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塗料不足はいつまで?——統計で見ると、動いているのは量ではなく値段です
「塗料不足はいつまで続くのか」——調べると塗装店のブログが並び、各社が「今月の入荷状況」を書いています。それはその会社の話であって、全国がどうなっているかではありません。全国の数字は日本塗料工業会(日塗工)が毎月、無料で公開しています。そこを見ると、2026年7月の合成樹脂塗料は生産が前年同月比104.3%、在庫が100.5%。作る量も在庫も前年を割っていません。動いているのは値段のほうで、塗料全体の出荷は数量131千トンが前年と同じまま、金額だけ672億円から728億円へ。そして「いつまで」に時期で答えた資料は、当サイトが確認した範囲では見つかりませんでした。
先に答えを書きます
- 全国の統計に、「量が足りていない」ことを示す数字は出ていません。2026年7月の合成樹脂塗料は、生産が前年同月の104.3%、在庫が100.5%。作る量は前年より多く、在庫も前年並みです。
- 動いているのは値段のほうです。同じ月の塗料全体の推定値は、出荷数量131千トン(前年も131千トン)に対して、出荷金額は672億円→728億円。量は同じで、金額だけがおよそ8%増えています。
- 「いつまで」に答えている資料を、当サイトは見つけられませんでした。業界団体が出しているのは、需要の予測(2026年度は前年度比101.1%)までです。終わる時期を書いた一次資料はありません。
- ただし統計は「全国の合計」です。あなたの家に塗るその品番・その色が、来月届くかは、この数字では分かりません。個別の品薄は、統計が前年並みでも起こります。
- だから、待つかどうかは「いつ直るか」ではなく、見積書の有効期限と入らなかったときに何へ替わるかで決めてください。
目次(全9項目)
「足りているか」は、月に一度、無料で確かめられます
「塗料不足」で検索すると、塗装店のブログが並びます。「2026年7月の入荷状況」「6月最新」——各社が日付で競っていて、書いてあるのはその会社が仕入れている範囲の話です。それは嘘ではありませんが、全国がどうなっているかは分かりません。
全国の数字は、別の場所にあります。一般社団法人 日本塗料工業会(日塗工)が、経済産業省の統計をもとに塗料の生産・出荷・在庫を毎月まとめて公開しています。会員でなくても、無料で見られます。
公開されているのは、この3つです
- 速報・確報(月次)——経済産業省の化学工業統計をもとにした生産・出荷・在庫のトン数。翌々月の初めごろに速報が出ます(2026年7月度速報は9月3日掲載)。
- 業況観測アンケート(毎月20日前後)——日塗工の会員企業へのアンケート。業況判断・出荷数量・出荷金額の推定が、需要分野別(建築/自動車/船舶・構造物/電気・機械・金属/木工)に分かれています。
- 需要実績見込みと需要予測(年1回・3月)——主要メーカーへのアンケートをもとにした来年度の予測。分野ごとにメーカーのコメントが付いています。
つまり、「いま足りているのか」を自分で確かめる道具は、もう公開されているということです。以下は、2026年9月12日の時点で見られる最新の数字です。
2026年7月の数字——生産104.3%、在庫100.5%
日塗工が2026年8月31日付で出した速報(2026年7月分)です。対象は合成樹脂塗料(溶剤系と水系)で、塗料のすべてではありません。
| 区分 | トン | 前月比 | 前年同月比 | |
|---|---|---|---|---|
| 溶剤系 | 生産 | 44,230 | 96.3% | 103.4% |
| 出荷 | 41,320 | 98.0% | 95.7% | |
| 在庫 | 45,010 | 105.8% | 97.9% | |
| 水系 | 生産 | 37,978 | 100.2% | 105.4% |
| 出荷 | 32,229 | 97.1% | 97.0% | |
| 在庫 | 27,912 | 111.0% | 105.2% | |
| 合計 | 生産 | 82,208 | 98.0% | 104.3% |
| 出荷 | 73,549 | 97.6% | 96.3% | |
| 在庫 | 72,922 | 107.8% | 100.5% |
読み方は、こうです。
- 生産は前年より多い(104.3%)。作る量が減っているわけではありません。
- 在庫は前年並み(100.5%)で、前月より7.8%積み増している(107.8%)。在庫が底をついて減り続けている形ではありません。
