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瓦棒屋根の塗装——「心木あり」か「心木なし」かで、話がまったく違います
瓦棒屋根の塗装を調べると、どこも「錆を落として、錆止めを塗って、上塗り」と書いてあります。それは間違っていません。ただ、その前に分かれ道があります。——瓦棒には、中に木が入っているものと、入っていないものがあります。そして国が定めている屋根工事の標準仕様書は、「心木なし」の瓦棒葺だけを対象にしています。この一文が、何を意味するのか。順に説明します。
※本ページはプロモーション(広告)を含みます。
このページの内容
- 先に結論
- 瓦棒屋根とは——材料ではなく「葺き方」の名前です
- 心木あり・心木なし——国の仕様書が対象にしているのは
- 心木があると、何が起きるか
- どちらか見分ける方法
- 塗装で足りる場合
- 塗装では足りない場合
- 見積書で見る行と、聞く質問
- よくある質問
先に結論
①瓦棒は「材料」ではなく「葺き方」の名前です——材料は金属(トタンやガルバリウム)
②中に木(心木)が入っているタイプと、入っていないタイプがあります
③国の標準仕様書が対象にしているのは「心木なし」だけです——心木ありは、それ以前の工法
④心木が傷んでいる場合、塗装では戻りません——中の木を触る工事になります
⑤だから、最初に確かめるのは「うちは心木ありか、なしか」です
錆を落として塗る話は、そのあとです。——順番を逆にすると、塗ったのに数年で同じことが起きます。
瓦棒屋根とは——材料ではなく「葺き方」の名前です
まず、言葉の整理をします。
| 言葉 | 指しているもの |
|---|---|
| トタン | 材料の名前(亜鉛めっきをした鋼板) |
| ガルバリウム | 材料の名前(アルミと亜鉛の合金めっきをした鋼板) |
| 瓦棒葺き | 葺き方の名前。屋根の流れ方向に、一定の間隔で棒状の出っ張りが並ぶ形 |
| 立平葺き(たてひらぶき) | 葺き方の名前。出っ張りをつまんで納める形 |
だから「うちはトタンの瓦棒です」という言い方が成り立ちます。——材料がトタンで、葺き方が瓦棒、という意味です(トタン屋根の塗装)。
💡見分け方は簡単です。——屋根を下から見上げて、縦方向(軒から棟へ)に等間隔の線が何本も入っていれば、瓦棒か立平です。横方向に段々になっていれば、横葺きです。
瓦棒葺きは、勾配のゆるい屋根でも使える葺き方として広く採用されてきました。継ぎ目が流れ方向に立ち上がっているので、水が横に回りにくい作りです。
心木あり・心木なし——国の仕様書が対象にしているのは
ここが、このページの本題です。
国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」13章2節「長尺金属板葺」に、こう書かれています。
「この節は、長尺金属板による立て平葺、心木なし瓦棒葺、横葺等の屋根葺形式に適用する。」
13.2.3 工法「屋根葺形式は、特記による。なお、瓦棒葺は、心木なしの場合に適用する。」
2回、はっきり書かれています。——この仕様書が扱っているのは「心木なし」の瓦棒葺です。
つまり、こういうことです
心木あり瓦棒葺は、いまの公共建築の標準仕様には入っていません。
——それ以前に使われていた工法だということです。
2つの違い
| 心木あり瓦棒 | 心木なし瓦棒・立平 | |
|---|---|---|
| 出っ張りの中身 | 木の角材が入っています | 木は入っていません(金属の部材で納める) |
| 時期 | 古い建物に多い形 | いまの標準仕様が対象にしている形 |
| 弱点 | 中の木が濡れると腐ることがあります | 木がないので、その心配はありません |
| 塗装で直せる範囲 | 表面の錆まで。中の木は別 | 表面の錆 |
⚠️「心木ありだから駄目」という話ではありません。——いまも問題なく使われている屋根はたくさんあります。ただ傷み方の種類が1つ多いということです。
心木があると、何が起きるか
金属の下に木がある、という構造を思い浮かべてください。
起こり得ること
1. 金属の継ぎ目や釘穴から、わずかに水が入る
2. 中の木が濡れる
3. 乾かないまま、木が傷んでいく
4. 木が痩せると、留めている釘やビスが効かなくなる
5. 棒の部分が浮く、ぐらつく、風であおられる
ここで大事なのは、4と5です。——屋根の金属は、心木に留められています。その木が効かなくなれば、いくら表面をきれいに塗っても、留まっていない状態は変わりません。
だから、こうなります
錆=塗装で対応できる範囲
心木の傷み=塗装では対応できない範囲
——同じ屋根の上に、性質の違う2つの問題が同時にあり得るということです。
棟の部分も、木でできていることがあります
屋根のてっぺん(棟)にも、下地の木が入っている形があります。——国の仕様書にも、「棟板(あおり板)、瓦棒、桟木及びけらば部は、水切り金物等の取り付けに先立ち下葺を行う」という記述があります。つまり、これらの部分には下葺(防水シート)を先に施すことが定められています。
裏を返せば、そこは水が回りやすい場所だということです。棟の際でぐらつきがある場合、下の木を疑う理由になります。
どちらか見分ける方法
