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外壁塗装の養生と飛散——いちばん揉めるのは、車です
外壁塗装のトラブルで、金額の次に多いのが塗料の飛散——なかでも車に付いたという話です。このサイトの取材に応じている実務者も、言い方は率直でした。「塗料は、結構飛ぶ」。だから養生(ようじょう=塗らない場所を覆って守る作業)は、工事の脇役ではなくもめごとを防ぐ本体です。このページは両方の立場に書きます。これから工事をする人が車と隣家を守る話と、隣の工事で塗料を付けられた人が最初にやるべきことです。
このページの内容全9項目
養生とは——「覆う場所の一覧」で分かります
養生は、ビニールやシート、テープで「塗らない場所」を覆う作業です。足場の外側を覆うメッシュシートも、飛散を抑える養生の一部です。覆う対象を並べると、工事中の暮らしの制約がそのまま見えてきます。
| 覆う場所 | 暮らしへの影響 |
|---|---|
| 窓・サッシ | 覆われている間は開けられません。どの面がいつ覆われるかは工程表で分かります(工事中の暮らし) |
| 給湯器・換気口・エアコン室外機 | 機器は「使えるように覆う」のが原則です。給湯器の給排気をふさぐのは危険なので、覆い方は業者の腕の見せどころ。使えない時間があるなら事前に説明があるはずです(エアコンの詳細は工事中のエアコンへ) |
| 玄関まわり・床・植木 | 通り道は滑りにくい養生がされます。植木や外の物は、着工前に「どこまで覆ってもらえるか」を一緒に歩いて決めるのが確実です |
| 車 | 次の章で詳しく。ここがいちばんの揉めどころです |
養生に使う道具と、見積書での呼び方
現場で使われる道具には名前があります。見積書にもその名前で出てくるので、いくつか押さえておくと、書かれている内容が読めるようになります。
| 名前 | どんなもの | おもに使う場所 |
|---|---|---|
| マスカー | マスキングテープに、たたまれたビニールがくっついた材料。貼ると同時に広い面を覆える | 窓、サッシ、玄関ドア、室外機 |
| マスキングテープ | 塗る面と塗らない面の境目に貼る、剥がしやすいテープ | 付帯部との取り合い、シーリングの周囲 |
| ノンスリップシート | 滑りにくい加工がされた床用の養生材 | 玄関まわり、通路、階段 |
| 飛散防止ネット(メッシュシート) | 足場の外側を覆う網状のシート。塗料の霧と洗浄の水しぶきを抑える | 足場の全周 |
| ブルーシート・不織布カバー | 厚手のシート。車や大きな物を覆う | 車、物置、植木 |
このうち飛散防止ネットには、JIS A 8952(建築工事用シート)という規格があります。落下物への強さで1類と2類に分かれ、網目の寸法が12mm以下のものがメッシュシートと定義されています。防炎性能は消防法施行規則にもとづくもので、1類も2類も同じです。見積書に「メッシュシート」と書いてあるのは、この規格の材料を指しています。
このシートは、外から家の中を見えにくくもします。塗料の飛散を抑えるうえでは細かい網目が有利ですが、防犯の面では「外から見えない=死角ができる」という逆の意味を持ちます。足場が立っているあいだの防犯は工事中の空き巣対策のページにまとめました。シートの透け具合は、業者に聞けば事前に分かります。
見積書での出方も、覚えておくと役に立ちます。養生は「一式」ではなく、数量が出る項目です。「養生 ◯◯㎡」「飛散防止ネット ◯◯㎡」というように、面積で計上されるのが普通です。しかも養生の面積は、足場の面積とほぼ同じ数字になることが多い——足場の外周を覆うからです。見積書で養生の㎡が足場の㎡と近ければ、それは正常な数字です。逆に「養生一式」とだけ書かれているときは、車のカバーや植木が含まれているのかを確認してください。
窓は、いつからいつまで開けられないのか
養生について、いちばん聞かれるのがこれです。答えは工程を見れば出ます。窓が開けられないのは、養生を貼った日から、その面の塗装が終わって養生を外す日まで。標準的な工程に当てはめると、こうなります。
| 工程 | 窓の状態 |
|---|---|
| 1日目:足場の設置 | 開けられます(ただし作業の音と、人が窓の外を通ります) |
| 2日目:高圧洗浄 | 終日閉め切り。水が入るので、換気扇も止めておくのが無難です |
| 3〜5日目:乾燥・下地補修・シーリング | 開けられます。ここが工事中いちばん過ごしやすい期間です |
