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外壁塗装の産廃処分費とは——1.5万〜3.5万円の中身と、2023年10月から義務になった調査

見積書に「産廃処分費」という行があって、これは何だろうと思った方へ。結論から書きます。これは取られている費用ではなく、法律上どうしてもかかる費用です。公開されている例では1万5千円〜3万5千円ほど。ただ、金額よりも大事なことがあります。廃棄物処理法は「そのゴミを出したのは元請業者だ」と定めていて、業者にはマニフェストという伝票を交付する義務があります。そして2023年10月からは、外壁塗装でも有資格者による石綿(アスベスト)の事前調査が義務になりました。その調査結果は、法律上あなたに報告されることになっています。見積書のこの1行から、業者の仕事の質はかなり見えます。

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このページの内容

いくらが相場か——公開されている例

金額を公表している塗装店の記載を並べます。

出どころ金額
名古屋の塗装店(2025年12月公開)戸建て外壁塗装での廃材処分費の相場はおおよそ1万5千円〜3万5千円前後
塗装店の施工例(2018年3月公開)塗装面積124.3平方メートルの工事で、廃棄物処理・ごみ処理に3万円近く(工事全体は約75万円)

2つの出どころで、だいたい同じ帯に収まっています。総額80万〜120万円の工事のなかでは、割合としては大きくありません。

ただしこれは「塗り替えだけ」の場合です。外壁材を剥がす、屋根を葺き替える——そういう工事になると、出る量が桁で変わります。張り替えカバー工法を検討している場合は、処分費も別の水準で見てください。どちらにするかで総額が変わるので、両方の見積もりを出してもらうのが早いです。

※金額は工事の内容・地域・処分場の受入価格で動きます。ここに挙げたのは公開されている例であって、全国の平均ではありません。

何が「産業廃棄物」なのか

塗り替え工事で出るものを分けると、こうなります。

出るもの中身
塗料の空き缶・残った塗料金属くず、廃油・廃アルカリなど。残塗料は乾かして固めてから出すのが基本です
養生材ビニール、マスカー、テープ類。家1軒でかなりの量が出ます
古いコーキング打ち替えで撤去した既存のシーリング材。ゴムの塊です
高圧洗浄の汚水・ケレンかす削り落とした旧塗膜、コケ、汚れ
刷毛・ローラー・下敷き使い捨ての道具類

意外に多いのが養生材です。窓・玄関・室外機・植栽・車まで覆うので、面積でいえば外壁より広いこともあります。それが工事のたびに丸ごとゴミになります。

そして、これらは「産業廃棄物」です。家庭から出る燃えるゴミとは扱いが違い、許可を持った業者が運び、許可を持った施設で処分することになっています。市のゴミ収集には出せません。だから費用がかかります。

家庭ゴミは、施主が出すことになります

逆の話もあります。工事のときに出てきた「家のもの」は、産業廃棄物ではありません。

ベランダに置きっぱなしだった古い物干し、庭に転がっていた植木鉢、物置の中身——こういうものは一般廃棄物で、施主が自分で処分するのが原則です。塗装業者が「ついでに捨てておきますよ」と言ってくれることはありますが、本来は業者の許可の範囲外です。

これを頼むと、業者が違法な状態になることがあります。一般廃棄物を業として運ぶには、市町村の許可が要るからです。断られても、それは不親切なのではなく、正しい対応です。

工事の前に、ベランダと外まわりの不要品は自分で片づけておく——これが結果的に、いちばん揉めません。

法律は「ゴミを出したのは元請業者」と書いています

ここが、このページでいちばん大事なところです。塗装工事で出たゴミは、法律上は誰のものか。廃棄物処理法に、はっきり書かれています。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律 第21条の3第1項(建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理に関する例外)

土木建築に関する工事が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律の規定の適用については、当該建設工事の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。

「注文者」はあなたです。そして事業者=ゴミを出した責任者は、元請業者だと法律が決めています。

これは実務的に大きい意味を持ちます。

  • 施主は排出事業者ではありません。だから処分の責任を負うのは業者側です
  • 下請けに丸投げしても、責任は元請から動きません
  • だから施主は、「どう処分したのか」を元請に聞ける立場にいます

