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サイディングの縦張りと横張り——変わるのは見た目より、裏にある胴縁の向きです

サイディングの縦張り横張り。見た目の好みの話だと思われがちですが、本当に変わるのは、外壁材の裏にある「胴縁」の向きです。縦張りにすると、胴縁は横向きになります。すると壁の中の空気が、下から上へ流れなくなります。だから胴縁に隙間を空けるという決まりごとがあり——それを空けていない施工が、実際に存在します。外装材メーカーが、不備事例として写真つきで公開しているくらいです。塗り替えを考えている方に関係するところまで、順番に説明します。

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このページの内容

自分の家がどちらか、見ればすぐ分かります

外壁を正面から見て、板の継ぎ目(目地)がどちらに走っているかを見てください。

横張り縦張り
板の向き横長の板を、下から積み上げる縦長の板を、横に並べる
目に見える継ぎ目横のラインが何本も走る縦のラインが何本も走る
日本の戸建てでの多さこちらが主流店舗風・和モダンの住宅で見かけます
裏側の胴縁縦向き(縦胴縁)横向き(横胴縁)

板と胴縁は、必ず直交します。板を横に張るなら胴縁は縦、板を縦に張るなら胴縁は横。この一行が、このページの全部です。

縦張りにすると、胴縁は横向きになります

胴縁というのは、外壁材を留めるために、防水シートの上に打つ細い木材(または金属)のことです。厚みは15mmから18mm程度が一般的で、この厚みぶんの隙間が「通気層」になります。

いまの住宅は、外壁材を壁に直接張らず、この隙間を空けて張ります。外壁通気構法と呼ばれる作り方です。目的は2つあります。

  • 万一入った雨水を、下へ落として外に出す
  • 壁の中の湿気を、空気の流れで外に出す(結露を防ぐ)

どちらも「下から上へ、空気が抜ける」ことが前提です。水切りのあたりから入った空気が、壁の中を上がって、軒下から出ていく。この流れが成り立って初めて、通気層は通気層になります。

ここで、胴縁の向きが効いてきます。縦胴縁なら、木は縦に走っているので空気は素通りできます。ところが横胴縁は、空気の通り道を真横に塞ぐ形になります。

横胴縁は、そのままだと空気が上に流れません

だから決まりごとがあります。横胴縁には、隙間を空ける。

外装材メーカー(城東テクノ)の技術記事より

「横胴縁が連続している事例です。胴縁に隙間がないため、水切りから軒へ空気が流れません。通気を確保するために、一般的に1820㎜につき30㎜程度の隙間をあけます。」

(参考としてフラット35 木造住宅工事仕様書が挙げられています)

1820mmというのは、6尺——日本の家の基本寸法(1間)です。つまり1間ごとに3センチほど、胴縁を切って隙間を作るということになります。

窓のまわりも同じです。同じ記事に、「窓のまわりで空気の流れが途切れないように隙間を設けている優良事例。一般的に30㎜程度の隙間を確保します」とあります。窓も横胴縁と同じで、空気を止める水平の障害物だからです。

手間が増えるのは、縦張りのほうです。横張り(縦胴縁)なら、胴縁を縦に打つだけで空気は流れます。縦張り(横胴縁)は、隙間の位置を考えながら打つ工程が加わります。

メーカーが「不備事例」として写真を公開しています

ここが大事なところです。「隙間を空ける」というルールがあるということは、空けていない施工が実在するということです。

先ほど引いた記事は、不備事例と優良事例を写真で並べる形で作られています。取り上げられているのは、こういうものです。

不備事例何が起きるか
横胴縁が連続している水切りから軒へ空気が流れない
窓まわりの通気胴縁に隙間がない窓上の壁は通気の入口が無く、湿気が滞留して不具合を生じさせる恐れ
空気の入口を計画していないそもそも通気層として機能しない
水切り上の隙間が不足入口が狭く、空気が入りにくい
透湿防水シートのたるみ空気の流れを妨げる恐れ
吹き付け断熱材が膨張して通気層を塞ぐ外装仕上げ後では確認できない

どれも、外壁を張ってしまえば見えません。最後の一行——「外装仕上げ後では確認できない」——が、この話の性質をそのまま表しています。

だから、いま縦張りの家に住んでいて何ともないなら、それは大丈夫だったということです。逆に、壁の中の結露が疑われる症状(外壁の一部だけ傷みが早い、いつも湿っている面がある)があるなら、通気の話を疑う価値があります。

