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屋根の雪止めは必要?——決め手は雪の量ではなく「雪がどこへ落ちるか」です
屋根の雪止めについて調べると、「少しでも雪が降る地域なら付けたほうがいい」という説明によく出会います。ところが、金属屋根メーカーの元旦ビューティ工業は「雪国においては雪止めの設置はしないことが多いです」と書いています。理由は、すが漏れのリスクと、雪下ろしの妨げになること。雪がいちばん降る場所で、むしろ付けない——直感とは逆です。さらに建築基準法施行令86条は、屋根の積雪荷重について「屋根に雪止めがある場合を除き」勾配による低減を認めています。付けるか付けないかは、降る量ではなく、屋根の雪がどこへ落ちるかで決まります。
先に答えを書きます
- 「雪が降る地域なら付けるべき」とは限りません。金属屋根メーカーの元旦ビューティ工業は、「雪国においては雪止めの設置はしないことが多いです」と書いています。理由は、すが漏れのリスクと、雪下ろしの妨げになることです。
- 法令の側から見ても、雪止めは「ただ付ければいい」ものではありません。建築基準法施行令86条は、屋根の積雪荷重について「屋根に雪止めがある場合を除き」勾配による低減を認めています。雪止めがあると、その低減が使えません。
- それでも付ける理由は、落雪です。人・車・雨樋・隣家。付けるか付けないかは、雪の量ではなく、屋根の雪がどこへ落ちるかで決まります。
このページの内容全9項目
雪止めの取り付けは屋根材を持ち上げたり、穴を開けたりする工事です。屋根材が何かで方法も可否も変わるので、製品名からの早見表を先に見ておくと話が早くなります。
「必要ですか」——メーカーは「雪国では付けないことが多い」と書いています
雪止めを調べていると、「少しでも雪が降る地域なら付けたほうがいい」という説明によく出会います。ところが、金属屋根メーカーの元旦ビューティ工業は、こう書いています。
一方、雪国においては雪止めの設置はしないことが多いです。理由として、屋根上に積もる雪の量が多くすが漏れのリスクが高まるためです。また雪下ろしをする場合も、雪止めは不要と考えられます。
読者の直感とは逆ではないでしょうか。雪がいちばん降る場所で、むしろ付けない。
理屈はこうです。雪止めは「雪を屋根に留める」部材です。雪が少なければ、留めておけば安全に融けます。雪が多ければ、留めた雪そのものが問題になります。だから、雪の量が増えるほど話が逆転します。
同社は、雪国でも雪止めを設置することがあるケースとして3つを挙げています。①通路に面している家屋 ②民家と隣り合う家屋 ③軒先に樋のある家屋。
どれも「雪がどこへ落ちるか」の話です。降る量ではありません。同社はこうもまとめています——「雪止めを設置しない場合、屋根からどこに雪が落ちるのか、落雪で周辺に危害を加える恐れがないか等を確認すると良いでしょう」。
まず家のまわりを一周して、屋根の雪が落ちる先に何があるかを見てください。玄関のアプローチ、駐車場、隣家との境、エアコンの室外機。ここが出発点です。
デメリットは3つ。メーカーが自分で挙げています
「雪止めのデメリットは?」は、検索でもよく聞かれています。売っている側のメーカーが、自社の解説で3つ挙げています。
| デメリット | 中身 |
|---|---|
| 錆の発生 | 雪止めは金属製のものが多く、錆びることで脆くなり、交換が必要になることがある。景観を損ねる原因にもなる。対策はアルミ・ステンレス・亜鉛メッキ等の錆びにくい素材を選ぶこと |
| すが漏れのリスク | 雪を屋根上に長く留めることで、すが漏れが発生し漏水につながる可能性がある(主に雪国) |
| 雪下ろしの妨げ | 人力で雪下ろしをするとき、スコップなどの道具に引っ掛かり、かえって作業の妨げになる。「そのため雪国ではあえて雪止めを設置しないケースも見られます」 |
「すが漏れ」とは何か
聞き慣れない言葉だと思います。同社の説明を引きます。
すが漏れとは、室内の温度が屋根表面に伝わり解けた雪が、再び冷えて氷となり周りの雪解け水をせき止めることで、排水経路を失った水が屋根の繋ぎ目などから浸水する現象です。
