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外壁塗装中に台風が来たら?——足場について、法律が決めていること

足場を組んだところで台風の予報が出た。夜、風の音で足場が揺れる。「これ、倒れないのか」「工事はどうなるのか」——と検索して来られた方へ。

工事は止まります。それは業者の気分や親切ではなく、労働安全衛生規則という法令が決めていることです。足場を建物につなぐ間隔も、台風が過ぎたあとに点検する項目も、条文に書かれています。読めば、業者の対応が「普通か、そうでないか」が分かります。(2026年8月30日確認)

結論——作業は止まります。法令にそう書いてあります

労働安全衛生規則の第522条は、こう定めています。

(悪天候時の作業禁止)
事業者は、高さが二メートル以上の箇所で作業を行う場合において、強風、大雨、大雪等の悪天候のため、当該作業の実施について危険が予想されるときは、当該作業を行わせてはならない。

🔑「行わせてはならない」——努力目標ではありません。外壁塗装は足場に上がって行う作業なので、ほぼそのまま当てはまります。

足場そのものを組んだり解体したりする作業についても、同じ規則の第564条に定めがあります。

(足場の組立て等の作業)
事業者は、つり足場、張出し足場又は高さが二メートル以上の構造の足場の組立て、解体又は変更の作業を行うときは、次の措置を講じなければならない。
三 強風、大雨、大雪等の悪天候のため、作業の実施について危険が予想されるときは、作業を中止すること。

⚠️つまり「台風が来るから、急いで足場をバラしておきます」も、直前にはできません。解体作業自体が悪天候では中止になるためです。対応は早めに動くしかないという構造になっています。

🔑ですから「台風で工事が止まりました」と言われたら、それは正常な対応です。逆に荒天のなかで足場に上がって作業しているとしたら、そちらのほうが問題です。

足場は、建物につないで固定されています

足場が自立して建っていると思われがちですが、そうではありません。建物側につないで倒れないようにしています。これを「壁つなぎ」といいます。

間隔まで法令で決まっています。

鋼管足場の種類垂直方向水平方向
単管足場5m5.5m
わく組足場
(高さが5m未満のものを除く)
9m8m

この表の値以下の間隔で、壁つなぎ又は控えを設けることとされています(第570条第1項第5号)。あわせて「鋼管、丸太等の材料を用いて、堅固なものとすること」とも定められています。

🔑2階建ての住宅なら、壁つなぎは必ず複数あります。足場が揺れるのは、この壁つなぎで許容されている範囲の動きであることが多いです。ただし「揺れる=安全」でもありません。気になるときは、揺れていること自体を業者に伝えてください。点検の根拠になります。

🔑 外壁塗装は「壁つなぎを外す場面がある」工事です

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。

壁つなぎは建物の壁に金具で留めます。ということは、その場所は塗れません。だから外壁の仕上げを進めるうえで、壁つなぎを一時的に外す場面が出てきます。

法令は、この状況を想定して例外規定を置いています。

窓枠の取付け、壁面の仕上げ等の作業のため壁つなぎ又は控えを取り外す場合その他作業の必要上やむを得ない場合において、当該壁つなぎ又は控えに代えて、建地又は布に斜材を設ける等当該足場の倒壊を防止するための措置を講ずるときは、適用しない。

⚠️「壁面の仕上げ等の作業」——外壁塗装は、まさにこれです。法令は「外していい」とは言っていません。「外すなら、代わりに倒壊を防ぐ措置を講じること」と言っています。

🔑ですから台風の前に確認する価値があるのは、「いま壁つなぎを外している最中ではないか」です。塗装や仕上げの進み具合によっては、通常より条件が悪い状態になっている可能性があります。

聞き方は難しくありません。「台風が来るので、壁つなぎは全部付いている状態にしてもらえますか」——これで通じます。この質問に具体的に答えられるかどうかで、現場を管理できている会社かどうかも分かります