「処分費」という行にお金を払っているのに、何をどう処分したのか一度も説明がない——本来は、そういうものではありません。

マニフェスト——引渡しと同時に渡される伝票

産業廃棄物の運搬や処分を他社に頼むとき、業者には伝票を交付する義務があります。これがマニフェスト(産業廃棄物管理票)です。

廃棄物処理法 第12条の3第1項

その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に運搬を受託した者に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票を交付しなければならない。

「引渡しと同時に」と書かれています。あとでまとめて、ではありません。そして種類と数量、運んだ相手の名前が書かれます。

さらに同条第2項で交付した側は写しを保存、第3項で運搬した側は運搬が終わったら管理票に記載して、交付者に写しを送り返すことになっています。行って戻ってくる仕組みです。

施主に交付する義務はありません。ここは正確に書いておきます。マニフェストは業者と処理業者の間の書類です。ただし「見せてください」と頼むことはできます。そしてそれを嫌がる理由は、普通はありません。

※少量で自社処理する場合など、交付が不要な場合が環境省令で定められています。「マニフェストが無い=違法」と短絡しないでください。聞くべきは「どう処分したか」であって、書類の有無だけではありません。

「一式」と書かれていたら、何を聞くか

見積書の産廃処分費が「一式 30,000円」とだけ書かれている——これ自体は、珍しくありません。量が事前に確定しないので、一式で見るのは合理的でもあります。

ただし、聞き方によって返ってくる答えの質が変わります。

聞くこと何が見えるか
「この中に、何が入っていますか」塗料の缶・養生材・古いコーキング…と具体的に返ってくるか。説明できない会社は、下請け任せの可能性があります
「処分はどちらにお願いしていますか」許可業者の名前が出るか。元請が排出事業者なので、答えられて当然の質問です
「諸経費とは別ですか、含みますか」二重に乗っていないかの確認。見積書の4ブロックのどこに入るかで見えます
「石綿の事前調査は、どなたがされますか」後述します。2023年10月から有資格者の仕事です

処分費が見積書に一行も無い場合も、聞いてください。「サービスします」ではなく、他の項目に含めてあるのが普通です。どこに入っているかが分かれば、それで十分です。2〜3社ぶん並べると、どの会社がどこに入れているかが見えてきます

不法投棄の罰則は「懲役」ではなくなりました

処分費を惜しんで不法投棄をするとどうなるか——この話はよく書かれていますが、いま条文を引くと、書き方が変わっています。

廃棄物処理法 第25条

次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

「懲役」ではなく「拘禁刑」です。刑法の改正で懲役と禁錮が拘禁刑に一本化されたため、この条文も書き換わっています。「5年以下の懲役」と書かれた説明を見かけたら、条文が変わる前のものだと思ってください。

そして法人の場合は別枠があります。

同法 第32条(両罰規定)

法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人に対して三億円以下の罰金刑を科する(第25条第1項第1号から第4号まで等の場合)。

会社に3億円。まともな会社が処分費をごまかさない理由は、道義よりまずここにあります。だから「処分費を無料にします」と言われたら、それは値引きではなく、どこかに移し替えただけだと考えたほうが自然です。

2023年10月から、石綿の調査は有資格者の仕事になりました

ここからが、産廃処分費とつながっていて、しかもあまり知られていない話です。

厚生労働省の石綿総合情報ポータルサイトは、必要な手続きの説明の冒頭で、対象になる工事をこう挙げています。

厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイトより

エアコンの取付や壁紙の張替え、外壁工事や塗装等、また賃貸の原状回復工事等の小規模工事等では、工事を行う施工業者(元請事業者)が石綿(アスベスト)使用の有無の調査を行い、一定規模の工事においては調査結果等を石綿事前調査結果報告システムにより報告しなければなりません。

「外壁工事や塗装等」と名指しされています。解体工事の話ではありません。

そして2023年10月から、調査する人に資格が要るようになりました。

令和5年10月1日以降着工の工事から、施工業者(元請事業者)は有資格者による事前調査の実施が義務付けられています。

資格=特定建築物石綿含有建材調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者(一戸建て住宅等の事前調査に限る)、または日本アスベスト調査診断協会に登録されている者。

調査は①書面調査(設計図書と石綿含有建材データベースで確認)②目視調査(現地で製品名・製品番号を網羅的に確認)③分析調査(②で分からない場合)④調査結果報告書の作成という手順です。