雨漏りではなく、雪解け水が逆流して屋根の中に入ってくる——そういう現象です。そして雪止めは、雪を屋根に留めることで、この条件を作りやすくします。
すが漏れは、国の仕様書にも出てきます。公共建築木造工事標準仕様書は、下葺材(防水シート)についてこう定めています——「積雪寒冷地で、すがもれ等により軒先に水溜りが生じる場合、軒先から2m程度は改質アスファルトルーフィング下葺材(粘着層付タイプ)とする」。屋根の一番下2mだけ、材料を変えるという指定です(葺き替えのページ)。
つまり「雪止めを付けるなら、屋根の下葺材はどうなっていますか」がセットの質問になります。雪を留める以上、軒先に水が溜まる前提で作られているかどうか、です。
法令の側から見ると——雪止めがあると、勾配の低減が使えません
ここは、競合の記事ではまず出てこない話です。
建築基準法施行令 第86条(積雪荷重)は、屋根にかかる雪の重さをどう計算するかを定めています。その第4項に、こう書かれています。
屋根の積雪荷重は、屋根に雪止めがある場合を除き、その勾配が六十度以下の場合においては、その勾配に応じて第一項の積雪荷重に次の式によつて計算した屋根形状係数(…)を乗じた数値とし、その勾配が六十度を超える場合においては、零とすることができる。
読み解きます。屋根に勾配があれば、雪はある程度すべり落ちます。だから勾配がきついほど、計算上の積雪荷重を減らしてよい——これが屋根形状係数です。60度を超える急勾配なら、ゼロにできるとまで書かれています。
ところが、その低減には「屋根に雪止めがある場合を除き」という但し書きが付いています。雪止めを付けた屋根は、雪がすべり落ちない前提なので、勾配による低減が使えません。
これが、雪止めの「見えないコスト」です
雪止めを付けるということは、屋根の上に雪が残る設計にするということです。法令はそれを、計算のうえで正直に扱っています。
新築であれば、構造計算にこれが反映されます。問題は、あとから付ける場合です。建てたときは雪がすべり落ちる前提で計算された屋根に、後から雪を留める部材を足すことになります。
だから、後付けを検討するときに聞く価値があるのはこれです——「うちの屋根は、雪が載ったままでも大丈夫ですか」。雪の少ない地域なら現実には問題にならないことがほとんどですが、質問として成立することは知っておいてください。
屋根に残る雪は、何キロになるのか
同じ第86条に、計算の仕方がそのまま書かれています。
積雪荷重は、積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算しなければならない。
2 前項に規定する積雪の単位荷重は、積雪量一センチメートルごとに一平方メートルにつき二十ニュートン以上としなければならない。
つまり——積雪荷重 = 20N ×(積雪の深さcm)×(屋根の水平投影面積㎡)。これで桁が出ます。
20N × 30cm × 60㎡ = 36,000N。
1kgf ≒ 9.8N なので、およそ3,670kgf = 約3.7トンです。
雪が30cm積もっただけで、屋根には車3台ぶんに近い重さが乗る計算になります。雪止めは、この雪をすべり落とさずに屋根に留めるための部材だ——そう考えると、屋根の状態を確かめる意味が変わってきます。
これは構造計算に使う荷重の計算式で、「いま実際に何トン乗っているか」を測ったものではありません。垂直積雪量は地域ごとに特定行政庁が規則で定めるので、お住まいの市区町村で確かめられます。多雪区域では単位荷重の定めが別になることもあります。
雪止めを後から付けるなら、その前に屋根そのものが健全かです。野地板が傷んでいないか、留め具が効いているか。ここはカバー工法のページで扱った「下地は見たか」と同じ話になります。
付けない場合——落雪の責任と、自治体の条例
では、付けないとどうなるか。元旦ビューティ工業は、雪止めを設置していない場合のリスクとして人的・物的被害と近隣トラブルを挙げています。
