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2回目の外壁塗装——1回目と何が違うのか

2回目の塗り替えでいちばん多い誤解は、「前の塗装は全部剥がしてから塗るはずだ」というものです。国が定めた改修工事の仕様書は、そうは書いていません。「劣化部分は除去し、活膜部分は残す」——これが標準です。このページでは、2回目で本当に変わることを、剥がす・剥がさないの判断から、シーリング、費用、業者選びまで順に整理します。

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このページの内容

2回目で変わるのは、この3つだけです

先に全体像を書きます。足場を組んで、洗って、下塗り・中塗り・上塗りをする——工事の流れそのものは1回目と同じです(工程と日数)。変わるのは次の3つです。

①下地が「素地」ではなく「前の塗膜」になる——だから前回何を塗ったかが効いてきます
②シーリングが「増し打ち」では済まなくなる——目地のゴムは、20年もちません
③家の他の部分にも寿命が来ている——2回目の時期は、たいてい築20〜25年です

逆に言えば、この3つ以外は1回目とほとんど同じです。足場の考え方も、色の選び方も、業者の見分け方も変わりません。「2回目だから特別なことをしなければ」と身構える必要はない——ここは安心してください。

2回目にしかできない——1回目の答え合わせ

先に、2回目だけが持っている強みを書きます。この家には、すでに1回目の答えが出ています。

新築のときは、どこが早く傷むのか誰にも分かりませんでした。いまは分かります。10年から15年、実際に雨と日射を受けた結果が、そのまま壁に出ているからです。これは新築時には存在しなかった情報で、次の10年の仕様を決める材料になります。

見るのは4つです

見るところそこから決まること
①どの面が先に傷んだか北面にコケや藻が出ているなら、日が当たらず乾きにくい面です。西面や南面の色あせが強いなら、紫外線の影響が大きい家。面によって重点が違ってよい——全面同じ仕様にする必然性はありません
②どこから傷んだか水切りの下、目地のきわ、サッシの四隅、庇の付け根。水が集まる場所や、動きが出る場所から先に傷みます。今回はそこを丁寧にやってもらう根拠になります
③前回の塗料は何年もったか10年で限界だったのか、13年もったのか。これが「うちの家での実績値」です。カタログの年数より、こちらのほうが当てになります
④前回直した場所が、再発していないか前回ひび割れを埋めた場所が、また割れていないか。再発しているなら、原因は表面ではなく下地の動きかもしれません

この4つは、足場が組まれる前に、地上から見えるぶんだけでも確認しておく価値があります。スマートフォンで撮っておけば、業者に渡すだけで話が具体的になります。

家の向きと立地は、これからも変わりません

ここが大事なところです。北面が乾きにくいのは、この先も同じです。西日が強いのも、隣家との距離が近いのも、前の道路から泥はねが来るのも変わりません。

つまり「前回どこから傷んだか」は、次にどこから傷むかの予告になっています。だから2回目では、こう言えます。

「前回は北側の壁にコケが出るのが早かったんです。今回はそこを何とかできますか」

この一言があると、業者の提案は具体的になります。防藻・防カビの効きやすい仕様にする、その面だけ塗料のグレードを上げる、その前に水の当たり方を直す——選択肢が出てきます。「おまかせします」と言うより、はるかに良い結果になりやすいのがここです(コケ・カビが出る壁)。

前回の工事の弱点も、ここで見えます

正直に言えば、この答え合わせは前回の工事の採点にもなっています。

  • 数年で剥がれや膨れが出た——下地処理か、下塗りの選定に理由があった可能性があります(剥がれる原因
  • 5年ほどで目地が切れた——シーリング材の選定か、施工の厚みに理由があったかもしれません
  • 逆に、10年以上きれいだった——前回の工事は、少なくとも悪くなかったということです

これは前の業者を責めるための材料ではありません。今回の業者に「同じことを繰り返さない」ための情報として渡すものです。原因が分かれば、対処のしようがあります。

前の塗膜は全部剥がすのか——国の仕様書の答え

2回目でいちばんよく聞かれるのが、この質問です。「前の塗装の上から塗って大丈夫なんですか」「全部剥がさなくていいんですか」。

答えは「全部は剥がしません。それが標準です」です。根拠を示します。

公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版 7章2節 下地調整 7.2.1より

「塗替えで、表7.2.1から表7.2.7までのRB種の場合の既存塗膜の除去範囲は、特記による。特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す。」