| 5〜6日目:養生 | ここから閉め切りが始まります |
| 6〜11日目:外壁と屋根の塗装 | 閉め切り(塗料のにおいもこの期間) |
| 11〜13日目:付帯部・手直し・養生の撤去 | 塗り終わった面から順に開けられるようになります |
つまりまるまる閉め切りになるのは、おおむね5日から1週間。工事期間10〜14日のうち、後半に集中します。ただしこれは晴天が続いた場合で、雨が降れば塗装がずれるぶん、閉め切りの期間も延びます。
ここで知っておいてほしいことが3つあります。
- 全部の窓が同時に塞がるわけではありません——塗る面は日ごとに変わります。「今日はどの面を塗りますか」と聞けば、その日どの窓が使えるかが分かります。1面ずつ進む会社なら、閉め切りは思ったより短く感じるはずです
- 開けたい窓は、先に伝えておく——「この窓だけは開閉できるようにしてほしい」という要望は、着工前なら普通に通ります。養生の貼り方を工夫すれば、開け閉めできる状態で覆うこともできます。貼ってしまった後では手間になるので、先に言うのが大事です
- 24時間換気は止めない——多くの住宅に付いている換気システムは、給気口をふさぐと働きません。給気口を覆う必要がある日は、その旨の説明があるはずです。夏場は室温が上がりやすいので、エアコンが使えるかどうかもあわせて確認してください
なお、国が発注する工事の仕様書にも、養生についての定めがあります。公共建築工事標準仕様書(建築工事編)の塗装工事の章には、「塗装面、その周辺、床等に汚損を与えないように注意し、あらかじめ塗装箇所周辺に適切な養生を行う」と書かれています。ポイントは「あらかじめ」という言葉です。塗り始めてから慌てて覆うのではなく、塗る前に覆っておくのが標準だ、ということです。
※戸建ての工事に公共工事と同じ管理を求められるわけではありませんが、養生については事情が違います。養生は戸建ての見積書にも数量で計上される項目——つまり最初から単価に乗っている作業です。「養生が薄い」と感じたら、それは頼み方の問題ではなく、見積書に入っている作業が行われているかどうかの話になります。
車の守り方——カバーは「最低限」です
実務者の言葉を、そのまま置きます。「車にカバーをかけてくれないと。最低限」。
塗料の粒子は霧のように細かく、風に乗ります。とくに吹き付けの日は飛びますが、ローラーの日でも、高圧洗浄の日でも、飛ぶものは飛びます(洗浄では水と一緒に古い塗膜のかけらが飛びます)。守り方は、確実な順にこうなります。
- いちばん確実なのは、移動工事期間中、車を別の場所に置けるならそれが最強です。月極やコインパーキングの費用と、万一のリスクを天秤にかける価値はあります。
- 移動できないなら、専用カバー業者が用意する車用の養生カバー(不織布など)をかけてもらいます。「かけてもらえますか」ではなく「いつ、誰が、どの車にかけますか」まで詰めておくと確実です。
- 駐車位置の調整塗る面・洗浄する面の近くを避けるだけでも、リスクは大きく変わります。足場を組む日は、足場材の搬入経路も車に当たりやすいので注意です。
「揉める元」だと、実務者自身が言っています
飛散をめぐってもめごとが大きくなった例を見聞きしている、揉める元になりやすい——というのが現場側の実感です。つまりこれは、施主が神経質なのではなく、業者側もリスクとして認識している話。だから遠慮なく、契約前に養生の範囲を確認してください。まともな会社ほど、この確認を嫌がりません。
隣の家と、隣の車
自分の車を守って終わり、ではありません。隣の家の壁・窓・洗濯物、そして隣の車も飛散の射程に入ります。実務者も「隣の家が近いと、吹き付けはちょっと怖い」と言うくらいです。
ここで施主がやることは、実は多くありません。業者に2つ確認するだけです。
- 近隣隣の車や洗濯物への対策は、挨拶のときにどう伝えますか?近隣挨拶は業者がやるのが標準です。飛散の可能性がある日を隣家が知っているかが、揉めるかどうかの分かれ目。挨拶の範囲と文例はご近所挨拶のページへ
- 保険万一、近隣や車に塗料が付いた場合は、どういう対応になりますか?賠償の保険に入っているのが普通の業界です。「うちは絶対飛ばしません」より「万一のときはこう対応します」と答える会社のほうが信頼できます
付けられた側へ——触らず・こすらず・写真
ここからは立場が逆です。隣の工事で、自分の車や壁に塗料が付いた——検索の相談を見ても、この立場の方はとても多い。最初の行動で結果が変わるので、順番だけ覚えてください。