屋根に積もった雪は少量であれば太陽光や日中の温かさにより解けて屋根から流れ落ちますが、解けきれなかった雪は気温の下がる夜に凍り、固まってしまいます。そうしてできた重く硬い氷の塊のような雪が屋根から落ちることは非常に危険です。
被害は人だけではありません。同社は「一度に落ちてきた雪の重みで、屋根の軒先に取り付けられた雨樋が変形したり外れてしまうこともあります」とし、車やエアコンの室外機も挙げています。雨樋の話は雨樋の修理のページにまとめました。
隣家に被害が出たら、どうなるのか
ここは法律の話になるので、慎重に書きます。
民法第717条は、土地の工作物について次のように定めています。
土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
落雪が必ずこの条文に当たる、という意味ではありません。「設置又は保存に瑕疵がある」といえるかどうかが要件で、そこは個別の事情で判断されます。当サイトが言えるのは、争いになったときに、この条文が論点になりうるということだけです。
そしてもうひとつ。元旦ビューティ工業は「自治体によっては落雪についての条例が定められており、有効な措置の一つとして雪止めが挙げられています」としています。お住まいの市区町村に、落雪に関する条例やお願いが出ていないか——これは役所のホームページで確かめられます。
判断の順番は、こうです
- ①屋根の雪はどこへ落ちるか——通路、駐車場、隣地、雨樋、室外機。家を一周して見る
- ②落ちる先に人や物があるか——ここが「付ける理由」になります
- ③市区町村に落雪の条例やお願いがあるか——役所のサイトで確認
- ④雪の量が多い地域か——多いほどすが漏れと雪下ろしの問題が重くなります
「雪が降るから付ける」ではなく、「落ちる先に何があるから付ける」。この順番で考えると、答えが出ます。
行政はどう書いているか——「雪止め等の措置」か「敷地内の空地」か
ここまで「落ちる先を見て決める」と書いてきましたが、これは当サイトの意見ではありません。行政の文書が、そのままそう書いています。
福井県の指導基準——二択で書かれています
福井県が定めている「積雪荷重等指導基準」(昭和57年施行、平成19年一部改正)の第3に、こうあります。
第3 雪の落下による危害の防止
落雪による危害を及ぼすおそれのある建築物には、雪止め等の措置を講じるか、または敷地内に適当な空地を確保する。
「雪止め等の措置を講じる」か「敷地内に適当な空地を確保する」か。行政が二択で書いています。つまり——落ちる先に十分な空地があるなら、雪止めは必須ではない。逆に、落ちる先に人や物があるなら、何らかの措置が要る。
同じ指導基準には、もうひとつ読む価値のある項があります。
第4 雪の集積し易い部分に対する荷重の割増
谷、軒先、下屋、渡り廊下等雪の集積し易い部分に対しては積雪荷重を割増して計算する。
谷・軒先・下屋——雪が溜まりやすい場所が名指しされています。雪止めをどこに付けるかを考えるとき、この3か所は最初に見る場所です。谷まわりの納まりは葺き替えのページでも扱いました。
お住まいの県にも、同じような基準があるかもしれません
積雪に関する取り扱いは、特定行政庁(都道府県や市)が規則や指導基準で定めています。建築基準法施行令86条も、垂直積雪量は「国土交通大臣が定める基準に基づいて特定行政庁が規則で定める数値」としています。
つまり同じ日本でも、住んでいる場所で扱いが変わります。「うちの地域の垂直積雪量は何cmですか」「落雪について何か基準はありますか」——役所の建築指導の窓口で聞ける質問です。
新潟県には、屋根雪だけの条例があります
自治体の条例の実例として、いちばんはっきりしているのが新潟県です。
「新潟県住宅の屋根雪対策条例」(平成24年10月12日公布)——同県は、屋根雪対策に特化した条例としては「全国初」だとしています。
そして制定の背景に、目を引く数字が書かれています。
平成22年度の豪雪により、新潟県内では死傷者数が316名に達し、その8割が雪下ろし等の除雪作業中に発生したものでした。
読み違えないでください。落雪に当たった人ではなく、雪下ろしをしていた人が8割です。
