確認)
まず、数字を並べます
| 項目 | スーパーシャネツサーモSi | スーパーシャネツサーモF |
|---|---|---|
| 期待耐用年数 | 13〜16年 | 16〜20年 |
| 遮熱性 | 〇 | 〇 |
| 低汚染性 | 表示なし(-) | 表示なし(-) |
| 防水性 | 表示なし(-) | 表示なし(-) |
| 防カビ・防藻性 | 表示なし(-) | 表示なし(-) |
| 色 | 21色 | 21色 |
| 用途 | 屋根 | 屋根 |
年数以外、すべて同じです。色数も21色でそろっていて、カラーラインアップの名前(クレタグレー、カーボングレー、エバーグリーン…)も同じ並びです。
🔑見落とされやすいのが「低汚染性」「防水性」「防カビ・防藻性」が表示なしになっていることです。この製品は遮熱に振った塗料で、汚れにくさやカビ・藻への強さは公式に謳われていません。「高いほうを選べば全部よくなる」わけではない、ということです。
説明文まで並べると、もっとはっきりします
メーカーは両方の製品ページに「特長」を3つ挙げています。遮熱性・高耐候性・変色退色しにくいの3つです。その本文を読み比べると、こうなっています。
| 特長 | Siの説明 | Fの説明 |
|---|---|---|
| 遮熱性 | 「チタン複合特殊無機顔料」が、高い日射反射率で屋内温度上昇を抑えます | 同じ文章(製品名だけ差し替え) |
| 高耐候性 | 従来のシリコン塗料をしのぐ「高耐候性」を実現! | 従来のフッ素塗料をしのぐ「高耐候性」を実現! |
| 変色・退色しにくい | 紫外線の影響を受けにくい「チタン複合特殊無機顔料」を使用しているため… | 同じ文章(製品名だけ差し替え) |
「高耐候性」の行だけ、比較の相手が変わっています。Siは従来のシリコン塗料と比べ、Fは従来のフッ素塗料と比べている。それぞれのグレードの中で高耐候だ、という言い方です。
ラジカル制御の説明も、両方まったく同じ文章が載っています。従来の塗料の顔料に使われる酸化チタンは、紫外線を浴びると「ラジカル」という劣化因子を発生させる。この製品はその発生を抑え、発生してもシールド層が放出を防ぐ——という内容です。
つまり技術の中身は共通で、樹脂のグレードが違うという製品設計になっています。だから公式の差が年数だけになる。ここまで分かると、選び方も決まります。
では、SiとFのどちらを選ぶか
公式が示している差が年数だけなら、判断材料も年数と金額の2つだけになります。
- Si=13〜16年/F=16〜20年。下限どうしで3年、上限どうしで4年の差
- その3〜4年を買うために、いくら上乗せになるか
ここで「あと何年その家に住むか」が効いてきます。次の塗り替えを1回で終わらせたいのか、その前に建て替えや住み替えを考えているのか。年数の差は、その計画と噛み合ってはじめて意味を持ちます。
⚠️そして期待耐用年数は保証年数ではありません。メーカーが示す目安であって、屋根の向き、勾配、下地の状態、地域の日射や積雪で変わります。外壁・屋根は何年もつのかのページにも書きましたが、年数は「同じ条件で比べたときの順番」を示すものと考えたほうが実態に近いです。
金額のほうは、見積もりを取って確かめるしかありません。同じ製品でも会社によって金額は変わります。SiとFで見積もりを2本出してもらって、差額を見てから決めるのがいちばん確実です。「Fのほうがいいですよ」と言われたときに、その差額が3〜4年に見合うかを自分で判断できます。
🔑 下塗りにも「遮熱」があります
ここが、このページでいちばん伝えたいところです。
遮熱塗料の話は、たいてい上塗りの製品名だけで進みます。でもアステックペイントには、遮熱性を持つ下塗り材があります。
| 製品 | 遮熱性 | 色 | 役割 |
|---|---|---|---|
| サーモテックシーラー | 〇 | 白・グレー | 下塗り(シーラー) |
| サーモテックメタルプライマー | 〇 | 白・グレー | 金属屋根用の下塗り |
上塗りだけ遮熱にして、下塗りは普通のシーラー——という組み合わせもできてしまいます。見積書に「スーパーシャネツサーモSi」とだけ書いてあると、下に何を塗るのかは分かりません。
だから見積書で確認するのは、上塗りの名前ではなく「下塗り材の製品名」です。ここに「サーモテック」と付いているかどうか。複数社から見積もりを取ると、この行の書き方の差がはっきり出ます。下塗りを製品名で書く会社と、「下塗り 一式」で済ませる会社があります。前者のほうが、何を使うか決めてから見積もっています。
なお金属屋根なら「メタルプライマー」のほうになります。屋根材によって下塗りが変わるので、スレート屋根か金属屋根かで見積書の中身も変わります。
