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折板屋根の塗装——塗る面積は「屋根の広さ」ではありません
カーポートや物置、工場や倉庫で見かける、山と谷が交互に並んだ金属の屋根。これが折板(せっぱん)屋根です。葺き方としての位置づけや、棟・谷・けらばといった部位の名前は屋根の板金とは?にまとめました。ここでは塗装のことだけを扱います。
塗装の見積もりを取ると、屋根の広さと面積が合わないことがあります。——理由は国の基準に書かれています。公共建築数量積算基準は、折板の数量は見付面積(=上から見た面積)で数えるとしたうえで、「ただし、塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する」と定めています。山と谷を伸ばした長さで数える、ということです。このページでは、国の基準と仕様書の原文だけを使って、面積・工程・使う量・傷む場所を整理します。(2026年9月13日確認)
このページの内容全11項目
先に結論
①塗装の面積は、上から見た屋根の面積ではありません。国の基準が「塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する」と定めています
②国の仕様書の工程は、錆止め+研磨紙ずり+中塗り+上塗り。亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗りで、中塗り0.14kg/㎡・上塗り0.10kg/㎡
③素地ごしらえのA種は「製造所等で行うもの」と注記されています。現場の塗り替えでできるのはB種(汚れ・付着物除去+溶剤ぶき)まで
④傷むのは面より先にボルトです。重ね形の折板は各山ごとに固定し、流れ方向の重ね部のボルト間隔は600mm程度と定められています
①と④が、見積書を読むときにいちばん効きます。順に見ていきます。
塗る面積は「屋根の広さ」ではありません
折板屋根は、山と谷が交互に並んだ形をしています。——だから上から見た面積(見付面積)と、実際に塗る面の面積が違います。山の斜面のぶん、塗る面のほうが広くなります。
このことは、国の基準に書かれています。
「各部分の仕上の凹凸が0.05m以下のものは、原則として凹凸のないものとして、見付面積を数量とする。なお、折板等の凹凸による成型材については、その凹凸が0.05mを超える場合においても設計寸法による見付面積を数量とする。ただし、塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する。」
2つのことが書かれています。
ひとつめ。屋根材そのものの数量は、見付面積で数えます。——山の高さが0.05m(5cm)を超えていても、上から見た面積で数える、と決められています。折板の山高は8cm前後のものが多いので、この但し書きが効きます。
ふたつめ。ところが塗装だけは別です。「塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する」——糸幅とは、山と谷を伸ばした実際の長さのことです。つまり国の基準は、塗装の数量を展開した面積で数えるよう定めています。
ここから言えることは、はっきりしています。
「屋根は30㎡だから、塗装も30㎡」という見積書は、国の基準の数え方とは違います。——ただし、それが不当だという意味ではありません。戸建ての工事は公共工事の基準に従う義務がないからです。問題になるのは、投影面積で数えた見積書と、展開面積で数えた見積書を、同じ土俵で比べてしまうことです。
だから、比べる前に聞くことは1つです。——「この面積は、上から見た面積ですか。それとも山と谷を伸ばした面積ですか」。ここがそろわないと、㎡単価を並べても意味がありません(面積の考え方/㎡単価の読み方)。
ちなみに、この違いは屋根の形によっても増えます。折板は勾配のある屋根に葺くので、上から見た面積より斜面の面積のほうが広くなります。「投影面積 → 勾配による割増 → 山谷の展開」と、2段階で増えることになります(屋根の形と面積)。
国の仕様書が定めている工程と、使う量
折板は鋼板でできているので、塗装工事としては「亜鉛めっき鋼面」として扱われます。屋外なので、公共建築工事標準仕様書の18章7節「耐候性塗料塗り(DP)」が当てはまります。工程は次のとおりです。
| 工程 | 材料 | 塗付け量 |
|---|---|---|
| 錆止め塗料塗り | 亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料(表18.3.2) | Az種 0.10kg/㎡(標準膜厚30μm)/Bz種 0.14kg/㎡(40μm) |
| 1 研磨紙ずり | 研磨紙 P120〜220 | — |