台風の前に、業者は何をするのか

いちばん一般的なのがメッシュシート(養生シート)を畳むことです。

シートは塗料の飛散を防ぐために張られています。ただし張ったままだと、足場全体が帆のように風を受けます。だから台風が近いときは畳んで、風が抜けるようにします。

🔑台風の前にシートが畳まれていたら、それは手抜きではなく対策です。「シートが外れている」と心配になる方がいますが、逆です。

状況によっては足場の一部を解体することもあります。ただし前述のとおり解体作業自体が悪天候では中止になるため、台風の直前ではなく、余裕をもって判断する必要があります。

⚠️飛散防止の養生は、シート以外の部分にもあります。窓や車、植木の養生がどうなっているかも、あわせて見ておくと安心です。

台風が過ぎたら、点検してからでないと再開できません

「風が止んだから、明日から続き」ではありません。第567条第2項が、点検を義務づけています。

事業者は、強風、大雨、大雪等の悪天候若しくは中震以上の地震又は足場の組立て、一部解体若しくは変更の後において、足場における作業を行うときは、点検者を指名して、作業を開始する前に、次の事項について点検させ、異常を認めたときは、直ちに補修しなければならない。

点検する項目は、条文に7つ列挙されています。

  • ①床材の損傷、取付け及び掛渡しの状態
  • ②建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部の緩みの状態
  • ③緊結材及び緊結金具の損傷及び腐食の状態
  • ④足場用墜落防止設備の取り外し及び脱落の有無
  • ⑤幅木等の取付状態及び取り外しの有無
  • ⑥脚部の沈下及び滑動の状態
  • ⑦筋かい、控え、壁つなぎ等の補強材の取付状態及び取り外しの有無

🔑⑥の「脚部の沈下」に注目してください。台風は強風だけでなく大雨も伴います。地面がゆるむと、足場の脚が沈むことがあります。庭や土の上に足場が立っている家では、風より雨のほうが問題になることがあります。

そして⑦に「壁つなぎ」が入っています。台風のあと、壁つなぎが緩んでいないか・外れていないかを見る——それが条文の要求です。

⚠️「台風の翌日、誰も来ないまま数日空いた」というのは、点検の時間を取っている可能性があります。連絡がないと不安になりますが、まず工程がどう組み直されるかを聞いてください

「毎日揺れて、外壁にゴンゴン当たる」——これは言っていい

台風でなくても、風の強い日に足場が揺れて外壁に当たる音がすることがあります。実際に多い相談です。

足場は壁つなぎで固定されていますが、まったく動かない構造ではありません。ただし「揺れるのが普通だから我慢する」ものでもありません。

根拠は、さきほどの点検項目の②です。

二 建地、布、腕木等の緊結部、接続部及び取付部の緩みの状態

🔑「緩み」は、法令が点検すべきものとして名指ししている状態です。揺れが日に日に大きくなっている、音が増えている——これは緩みが進んでいるサインである可能性があります。

ですから伝え方はこうなります。「風の日に揺れて壁に当たる音がするので、緊結部の緩みを見てもらえますか」。クレームではなく、点検の依頼です。条文に書かれている項目なので、まともな会社なら話が通ります。

当たった跡が残ってしまったら

塗装前であれば、下地の傷は工事の中で処理されることが多い部分です。問題になりやすいのは塗り終わったあとに当たった場合と、足場を解体したあとに気づいた場合です。

⚠️だから足場が外れる日の前に、一度自分の目で見ておく価値があります。足場があるうちなら直せるものが、解体後だと「もう一度足場を組むか」という話になってしまいます。

🔑工事の前に外壁の写真を撮っておくと、ここで効きます。もともとあった傷か、工事中についたものかを分ける材料になります。撮るのは数分です。

そもそも、台風シーズンに工事を頼んでいいのか

「9月10月は避けたほうがいいのでは」と考える方がいます。

結論から言うと、時期そのものを避ける必要はありません。止まったら止まる、というだけです。ただし次の2つは、この時期に頼むなら先に決めておいたほうがいいものです。

  • ①いつまでに終わってほしいという事情があるか——来客、売却、引っ越しなど期限がある場合は、余裕のある時期のほうが向いています
  • ②足場が長く残ることを許容できるか——止まっている間、足場は建ったままです。防犯や見た目が気になる方もいます