これは国が発注する改修工事の仕様書です。塗り替えのときの下地調整を、3つの段階に分けています。

種別既存塗膜(前の塗装)をどうするか
RA種全面除去。ディスクサンダー、スクレーパー等で塗膜を全部剥がします
RB種劣化しぜい弱な部分を除去し、活膜は残す。——モルタル面・鉄鋼面・亜鉛めっき鋼面いずれも、特記がなければこのRB種が標準と定められています
RC種既存塗膜の除去は行わず、汚れ・付着物の除去と研磨紙ずりで仕上げます

「活膜」とは何か

活膜(かつまく)とは、まだ生きている塗膜のことです。下地にしっかり密着していて、浮きも膨れもなく、次の塗料を受け止められる状態の塗膜を指します。

反対が「劣化しぜい弱な部分」——浮いている、膨れている、触ると粉になって崩れる、剥がれかけている塗膜です。この部分だけを取り除いて、生きている部分は残す。それが国の標準です。

なぜ全部剥がさないのか

理由は3つあります。

  • 下地を傷めるから——サンダーやスクレーパーで全面を削れば、モルタルやサイディングの表面自体を傷めます。仕様書は汚れの除去についても「素地を傷つけないように」と繰り返し書いています
  • 密着している塗膜は、下地の一部として機能しているから——生きている塗膜を剥がす意味がありません
  • 費用と工期が大きく増えるから——全面除去は手間のかかる作業です。国の仕様書でも、それが必要な場合は「特記による」——つまり設計側が特別に指定したときだけ行うものとされています

⚠️これは国が発注する工事の仕様であり、戸建ての工事に同じ管理が求められるわけではありません。ここで受け取ってほしいのは、「全部剥がさないのは、手抜きではなく標準の考え方だ」という一点です。逆に言えば、「劣化した部分を除去する」ほうは省いてはいけない工程だということでもあります。

では、剥がすべきなのはどんなときか

「活膜は残す」が標準だとしても、剥がさなければならない状態はあります。むしろ、そこを見分けるのが2回目の塗装の要点です。

剥がす必要が出る4つの状態

状態何が起きているか
塗膜が浮いている・膨れている下地との間に空気や水が入っています。上から塗っても、その下から剥がれます塗装が剥がれる原因
手で触ると粉が付く(チョーキング)が激しい塗膜の表面が分解しています。洗浄で落ちる程度なら残せますが、深く進んでいれば話が別です
ひび割れが塗膜を貫通している塗膜だけでなく下地が割れています。補修が先です(ひび割れの補修
前回の塗装で密着不良を起こしている広い範囲で剥がれかけている場合、前回の下塗りの選択か、下地処理に問題があった可能性があります

これらは足場を組んで近くで見ないと判断できません。地上から見ただけ、写真だけでは分かりません。だから見積もりの段階では「劣化がひどければ補修が増える可能性がある」という説明にとどまることがあります。それは誠実な説明です。

聞き方を1つ覚えておくと、話が早くなります

見積もりのときに、こう聞いてみてください。

「前の塗膜は、どこまで落とす予定ですか」

返ってくる答えは、だいたい次のどれかになります。

  • 「浮いているところと、粉がひどいところを落として、生きている部分は残します」——標準的な答えです。国の仕様書の考え方と一致します
  • 「洗浄したあと、見て判断します」——これも普通です。洗ってみないと分からないのは事実だからです
  • 「全部剥がします」——理由を聞いてください。本当に必要な状態なのか、それとも一律にそう言っているのか。全面除去は費用と工期が増える作業です
  • 「そのまま塗れます」——劣化部分の除去まで省く意味なら、それは省いてはいけない工程です。何を見てそう判断したのかを聞いてください

この質問がいいのは、答えが会社によって割れるからです。数社に同じことを聞いてみると、家の状態をどう見ているかの違いがそのまま出ます。金額の差の理由が、ここで説明できることも多い——「安い1社だけ下地処理の話が出てこなかった」といった形で見えてきます。

前回何を塗ったかが、今回の下塗りを決めます

2回目の塗装で、1回目と決定的に違うのがここです。塗る相手が、壁そのものではなく「前の塗膜」になります。

塗料には相性があります。下塗り(プライマー・シーラー)は、下にあるものと上に塗るものを結びつける接着剤の役割です。下にあるものが変われば、選ぶ下塗りも変わります(工程の話)。

前回の塗料が影響する主なパターン

前回の塗装2回目で気をつけること
フッ素・無機系表面が硬く、汚れも付きにくい塗膜です。その性質のぶん、次の塗料が密着しにくいことがあります。専用の下塗りや、目粗し(表面をわずかに荒らす処理)が必要になる場合があります
弾性塗料(微弾性を含む)伸びる塗膜です。上に硬い塗料を重ねると、夏場に膨れが出ることがあります。前回が弾性かどうかは、2回目でとくに聞いておきたい情報です
アクリル・ウレタン比較的相性の問題は少ない部類です。ただし年数が経っていれば、劣化の程度が判断材料になります
吹き付けタイル・リシンなどの模様凹凸があるぶん塗料の使用量が増えます。また模様の谷にコケや汚れが残りやすい(吹き付け仕上げ