- 触らない・こすらない・自分で落とさない理由は2つ。①乾いた塗料を素人がこすると、車の塗装ごと傷めて被害が広がります。②手を加えると、何がどれだけ付いたのかという事実が消えます。直したい気持ちをいったん止めてください。
- 写真を撮る車全体、付いた箇所のアップ、日付が残る形で。工事中の隣家と自分の車の位置関係も1枚あると、あとの話が早くなります。
- 工事をしている会社(施工業者)に連絡する連絡先は現場の掲示や案内に載っています。隣のお宅を責める必要はありません——作業していたのは業者で、対応の窓口も業者です。伝えるのは事実だけ。「◯日ごろから車に塗料のような付着があります。確認してもらえますか」。
- 除去・補修の方法と負担を、業者側と決める塗料の除去は、専門の磨きや処理が要る作業です。被害を受けた側が自費で磨いて終わり、という話ではありません。対応の内容と負担は業者側との話し合いで決まります。折り合わない場合の相談先はトラブル対処のページ(消費者ホットライン188など)へ。
養生を剥がしたあとに見るところ
工事の終盤、養生が剥がされます。ここで軽く見ておくと後悔がありません。
- 窓ガラスとサッシ——塗料の点やテープの糊が残っていないか
- 給湯器・換気口——覆いが全部外されて、動くか
- 床・タイル・車——足元と車体に飛びがないか
気になる箇所は、足場があるうちに言うのが鉄則です。理由と全体のチェックリストは完了検査のページにまとめています。
よくある質問
養生の費用は別料金ですか?
見積もりの項目として立っているのが普通です(「養生費」「飛散防止ネット」など)。「一式」に溶けていたら、車のカバーや植木の養生が含まれるのかを確認してください。内訳の見方は見積もりの内訳のページへ。
工事中、車は毎日カバーをかけたままですか?
飛散リスクのある工程の日だけ覆う運用もあれば、期間中かけたままの場合もあります。毎日車を使う方は、その旨を先に伝えてください。使う時間帯に合わせた運用を組んでもらえるかどうかも、会社の慣れが出るところです。
洗濯物はいつから干せますか?
高圧洗浄〜塗装〜乾燥の期間は外干しに向きません。日程は工程表で分かります。工事中の暮らしのページに、洗濯物・窓・ペットまで含めた一覧があります。
自転車や物置、植木鉢はどうすればいいですか?
動かせるものは着工前に自分で移動が確実です。動かせないものは、着工前の打ち合わせで「これは覆ってほしい」と指さしで決めてください。言った・言わないを防ぐには、業者と一緒に家のまわりを一周するのが一番です。
付けられた塗料を、その日のうちに落としたほうがいいのでは?
「乾く前なら落ちやすい」のは事実ですが、素人が溶剤やコンパウンドで触ると被害が広がるリスクのほうが大きい。まず写真、そして業者へ連絡——順番はこちらを優先してください。除去の方法と負担は、そのあと業者側と決める話です。
あわせて読みたい
吹き付けとローラー
飛散がいちばん出る工法の話。実務者は戸建てで勧めない理由
高圧洗浄
水しぶきと塗膜のかけらが飛ぶ日。車と窓の扱い
工事中の暮らし
洗濯物・窓・ペット。「できないこと」の一覧
完了検査
養生を剥がしたあと、足場を外す前に見る場所
トラブル対処
話が折り合わないときの窓口。188と住まいるダイヤル
差し入れ・挨拶
近隣挨拶は業者がやるのが標準、の実際
養生の丁寧さは見積書の金額には表れにくいのですが、工事中のストレスと近隣トラブルはここで決まります。何社かに、どこまで養生するかを聞いてみてください。車、植栽、室外機、隣家との境——具体的に挙げて答えられる会社は、実際の現場でも同じように動きます。過去の現場写真を見せてもらうのも早いです。
参考にした情報
- 塗料の販売・調色に携わった経験のある実務者への取材(塗料の飛散の実際、車のカバーが最低限であること、飛散をめぐるもめごとの実感、吹き付け時の近隣リスク)
- 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」18.1.6 施工管理(養生の定め)
- JIS A 8952(建築工事用シート)の区分——1類・2類、メッシュシートの網目寸法
- 消費者ホットライン188・住まいるダイヤル等の相談窓口についてはトラブル対処のページで扱っています
飛散への対応・賠償の扱いは、契約と個別の状況によって異なります。このページは一般的な考え方の整理であり、法的な助言を行うものではありません。最終確認日:2026年8月25日。