| 2 中塗り | JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料 A種 中塗り塗料 | 0.14kg/㎡ |
| 3 上塗り | JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料 A種 上塗り塗料 | 0.10kg/㎡ |
出典:国土交通省 大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」表18.7.2[亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗り]、表18.3.2[亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料の種別]、および表18.3.6[耐候性塗料塗りの場合の亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料塗り]。錆止めの種別は特記によります。
読み取れることが3つあります。
ひとつめ。錆止めを入れて3回塗りです。——「下塗り・中塗り・上塗りの3回塗り」という説明を見かけますが、国の仕様書でも工程の数は同じになります。2回塗りで組まれた見積書があれば、どの工程を省いたのかを聞いてください。
ふたつめ。研磨紙の番手まで決まっています。P120〜220。高圧洗浄だけでは足りず、研磨紙でこする工程が入ります。見積書に「ケレン」「素地調整」の行があるかを見てください。
みっつめ。使う量が分かるので、缶数の見当が付きます。錆止め0.10〜0.14+中塗り0.14+上塗り0.10で、合計およそ0.34〜0.38kg/㎡。仮に塗る面積が50㎡なら、3工程の合計で17〜19kgです。見積書の塗料の欄と、桁が合っているかを確かめられます。
なお、この仕様書は公共工事のためのものです。戸建てのカーポートや物置がこの仕様で塗られるとは限りません。ここで示しているのは「国が標準として定めている数字」であって、民間工事の基準ではありません。
素地ごしらえは、現場ではB種までです
同じ仕様書の18章2節に、亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえの表があります。ここに、見過ごせない注記が付いています。
| 工程 | A種 | B種 | 面の処理 |
|---|---|---|---|
| 1 汚れ、付着物除去 | ○ | ○ | スクレーパー、ワイヤブラシ等で除去 |
| 2 油類除去 | ○ | — | 弱アルカリ性脱脂剤で加熱処理後、湯又は水洗い |
| 2 油類除去 | — | ○ | 溶剤ぶき |
| 3 化成皮膜処理 | ○ | — | りん酸塩処理後、水洗い乾燥又はクロメートフリー処理後、乾燥 |
出典:同仕様書 表18.2.3[亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえ]。同表の注に「A種は、製造所等で行うものとする。」と明記されています。
A種は、工場でしかできません。脱脂剤で加熱処理して湯や水で洗い、りん酸塩処理をして乾燥させる——屋根の上でやる作業ではありません。ですから、いま建っている折板屋根を塗り替えるときにできるのは、B種(汚れ・付着物の除去+溶剤ぶき)までです。
これは、折板屋根の塗り替えの限界を示しています。——新品と同じ密着は、現場では作れません。だからこそ、できるB種の範囲をきちんとやったかどうかで差が付きます。高圧洗浄で汚れを落とし、ワイヤブラシやスクレーパーで浮いた錆と旧塗膜を落とし、油分を溶剤でふき取る。この3つが見積書に書かれているかを見てください(高圧洗浄)。
折板は、もともと塗装された鋼板です
折板の材料は、国の仕様書で規格まで指定されています。
「折板は JIS A 6514 (金属製折板屋根構成材) に基づき、形式、山高、山ピッチ、耐力及び材料による区分並びに厚さは、特記による。特記がなければ、材料による区分は、鋼板製とする。」
「折板に使用する材料は、表 13.2.1 により、材質の種類は特記による。」
その表13.2.1に並んでいるのは、次のような鋼板です。
| 規格番号 | 規格名称 |
|---|---|
| JIS G 3312 | 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(屋根用) |
| JIS G 3314 | 溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯(屋根用) |
| JIS G 3318 | 塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯(屋根用) |