前回の塗料が分からないときは

10年以上前のことですから、覚えていないのが普通です。次の順で探してみてください。

  • 前回の見積書・契約書——塗料名が書かれていることがあります(見積書で塗料名が書かれる場所
  • 保証書——塗料メーカーの名前が入っていることがあります
  • 工事後にもらった書類一式——色見本や仕様書が挟まっていることも

見つからなくても大丈夫です。職人は、塗膜の見た目と触った感触である程度は判断できます。つやの残り方、粉の出方、指で押したときの弾力——弾性塗料なら、わずかに沈む感触があります。

それでも確信が持てない場合に使われるのが試し塗りです。目立たない面の小さな範囲に、実際に下塗りと上塗りを塗ってみて、乾いてから密着を確かめる。膨れや縮みが出れば、その組み合わせは避けることになります。

「分かりません」と言う会社のほうが、むしろ信用できる場面です。前回の塗料が特定できないのは、10年以上経った家では普通のことだからです。問題は、分からないまま「どれでも塗れます」と進めること分からないなら、どう確かめるのか——そこまで聞ければ十分です。

💡ここが「前回と同じ業者に頼む利点」のひとつです。前回の記録が会社に残っていれば、塗料も、下地の状態も、どこを補修したかも分かっています。ただし、それだけで決める理由になるかは別の話です(後述)。

シーリングは、2回目から「打ち替え」が基本になります

サイディングの家では、ここが1回目との大きな違いになります。

シーリング(コーキング)は、外壁材のあいだの目地や、窓まわりに詰められているゴム状の材料です。これは塗膜より寿命が短い部材です(シーリングのページ)。

シーリングの扱い
1回目(築10〜15年)状態によっては増し打ち(既存の上から足す)で済むことがあります
2回目(築20〜30年)打ち替え(古いものを撤去して新しく充填)が基本になります。1回目のときに入れたシーリングも、すでに寿命を迎えているためです

ここは金額に効いてきます。打ち替えは、古いシーリングをカッターで撤去する手間が加わるためです。2回目の見積もりが1回目より高く見える理由の1つは、たいていここです。

見積書では「シーリング打ち替え ◯◯m」のように、長さ(メートル)で数量が出るのが普通です。「一式」としか書かれていないときは、打ち替えなのか増し打ちなのかを確認してください。工事の中身がまるで違います。

⚠️窓まわりのシーリングだけは、増し打ちが選ばれることがあります。撤去しようとするとサッシや防水紙を傷めるおそれがあるためで、これは判断として珍しくありません。「窓まわりは増し打ち、目地は打ち替え」という見積書は、不自然ではないということです。理由を説明できるかどうかを見てください。

2回目の家は、塗装以外も寿命が来ています

2回目の塗り替えは、たいてい築20〜25年で回ってきます。この年数になると、塗装以外の部材も更新の時期に入ります。

そして、足場が組まれるのはこのタイミングだけです。屋根に上がる、高い場所を直す——どれも足場があれば安く済み、なければ単独で足場代がかかります(30坪で15〜25万円が公開されている相場です。見積もりの内訳)。

2回目のときに、一緒に見てもらう価値がある場所

  • 棟板金——屋根のてっぺんの金属。釘が抜けて浮いてくるのが築15〜20年ごろ棟板金の浮き
  • 谷板金——屋根の谷にある板金。古い銅板だと穴が開くことがあります谷板金の雨漏り
  • ベランダ・バルコニーの防水——防水層は10〜15年で更新の時期です(ベランダ防水
  • 雨樋——塩ビは紫外線で脆くなります。割れていれば塗装ではなく交換雨樋の交換
  • サイディングの釘・ビスの緩み——留め具が浮いていれば、塗る前に締め直しが要ります
  • 屋根そのもの——スレートなら2回目の塗装が最後になることもあります(屋根塗装カバー工法

全部やる必要はありません。ただ、足場があるうちに「見てもらう」だけはやっておく——これが2回目の家でいちばん無駄がない進め方です。見た結果、まだ大丈夫なら何もしなくていい。問題は、足場を外してから見つかることです。

費用は1回目より高くなるのか

結論から言うと、「同じくらい〜やや高い」が多く、上がるとすれば理由は決まっています。

変わらないもの

  • 足場代——家の大きさで決まります。1回目も2回目も同じ
  • 高圧洗浄——同じく面積で決まります(高圧洗浄
  • 塗料代・塗る手間——同じグレードを選べば、ほぼ同じです