通気層があるかどうかは、水切りの隙間で分かります

縦張りか横張りかより先に、確かめておきたいことがあります。そもそも通気層がある家かどうかです。

古い家では、外壁材を防水シートの上に直接張る「直貼り」で施工されていることがあります。この場合は胴縁がないので、縦も横も関係ありません。

見分け方は、水切りのあたりです。

外装材メーカーの記事には、「通気を確保するために、外壁仕上げ材の下端と水切りとの隙間を一般的に10〜15㎜程度あけます」とあります(サイディングメーカーの施工要領書を要確認、とも書かれています)。

外壁の一番下と水切りの間を、横から覗いてみてください。指が入るくらいの奥行きがあれば通気層がある可能性が高く、外壁材の厚みぶんしかなければ直貼りの可能性があります。

直貼りだと、塗り替えの塗料の選び方が変わります。壁の中の湿気が塗膜の裏に回ると、膨れや剥がれの原因になるからです。塗装が剥がれる仕組み外壁の傷みの限界で書いたことと、同じ話につながります。

塗り替えのときに変わること

張り方の違いは、塗り替えの見積もりにも出てきます。ただし「縦張りだからいくら高い」という単純な話ではありません。

シーリング(コーキング)の数量

目地の走り方が変わるので、シーリングの総延長も変わります。ただし板の寸法・開口部の数・家の形で大きく変わるので、張り方だけで決まるものではありません。シーリングの数量がどう決まるかは別ページにまとめました。「30坪なら何メートル」と断定しないのは、家ごとに違いすぎるからです。

雨だれと汚れの出方

縦張りは水が縦に流れ落ちやすく、横張りは横の目地に水が溜まりやすい——一般にはそう言われます。ただし汚れの出方は方位・軒の出・周囲の環境に大きく左右されるので、張り方だけで結論は出ません。汚れの目立ちにくさで書いたように、色や環境のほうがはるかに効きます。

点検で見るところ

ここは実際に違います。横張りは、板同士が横に重なる部分(実/さね)に水が入りやすい向きです。縦張りは、上下の継ぎ目(横目地)が数少ないぶん、そこに負担が集中します。どちらも目地の切れ・痩せを見るのは同じですが、見る場所が変わります。何社かに見てもらうと、どこを見ているかで力量が分かります

そして共通なのが反りです。サイディングの反りは、留め方(釘打ちか金具留めか)や板の含水で起きるもので、張り方が縦でも横でも起こります。

胴縁は「厚み」も効きます

胴縁の向きの次に効くのが、厚みです。胴縁の厚みが、そのまま通気層の厚みになるからです。

一般に使われるのは15mmから18mm程度。ここが薄いと、空気の通り道が細くなります。逆に厚ければいいというものでもなく、外壁材を留める強度や、窓まわりの納まりとの兼ね合いで決まります。

材質にも幅があります。木の胴縁が一般的ですが、樹脂製金属製の通気部材もあります。横胴縁でも通気が取れるように、あらかじめ空気の通り道が作られている製品も市販されています。縦張りだから通気が悪い、と決めつけられない理由のひとつがこれです。

そして外壁材を留める方法も、胴縁とセットの話です。釘で板を打ち抜くのか、金具で引っ掛けるのかこれも板の厚みで決まっていて、留め方は反りの出方に関わります。いずれにしても、塗り替えの段階では選び直せません。選べるのは張り替えカバー工法のときです。

張り替えやカバー工法で、どちらかを選ぶなら

塗り替えでは張り方は変わりませんが、外壁ごとやり直すなら、ここで選ぶことになります。判断材料を整理します。

こう考えているなら向いているほう理由
とにかく無難に、確実に横張り胴縁が縦になるので通気の工程が単純。日本の戸建てで主流なので、施工に慣れた会社も多いです
縦のラインで見せたい・和モダンにしたい縦張りデザインの理由としては十分です。ただし胴縁の隙間の話を、会社が分かっているかは確認してください
建物を高く、すっきり見せたい縦張り縦のラインは高さを強調します。ただし面積が広い壁ほど、目地の処理が目立ちます
将来の点検・補修をラクにしたい横張り扱った経験のある職人が多いほうが、後々の相談先も探しやすいという現実的な理由です

費用は、張り方そのものでは大きく変わりません。変わるのは選んだ外壁材のグレード下地の状態です。どちらで見積もるかを両方出してもらうと、その会社が何で金額を決めているのかが見えます。

では、どちらが優れているのか

通気という一点だけで見れば、横張り(縦胴縁)のほうが素直です。空気が最初から上に流れる向きだからです。縦張りは、隙間を空けるという工程が正しく行われて初めて、同じ状態になります。

