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玄関ドアは塗装できる?——アルミと木で、話がまったく違います

外壁塗装の見積もりを取ったら「玄関ドアはどうしますか」と聞かれた。あるいは、ドアだけ色あせて浮いて見えるようになった——という方へ。

答えは「素材で決まります」です。そしてアルミドアの表面は、現場で塗られた塗装ではありません。国土交通省の「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」に、アルミの表面をどう仕上げるかが表で載っています。ここを知っておくと、業者の説明が読めるようになります。(2026年8月30日確認)

まず、うちのドアが何でできているかを確かめる

玄関ドアは、大きく3つに分かれます。

素材見分け方塗装の考え方
アルミ叩くと軽い金属音。冷たい。表面が均一で木目がない(木目調プリントのこともある)塗れるが、工場でつくった皮膜の上に載せる工事になる
木製木目が本物。経年で色が抜ける、表面がざらつく塗り替えを前提とした面。ただし透明か不透明かで工程が変わる
スチール(鉄)磁石がつく。錆が出ると茶色く膨れる錆をどう止めるかの話になる

🔑磁石をひとつ持って玄関に行けば、その場で分かります。くっつけばスチール、つかなくて金属ならアルミ、木目が本物なら木製です。この確認だけで、聞くべきことが変わります。

アルミドアの表面は「塗装」ではありません

ここがいちばん誤解されている部分です。

仕様書の14章(金属工事)に、アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理という項目があります。表になっているのは、こういう内容です。

種別表面処理JIS規格
AB種・AC種無着色/着色の陽極酸化皮膜JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)
BA種・BB種・BC種無着色/着色の陽極酸化塗装複合皮膜JIS H 8602(同 陽極酸化塗装複合皮膜)
C種化成皮膜の上に塗装JIS H 4001(同 焼付け塗装板及び条)

言い換えると、アルミの表面は①アルマイト(陽極酸化皮膜)、②アルマイトの上に塗装を重ねた複合皮膜、③下処理をしたうえでの焼付け塗装——このいずれかです。

🔑3つとも、工場でつくられる皮膜です。とくにC種には「常温乾燥形の塗装の場合は、特記による」という注が付いています。標準は「焼付け」——つまり熱をかけて硬化させる塗装で、常温で乾かすやり方は例外として扱われています。

⚠️現場でドアを塗るというのは、この工場でできた皮膜の上に、常温で乾く塗料を後から載せるということです。「元と同じものに戻す」工事ではありません。

だから、下地処理と下塗りが結果を決めます

もともと塗料が密着する前提でつくられた面ではないので、そのまま塗れば剥がれます。逆に言えば、剥がれるかどうかは「塗る前に何をしたか」でほぼ決まります。

仕様書も、アルミの表面処理についてアルカリ性材料と接する箇所には耐アルカリ性の塗料を塗り付けることシーリングが付く面は水和封孔処理でできた表面生成物を取り除くことを求めています。アルミに何かを密着させるときは、表面を整える工程が要るという考え方です。

🔑ですから聞くべきことは1つです。「下地処理は何をして、下塗りは何を使いますか」。この質問に製品名で答えられる会社と、「大丈夫です」で終わる会社に分かれます

⚠️なお、この仕様書は公共建築工事のためのもので、戸建ての玄関ドアの塗り替えを直接定めたものではありません。アルミの表面がどうつくられているかを確かめる材料として読んでいます。

木製ドアは「透明か、不透明か」で工程が変わります

木製ドアは、塗り替えを前提にした面です。ただし木目を残すか、塗りつぶすかで工程が変わります。

仕様書の木部の素地ごしらえは、こう定められています。

種別は特記による。特記がなければ、不透明塗料塗りの場合はA種、透明塗料塗りの場合はB種とする。

A種とB種の差は、次の工程です。

工程A種
(塗りつぶし)
B種
(木目を残す)
内容
汚れ、付着物除去素地を傷つけないように除去。油類は溶剤等でふき取る
やに処理やには削り取り又は電気ごて焼きのうえ、溶剤等でふき取る
研磨紙ずりかんな目、逆目、けば等を研磨する
節止め節及びその周囲に、はけ塗りを行う
穴埋め割れ、穴、隙間、くぼみ等に充填する
研磨紙ずり穴埋め乾燥後、全面を平らに研磨する

🔑木目を残す仕上げ(B種)には、節止めも穴埋めもありません。埋めてしまうと木目が消えるからです。つまり、木目を残す仕上げでは下地の傷みがそのまま出ます。

⚠️「クリアで木目を活かしたい」と希望するときは、いまのドアの傷み具合を先に見てもらってください。色あせや細かい割れが進んでいると、透明では隠れません。塗りつぶしなら隠せますが、木目は失われます。どちらを取るかの判断です。