ポータルには「分析を行わずに『石綿有』とみなし、法令に基づく措置を講じながら除去作業を行うこともできます」とも書かれています。分析を省く道はありますが、その場合は「有る前提」の手間とコストがかかります。安くなる話ではありません。

そして重要な一文。「施工業者(元請事業者)は、原則、工事の規模・種類にかかわらず改修等の対象箇所すべての材料に対し、事前調査を行う必要があります」——小さい工事なら不要、ではありません。

自分の家が該当しそうかは、外壁の種類でおおよそ見当がつきます。リシン・スタッコ・吹付タイルのような仕上げ材や、古いスレート屋根セキスイかわらUのような屋根材は、年代によって石綿を含みます。

100万円以上の工事は、労働基準監督署に報告されます

調査をしたあと、一定規模の工事は行政への報告が必要になります。

工事報告が必要になる規模
建築物の解体工事当該工事に係る部分の床面積の合計が80平方メートル以上
建築物の改修工事請負金額が100万円以上
厚生労働大臣が定める工作物の解体・改修請負金額が100万円以上

ここで効いてくるのが「請負金額」の定義です。ポータルにはこう書かれています。

「請負金額」=工事費用+機材(材料・機器等)費+消費税を含めた工事全体の合計金額。

塗料代も足場代も消費税も入れた総額です。戸建ての外壁塗装は80万〜120万円あたりが多いので、ふつうに100万円を超えます。

該当する場合、元請業者は着工前に、労働基準監督署と都道府県等に対して報告システムで報告することになります。報告にはGビズIDが要ります。

つまり、あなたの家の塗り替えは、行政に記録が残る工事かもしれないということです。「そんな報告はしていない」という会社があれば、それは制度を知らないか、やっていないかのどちらかです。

※報告義務に該当しない規模でも、事前調査そのものは実施義務があります。「100万円未満だから何もしなくていい」ではありません。また調査結果報告書は調査終了後3年間の保存義務があります。

その調査結果は、あなたに報告される決まりです

そしてここが、施主にとっていちばん実用的な一文です。

事前調査の結果報告書は、大気汚染防止法に基づき、施工業者(元請事業者)から発注者への報告が必要です。(厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイト)

発注者=あなたです。マニフェストと違って、こちらは施主に報告される前提の書類です。

だから、契約前にこう聞けます。「石綿の事前調査は、どなたがされますか。結果はいただけますか」——この質問に、

  • 資格の名前を挙げて答える会社は、制度を運用しています
  • 「うちは塗るだけなので関係ない」と言われたら、厚労省のポータルが対象工事に「塗装等」を挙げていることを一緒に確認してください
  • 「調査代は別途10万円かかります」と言われたら、金額の根拠と、分析まで行うのかを確認してください

この一問だけで、その会社が法令の更新についていっているかが分かります。何社かに同じ質問を投げてみると、返ってくる答えの差がはっきり出ます

なお、事前調査の結果レベル1(石綿含有吹付け材)やレベル2(石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材)が見つかった場合は、工事開始14日前までに計画の届出が必要になります。スレートなどのレベル3は、条例で提出を求めている自治体があります。いずれにしても、工期が伸びます。急ぐ工事ほど、先に調べておいたほうがいいということです。

見積書で見る順番

順番見ること
1産廃処分費の行があるか。無ければ「どこに含まれていますか」と聞く。金額の大小より、扱いがはっきりしているかが大事です
2諸経費と二重になっていないか。見積書は4つのブロックで読むと分かりやすくなります
3石綿の事前調査について、何か書かれているか。2023年10月以降、これは元請の義務です
4調査結果を渡してもらえるか。大気汚染防止法で発注者への報告が必要とされています
5「処分費無料」と書かれていないか。法人には3億円の罰金がある世界です。無料になる理由がありません

産廃処分費は、値切る場所ではありません。言えば削ってくれる会社があったとしたら、その分がどこへ行ったのかは聞いておいたほうがいいです。見るべきは金額ではなく、説明できるかどうかです。見積書の取り方契約書で見ておくところもあわせてどうぞ。そして、比べる相手がいないと「説明できるかどうか」も判断できません。同じ家を何社かに見てもらうところから始めてください。

よくある質問

産廃処分費は値切れますか?