ただし「縦張りはダメ」ではありません。理由は3つあります。

  • 基準どおり施工されていれば、通気は確保されます。だからこそ仕様書に数字が書かれています
  • 通気を確保する部材が売られています。胴縁そのものに空気の穴が空いているタイプなど、横胴縁でも通気が取れる製品があります
  • いま建っていて問題が出ていないなら、その家では成立しているということです

塗り替えを考えている人にとって、この話の意味は「良し悪し」ではありません。「壁の中には、外から見えない作りの違いがある」——そこを分かったうえで業者の話を聞けるかどうか、です。

見積もりのときに聞くこと

聞くこと何が見えるか
「うちは通気工法ですか、直貼りですか」水切りの隙間を見れば答えられる質問です。見にも行かずに答える会社より、確認してから答える会社のほうが安心できます
「縦張りですが、通気で気をつける点はありますか」胴縁の向きの話が出てくるか。出てこなくても即失格ではありませんが、出てくれば下地まで見ている会社です
「シーリングの数量は何メートルで見ていますか」張り方で変わる部分です。数量の考え方を持っているかが分かります
「膨れや剥がれが出ている面はありますか」直貼りや通気不良のサインが出ていないかの確認です

どれも、答えられない=悪い業者、という話ではありません。ただ同じ質問を何社かに投げると、返ってくる答えの深さははっきり分かれます。同じ家を複数社に見てもらういちばんの理由は、そこにあります。

よくある質問

縦張りと横張りで、塗り替えの費用は変わりますか?

張り方だけで決まるものではありません。シーリングの総延長は変わりますが、板の寸法・開口部の数・家の形のほうが影響が大きいです。当サイトが「30坪なら何メートル」と断定しないのも同じ理由です。数量の考え方を見て、見積書の数字を検算してみてください。

縦張りは通気が悪いと聞きましたが、本当ですか?

「そのままだと空気が流れない」というのは事実です。縦張りでは胴縁が横向きになるからです。だから一般に1820mmにつき30mm程度の隙間を空けることになっていて(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)、それが行われていれば通気は確保されます。また、通気を確保できる胴縁部材も市販されています。

うちが縦張りなのですが、心配したほうがいいですか?

いま不具合が出ていないなら、そのまま心配する必要はありません。壁の中の作りは外から確認できませんし、掘り返して調べるようなものでもありません。気にすべきなのは症状のほうです。特定の面だけ傷みが早い、塗膜が剥がれたり膨れたりしている、といったことがあれば、そこから見てもらってください。複数社に同じ症状を見せると、原因の見立てが揃うかどうかで判断できます。

塗り替えのときに、縦張りから横張りに変えられますか?

塗り替えでは変わりません。張り方を変えるのは張り替えカバー工法の話になります。カバー工法では、既存の外壁の上に胴縁を打ってから新しい外壁材を張るので、そこで向きが決まります。

金属サイディングでも同じですか?

胴縁の向きの考え方は同じです。金属サイディングにも縦張り・横張りがあり、板と胴縁が直交する点も変わりません。ただし材料の性質(軽さ、断熱材との一体構造など)が違うので、選び方の基準は別に考えてください。

このページは2026年8月31日に、外装材メーカーの技術記事(城東テクノ「外壁通気構法で注意したい施工のポイント」/記事提供:株式会社NEXT STAGE)で確認して書きました。数値はいずれも「一般的に」という前提のもので、実際の施工基準はサイディングメーカーの施工要領書によります。

参考にした情報

  • 城東テクノ株式会社「外壁通気構法で求められる住宅品質vol.3『外壁通気構法で注意したい施工のポイント』」(2019年10月23日/記事提供:株式会社NEXT STAGE)——横胴縁が連続している不備事例について「胴縁に隙間がないため、水切りから軒へ空気が流れません。通気を確保するために、一般的に1820㎜につき30㎜程度の隙間をあけます(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)」。窓まわりについて「空気の流れが途切れないように隙間を設けている優良事例。一般的に30㎜程度の隙間を確保します(参考:フラット35 木造住宅工事仕様書)」。空気の入口について「外壁仕上げ材の下端と水切りとの隙間を一般的に10〜15㎜程度あけます(サイディングメーカーの施工要領書を要確認)」。そのほか、空気の入口を計画していない事例、窓まわりの通気胴縁に隙間がない事例(「窓上の壁では通気の入り口が無いため、湿気が滞留してしまい不具合を生じさせる恐れ」)、透湿防水シートのたるみ、吹き付け断熱材が通気層を塞ぐ事例(「外装仕上げ後では確認できない」)を不備事例として掲載