上がる可能性があるもの

  • シーリングの打ち替え——前述のとおり、撤去の手間が加わります
  • 下地補修——ひび割れの補修、浮いた塗膜の除去、爆裂の補修など。築年数が進めば、ここは増えます
  • 付帯部の傷み——木部の腐り、鉄部の錆。ケレン(錆落とし)の手間が増えます付帯部
  • 屋根まわりの補修——上で挙げた部材の更新

つまり「2回目だから高い」のではなく、「傷んでいるぶん、直す量が増える」ということです。逆に、前回の塗装がきちんとしていて、家の状態が良ければ、2回目の金額が1回目とほぼ同じになることもあります。

💡10年前の金額と単純に比べないでください。材料費も人件費もこの10年で動いています。「前回は◯◯万円だったのに」は、比較の基準としては弱い——比べるなら、今の相場と、今の複数社の見積もりです(費用相場のページ費用シミュレーター)。

見積書の、1回目に無かった行

2回目の見積書には、1回目には出てこなかった項目が並びます。逆に言えば、それが無ければ「その工程をどうするのか」を聞く手がかりになります。

項目1回目2回目
足場変わりません。家の大きさで決まります
高圧洗浄変わりません。ただしコケや藻が多ければ、洗浄の手間は増えます
既存塗膜の処理ほぼ出ません(塗るのは素地)ここが2回目の本体です。「劣化部の除去」「ケレン」「素地調整」などの名前で出ます
シーリング増し打ちで済むことも打ち替え(撤去+充填)。数量はメートルで出ます
下塗り素地用のシーラー旧塗膜に合わせたプライマー・シーラー。品名が変わることがあります
下地補修少ないひび割れ、欠け、浮きの補修。築年数のぶんだけ増えます
付帯部塗るだけで済むことが多い錆や腐りが進んでいれば、ケレンや交換が入ります
廃材処分少ない撤去したシーリングや除去した塗膜が出ます

2回目の見積書で「既存塗膜の処理」に当たる行がまったく無かったら、聞いてください。「洗ってそのまま塗るのか、劣化した部分は落とすのか」。落とすなら、どこかに手間として書かれているはずです。書き方は会社によって違うので、行が無い=やらない、とは限りません。だから聞くのです(見積書の見方)。

💡「一式」が並んでいても、それだけで悪い見積書ではありません。戸建てでは、数えにくい項目が一式になるのは普通のことです。見るべきは、金額の細かさではなく、聞いたときに具体的に答えられるかどうか——ここは1回目も2回目も変わりません。

30年で何回塗るか——足場代から逆算する

2回目になると、多くの方が「次はいつだろう」を意識し始めます。ここで効いてくるのが足場代です。

足場は、塗り替えのたびに必要になります。30坪の家で15〜25万円が公開されている相場で、これは塗る面積が同じなら毎回ほぼ同じ金額です(見積もりの内訳)。

塗り替えの周期30年でかかる足場の回数
10年ごと3回(10年目・20年目・30年目)
15年ごと2回(15年目・30年目)

単純に言えば、周期を延ばせれば足場代が1回ぶん浮きます。だから「耐候性の高い塗料を選ぶ」という判断には、塗料の値段だけでは測れない意味があります。

ただし、この計算には3つの但し書きがあります

  • ①塗料の差額が、足場代を超えるなら意味がありません——グレードを上げた差額が、浮く足場代より大きければ、逆に高くつきます。差額と足場代を並べて比べてください
  • ②塗料の年数は、試験に基づく目安です——実際にもつ年数は、面の向き、立地、下地の状態、施工の質で変わります。カタログの年数がそのまま自分の家で出るとは限りません何年もつか
  • ③壁がもっても、他が先に来ます——シーリングは塗膜より寿命が短く、屋根の板金や防水も更新の時期を迎えます。結局10年台で足場が必要になることがある——これがいちばん見落とされる点です

だから現実的な考え方はこうなります。「高い塗料で塗り替えを減らす」戦略は、シーリングや屋根の寿命とセットで考えないと成立しません。壁だけ20年もっても、15年目にシーリングと屋根で足場を組むなら、そのときに壁も塗ってしまうほうが無駄がないからです。

💡逆に、その考え方を利用することもできます。「次に足場を組むのは、シーリングか屋根の都合でだいたい◯年後になりそうだ」と見通しを立てて、そこまでもつ塗料を選ぶ。これなら過不足がありません。見積もりのときに「この家だと、次に足場が必要になるのは何が先だと思いますか」と聞いてみてください。屋根も含めて見ている会社なら、答えが返ってきます。