「ラジカル制御」はグレードの名前ではありません
この製品の説明にも「ラジカル制御技術」が出てきますが、ラジカル制御はグレードを表す言葉ではありません。ウレタン・シリコン・フッ素・無機というのが樹脂のグレードで、ラジカル制御はそこに乗る技術の名前です。
実際、スーパーシャネツサーモはSiにもFにもラジカル制御が入っています。「ラジカル制御だから上位グレード」ではないことが、この2製品を並べるとよく分かります(塗料の種類のページ)。
営業の場面で「ラジカル制御の塗料です」と言われたら、「樹脂は何ですか」と聞き返してください。シリコンなのかフッ素なのかで、期待耐用年数も金額も変わります。
黒い屋根を選びたい人ほど、意味があります
メーカーは遮熱の説明で、こう書いています。
屋根の色として人気がある「黒」「紺」「緑」ですが、従来の塗料に使用される顔料は、熱をため込みやすいのが難点でした。
スーパーシャネツサーモで使用している「チタン複合特殊無機顔料」は、近赤外線を効果的に反射する性質があり、温度上昇を抑えることができます。
🔑つまりこの塗料の価値は、濃い色を選びたい人にいちばん出ます。白い屋根にすれば温度は下がりますが、多くの方は屋根を白くしたくありません。「黒や紺のまま、熱を抑えたい」という要望に応える製品という位置づけです。
逆に言えば、もともと明るい色にするつもりなら、遮熱塗料の差は小さくなります。遮熱性能そのものより色の影響が大きいという話は、遮熱塗料・断熱塗料に効果はある?のページにまとめました。色を決めてから遮熱を考えるのか、遮熱を優先して色を決めるのか——順番を先に決めてください。
見積書の色番号を、色名に変換する表
見積書や色見本のやりとりで「9119」「8113」といった4桁の番号だけを言われることがあります。SiとFで同じ21色なので、この表はどちらにも使えます。
| 番号 | 色名 | 番号 | 色名 |
|---|---|---|---|
| 9110 | クレタグレー | 9201 | シルバーグレイ |
| 9111 | カーボングレー | 9202 | チョコレート |
| 9112 | エバーグリーン | 9203 | スカイブルー |
| 9113 | ラセットブラウン | 9204 | ジェイドグリーン |
| 9114 | キャビアブラウン | 9205 | ナチュラルベージュ |
| 9115 | マホガニー | 9206 | アーモンド |
| 9116 | グリーンレイバー | 9207 | ファウンテンブルー |
| 9117 | ミッドナイトブルー | 9208 | ペールアクア |
| 9118 | バーガンディ | 9209 | クレイ |
| 9119 | トゥルーブラック | 8113 | トゥルーホワイト |
| 9200 | サンドグレイ | ||
🔑番号の並びに規則があります。9110番台が濃い色(グレー・グリーン・ブラウン・ネイビー・ブラック)、9200番台が淡い色(サンドグレイ・シルバーグレイ・スカイブルー・ベージュ・アーモンド)でまとまっています。白のトゥルーホワイトだけ8113と番号が離れています。
見積書に色番号しか書かれていないときは、この表で名前に直してから色見本を見せてもらってください。番号のままだと、打ち合わせで話がかみ合いません。
そして色を決めるときは、必ず実物の色見本を屋外で見てください。屋根は上から光が当たるので、室内で見る色見本とは印象が変わります。色選びのページにも書きましたが、面積が大きくなるほど明るく見えるという性質もあります。
「変退色防止性比較試験」という言葉が出てきたら
メーカーの製品ページには「変退色防止性比較試験」という項目があり、スーパーシャネツサーモシリーズと従来の遮熱顔料を比べた結果が示されています。
試験の条件と数値まではページに書かれていません。当サイトでは、示されていない数字を推測して書くことはしません。
ただ、この試験が置かれていること自体に意味はあります。この製品が売りにしているのは「色が変わりにくいこと」だ、というメーカーの立ち位置が読み取れるからです。遮熱性能の数字ではなく、変色・退色のほうを前面に出している。
⚠️だから営業で「遮熱で〇℃下がります」という数字を言われたら、その出どころを聞いてください。メーカーの製品ページに温度の数字は載っていません。実験条件によって結果が変わる領域です(遮熱塗料の数字が割れる理由)。複数社に同じ屋根で提案してもらうと、どこまでが製品の話で、どこからが会社の説明かが分かれます。
価格が公表されていない理由
アステックペイントは、製品ページに価格を載せていません。エスケー化研のように設計価格表を公開しているメーカーとは方針が違います。