| JIS G 3321 | 溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(屋根用) |
| JIS G 3322 | 塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(屋根用) |
| JIS G 4305/JIS G 3320 | 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯/塗装ステンレス鋼板及び鋼帯 |
出典:同仕様書 表13.2.1[長尺金属板の種類]。折板葺の節(13.3.2)は、この表を参照するよう定めています。
名前の頭に「塗装」が付いているものが複数あります。——つまり折板は、工場で塗装された状態で現場に届きます。塗り替えとは、その工場塗装の上に塗ることです。そして工場塗装は、前の項で見たA種の素地ごしらえ(化成皮膜処理まで)をしたうえで焼き付けられています。
「JIS G 3322」は、いわゆるガルバリウム鋼板の塗装品です。自分の屋根がどの鋼板かは、建てたときの図面か、施工した会社に聞けば分かります。材質によって、錆びやすさも塗料の相性も変わります(トタン屋根の塗装)。
いちばん錆びるのはボルトです
折板屋根を見上げると、山の頂点に一定間隔でボルトの頭が並んでいます。錆は、たいていここから始まります。——面より先に、ボルトとその周りが錆びます。
そのボルトの数は、国の仕様書から計算できます。
「重ね形の折板は、各山ごとにタイトフレームに固定し、流れ方向の重ね部の緊結のボルト間隔は 600mm 程度とする。」
「タイトフレームと下地材との接合は隅肉溶接とし、溶接後はスラグを除去し、表18.3.2[亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料の種別]のAz種の錆止め塗料を塗り付ける。」
流れ方向に600mm程度ごと。——たとえば軒から棟までの流れ長さが4mなら、1つの山あたり7つ前後。山ピッチが600mmの折板で幅が6mなら山は10列ほどなので、その屋根には70前後のボルトが並んでいることになります(当サイトの概算です。実際のピッチと本数は現物で数えてください)。
この数字を持っていると、見積書の見え方が変わります。
聞くこと:「ボルトはどう処理しますか」
——選択肢は、①錆を落として錆止めを塗る ②ボルトキャップをかぶせる ③ボルトを交換する、のいずれかです。「屋根を塗ります」だけの見積書には、この処理が入っていないことがあります。面だけ塗っても、錆はボルトから進みます。
タイトフレーム(折板を受ける下地の金物)の溶接部についても、仕様書は「スラグを除去し、Az種の錆止め塗料を塗り付ける」と定めています。Az種は一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイントで、塗付け量0.10kg/㎡・標準膜厚30μm。——新築の段階から、溶接した箇所は錆止めを塗ることが前提になっているということです。塗り替えのときも、同じ考え方で見てください(鉄部の塗装)。
屋根材以外に傷むところ
仕様書には、折板屋根の納まりについても細かい規定があります。塗装のときに一緒に見るべき場所が分かります。
| 部位 | 国の仕様書の規定 | 塗り替えで見るところ |
|---|---|---|
| けらば包み | 「けらば包みは、1m程度の間隔で下地に取り付ける」「継手の重ねは、60mm以上とし、重ね内部にシーリング材を挟み込む」 | 継手のシーリングが切れていないか。端部は雨と風をいちばん受けます |
| パッキン | 「ブチルゴム製又はクロロプレンゴム製の場合は厚さ5mm以上、アスファルト製又はポリプロピレン樹脂含浸ポリエステル繊維フェルト製の場合は厚さ6mm以上」 | ゴムなので、塗装では戻りません。硬化やつぶれがあれば交換の話になります |
| 流れ方向の継手 | 「折板の流れ方向には、継手を設けない。ただし、やむを得ず継手が必要となる場合は、監督職員と協議する」 | 原則として継手が無い作りです。もし途中で継いであれば、そこは弱点になります |
| 軒先面戸板 | 「軒先面戸板の適用は、特記による」 | 山と谷の隙間をふさぐ板。無い屋根もあります |
出典:同仕様書 13.3.2[材料]および13.3.3[工法]。
ここで大事なのは、パッキンとシーリングは塗装では直らないということです。——塗り替えの見積もりを取るときは、「塗るところ」と「交換・打ち替えするところ」を分けて書いてもらってください(コーキングの費用)。
戸建てで折板屋根が使われている場所
ここまで工場や倉庫の屋根の話のように読めたかもしれません。実際、折板屋根は大きな建物で多く使われます。——ただし戸建てのお宅にも、折板屋根はあります。
- カーポート・ガレージの屋根——いちばん多い場所です