おすすめしません。産業廃棄物の運搬と処分には許可が要り、処分場に払う費用も発生します。不法投棄には5年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金という罰則があります。削れる性質の費用ではありません。値切るなら、塗料のグレードや工事範囲で調整するほうが筋です。

見積書に産廃処分費の行がありません。

諸経費など他の項目に含めてあることが多いです。「どこに入っていますか」と聞いてください。答えられれば問題ありません。本当に一切見ていない会社だと、工事の途中で追加請求になることがあります。

工事のついでに、家の粗大ゴミも捨ててもらえますか?

頼まないほうがいいです。家から出た物は一般廃棄物で、産業廃棄物とは扱いが違います。一般廃棄物を業として運ぶには市町村の許可が要るので、断られたらそれが正しい対応です。工事前に自分で片づけておいてください。

マニフェストを見せてもらえますか?

頼むことはできます。ただし施主に交付する義務があるわけではありません。マニフェストは排出事業者(=元請業者)と処理業者の間の書類です。少量の場合など交付が不要なケースも環境省令で定められているので、「無い=違法」ではありません。聞くべきは「何を、どこに、どう処分したか」です。

うちは築40年ですが、アスベストの調査は必要ですか?

年代に関係なく、元請業者には事前調査の義務があります。厚労省のポータルは「原則、工事の規模・種類にかかわらず改修等の対象箇所すべての材料に対し、事前調査を行う必要があります」としています。古い家だから要る、新しい家だから要らない、という制度ではありません(調べた結果「無し」となるだけです)。

調査で石綿が見つかったら、工事はできなくなりますか?

できなくなるわけではありません。ただしレベル1・レベル2に該当すると工事開始14日前までに届出が必要になり、作業の方法も変わります。工期と費用に影響します。スレート等のレベル3は自治体の条例次第です。いずれにしても、早めに調べておくほど選択肢が残ります。

このページは2026年8月31日に、廃棄物処理法の条文(e-Gov法令検索)と厚生労働省 石綿総合情報ポータルサイトで確認して書きました。制度は改正されます。実際の工事の前には、必ず最新の情報と業者の説明をご確認ください。

参考にした情報

  • 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)第21条の3第1項——建設工事が数次の請負によって行われる場合、注文者から直接建設工事を請け負った建設業を営む者(元請業者)を事業者とする
  • 同法第12条の3——産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付義務。第1項は引渡しと同時の交付、記載事項として産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称等。第2項は交付者の写しの保存、第3項は運搬受託者から交付者への写しの送付
  • 同法第25条——「五年以下の拘禁刑若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」。第32条——両罰規定により法人に三億円以下の罰金刑(第25条第1項第1号から第4号まで等の場合)
  • 厚生労働省「石綿総合情報ポータルサイト」小規模工事等の着工前に必要な手続きについて——対象工事に「外壁工事や塗装等」を明記。令和5年10月1日以降着工の工事から有資格者による事前調査が義務(特定建築物石綿含有建材調査者、一般建築物石綿含有建材調査者、一戸建て等石綿含有建材調査者、日本アスベスト調査診断協会の登録者)。事前調査は書面調査・目視調査・分析調査・調査結果報告書の作成。分析を行わず「石綿有」とみなして措置を講じながら除去することも可。原則、工事の規模・種類にかかわらず対象箇所すべての材料に対し事前調査が必要。報告書は3年間保存。報告が必要なのは解体工事(床面積合計80平方メートル以上)、改修工事(請負金額100万円以上)、厚生労働大臣が定める工作物の解体・改修(請負金額100万円以上)。「請負金額」=工事費用+機材費+消費税を含めた工事全体の合計金額。報告先は労働基準監督署と都道府県等、報告システムはGビズIDでログイン。事前調査の結果報告書は大気汚染防止法に基づき施工業者から発注者への報告が必要。レベル1(石綿含有吹付け材)・レベル2(石綿含有保温材、耐火被覆材、断熱材)は工事開始14日前までに届出、レベル3(スレート、Pタイル等)は条例で提出を求めている自治体がある
  • 廃材処分費の金額例——名古屋の塗装店のコラム(2025年12月公開・戸建て外壁塗装での相場をおおよそ1万5千円〜3万5千円前後と記載)、塗装店の施工例(2018年3月公開・塗装面積124.3平方メートルの工事で廃棄物処理・ごみ処理に3万円近く、工事全体は約75万円)