残念ながら、下から見上げただけでは分かりません。——外から見える形は、心木ありでも心木なしでも似ています。
確かめる順番
1. 書類を探す——新築時の図面や仕様書に、屋根の工法が書かれていることがあります
2. 建てた年代から推測する——古い建物ほど心木ありの可能性があります(⚠️年代だけでは決まりません)
3. 業者に見てもらう——これがいちばん確実です
そして、聞き方はこうです。
「うちの瓦棒は、心木ありですか、心木なしですか。」
——この質問に答えられる会社は、屋根に上がって構造を見ています。
💡「瓦棒ですね」で終わる会社と、「心木ありのタイプですね」まで言う会社。——同じ屋根を見ても、見ている深さが違います。2〜3社に見てもらうと、この差がはっきり出ます。
心木の傷みを疑うサイン
- 棒の部分が浮いている、波打っている
- 釘やビスの頭が出てきている
- 棒の際に沿って、錆が集中している
- 踏むと、部分的に沈む感じがある(⚠️ご自身では上がらないでください)
- 強い風のあと、音がするようになった
これらがあるなら、塗装の見積もりを取る前に「構造としてどうか」を見てもらってください。
塗装で足りる場合
心木が健全で、傷みが表面の錆にとどまっているなら、塗装は有効な手段です。——金属屋根は、塗膜が守っている屋根材だからです。
工程の中心は、塗料ではなくケレン(錆落とし)と錆止めになります。——ここは材料としてのトタンの話と共通なので、詳しくはこちらにまとめました(トタン屋根の塗装)。
瓦棒ならではの確認点
「棒の際(きわ)まで、きちんと塗ってもらえますか。」
——立ち上がった部分の付け根は、塗りにくく、水が溜まりやすい場所です。平らな面だけきれいでも、傷むのは際からです。
使う金属板にも、規格があります
参考までに、国の仕様書では長尺金属板の種類が規格で定められています。
| 規格 | 規格名称 |
|---|---|
| JIS G 3312 | 塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯(いわゆるトタン系) |
| JIS G 3322 | 塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯(いわゆるガルバリウム系) |
| JIS G 3318 | 塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯 |
| JIS G 4305 / G 3320 | ステンレス鋼板及び鋼帯 |
※仕様書では「特記がなければ、JIS G 3322に基づく屋根用コイル」とされています。葺き替えやカバー工法で新しく葺く場合の話で、塗装の場合に直接関係する数字ではありません。ただし「いま何が標準とされているか」の目安になります(ガルバリウム)。
塗装では足りない場合
心木が傷んでいる、金属に穴が開いている、下地まで水が回っている。——この段階なら、別の工事の検討になります。
| 方法 | 考え方 |
|---|---|
| 部分補修 | 傷んだ範囲が限られているなら。ただし同じ材料が手に入るかによります |
| カバー工法 | 既存を残して上から葺く。下地が健全であることが前提です(カバー工法) |
| 葺き替え | 心木ごと作り直せる唯一の方法です(葺き替え費用) |
心木の傷みが理由なら、カバー工法では解決しないことがあります。——上からかぶせても、下の木は傷んだままだからです。「心木はどうなっていますか。カバー工法で問題ありませんか」と聞いてください。
⚠️瓦棒屋根は、勾配がゆるい屋根にも使われています。——勾配がゆるいと、選べる工法が限られることがあります。「うちの勾配で、この工法は使えますか」も確認してください(屋根の勾配と面積)。
撤去して葺き替える場合は、もうひとつ確認があります。——解体や改修の作業では、あらかじめ石綿の使用の有無を調査することが法律で義務づけられています。古い建物では、屋根以外の部材が対象になることもあります。
見積書で見る行と、聞く質問
| 見積書の行 | 読み取れること |
|---|---|
| ケレン/素地調整 | 錆をどこまで落とすか。数量が書かれているか |
| 錆止め | 製品名が書かれているか。金属屋根はここで寿命が決まります |
| 下地補修/心木交換 | 心木を触る工事が入っているか。入っているなら、その理由を聞く |
| 釘・ビスの打ち替え | 浮きがある場合に出てくる行です |
| 棟部の処理 | 棟は水が集まる場所。行があるか |
| 足場 | 屋根の工事なので必要です。外壁と同時なら1回で済みます |
聞くのは、この3つです
1.「うちの瓦棒は、心木ありですか、心木なしですか。」
——構造まで見ているかが分かります
2.「心木や下地は、どうなっていますか。」
——心木ありの場合、これが本題です
3.「棒の際まで、きちんと塗ってもらえますか。」
——傷むのは平らな面ではなく、際からです
この3つに答えられる会社なら、瓦棒屋根を分かっています。——「錆を落として塗ります」だけで終わるなら、もう1社に聞いてください。2〜3社に見てもらうと、屋根に上がって構造まで確かめた会社が見つかります。
よくある質問
瓦棒屋根とトタン屋根は、違うものですか?