- 物置・作業小屋・倉庫
- 下屋(げや)や庇の一部——母屋とは別の屋根材が使われていることがあります
- 自宅の一部が店舗・工場になっているお宅
母屋の屋根が折板というお宅は多くありません。だから「外壁塗装のついでに、カーポートの屋根も塗ってもらえますか」という頼み方になることが多いはずです。
そのときに効くのが、足場です。——母屋の外壁塗装で足場を組むなら、その足場でカーポートの屋根まで手が届くかどうか。届くなら、別々に頼むより安くなります。届かないなら、別に足場が要ります。「同じ足場で一緒にやれますか」と先に聞いてください(見積書の内訳)。
逆に、面積が小さいぶん「1㎡あたり」で比べると割高に見えます。塗料も1缶から買うことになりますし、養生の手間は面積に比例しません。小さい工事の単価が高いのは、それ自体はおかしなことではありません。
遮熱塗料はどうなのか
折板屋根の塗装では、遮熱塗料を勧められることがあります。——鉄板1枚で、下に断熱材が無いことも多いので、屋根の温度が室内に伝わりやすいのは確かです。
ここで、正直に書いておきたいことがあります。公共建築工事標準仕様書(令和7年版)の18章「塗装工事」には、遮熱塗料の節がありません。——当サイトで同仕様書の全文を検索した範囲では、「遮熱」という語はコンクリートの養生に関する記述に出てくるだけで、塗料の種別としては扱われていませんでした。
つまり国の標準仕様書には、遮熱塗料を使う前提の工程表が無いということです。これは「遮熱塗料が良くない」という意味ではありません。公共工事の標準として定められていないので、判断の根拠を国の基準に求めることはできない、ということです。
判断の材料は、メーカーの資料に求めることになります。見るのは次の2つです。
①日射反射率が、JIS K 5602「塗膜の日射反射率の求め方」に基づいて公表されているか——数字だけでなく、測定の根拠が書かれているか
②何色での数字か——遮熱塗料は色で性能が変わります。濃い色を選ぶと、公表値どおりにはなりません
そして、屋根の温度を下げたいだけなら、遮熱塗料のほかに断熱材を入れる方法もあります。折板には断熱材を張る仕様があり、国の仕様書も「折板に断熱材張りを行う場合、断熱材の種別、厚さ、防火性能等は、特記による」と定めています。塗装で解決する話なのかどうかを、先に整理してください(屋根の遮熱塗装)。
見積書で、この5つを確かめてください
①面積が「上から見た面積」か「山と谷を伸ばした面積」か——国の基準は塗装について「糸幅を考慮し計測・計算する」としています
②錆止めが別の行に入っているか——国の仕様書の工程は錆止め+中塗り+上塗りです
③素地ごしらえの中身——高圧洗浄だけか、ケレン(研磨紙・ワイヤブラシ)と溶剤ぶきまで入っているか
④ボルトをどう処理するか——錆止め塗りか、キャップか、交換か
⑤パッキンとシーリングをどうするか——塗装では直りません。交換・打ち替えなら別の行になります
5つとも、契約の前に聞けます。——そして、答えが返ってくるかどうかで、その会社が折板屋根をどれだけ手掛けてきたかが見えます。
金額を比べるのは、そのあとです。とくに①がそろっていない見積書どうしを㎡単価で比べると、判断を間違えます(見積もりの取り方)。
よくある質問
折板屋根の塗装面積は、どうやって出すのですか?
国の基準は「糸幅を考慮し計測・計算する」としています。——公共建築数量積算基準は、折板等の成型材について「その凹凸が0.05mを超える場合においても設計寸法による見付面積を数量とする。ただし、塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する。」と定めています。糸幅とは山と谷を伸ばした実際の長さのことで、屋根材そのものは上から見た面積で数えるのに、塗装だけは展開した面積で数える、という決め方です。戸建ての工事にこの基準を守る義務はありませんが、見積書を比べるときは「どちらの数え方ですか」をそろえてください。
折板屋根に塗装するときの塗料は何ですか?
国の仕様書では、屋外の亜鉛めっき鋼面は「耐候性塗料塗り(DP)」にあたります。——公共建築工事標準仕様書の表18.7.2では、錆止め塗料塗りのあと、研磨紙ずり(P120〜220)、中塗り(JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料 A種 中塗り塗料 0.14kg/㎡)、上塗り(同 上塗り塗料 0.10kg/㎡)と定められています。錆止めは表18.3.2のAz種(一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント 0.10kg/㎡・標準膜厚30μm)などです。民間の工事でこの仕様どおりに塗られるとは限りませんが、比べるための物差しにはなります。
折板屋根の塗装は何回塗りですか?