- 出荷は前年より少ない(96.3%)。出ていく量が減っています。これは「出せない」ではなく「注文が少ない」でも同じ形になります。どちらなのかは、この表だけでは決められません。
年度の累計でも同じ向きです。2026年4月〜7月の生産は315,808トンで前年比107.5%、出荷は299,693トンで104.4%。4か月まとめても、前年を上回っています。
この表の注記を、そのまま書いておきます
速報の前年同月比には、「〔前年同月確報値(合計)との単純比〕:参考値」という注が付いています。速報の数字と、あとから確定する確報の数字を、そのまま割った参考値だということです。厳密な前年比として扱うものではない、と日塗工自身が断っています。0.5%や1%の差を、ここから読み取らないでください。
量は同じ、金額だけ8%——建築だけが弱い
もう一つの資料、業況観測アンケート(2026年7月分・8月24日付)のほうが、家の塗り替えに近い話をしています。
7月の業況は、販売シェアを加味した前年同月比で金額が108.3%、数量が99.6%。そして同じ資料の7月推定値が、これです。
| 2026年7月 | 前年 | 差 | |
|---|---|---|---|
| 出荷数量 | 131 千トン | 131 千トン | 変わらず |
| 出荷金額 | 728 億円 | 672 億円 | およそ +8.3% |
同じ量を売って、金額が8%増えている。——これが、いま起きていることの形です。「足りない」のではなく「高い」。検索されている言葉は「塗料不足」ですが、数字の側に出ているのは値段のほうです。
そして分野別に見ると、建築だけが違う動きをしています。
| 分野 | 金額 |
|---|---|
| 建築 | 98.6% |
| 自動車 | 102.1% |
| 船舶・構造物 | 113.9% |
| 電気・機械・金属 | 115.3% |
| 木工 | 104.3% |
全体の金額が108.3%まで伸びているなかで、建築だけが前年割れ(98.6%)です。値上げが通っているのに金額が前年に届かない、ということは、その分だけ工事の数か量が減っているということになります。
ここが、読者にとっていちばん効く一行です
建築用の塗料は、取り合いになっている状態ではありません。むしろ分野の中で最も弱い。「品薄だから急いで」と言われる根拠は、少なくとも全国の数字の側には見当たりません。
業界自身は、2026年度をどう見ているか
日塗工は毎年3月に、主要メーカーへのアンケートをもとにした需要の実績見込みと予測を出しています。2026年3月19日付の資料には、こう書かれています。
| 合計 | うち「建物」 | |
|---|---|---|
| 2025年度 実績見込 | 1,174 千トン(前年度比 96.1%) | 287 千トン(96.4%) |
| 2026年度 予測 | 1,187 千トン(前年度比 101.1%) | 294 千トン(102.2%) |
2025年度は前年度を4%下回り、2026年度はわずかに戻る、という見立てです。ここでも「作れない」「足りない」という説明は出てきません。出てくるのは需要の話です。
分野ごとのメーカーコメントに、家の塗り替えを名指しした行があります。
「建物」に付けられたコメント(原文)
2025年度の実績見込み——「首都圏など都市部を中心とした大規模再開発案件や関西万博関連等の建設需要が好調に推移した一方で、戸建リフォームの需要低迷や資材価格・人件費の高騰も響き前年を下回る見込み。」
2026年度の予測——「戸建改修需要はコスト高から低調に推移するとみられるが、新設については住宅着工件数が緩やかに回復見込みで、賃上げ機運の高まりによる景気回復を期待し前年比増を予測する。」
つまりメーカー自身が、戸建ての塗り替えは「コスト高で低調」と見ています。塗料が足りなくて工事ができない、という見方ではありません。高くて頼まれない、という見方です。
同じ資料には、参考になる書き方がもう2か所あります。電気機械の欄には「半導体不足は解消しており」とあり、木工製品の欄には「ウッドショックの収束により、急激な価格高騰は落ち着いたものの、原材料費や物流コストの上昇による高止まりで買い控えが長期化している」とあります。不足が終わったことは、終わったとはっきり書く資料だということです。そして塗料そのものについて、同じ書き方の「不足」の記述は見当たりませんでした。
「いつまで」に答えた資料は、見つけられませんでした
この記事で答えられないことを、先に書いておきます。
「塗料不足はいつまで続くのか」に時期で答えている一次資料を、当サイトは見つけられませんでした(2026年9月12日時点で確認した範囲)。日塗工が出しているのは年度単位の需要予測までで、「◯年◯月ごろに解消する」という書き方の資料はありません。