前と同じ業者に頼むか、変えるか

2回目でいちばん迷うところです。どちらにも理由があります。先に両方書きます。

利点気をつけること
前と同じ業者前回の記録がある(塗料・補修箇所・下地の状態)/家の癖を知っている/連絡が早い金額の妥当性を確かめる材料がない。前回が適正だったかどうかも、比べていなければ分かりません
別の業者前回の判断を、別の目で見てもらえる/今の相場が分かる/前回気になった点を条件にできる前回の記録は自分で伝える必要があります/会社を一から見極める手間

現実的な進め方

前の業者に頼みたい気持ちがあるなら、それでかまいません。ただし1社だけで決めないことをおすすめします。理由は「疑うため」ではなく、判断する基準を自分の中に作るためです。

1枚の見積書だけを見ても、それが高いのか安いのか、範囲が広いのか狭いのかは分かりません。2枚目・3枚目があってはじめて、「この項目はうちの家では必要なんだな」「ここは会社によって考え方が違うんだな」が見えてきます。

そして比較は値切るための道具ではありません。技術と工事内容を比べてもらうための手段です。安く安くと押しつけるのは、手段の取り違えです(相見積もりは失礼?)。

2回目は、この比較がやりやすいという利点もあります。1回目を経験しているぶん、質問できることが増えているからです。前回の工事で気になったこと——職人の様子、近隣への配慮、追加費用の出方——をそのまま条件として伝えられます。一括見積もりで数社に声をかけるなら、その希望も最初に書いておくと話が早くなります。

前回の会社が見つからない・なくなっていた場合

珍しくありません。10年から20年のあいだに、廃業や代替わりがあります。保証書が残っていても、会社が存在しなければ使えません。

この場合は、普通に新しく探すことになります。前回の書類が残っていれば持っておいてください。塗料名と施工範囲が分かるだけでも、新しい業者の判断材料になりますどこに頼むか)。

2回目こそ、塗料は「あと何年住むか」で選びます

1回目のときは、「とりあえず標準的なもので」という選び方でも問題は起きにくい。ところが2回目は、少し事情が変わります。

2回目の家は築20〜25年。ここで次の塗り替えが何年後になるかを考えると、答えが変わってきます。

状況考え方
この家に、あと20年以上住む耐候性の高い塗料を選ぶ意味があります。3回目を1回減らせれば、足場代がまるごと浮きます
あと10年前後で建て替え・住み替えを考えている高いグレードを入れても、使い切れません。必要な期間もつものを選ぶほうが合理的です
いずれ子や親族に渡す予定渡すまでの年数と、渡したあとの負担の両方で考える話になります
売却を考えている外観の印象は効きますが、高いグレードの塗料が価格に反映されるとは限りません

塗料のグレードは「良いものほど正しい」ではなく、「使い切れるかどうか」で決まります。塗料ごとの耐用年数の考え方は塗装は何年もつかに、種類ごとの違いは塗料の種類にまとめました。

⚠️もう一つ、2回目ならではの判断があります。外壁材自体の寿命です。窯業系サイディングは、反り・割れ・表面の剥離が進んでいれば、塗装では戻りません。その場合は張り替え重ね張り(カバー工法)が選択肢になります。「塗るべきか、替えるべきか」が現実の分かれ道として出てくるのは、たいてい2回目からです。

2回目の色選びは、1回目より有利です

2回目で色を変える方は、少なくありません。理由はだいたい3つに分かれます。

  • 10年住んで飽きた——いちばん多い理由です。悪いことではありません
  • 汚れが目立つ色だった——白系や淡い色で、雨だれの筋が気になった
  • 退色が早く見えた——濃い色や鮮やかな色で、色あせが目についた

そしてここでも、2回目には1回目に無かった強みがあります。——その色が、この家でどう変わるかを、実際に10年見てきたということです。

カタログでは分からないことを、すでに知っています

色見本を見て選ぶとき、誰もが同じ壁にぶつかります。小さな見本と、家1軒ぶんの面積では、印象がまるで違うという問題です(色選びのページ)。1回目のときは、それを想像するしかありませんでした。

いまは違います。自分の家で、次のことが分かっています。

1回目で分かったこと2回目の選び方に、どう効くか
この面は、汚れが目立った道路側、北側といった特定の面だけ汚れるなら、その面の色だけ考えるという手があります
雨だれの筋が出る場所がある窓の下、水切りの下。汚れの出方は、色より形(水の流れ方)で決まっていることがあります
思ったより明るく(暗く)見えた面積が広いと、明るい色はより明るく、暗い色はより暗く見えます。その差を、自分の家で体験済みです
近所の家と並んだときの印象写真では分からない部分です。10年見てきた実感がそのまま材料になります