錆止めを入れて3工程が国の標準です。——表18.7.2の工程は、錆止め塗料塗り/研磨紙ずり/中塗り/上塗り。塗る工程だけ数えると3回になります。2回塗りで組まれた見積書があれば、錆止めを省いたのか、中塗りと上塗りを兼ねているのかを聞いてください。塗付け量で見ると、錆止め0.10〜0.14kg/㎡+中塗り0.14kg/㎡+上塗り0.10kg/㎡で、合計およそ0.34〜0.38kg/㎡になります。
ボルトの錆はどうすればいいですか?
面より先に、ボルトの処理を決めてください。——折板屋根は「各山ごとにタイトフレームに固定し、流れ方向の重ね部の緊結のボルト間隔は600mm程度」と国の仕様書に定められており、屋根1枚に数十から百を超えるボルトが並びます。処理の選択肢は、錆を落として錆止めを塗る、ボルトキャップをかぶせる、ボルトを交換する、のいずれかです。「屋根を塗ります」としか書かれていない見積書には、この処理が入っていないことがあります。必ず「ボルトはどう処理しますか」と聞いてください。
錆びている折板屋根でも、塗装で直りますか?
表面の錆なら塗装の範囲ですが、穴が開いていたら別の話になります。——国の仕様書の素地ごしらえは、汚れ・付着物をスクレーパーやワイヤブラシ等で除去し、溶剤で油分をふき取るところまで(B種)です。錆で板厚が薄くなっていたり、貫通していたりする場合、塗装では戻りません。その場合はカバー工法(上から新しい屋根を重ねる)や葺き替えの検討になります。判断は現物を見た人にしかできないので、2社以上に見てもらってください。
素地ごしらえのA種とB種は何が違うのですか?
A種は工場でしかできません。——国の仕様書の表18.2.3では、A種が「汚れ、付着物除去」+「弱アルカリ性脱脂剤で加熱処理後、湯又は水洗い」+「りん酸塩処理後、水洗い乾燥又はクロメートフリー処理後、乾燥」、B種が「汚れ、付着物除去」+「溶剤ぶき」です。そして同表の注に「A種は、製造所等で行うものとする。」と明記されています。つまり建っている屋根の塗り替えでできるのはB種までで、新品と同じ密着は現場では作れません。だからこそ、できる範囲をきちんとやったかで差が付きます。
カーポートの屋根も、外壁塗装と一緒に頼めますか?
頼めます。足場が共有できるかが分かれ目です。——母屋の外壁塗装で組んだ足場でカーポートの屋根まで届くなら、別々に頼むより安くなります。届かない位置なら、別に足場が要ります。「同じ足場で一緒にやれますか」と先に聞いてください。なお面積が小さいぶん、㎡単価で見ると割高に見えます。塗料は1缶から買うことになりますし、養生の手間は面積に比例しないので、それ自体はおかしなことではありません。
折板屋根の耐用年数はどれくらいですか?
国の仕様書は年数を定めていません。——仕様書が定めているのは材料の規格(JIS A 6514 金属製折板屋根構成材)と、形式・山高・山ピッチ・耐力・厚さを「特記による」とすること、そして工法です。年数は、使われている鋼板の種類(塗装溶融亜鉛めっき鋼板か、塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板かなど)、立地、勾配、ボルトまわりの手入れで大きく変わります。年数で決めるより、ボルトまわりの錆と、端部(けらば)のシーリングの状態を見るほうが確かです。
遮熱塗料を勧められました。効果はありますか?
国の標準仕様書には、遮熱塗料の節がありません。——当サイトで公共建築工事標準仕様書(令和7年版)の全文を検索した範囲では、18章「塗装工事」に遮熱塗料の種別は見当たりませんでした。効果が無いという意味ではなく、公共工事の標準としては定められていないので、判断の根拠を国の基準に求められないということです。メーカーの資料を見るときは、日射反射率がJIS K 5602「塗膜の日射反射率の求め方」に基づく数字か、そして何色での数字かを確かめてください。遮熱塗料は色で性能が変わります。
DIYで塗れますか?