メーカーが挙げたデメリットの3つ目を思い出してください——「雪下ろしの妨げ」。スコップが引っ掛かる、という話でした。
新潟県の数字と重ねると、これは単なる使い勝手の問題ではありません。雪下ろしという作業そのものが、いちばん人が傷ついている場面です。そこで道具が引っ掛かるということの意味が変わってきます。
だから、雪の多い地域でメーカーが「雪止めを付けないことが多い」と書くのは、面倒だからではなく、屋根に上がる作業を前提にしているからだと読めます。
同条例は、3つの施策を定めています。①雪に強い住宅にしよう(克雪住宅)②屋根の雪下ろし対策は安全対策を万全に ③空き家の屋根雪下ろしも忘れずに。県は「屋根雪下ろしを伴う事故を防止するためには、住宅を屋根雪下ろしが不要な『克雪住宅』にすることが有効な対策となります」としています。
③の空き家についても、県は「空き家の屋根雪が放置されて、倒壊等により隣家住民などに危害を及ぼす恐れのある事例が多く生じています」としています。実家が空き家になっている方は、屋根雪も管理の対象だということです。
種類と、後付けできるか
雪止めには大きく3つの形があります。元旦ビューティ工業の分類です。
| 種類 | 形と向き・不向き |
|---|---|
| 金具タイプ | 扇形や台形の金具を等間隔に複数並べる。屋根を滑り落ちる雪を分断し、少量なら落雪を防ぐ。降雪量がそれほど多くなく、コストを抑えたいときに最適 |
| アングルタイプ | 長い棒で落雪をせき止めるように設置。金具タイプより広い面積でしっかり防ぐ。降雪量の多い地域や、雪が滑りやすい屋根に適する |
| ネットタイプ | 金網を軒先に被せる、またはフェンスのように設置。網目に雪が引っ掛かり滑りにくくする |
後付けは、足場を組む日にまとめるのが合理的です
同社は後付けについて、こう書いています。
雪止めの中でも金具タイプを採用している住宅が多く見られます。新築だけでなく、後付けでも比較的容易に設置が可能です。後付けの際は施工に足場を組む必要があるため、屋根のリフォーム等と同時に行うことでコストメリットがあります。
「足場を組む必要がある」——ここが金額を決めます。雪止めの金具そのものは小さな部材ですが、屋根に上がるための足場が、工事のいちばん大きな行になることがあります。
だから、外壁塗装や屋根の工事で足場を建てる日にまとめるのがいちばん合理的です。この構造は見積もりの内訳のページと同じで、足場を建てる回数を減らすほど総額が下がります。
なお、屋根材によっては後付けの方法が変わります。差し込み式の金具が使える屋根材もあれば、屋根を一部めくる必要があるものもあります。屋根材が何かを先に確かめると、話が早くなります。
見積もりのときに確かめる質問
- 目的うちの屋根の雪は、どこに落ちますか付ける理由は雪の量ではなく落ちる先です。ここを見ている会社かどうかが分かります
- 素材雪止めの材質は何ですかメーカー自身が錆をデメリットに挙げ、アルミ・ステンレス・亜鉛メッキを勧めています
- 下葺材雪を留めると軒先に水が溜まりますが、下の防水シートはどうなっていますか国の仕様書は積雪寒冷地で軒先2m程度を粘着層付タイプとしています
- 屋根後付けする場合、屋根材はめくりますか。差し込みですか屋根材によって方法が変わります。めくるなら、下地を見てもらう機会でもあります
- 足場足場の行は分かれていますか金具より足場のほうが大きい行になることがあります。他の工事とまとめられないかも聞いてください
- 条例この地域に、落雪についての条例やお願いはありますかメーカーも「自治体によっては落雪についての条例が定められており」としています。役所でも確認できます
よくある質問
屋根に雪止めは必要ですか?
雪の量ではなく、雪がどこへ落ちるかで決まります。金属屋根メーカーの元旦ビューティ工業は、「雪国においては雪止めの設置はしないことが多いです」としたうえで、雪国でも設置するケースとして①通路に面している家屋 ②民家と隣り合う家屋 ③軒先に樋のある家屋を挙げています。
どれも落ちる先の話です。まず家を一周して、屋根の雪が落ちる場所に何があるかを見てください。
雪止めのデメリットは何ですか?