指しているものが違います。——トタンは材料の名前、瓦棒は葺き方の名前です。だから「トタンの瓦棒葺き」という言い方が成り立ちます。材料としての話はこちらです(トタン屋根の塗装)。
心木ありか、なしかは自分で分かりますか?
下から見上げただけでは分かりません。——外から見える形は似ているからです。新築時の図面や仕様書に書かれていることがあるので、まず書類を探してください。見つからなければ「うちの瓦棒は心木ありですか、なしですか」と業者に聞いてください。
心木ありだと、塗装しても意味がないのですか?
そうではありません。——心木が健全で、傷みが表面の錆にとどまっているなら、塗装は有効です。問題になるのは中の木が傷んでいる場合で、そのときは塗っても留まっていない状態は変わりません。だから先に構造を見てもらうのです。
棒の部分が浮いてきました
塗装の前に見てもらってください。——中の木が痩せて、留めている釘やビスが効かなくなっている可能性があります。塗ってもぐらつきは直りません。強い風のあとに音がするようになった場合も同じです。
カバー工法にすれば解決しますか?
心木の傷みが理由なら、解決しないことがあります。——上からかぶせても、下の木は傷んだままだからです。「心木はどうなっていますか。カバー工法で問題ありませんか」と確認してください(カバー工法)。
何年ごとに塗り替えるものですか?
年数では言えません。——錆がどこまで進んでいるかで決まります。金属屋根は塗膜で守られているので、錆が出る前に塗るのがいちばん安く済みます。錆が出てから、穴が開いてからと進むほど、工程が増えていきます。
勾配がゆるいのですが、問題ありますか?
瓦棒葺きは、もともと勾配のゆるい屋根にも使われてきた葺き方です。——ただし勾配がゆるいと、葺き替えやカバー工法で選べる工法が限られることがあります。「うちの勾配で、この工法は使えますか」と聞いてください。
DIYで塗れませんか?
やめてください。——金属屋根は滑ります。そして錆で薄くなった部分は、体重で抜けることがあります。労働安全衛生規則でも、高所での作業には足場等が求められています。状態を知りたいだけなら、業者に写真を撮ってもらってください。
屋根の材料は何を使うのが今の標準ですか?
国の標準仕様書では、特記がなければJIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)に基づく屋根用コイルとされています。——いわゆるガルバリウム系です。これは新しく葺く場合の話で、塗装のときに直接関係する数字ではありません(ガルバリウム)。
あわせて読みたい
トタン屋根の塗装
ケレンと錆止めで決まります
ガルバリウム
いまの標準とされる材料
カバー工法
下地が健全であることが前提
葺き替え費用
心木ごと作り直せる方法
アスファルトシングル
専用の仕様があります
屋根だけ塗る費用
勾配で面積が変わります
屋根の見積書
行が少ない書類ほど抜けに気づけない
雨漏りの原因
塗装では直らない場合
参考にした情報
国土交通省 大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」13章2節 長尺金属板葺 13.2.1 一般事項——「この節は、長尺金属板による立て平葺、心木なし瓦棒葺、横葺等の屋根葺形式に適用する」旨
同 13.2.3 工法(1)——「屋根葺形式は、特記による。なお、瓦棒葺は、心木なしの場合に適用する」旨
同 13.2.2 材料(1) 表13.2.1 長尺金属板の種類——JIS G 3312(塗装溶融亜鉛めっき鋼板及び鋼帯)、JIS G 3314(溶融アルミニウムめっき鋼板及び鋼帯)、JIS G 3318(塗装溶融亜鉛-5%アルミニウム合金めっき鋼板及び鋼帯)、JIS G 3321(溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)、JIS G 3322(塗装溶融55%アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板及び鋼帯)、JIS K 6744(ポリ塩化ビニル被覆金属板及び金属帯)、JIS G 4305(冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯)、JIS G 3320(塗装ステンレス鋼板及び鋼帯)が挙げられており、特記がなければJIS G 3322に基づく屋根用コイルとする旨
同 13.2.3 工法(4)(ア)(f)——棟板(あおり板)、瓦棒、桟木及びけらば部は、水切り金物等の取り付けに先立ち下葺を行う旨
石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号)第3条——事業者は解体等の作業に先立ち、対象となる建築物等について石綿等が使用されているかどうかを調べる義務を負う旨
最終確認日:2026年8月28日。仕様書および規格は改定されることがあります。本ページは公共建築工事に適用される仕様書の内容を整理したものであり、戸建て住宅の工事がこの仕様書に従って行われることを意味するものではありません。個々の屋根については、現地を確認した施工会社にご確認ください。