おすすめしません。理由は工程より先に、屋根の上という場所にあります。——折板屋根は金属で、雨や朝露で滑ります。勾配もあり、踏む位置を間違えると板がたわみます。加えて工程としても、ワイヤブラシや研磨紙(P120〜220)でのケレン、溶剤ぶき、錆止め、中塗り、上塗りと手数が多く、ボルトの処理も要ります。カーポートの屋根のように低い場所であっても、足場か脚立の安定を確保できないなら避けてください。
参考にした情報
- 国土交通省 大臣官房官庁営繕部「公共建築数量積算基準(令和5年改定)」——仕上の計測・計算のうち「凹凸のある仕上」の規定(「各部分の仕上の凹凸が0.05m以下のものは、原則として凹凸のないものとして、見付面積を数量とする。なお、折板等の凹凸による成型材については、その凹凸が0.05mを超える場合においても設計寸法による見付面積を数量とする。ただし、塗装等の表面仕上の数量については糸幅を考慮し計測・計算する。」)、および同節の欠除部分の処理に関する規定
- 同「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」13章3節[折板葺]——13.3.2[材料](折板はJIS A 6514 金属製折板屋根構成材に基づき、形式・山高・山ピッチ・耐力及び材料による区分並びに厚さは特記による旨/材料は表13.2.1による旨/タイトフレームはJIS A 6514に基づき原則としてJIS G 3302 溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯とする旨/パッキンの材質別の厚さ/軒先面戸板および断熱材張りの適用は特記による旨)、13.3.3[工法](流れ方向に継手を設けない旨/タイトフレームと下地材との接合は隅肉溶接とし溶接後はスラグを除去しAz種の錆止め塗料を塗り付ける旨/重ね形は各山ごとにタイトフレームに固定し流れ方向の重ね部の緊結のボルト間隔は600mm程度とする旨/けらば包みは1m程度の間隔で取り付け、継手の重ねは60mm以上としシーリング材を挟み込む旨)
- 同 表13.2.1[長尺金属板の種類]——JIS G 3312・G 3314・G 3318・G 3321・G 3322・K 6744・G 4305・G 3320 の各規格名称と使用部位による別
- 同 18章2節[素地ごしらえ]表18.2.3[亜鉛めっき鋼面の素地ごしらえ]——A種・B種それぞれの工程(汚れ、付着物除去/油類除去/化成皮膜処理)と面の処理、および注「A種は、製造所等で行うものとする。」
- 同 18章3節[錆止め塗料塗り]表18.3.2[亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料の種別]——Az種(JPMS 28 一液形変性エポキシ樹脂さび止めペイント/塗付け量0.10kg/㎡/標準膜厚30μm/屋外・屋内)、Bz種(JASS 18 M-109 変性エポキシ樹脂プライマー/0.14kg/㎡/40μm/屋外・屋内)、Cz種(JASS 18 M-111 水系さび止めペイント/0.11kg/㎡/30μm/屋内)、および表18.3.6[耐候性塗料塗りの場合の亜鉛めっき鋼面の錆止め塗料塗り]
- 同 18章7節[耐候性塗料塗り(DP)]18.7.1(屋外の鉄鋼面、亜鉛めっき鋼面、コンクリート面等に適用する旨)および表18.7.2[亜鉛めっき鋼面の耐候性塗料塗り]——研磨紙ずり(研磨紙P120〜220)、中塗り(JIS K 5659 鋼構造物用耐候性塗料 A種 中塗り塗料 0.14kg/㎡)、上塗り(同 A種 上塗り塗料 0.10kg/㎡)
- 同仕様書18章[塗装工事]には遮熱塗料の節が置かれていないこと(当サイトで同仕様書の全文を検索し、「遮熱」の語が塗料の種別としては現れないことを確認。2026年9月13日時点)
- 最終確認日:2026年9月13日。基準・仕様書は改定されることがあります。本ページは公共建築の工事に適用される基準の内容を整理したものであり、戸建て住宅の工事がこれらに従って行われることを意味するものではありません。個々の工事については、現地を確認した施工会社にご確認ください。