メーカーが3つ挙げています。①錆の発生(錆びると脆くなり交換が必要。景観も損ねる)②すが漏れのリスク(雪を屋根に長く留めることで、雪解け水が逆流して屋根の継ぎ目から浸水する)③雪下ろしの妨げ(スコップが引っ掛かる)。
加えて法令の側にもあります。建築基準法施行令86条は、屋根の積雪荷重について「屋根に雪止めがある場合を除き」勾配による低減を認めているので、雪止めがあるとその低減が使えません。
雪止めを後付けできますか?いくらかかりますか?
後付けはできます。メーカーも「金具タイプを採用している住宅が多く…後付けでも比較的容易に設置が可能です」としています。
金額については、当サイトでは単価の目安を出しません。ただし構造ははっきりしています——同じメーカーが「後付けの際は施工に足場を組む必要があるため、屋根のリフォーム等と同時に行うことでコストメリットがあります」と書いているとおり、金具より足場のほうが大きい行になることがあります。外壁塗装や屋根工事で足場を建てる日にまとめるのがいちばん効きます。
雪止めをDIYで付けられますか?
おすすめしません。理由は3つあります。①屋根の上の高所作業である ②屋根材によっては一部をめくる必要があり、防水の層を傷めうる ③足場が要る。
そして、付ける位置と数は屋根の形・勾配・屋根材・地域の積雪量で変わります。メーカーも「屋根や周辺環境を反映した計算に基づき、最適な種類・設置間隔などをご提案しております」としています。金具を買うことはできても、どこに何個付けるかは別の判断です。
雪止めを付けると雨漏りしませんか?
「すが漏れ」という現象があります。雨漏りとは別で、メーカーの説明では室内の熱で融けた雪が再び凍り、雪解け水をせき止めて、行き場を失った水が屋根の継ぎ目から浸入するものです。雪止めは雪を屋根に留めるので、この条件を作りやすくします。
だから、雪の多い地域で雪止めを付けるなら下葺材(防水シート)をどうしているかが要点になります。国の仕様書は、積雪寒冷地で軒先に水溜りが生じる場合、軒先から2m程度を粘着層付タイプの下葺材にするとしています。
雪が落ちて隣の家に被害が出たら、責任はありますか?
個別の事情で判断されるので、当サイトでは断定しません。参考として、民法第717条は「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたとき」の賠償責任を定めています。落雪が必ずこれに当たるという意味ではなく、争いになればここが論点になりうるということです。
実務的には、先に手を打つほうが早いです。自治体によっては落雪についての条例が定められているともメーカーは書いています。役所のサイトで確認し、落ちる先に隣家があるなら対策を検討してください。
屋根が急勾配なら、雪は自然に落ちますか?
ある程度は落ちます。建築基準法施行令86条も、勾配に応じて積雪荷重を減らしてよいとし、勾配が60度を超える場合は零とすることができるとしています。
ただし「落ちる」ことは、そのまま下に人や物があるということでもあります。急勾配の屋根ほど、落雪の勢いは強くなります。勾配は雪止めを付けない理由にも、付ける理由にもなる——落ちる先を見て決めてください。
自治体に、落雪の決まりはありますか?
あります。たとえば福井県の「積雪荷重等指導基準」は、「落雪による危害を及ぼすおそれのある建築物には、雪止め等の措置を講じるか、または敷地内に適当な空地を確保する」としています。雪止めか、空地かの二択です。
また新潟県には「新潟県住宅の屋根雪対策条例」(平成24年公布)があり、同県は屋根雪対策に特化した条例として「全国初」としています。積雪の扱いは特定行政庁(都道府県や市)が定めるので、お住まいの役所の建築指導の窓口で確かめてください。
雪下ろしと雪止め、どちらが危ないですか?