2回目で気をつけること

大きく色を変えるときは、付帯部との組み合わせが変わります。雨樋、破風、水切り、サッシ——これらの色は簡単には変えられません(サッシは塗装に向かない部材です。アルミサッシは塗れるのか)。変えられないものを起点にして、壁の色を決めるのが失敗しない順番です。

もうひとつ、濃い色に変えるときは、汚れの見え方が反転します。白系は黒い汚れが目立ち、濃色は白っぽい汚れ(雨のシミ、粉、水垢)が目立ちます。「汚れが目立たない色」は存在しない——目立つ汚れの種類が変わるだけです。中間の彩度を抑えた色が扱いやすいと言われるのは、この理由です。

💡色を変えるなら、シーリングの色も一緒に決められます。目地のシーリングは白しかないと思われがちですが、メーカーは多くの色を用意していますシーリングのページ)。2回目は打ち替えになるので、ちょうど選び直せるタイミングです。「壁の色に合わせた色にできますか」と聞いてみてください。

そして、色は最後に決めてかまいません。先に決めるのは、どこを直すか・どの仕様でやるか・どの会社に頼むか。色は契約後でも変えられることが多い(塗料の発注前なら)ので、色選びで悩んで、業者選びが後回しになるのは順番が逆です。

2回目の施主がやることは、1回目と少し違います

工事そのものより前の、準備の話です。2回目には、1回目には無かった持ち札があります。

1. 前回の書類を探して、まとめておく

見積書・契約書・保証書・色見本・工事写真。この5つのうち、あるものだけで十分です。塗料名と施工範囲が分かるだけで、今回の判断がまるごと変わります。とくに次の3つが読み取れると強い。

  • 前回の塗料名——今回の下塗りの選定に直結します
  • 前回どこまで塗ったか——付帯部を含んでいたか、屋根はやったか
  • 前回の金額の内訳——今回との比較ではなく、範囲の比較に使います

2. 前回気になったことを、条件として言葉にする

「説明が少なかった」「追加費用が後から出た」「近所への挨拶が無かった」「仕上がりの確認をしないまま終わった」——1回目に感じた不満は、今回の条件になります。

伝え方は簡単です。前の会社の話としてではなく、「今回はここを重視したい」という形にする。たとえば「工程の説明を都度もらえると助かります」「追加が出そうなときは、先に相談してください」。これは無理な注文ではなく、ごく普通の依頼です。

3. 工事前の写真を撮る

家のまわりを1周して、外壁・付帯部・カーポート・物置・外構を撮っておいてください。2回目の家は、あちこちに経年の傷があります。「工事で付いたのか、前からあったのか」で揉めないための基準になります。撮る側にも見られる側にも、いいことしかありません。

4. 近隣挨拶は、2回目であることを踏まえる

前回の工事を、ご近所も覚えています。「10年ぶりにまたやります」と一言添えるだけで、話がスムーズになります。回るのは業者、施主は一言——ここは1回目と同じです(近所への挨拶)。

そして近所も同じ時期に建った家なら、同じころに塗り替えを考えています。情報交換は有益ですが、「同じ業者に頼めば安くなる」を前提にしないでください。足場も塗料も家ごとに必要なので、大きく下がるわけではありません。それより、実際に工事を見て、職人の様子を知っていることのほうが価値があります。

2回目を「やらない」ほうがいい場合

ここも書いておきます。2回目の塗装が、いつでも最善の選択とは限りません。次の場合は、塗る前に別のことを考えたほうが結果的に損をしません。

状況先にやること
いま雨漏りしている塗装では雨漏りは止まりません。入口が壁とは限らないので、原因の特定が先です(雨漏りの原因はどこ)。塗ってしまうと、原因の場所が塗膜で隠れてしまうこともあります
外壁材そのものが寿命サイディングの反り・割れ・剥離、モルタルの浮き。塗装で戻る範囲を超えていれば、張り替えや重ね張りの見積もりも取ってから比べる張り替え
数年以内に建て替え・解体の予定がある回収できません。雨水の侵入を防ぐ最低限の補修だけにとどめる判断もあります
台風や雹の被害が疑われる先に保険の確認です。直したあとでは、被害の証明ができなくなります(火災保険と外壁塗装
まだ傷んでいない年数が来ただけで、粉も出ておらず、ひびもコケもない——それなら急ぐ必要はありません。1〜2年ようすを見て、そのぶん貯めるのも選択です

とくに1つ目と4つ目は、順番を間違えると取り返しがつきません。塗装は、あくまで「今の外壁を長持ちさせる工事」です。壊れているものを直す工事ではないという線引きを、2回目のときこそ意識してください。