理由は販売の仕組みにあります。アステックは塗装店を通す形をとっていて、施主が製品単体の値段を見る場面がありません。公式サイトにも「塗装工事をご希望のお客様」と「塗装・建築会社のお客様」で入口が分かれています(アステックペイントは他のメーカーと何が違う?)。
だから金額は見積もりでしか分かりません。そして同じ「スーパーシャネツサーモSi」でも、会社によって㎡単価は変わります。製品名と数量をそろえた見積書を複数社から取れば、その差が読めます。製品が同じなら、残りは施工と利益の差です。
見積書で確認する4点
- ①上塗りはSiかFか——期待耐用年数が13〜16年か16〜20年かが変わります
- ②下塗りの製品名は書いてあるか——「サーモテックシーラー」または「サーモテックメタルプライマー」か、それとも別のものか
- ③塗り回数と面積——屋根の㎡数が妥当かは面積の出し方で確かめられます
- ④縁切りの行があるか——スレート屋根ならタスペーサーなどの縁切りが要ります。遮熱塗料でも同じです
この4つは、どれも「見積書に書いてあるかどうか」で確かめられます。電話で聞く必要はありません。何社かの見積書を並べて、この4行だけを突き合わせてください。同じ屋根に同じ製品を提案していても、書き方でずいぶん差が出ます。
他社の遮熱塗料と比べたいなら
屋根用の遮熱塗料は各社が出しています。当サイトでは日本ペイントのサーモアイSiとエスケー化研のクールタイトSiを公式数字で比べたページにまとめました。同じ「屋根用シリコン遮熱」でも、公表している数字の種類がメーカーごとに違います。
そしてフッ素グレードの位置づけを知りたいなら、フッ素塗料の値段のページもあわせて読んでください。屋根用でラジカル制御形との差が実際にいくらだったかを、公式の設計価格で出しています。
よくある質問
- SiとFの違いは何ですか?
- 公式に差がついているのは期待耐用年数だけです。Siが13〜16年、Fが16〜20年。色数はどちらも21色、機能表示(遮熱性〇/低汚染性・防水性・防カビ防藻性は表示なし)も完全に同じで、特長の説明文も「従来のシリコン塗料をしのぐ」「従来のフッ素塗料をしのぐ」という一語を除いてほぼ同一の文章です。
- 期待耐用年数は保証ですか?
- 保証年数ではありません。メーカーが示す目安で、屋根の向き・勾配・下地の状態・地域の環境で変わります。保証の話は工事を頼む会社との契約で決まるものなので、別に確認してください。
- 遮熱の仕組みは?
- 「チタン複合特殊無機顔料」で近赤外線を反射する仕組みです。メーカーは、人気のある黒・紺・緑は従来の顔料では熱をため込みやすかったと説明しています。
- 下塗りも遮熱にしたほうがいいですか?
- アステックには遮熱性を持つ下塗り材(サーモテックシーラー/サーモテックメタルプライマー)があります。どちらも公式の機能表示で遮熱性が〇です。見積書で下塗りの製品名を確認してください。上塗りだけ遮熱にする組み合わせも作れてしまいます。
- 汚れにくさは期待できますか?
- 公式には謳われていません。SiもFも「低汚染性」は表示なしです。汚れにくさを重視するなら、低汚染性を明記している別の製品と比べる必要があります。
- ラジカル制御だから高級な塗料ですか?
- 違います。ラジカル制御は技術の名前で、グレードの名前ではありません。この製品はSiにもFにもラジカル制御が入っています。「ラジカル制御です」と言われたら「樹脂は何ですか」と聞き返してください。
- いくらかかりますか?
- メーカーは価格を公表していません。塗装店を通す仕組みなので、見積もりを取って確かめることになります。同じ製品でも会社によって金額が変わるため、製品名と数量をそろえた見積書を複数社から取って比べてください。
参考にした情報
- アステックペイント公式「スーパーシャネツサーモSi」製品ページ(期待耐用年数13〜16年、機能表示、21色のカラーラインアップ、特長=遮熱性・高耐候性・変色退色しにくい、チタン複合特殊無機顔料、ラジカル制御技術)
- アステックペイント公式「スーパーシャネツサーモF」製品ページ(期待耐用年数16〜20年、機能表示、21色、特長の各説明文)
- アステックペイント公式「スーパーシャネツサーモSi」カラーラインアップ(9110〜9209および8113の全21色の番号と色名)/「変退色防止性比較試験」の掲載
- アステックペイント公式「サーモテックシーラー」「サーモテックメタルプライマー」製品ページ(遮熱性の機能表示、色=白・グレー)
最終確認日:2026年8月30日。カラーラインアップと機能表示は改訂されます。屋根材によって使える下塗りが変わる点は、施工会社にご確認ください。
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