新潟県が条例の制定背景として公表している数字が参考になります。平成22年度の豪雪で、県内の死傷者数は316名。そのうち8割が雪下ろし等の除雪作業中でした。
落雪に当たった人ではなく、屋根に上がった人のほうが多いということです。だからメーカーが雪止めのデメリットに「雪下ろしの妨げ」を挙げているのは、使い勝手ではなく安全の話だと読めます。雪の多い地域では、雪止めを付けるかどうかより「屋根に上がらなくて済む家にできないか」のほうが大きい問いになります。
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見積もりの内訳
足場を建てる回数を減らすほど総額が下がります
雪止めは、付けるほうがよい家と、付けないほうがよい家がある部材です。何社かに屋根を見てもらって、「うちの雪はどこに落ちますか」から聞いてみてください。答えの具体性に、そのまま差が出ます。
参考にした情報
- 元旦ビューティ工業株式会社「屋根の雪止めとは」(2024年3月22日)——雪止めの役割、設置していない場合のリスク(人的・物的被害、雨樋の変形・脱落、車や室外機への被害、近隣トラブル)、デメリット3点(錆の発生/すが漏れのリスク/雪下ろしの妨げ)とすが漏れの定義、種類3つ(金具タイプ・アングルタイプ・ネットタイプ)、「雪国においては雪止めの設置はしないことが多いです」および雪国でも設置する3ケース(通路に面している家屋/民家と隣り合う家屋/軒先に樋のある家屋)、「自治体によっては落雪についての条例が定められており、有効な措置の一つとして雪止めが挙げられています」、後付けについて「施工に足場を組む必要があるため、屋根のリフォーム等と同時に行うことでコストメリットがあります」(2026年9月12日確認)
- e-Gov法令検索「建築基準法施行令」第86条(積雪荷重)——第1項(積雪荷重は積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算する)、第2項(積雪の単位荷重は積雪量1cmごとに1㎡につき20ニュートン以上。ただし特定行政庁は多雪区域を指定し異なる定めをすることができる)、第3項(垂直積雪量は特定行政庁が規則で定める)、第4項(屋根の積雪荷重は、屋根に雪止めがある場合を除き、勾配60度以下では屋根形状係数を乗じた数値とし、60度を超える場合は零とすることができる)(2026年9月12日確認)
- e-Gov法令検索「民法」第717条(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)——「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない」(2026年9月12日確認)
- 福井県「福井県積雪荷重等指導基準および運用方針」(昭和57年1月1日施行、平成19年6月20日一部改正)——第3「雪の落下による危害の防止 落雪による危害を及ぼすおそれのある建築物には、雪止め等の措置を講じるか、または敷地内に適当な空地を確保する。」、第4「雪の集積し易い部分に対する荷重の割増 谷、軒先、下屋、渡り廊下等雪の集積し易い部分に対しては積雪荷重を割増して計算する。」、第6「雪おろしのための措置」(2026年9月12日確認)
- 新潟県「新潟県住宅の屋根雪対策条例」(平成24年10月12日公布)——制定の背景(「平成22年度の豪雪により、新潟県内では死傷者数が316名に達し、その8割が雪下ろし等の除雪作業中に発生したもの」)、屋根雪対策に特化した条例として「全国初」である旨、条例の3施策(克雪住宅/雪下ろしの安全対策/空き家の屋根雪下ろし)、「空き家の屋根雪が放置されて、倒壊等により隣家住民などに危害を及ぼす恐れのある事例が多く生じています」の記載(2026年9月12日確認)
- 積雪寒冷地における軒先の下葺材(軒先から2m程度を粘着層付タイプとする旨)の出典は、屋根の葺き替えのページの「参考にした情報」に記載しています
最終確認日:2026年9月12日。積雪荷重の計算式は構造計算に用いるもので、実際に屋根に載っている雪の重さを測ったものではありません。垂直積雪量は地域ごとに特定行政庁が規則で定めます(多雪区域では単位荷重の定めが異なることがあります)。落雪による損害の責任は個別の事情で判断されるもので、当サイトは特定の結論を示すものではありません。落雪に関する条例の有無は、お住まいの市区町村にご確認ください。雪止めの種類・設置位置・数は、屋根の形状や地域の積雪量によって変わります。屋根の上での作業には転落の危険があります。