3回目、4回目はどうなるのか

3回目以降になると、塗り重ねた塗膜の厚みが話題になります。塗るたびに膜は厚くなり、厚くなった塗膜は、下地の動きについていけずに剥がれやすくなる——という理屈です。

ただし、戸建てで4回目まで到達する家はそれほど多くありません。1回目が築12年、2回目が築25年とすれば、3回目は築37年前後。その頃には、外壁材そのものや家全体の計画が主題になっているのが普通です。

3回目の判断で見るのは、次のあたりです。

  • これまでの塗膜が健全か——浮きや膨れが出ていれば、除去の範囲が広がります
  • 外壁材そのものが健全か——サイディングの反り、モルタルの浮き、下地の劣化
  • あと何年、この家を使うか

長く塗っていない家の考え方は20年塗っていない場合30年塗っていない場合に分けてまとめました。2回目を迎えている家は、そこまで放置していないぶん、選択肢が多い状態です。

よくある質問

前回から10年経っていませんが、早すぎますか?

年数だけでは決まりません。見るのは壁の状態です。手で触って粉が付く、色あせが目立つ、ひび割れが出ている、コケが生えている——こうしたサインが出ていれば、8年でも塗り時です。逆に状態が良ければ、12年、13年と延ばせる家もあります何年もつか時期の考え方)。南面と北面で傷み方が違うので、家の全周を見てください。

前回と同じ色にできますか?

できます。前回の見積書や色見本に色番号(日本塗料工業会の番号など)が残っていれば、そのまま指定できます。番号が分からなくても、現物から近い色を選ぶことは可能です。ただし「まったく同じ」にはならないことがあります。前回の色は10年ぶんの日焼けを経ていて、新しく塗った色は当時の色だからです。色選びの考え方は色選びのページへ。

前回の保証は使えますか?

保証期間が残っていれば使えます。まず保証書を確認してください。期間(5年・7年・10年など)と、対象(塗膜の剥がれ・膨れなど)と、除外される条件が書かれています。期間内に不具合が出ているなら、2回目の塗装を頼む前に、前の業者に連絡するのが順番です。保証の見方は保証のページにまとめました。

前回の業者に不満がありました。伝えるべきですか?

新しい業者には伝えてください。「前回は仕上がりの説明がなかった」「追加費用の話が後出しだった」——こうした情報は、今回の会社にとって「何を丁寧にすべきか」の指示になります。ただし前の会社の悪口として話す必要はありません。「今回はここを重視したい」という形で伝えれば十分です(見積もりの頼み方)。

2回目は下塗りを省いてもいいと言われました

理由を確認してください。下塗りは、前の塗膜と新しい塗料を密着させる工程です。省くと、密着が上塗り材まかせになります。前回と同系統の塗料で、塗膜の状態が良ければ「専用の下塗りは不要」という判断がありうる場面もありますが、それは説明できる理由があってのことです。「2回目だから要らない」は理由になっていません手抜きの見分け方)。

1回目のときと同じ業者から「そろそろですよ」と連絡が来ました

前回の顧客に案内を出すのは、普通の営業活動です。点検商法のような不安を煽って即決を迫る勧誘とは別物と考えてください(点検商法の見分け方)。ただし「今なら◯◯万円引き」「今月中に決めてもらえれば」といった期限が付いたら、いったん止まってください。期限は、比較させないための道具として使われることがあります。時期は、あなたの家の状態で決まります。

2回目で外壁の種類を変えることはできますか?

塗装では変えられませんが、張り替えや重ね張りなら変わります。モルタルの家に金属サイディングを重ねる、古いサイディングを新しいものに替える——いずれも塗装より高額ですが、外壁材の寿命が来ている家では、そのほうが結果的に安くつくこともあります。判断材料は張り替え金属サイディングにまとめました。塗装業者に「塗るのと替えるの、どちらがいいですか」と聞くと、判断の理由が聞けます。

助成金は2回目でも使えますか?

制度によります。市町村の住宅リフォーム助成には「同一建物につき1回限り」という条件が付くものがあり、過去に使っていれば2回目は対象外になります。一方で、前回は制度がなかった、あるいは使っていないなら、今回使える可能性があります。制度は年度で変わるので、助成金の診断ツールで候補を絞ってから、市の窓口で確認してください。

前回と同じ塗料を選べば、間違いないですか?

相性の心配は少なくなりますが、「同じで良い」とは限りません。前回の塗料が10年もったなら再選択に意味はありますし、8年で限界だったなら見直す理由があります。また、10年のあいだに製品自体が改良されていたり、生産終了になっていたりします。「前回と同じもの、または後継品はありますか」と聞くと話が早い。同じ銘柄にこだわるより、前回の実績年数を基準にグレードを決めるほうが実用的です。

屋根も2回目になりますが、まだ塗れますか?