もうひとつ注記があります。「合成樹脂エマルションパテは、外部に用いない」——穴埋めに使う材料にも、外部で使えないものがあります。下塗り材の考え方は、こちらで整理しています

スチールドアは、錆を止められるかどうか

磁石がつくドアは鉄です。この場合争点は錆になります。

仕様書の鉄鋼面の素地ごしらえでは、現場でやる種別(C種)の錆落しはディスクサンダー、スクレーパー、ワイヤブラシ、研磨紙などで除去とされています。錆を落としてから塗るという順番です。

⚠️ただし錆で膨れて穴が開いている、蹴込み部分がぼろぼろ崩れる——こうなると塗装では戻りません。同じことが雨戸やシャッター、水切りでも起きます

「塗ったらドアがくっついた」——これは乾燥の問題です

サジェストに「玄関ドア 塗装 くっつく」が出てきます。実際に起きることです。

玄関ドアは戸当たりのゴムやパッキンと面で接する部位です。塗膜が乾き切る前に閉めると、その接している面どうしが張り付きます。無理に開けると塗膜が持っていかれます。

では何時間空ければいいのか。仕様書に一律の数字はありません。

各塗装工程の工程間隔時間及び最終養生時間は、材料の種類、気象条件等に応じて適切に定める。

🔑使う塗料と、その日の天気で変わるということです。この考え方は下塗りのページでも触れています

ですから聞くべきなのは「何時間ですか」ではなく、「いつから普通に開け閉めしていいですか」です。玄関は毎日使う場所なので、工事中どうするか(開けっ放しにするのか、その間の戸締まりはどうするのか)まで先に決めておくと、当日あわてません。

シャッターや雨戸でも同じことが起きます

「塗ったあと数日は動かせない」というのは、玄関ドアに限りません。シャッターも同じ理由で、塗った直後は開け閉めできません。可動部を塗る工事に共通する話です。

一部だけ剥げている——全部塗り直しですか?

サジェストにも「玄関ドア 塗装剥がれ 補修」という調べ方が出てきます。「全面をやり直すほどではないのだけど」という状況です。

考え方は、仕様書に書かれています。鉄骨の現場塗装についての規定ですが、塗膜が傷んだところをどう扱うかという点では同じ話です。

塗膜が損傷した部分は、活膜を残して除去し、錆止め塗料で補修する。

🔑「活膜(かつまく)」は、まだ生きている塗膜のことです。剥がれかけているところだけを落として、しっかり付いている塗膜は残す。これが部分補修の基本形です。

ただし、そのすぐあとにこう続きます。

錆が生じた部分は、旧塗膜を除去し、素地ごしらえを行ったうえ〔で錆止め塗料を塗る〕

⚠️錆が出ていたら、話が変わります。「剥がれかけ」なら活膜を残す判断ができますが、錆が出ているところは、生きて見える塗膜も含めて落とすという区別です。錆は塗膜の下で広がるためです。

ただし、玄関ドアには「見た目」の問題が残ります

部分補修は技術的には成り立ちますが、玄関ドアは正面から毎日見る場所です。

部分的に塗るとその部分だけ色と艶が変わります。新しい塗膜は艶があり、周りは経年で艶が落ちているためです。時間が経てば馴染む、とは限りません。

🔑ですから判断は「直せるか」ではなく「そこだけ色が違ってもいいか」になります。目立たない下部や戸尻側なら部分補修、正面の目に入る面なら1枚まるごと——という分け方が現実的です。実際にどちらを勧めるかは、剥がれの位置と面積を見てもらってから決まります

費用は「面積」では決まりません

当サイトでは根拠を示せない相場の断定はしていません。玄関ドアについては、そもそも面積で考えにくい部位だからです。

ドア1枚の面積は、外壁に比べればごくわずかです。それでも手間がかかるのは、次の理由です。

  • 養生の手間が大きい——ドアハンドル、鍵、郵便受け、ドアクローザー、ヒンジ。塗ってはいけない金物が密集しています
  • 金物を外す場合がある——外して塗り、戻す。この着脱が手間になります
  • 乾燥待ちが発生する——塗って終わりではなく、閉められるようになるまで置く必要があります
  • 下地処理が素材ごとに違う——アルミ・木・鉄で、やることも使う下塗りも変わります

🔑つまり「面積が小さいから安いはず」という感覚は当てはまりません。金額の話をするときは、㎡単価ではなく「一式でいくらか、その中に何が含まれるか」で見るほうが実態に合います。