「無い」の意味を、正確に書きます
これは「当サイトが確認した範囲で見つけられなかった」ということであって、世の中に存在しない、という証明ではありません。確認したのは、日塗工が一般公開している統計・業況観測アンケート・需要予測です。塗料メーカーが販売店向けに出している案内までは確認していません。
塗装店やメーカーが「いつごろ戻る」と言っていたら、その出どころを聞いてみてください。出どころのある話なら、それはこちらより新しい情報です。
そして、答えが出ていないものを待つ、という決め方はおすすめしません。待っている間に傷むのは家のほうで、需要予測のコメントが言っているのは「コスト高が続く」です。安くなるのを待つ根拠も、資料の側にはありません。
来月、自分で確かめるときに見る3つの数字
この記事の数字は、来月には古くなります。そのときに自分で見直せるよう、どこがどう動いたら「本当に足りていない」と言えるのかを書いておきます。
- 在庫が、出荷の何か月分あるか。2026年7月は在庫72,922トンに対して月の出荷が73,549トン=およそ1.0か月分です(当サイトが公表値を割ったものです)。ここが大きく1を割り込み、しかも何か月も続いたときが、在庫で回らなくなっているという形です。
- 生産が前年を割り込んでいるか。作る量が減っていないうちは、供給側が止まっている形にはなりません。2026年7月は104.3%、年度累計は107.5%です。
- 出荷の減り方と、金額の増え方がそろっているか。数量が減って金額も減るなら、注文が減っています。数量が減って金額だけ増えるなら、値上げが進んでいるということです。いまは後者です。
この3つを、逆から読まないでください
在庫が1か月分というのは、少ないという意味ではありません。塗料は受注生産の品目も多く、在庫を厚く持つではないからです。大事なのは水準そのものではなく、前の月・前の年と比べてどちらへ動いたかです。単月の数字だけを見て結論を出さないでください。
この統計が言えないこと
ここまでの数字は全部、全国の合計です。合計が前年並みでも、個別の品薄はふつうに起こります。
- 色が特殊なとき。調色が必要な色は、在庫から出すのではなく作ることになります。
- 製品が新旧入れ替わるとき。廃番・切り替えの前後は、旧品番が手に入らなくなります。統計上は何も起きていません。
- 特定の原材料を使う製品だけ止まるとき。塗料全体の合計では見えません。
- その会社の仕入れ先の問題のとき。これは全国の統計とは関係のない話です。
だから、塗装店が「入荷待ちです」と言っているのが嘘だ、という読み方はしないでください。この記事が言っているのは、「塗料が全国的に足りないから急いだほうがいい」という説明には、統計の裏づけが見当たらないということだけです。個別の品番が待ちになることは、別の話として実際にあります。
見積もりで効くのは、この3つ
「いつまで」が分からない以上、分からないままでも決められる形にしておくのが現実的です。聞くのは3つです。
- 「この見積もりの有効期限は、いつまでですか」——値上がりが続く局面では期限が短くなります。期限を書いていない見積書は、あとで金額が動く余地を残しています。くわしくは見積もりの有効期限にまとめました。
- 「この塗料が入らなかったら、何に替わりますか。等級と金額も教えてください」——ここを先に決めておくのが、いちばん効きます。着工後に「入らないので別の塗料で」となったとき、替わった先が同じ等級とは限りません。替わる可能性のある製品名を、契約前に書いてもらってください。
- 「工期はいつからいつまでで、塗料の手配はいつしますか」——手配の時期が決まっていれば、品薄かどうかはその時点で分かります。
値上がりの中身そのものは、別のページにあります
いくら上がったのか、なぜ上がったのか、工事費にいくら乗るのかは、塗料の値上げにメーカーの公表資料でまとめています。このページは「量は足りているのか」「いつまでなのか」だけを扱いました。
よくある質問
塗料は、いまも不足しているのですか?
全国の統計に、量が足りていないことを示す数字は出ていません。2026年7月の合成樹脂塗料は生産が前年同月比104.3%、在庫が100.5%、年度累計の生産も107.5%です。ただしこれは全国の合計で、特定の色・品番が手に入るかどうかは別の話です。
「いつまで」続きますか?
時期で答えている一次資料を、当サイトは見つけられませんでした。日塗工が公開しているのは年度単位の需要予測までです(2026年度は前年度比101.1%)。解消の時期を書いた資料はありません。
塗装店に「塗料の入荷待ち」と言われました。待つべきですか?