屋根材によります。スレート(カラーベスト)の場合、2回目の塗装が最後になることがあります。塗装は表面を保護するもので、屋根材そのものが薄くなったり割れたりしていれば、塗っても戻らないからです。築30年前後で「今回は塗る、次はカバー工法か葺き替え」という見通しを聞いておくと、その後の計画が立ちます(屋根塗装スレート屋根)。

前回の職人さんを指名できますか?

頼んでみる価値はあります。同じ会社に依頼するなら、「前回来ていただいた方にお願いできますか」と伝えるのは失礼ではありません。ただし確約はできないのが普通です。職人の入れ替わり、日程、体制の都合があります。できないと言われても、それは断りではなく事実——そこで会社を判断する必要はありません。

近所と同じ時期に頼めば、まとめて安くなりますか?

大きくは下がりません。足場も塗料も職人の日数も、家ごとに必要だからです。下がるとすれば、移動や運搬、資材の搬入がまとめられるぶん——数パーセント程度と考えておくほうが現実的です。それより価値があるのは、隣の工事を実際に見られることです。職人の動き、養生の丁寧さ、近隣への配慮——パンフレットでは分からないことが見えますどこに頼むか)。

前回の工事から5年ですが、もう剥がれてきました

まず保証書を確認してください。期間内で、対象になる不具合なら、前の業者に連絡するのが順番です(保証のページ)。そして、剥がれの原因を確かめてから次を考えてください。下地処理か、下塗りの選定か、下地の水分か——原因を残したまま塗り直しても、また同じことが起きます剥がれる原因)。「塗り直せば直る」と即答する会社より、「なぜ剥がれたか見せてください」と言う会社のほうが確かです。

2回目だと、工期は短くなりますか?

短くはなりません。むしろ長くなることがあります。下地補修とシーリングの打ち替えが増えるためです。塗る工程自体は同じで、乾燥時間も変わりません。「2回目だから早く終わる」と説明されたら、どの工程を短縮するのか聞いてください工程と日数)。

外壁と屋根を、別々の年に分けてやるのは損ですか?

足場代のぶんだけ損になります。外壁で1回、屋根でもう1回組めば、30坪で15〜25万円といわれる足場代が二重にかかります見積もりの内訳)。予算の都合で分けたくなる気持ちは分かりますが、2年に分けても総額は下がらず、むしろ上がります。

それでも分けるなら、「先にどちらをやるか」は傷み方で決めてください。雨漏りにつながるのは屋根と板金まわりなので、屋根の傷みが進んでいるなら、そちらが先です。見た目の問題だけで壁を先にすると、その間に屋根から水が入ることがあります雨漏りの原因)。

もう一つの現実的な選択は、時期をずらすのではなく範囲を絞ることです。「今回は外壁と屋根だけ、外構は次回」というように、足場が要る工事は1回にまとめて、地上でできる工事を後回しにする。これなら足場は1回で済みます。

前回の書類も写真も、何も残っていません

珍しくありません。その場合は、いまの壁の状態から判断してもらうことになります。やれることは2つ——①今回の書類は残す(見積書・仕様・保証書・色番号を1つの封筒にまとめる)②今回の工事の写真を撮っておく3回目のあなた、あるいは家を引き継ぐ人が、今回のあなたと同じ状況にならずに済みます。

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参考にした情報

  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築改修工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」7章2節 下地調整——7.2.1「塗替えで、(中略)RB種の場合の既存塗膜の除去範囲は、特記による。特記がなければ、劣化部分は除去し、活膜部分は残す」/表7.2.2 鉄鋼面・表7.2.3 亜鉛めっき鋼面・表7.2.4 モルタル面等の下地調整(RA種=全面除去、RB種=劣化しぜい弱な部分を除去し活膜は残す、RC種=除去せず汚れの除去と研磨紙ずり)/各面とも「特記がなければRB種とする」
  • 同 7章1節 7.1.6 施工管理——気温5℃以下・湿度85%以上・結露等で乾燥に不適当な場合は塗装を行わない/外部の塗装は降雨のおそれのある場合または強風時は原則として行わない

最終確認日:2026年8月26日。ここで引用した改修工事の仕様書は、国や自治体が発注する工事に適用されるものです。戸建ての工事が同じ書式・同じ検査で行われるわけではありません。前の塗膜の状態、外壁材の傷み方は家ごとに異なります。剥がす範囲や下塗りの選択は、足場を組んで現物を確認したうえでの判断になります。実際の仕様は施工会社にご確認ください。