また、外壁塗装と同じタイミングで頼むと、出張や段取りがまとまります。ドアだけで別に来てもらうより条件がよくなることがあるので、外壁の見積もりを取るときに一緒に入れてもらうのが手間としても合理的です

塗装以外の選択肢も、先に知っておく

塗ることが常に正解ではありません。目的によっては、別の方法のほうが合います。

方法向いている場合注意点
塗装色あせ・くすみを直したい。素材と傷みが塗装で戻る範囲下地処理と下塗りで結果が変わる
シートを貼る表面の見た目だけ変えたい下地の凹凸が出ることがある。屋外は日射と雨の影響を受ける
カバー工法断熱や鍵の性能も上げたい。枠は生きているドアが一回り小さくなる。開口寸法が変わる
交換枠まで傷んでいる。開口の寸法を変えたい工事の規模が大きくなる

⚠️断熱性能や防犯性能を上げたいなら、塗装では変わりません。塗装が変えるのは表面の見た目と保護です。目的が性能なら、最初から別の工事として相談したほうが早く済みます。

DIYはどこまでできるか

玄関ドアは足場が要らず、手が届くので、自分で塗ろうと考える方が多い部位です。実際、市販のスプレーや刷毛でやっている例もあります。

ただし、ここまで見てきたとおり難しさは「塗る作業」ではなく「塗る前」にあります。

  • ①素材に合った下塗りを選べるか——アルミ・木・鉄で別のものが要ります。上塗りだけ塗ると数年で剥がれます
  • ②金物の養生ができるか——鍵穴やドアクローザーに塗料が入ると、動作に影響します
  • ③乾くまで閉められない——玄関を数時間から数日、開け放てるか。防犯と天気の両方の問題になります

🔑③がいちばん現実的な壁です。裏口があって普段使わないドアなら成立しますが、家の出入口が1つなら、作業そのものより「その間どうするか」が問題になります。

業者に聞くこと・見積書で見るところ

  • ①うちのドアは何ですか——アルミか木か鉄か。ここで話が全部変わります
  • ②下地処理は何をしますか——素材に合わせた処理が入っているか
  • ③下塗りは何を使いますか——製品名で答えられるか。「一式」で終わっていないか
  • ④いつから普通に開け閉めできますか——生活に直結します。工事中の戸締まりも一緒に決めます
  • ⑤塗って戻る傷みですか——穴・膨れ・崩れがあるなら、別の方法を先に検討します

この5つは専門用語で問い詰めるための質問ではありません。①は磁石ひとつで自分でも確かめられますし、②〜⑤は普通の言葉で聞けます。答え方を見れば、部位ごとに考えている会社かどうかが分かります

まとめ

  • アルミドアの表面は工場でつくった皮膜——陽極酸化皮膜(アルマイト)か、その上の複合皮膜か、焼付け塗装。現場塗装はその上に載せる工事です
  • だから下地処理と下塗りが結果を決めます——剥がれるかどうかは、塗る前で決まります
  • 木製ドアは、木目を残すなら節止めも穴埋めもしません——下地の傷みがそのまま出ます
  • スチールドアは錆を落としてから——穴や崩れがあれば塗装では戻りません
  • 費用は面積では決まりません——養生・金物・乾燥待ちが手間の中身です

🔑そして、玄関ドアだけを単独で考える必要はありません。外壁の見積もりを取るときに一緒に見てもらえば、素材の判定も、塗るべきかどうかも、同じ場で答えが出ます

参考にした情報

  • 国土交通省大臣官房官庁営繕部「公共建築工事標準仕様書(建築工事編)令和7年版」より——14.2.1[アルミニウム及びアルミニウム合金の表面処理](表14.2.1 表面処理の種別、および(3)の措置)、18.2.2[木部の素地ごしらえ](表18.2.1および注記)、18.2.3[鉄鋼面の素地ごしらえ](表18.2.2)、18.1.4[施工一般](工程間隔時間及び最終養生時間)
  • 引用されているJIS規格——JIS H 8601(アルミニウム及びアルミニウム合金の陽極酸化皮膜)、JIS H 8602(同 陽極酸化塗装複合皮膜)、JIS H 4001(同 焼付け塗装板及び条)

最終確認日:2026年8月30日。この仕様書は公共建築工事に適用されるもので、戸建て住宅の玄関ドアの塗り替えを定めたものではありません。アルミや木の表面がどう仕上げられているか、塗る前に何が必要とされているかを確かめる材料として参照しました。実際の可否と工程は、ドアの製品と傷み具合、使用する塗料の製造所の仕様によります。

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