待つかどうかより、替わりを先に決めておくほうが確実です。「入らなかったら何に替わりますか。等級と金額も教えてください」と聞いて、製品名を見積書か書面に残してもらってください。個別の品番が待ちになること自体は、全国の統計が前年並みでも起こります。
値段はどれくらい上がったのですか?
2026年7月は、塗料全体の出荷数量が前年と同じ131千トンで、出荷金額が672億円→728億円(およそ+8.3%)でした。製品ごとの改定率と工事費への影響は塗料の値上げにまとめています。
この統計は、どこで見られますか。有料ですか?
日本塗料工業会のサイトで、無料で公開されています。月次の速報・確報は毎月、業況観測アンケートは毎月20日前後、需要予測は年1回3月です。会員登録は要りません(会員専用の資料は別にあります)。
「不足しているので今契約したほうがいい」と言われました。
急ぐ理由が塗料の不足なら、根拠を聞いてください。全国の数字では、建築分野は前年割れ(金額98.6%)で、分野の中でいちばん弱い状態です。「品薄だから急いで」と、統計の向きが合いません。判断がつかないときは、同じ時期に何社かの見積もりを取るのがいちばん早い確かめ方です。
塗料の値上げ
いくら、なぜ上がったのか。メーカーの公表資料で
見積もりの有効期限
値上がり局面で、期限が短くなる理由
見積書のチェック項目
製品名と等級が書いてあるかを見ます
塗料メーカー
どの会社が何を出しているか
何年ごとに塗るのか
待つ判断をするなら、先に読む話
急かす営業への対処
「今だけ」を理由にされたとき
参考にした情報
- 一般社団法人 日本塗料工業会「経済産業省統計 速報 2026年7月」(2026年8月31日付/2026年9月12日確認)——溶剤系・水系合成樹脂塗料の生産・出荷・在庫のトン数と前月比・前年同月比、2026年4月〜の累計、および注記「〔前年同月確報値(合計)との単純比〕:参考値」
- 一般社団法人 日本塗料工業会「2026年7月 業況観測アンケート 調査結果」(2026年8月24日付/2026年9月12日確認)——7月業況(金額108.3%・数量99.6%)、需要分野別業況(金額)の建築98.6%・自動車102.1%・船舶・構造物113.9%・電気・機械・金属115.3%・木工104.3%、7月推定値の出荷数量131千トン(前年131千トン)・出荷金額728億円(前年672億円)
- 一般社団法人 日本塗料工業会「2025年度 需要実績見込/2026年度 需要予測」(2026年3月19日付・事務局作成/2026年9月12日確認)——2025年度実績見込1,174千トン(前年度比96.1%)・建物287千トン(96.4%)、2026年度予測1,187千トン(101.1%)・建物294千トン(102.2%)、および「建物」欄のメーカーコメント(「戸建リフォームの需要低迷や資材価格・人件費の高騰も響き前年を下回る見込み」/「戸建改修需要はコスト高から低調に推移するとみられるが、新設については住宅着工件数が緩やかに回復見込みで、賃上げ機運の高まりによる景気回復を期待し前年比増を予測する」)、電気機械欄の「半導体不足は解消しており」、木工製品欄の「ウッドショックの収束により、急激な価格高騰は落ち着いたものの、原材料費や物流コストの上昇による高止まりで買い控えが長期化している」
- 一般社団法人 日本塗料工業会「塗料 生産・出荷・出荷金額・在庫数量 推移」(2026年8月17日付のグラフ/2026年9月12日確認)——2021年度〜2026年度の月別推移。同グラフの注記に「2018年度〜2025年12月:年報値使用/2026年1月〜2026年6月:各月の確報値を使用」とあり、年度によって元データの種類が違うため、当サイトでは年度をまたいだ水準の比較には使っていません
- 当サイト塗料の値上げ・見積もりの有効期限——製品ごとの改定率と、工事費への影響
最終確認日:2026年9月12日。統計の数字は公表時点のもので、速報は後日の確報で修正されることがあります。本ページの「見つけられませんでした」は、当サイトが確認した公開資料の範囲での話であり、存在しないことの証明ではありません。特定の製品が手配できるかどうかは、実際に施工する会社にご確認ください。当サイトと日本塗料工業会に取引関係はありません。