⚠️逆に、この時期にしか動けない事情があるなら、避ける理由はありません。塗装できない条件は季節ではなく気温・湿度・降雨で決まりますむしろ繁忙期を外せる分、日程を取りやすいこともあります

もし、足場が倒れて被害が出たら

ここは断定を避けます。責任の所在は契約の内容と個別の状況によって変わり、当サイトで一般化して言えることではないためです。

ただし契約の前に確認できることはあります。

  • ①請け負う会社が、工事中の事故に備えた賠償責任の保険に入っているか——入っているかどうかだけでなく、証券で内容を確かめます
  • ②足場を組むのが自社か、外注か——外注の場合、どちらの保険が使われるのかを聞いておきます
  • ③契約書に、天災・不可抗力のときの取り決めがあるか——何も書かれていないより、書かれているほうが確実です

🔑この3つは、台風が来てから聞いても遅い内容です。見積もりを取る段階で、書面と一緒に確かめておくものです。聞かれて嫌がる会社はまずありません。

⚠️なお、台風でご自宅そのものに被害が出た場合は、工事とは別に火災保険の対象になることがあります棟板金の浮きや飛びは、台風のあとに見つかりやすい傷みです。

工期が延びるのは、想定されていることです

台風で工事が止まれば、当然その分だけ日程が延びます。

これは台風に限った話ではありません。塗装は雨の日にはできず、湿度や気温の条件もあります。国の仕様書にも、塗装を行わない条件が定められています

🔑ですから「〇月〇日に必ず終わる」という約束は、そもそも成立しにくい工事です。大事なのは「延びたときにどうなるか」を先に決めておくことです。

  • 足場を長く借りることになった場合、費用の扱いはどうなるか——足場代がどう積まれているかで、話が変わります
  • 連絡はどのタイミングで来るか——止まったとき、再開が決まったとき
  • 再開の見込みは、何を見て判断するか——天気予報だけか、点検の結果もか

住んでいる側が、台風の前にできること

足場の管理は業者の仕事ですが、家の側でできることもあります。

  • ①ベランダや庭の物を片付ける——足場があると、飛んだものが引っかかったり、跳ね返って窓に当たったりします
  • ②車の位置を確認する——足場の真下や、飛来物が落ちる位置に停めていないか
  • ③窓の内側からカーテンを閉めておく——万一ガラスが割れたときの飛散を減らせます
  • ④足場の様子を写真に撮っておく——台風の前の状態が残っていると、あとで話が早くなります

🔑④はやっておく価値があります。スマホで数枚撮るだけです。何かあったときに「前はこうだった」と示せる材料になります。

まとめ

  • 工事が止まるのは正常——第522条が、悪天候での高所作業を禁じています
  • シートが畳まれていたら、それは対策——張ったままだと足場が風を受けます
  • 足場は建物につないである——壁つなぎの間隔も法令で決まっています
  • 外壁塗装は、その壁つなぎを外す場面がある工事——外すなら倒壊防止の措置を講じることとされています
  • 台風のあとは点検してから再開——条文に7項目が列挙されています
  • 保険と契約は、台風が来る前に確かめておく——来てからでは遅い内容です

🔑台風のときの動き方は、会社によって差が出る部分です。見積もりの段階で「荒天のときはどうしますか」と聞いておくと、契約前に分かります。工事が始まってからでは、選び直せません。

参考にした情報

  • 労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)より——第522条(悪天候時の作業禁止)、第564条第1項(足場の組立て等の作業。第3号の悪天候時の中止)、第567条第2項(点検。悪天候・地震等の後の点検事項7号)、第570条第1項第5号(鋼管足場の壁つなぎ又は控えの間隔)、および第569条第3項の準用による「壁面の仕上げ等の作業のため壁つなぎ又は控えを取り外す場合」の規定。条文はe-Gov法令検索で確認しました

最終確認日:2026年8月30日。労働安全衛生規則は、労働者を使用して作業を行う事業者に適用される法令です。この記事は、工事現場で守られるべき基準を施主の立場から確かめるために引用しています。個別の工事における責任の所在や費用の負担は、契約の内容と実際の状況によって変わるため、当サイトでは断定していません。契約書・保険証券の内容をご確認ください。

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